Tuning Japan National Centre 国立教育政策研究所は、国際チューニング・アカデミーの依頼を受けて、日本のチューニング情報拠点としての役割を担っています。 NIER
チューニングとは何か チューニング情報拠点の設置について 国立教育政策研究所におけるチューニングの取組 大学等におけるチューニングの取組 資料・過去のイベント  

 国立教育政策研究所は、国際チューニング・アカデミーの依頼を受けて、平成27年より、チューニングに関する日本の情報拠点としての役割を担うことになりました。

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 チューニングとは、学生に大学教育を通してどのような知識や能力を修得させたいのか(アウトカム)という観点から学位プログラムを設計して実践するための方法論で、 2000年に欧州で手掛けられて以降、北南米をはじめとする世界各地へ拡大してきました。
 チューニングでは、各国・大学で目指すべきアウトカムが、大学教員によって学生・卒業生・雇用主等との対話に基づいて定義されています。 したがって、チューニングは「大学教育の世界標準化」を目指すものではなく、各国・大学によってローカライズして活用されることが想定されています。 世界の大学が「大学教育の質保証アプローチ(方法論)」を共有することで、教育の透明性を高め、相互信頼の関係を強化することを目指す取組ということができます。 また、大学が社会と繋がり、社会の要請に責任をもって応えるとともに、先見性と創造性をもって次代へと牽引していくことを目指す取組ということもできます。

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 日本でも、中央教育審議会 『学士課程教育の構築に向けて(答申)』 (平成20年)以降、大学の教育課程をアウトカムに基づいて体系化する必要性が強調されてきました。日本学術会議では、 『大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準』 を策定する作業が平成20年に着手され、平成27年4月現在、18分野で報告書が公表されています。そうした中で、既に多くの大学が、教育課程の科目構造を 「カリキュラム・マップ(コース・ツリー)」に整理して、「卒業認定・学位授与に関する方針(ディプロマ・ポリシー)」と関連付ける作業等に取り組んでいるところです。 文部科学省の競争的資金制度等の枠組みを通して、社会の要請に応える大学教育の質保証システムの構築、アウトカム(学修成果)の可視化、 国際通用性のある学位プログラムの設計等の先導的取組に着手して、成果をあげている大学もあります。
 チューニングでは、各国の大学によるアウトカムに基づく学位プログラムの設計・実践の取組が、15年間にわたって蓄積されてきました。同じ目的に向けて試行錯誤を重ねている日本の大学が、 チューニングの取組に注目し、その成果と課題から示唆を得ようとすることは、意義のあることといえるでしょう。とりわけ、大学教育のグローバル化が進展する中で、 日本の大学が他国の大学と共同で学位プログラムを提供して共同学位を授与しようとする場合には、学位プログラム設計の論理を共有することが実質的に極めて重要な前提といえます。 さらに、日本で蓄積されてきた経験、試行錯誤を通して明らかになった知見について国際的に情報発信していくことを通して、大学教育の質保証を巡るグローバルな対話に参加し、 日本の大学に対する国際的信頼を高めていくことも、喫緊の課題といえます。

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 グローバル化と少子化が進展する中で、日本のどの大学も、学生を世界に送り出したり、受け入れたりするための条件整備を進めていくことが期待されています。 これまでの高等教育政策の流れを踏まえつつ、日本の環境に適した大学教育のグローバル質保証の在り方について検討を深め、方向性を見極めていく必要があります。
 本情報拠点では、チューニングの理念や具体的な方法、グッド・プラクティス、明らかになった課題等に関する情報を体系的に提供していくことを通して、 日本の大学の取組を支援し、学習者を中心とした教育環境の整備に貢献していくことを目指します。チューニングを共通の切り口とすることで、 大学教育の質保証に向けたグローバルな対話に参加するためのプラットフォームを提供していきます。

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 日本の大学でも、チューニングの方法に基づいて学位プログラムを設計・実践することへの関心が徐々に高まってきています。 この関心が実践へと発展し、アウトカム重視の大学教育が日本に適した形で定着するように、国立教育政策研究所はチューニングに関する日本の情報拠点として、 国際チューニング・アカデミー、各国のチューニング情報拠点、及び日本のチューニング実践拠点と連携協力しながら、活動を強化してまいります。

Foundation of TUNING Centres World-wide

国際チューニング・アカデミー(International Tuning Academy)は、チューニングの国際的普及に対応して、 チューニングを推進するこれまでの組織(European Tuning Information and Counselling Centres, Tuning Information Points)を再編し、3つのレベルに整理する方針を発表しました。 チューニングは、各国・地域に適した方法で援用されることを想定していますが、チューニング・ネットワークでは「コンピテンスに基づく学位プログラム設計・実践の方法論」 を共有することを要件とすることで、取組の質保証が目指されます。
 国立教育政策研究所は、国際チューニング・アカデミーの依頼を受けて、チューニング情報拠点(Tuning National Centre)としての役割を担っています。


図1.チューニング・センター組織の構造

国際チューニング・アカデミーの役割

 国際チューニング・アカデミーは、チューニングの国際的取組の中核拠点として、プロジェクトや調査研究を推進する。調査研究や議論を通して社会のニーズをくみ取り、大学改革やカリキュラム開発に働きかけていくことを目指している。その役割は、次の通りである。

  • コンピテンス枠組みを基盤とするチューニングの方法論の活用の維持・推進に努め、可能な限り国際的な協議と対話に基づいて更新していくこと。
  • 高等教育の現代化、改善、国際化に関するプロジェクトや研究を企画・実践していくこと。
  • チューニング名称のもとに取り組まれている全てのプロジェクトの科学的・学術的質を保証すること。
  • 高等教育分野の専門家や政策担当者を対象とした会議、セミナー、ワークショップを推進・実現すること。
  • チューニングに関する国際的ネットワークを維持・推進すること。
  • 生涯学習社会の文脈における大学プロフィールの更新に向けて、不断に変化する昨今の社会にみられる新旧の(学問分野別・分野横断的)コンピテンスに焦点をあてる取組を推進すること。
  • カリキュラム開発、教授・学習・評価方法、学生の学習量に基づく単位制度の活用、学生の学習量の計算、学位プログラム・プロフィールの作成及び関連するコンピテンスの同定、学位プログラムの学習成果の記述等に関する教員研修を提供すること。
  • 教育制度・構造・学位プログラムの現代化に向けて、政府や公共・民間組織に対して助言や支援を提供すること。
  • 国際チューニング・アカデミーの目的や目標を推進するための出版物を奨励・実現すること。

各国チューニング情報拠点の役割

 チューニング情報拠点(Tuning National Centres) (TNCs)とは、各国におけるチューニングの活動の窓口であり、各国の高等教育政策当局と緊密なつながりを持つ機関が担う。例えば、教育省ないしその部局、全国的な大学協会、学長会議、認証評価機関等、当該国の教育システムとチューニングの仲立ちを果たし得る機関であり、当該国におけるチューニングの取組を代表する立場から発言できる機関であることが重要である。どの機関がチューニング情報拠点としての役割を担うのが最も適切かつ効果的であるかは、当該国で決定する。その役割は、次の通りである。

  • 国内の全ての高等教育機関に対して、国内外のチューニング・プロジェクトと調査研究、及びその成果について情報を提供することで関心を喚起すること。
  • チューニング・アカデミーと緊密な連携関係を保つことで、世界で展開するチューニングの取組に関する情報拠点としての役割を担うこと。
  • 各国のチューニング情報拠点との連携・協力関係を構築して維持すること。
  • 国際チューニング・アカデミーと国内のチューニング実践拠点(Tuning University Centre)との仲立ちをすること。
  • 高等教育のステークホルダーに協力を呼びかけたり、ステークホルダー間の協力関係を仲立ちしたりすることで、全国規模で取り組むチューニング・プロジェクトを導くこと。この取組は、政策や教育システムの構造改革・改善と関わる場合もあり得るが、広域の学問分野や個別の学問分野に関わる場合もあり得る。また、当該国のチューニング実践拠点(大学)との専門的な協力関係を要する場合もあり得る。
  • 情報を普及させ、ステークホルダー間の議論喚起を図る主要な手段として、チューニング・ウェブサイトを管理運営すること。
  • チューニングに関する文書を外国語(原文)又は当該国の言語で提供するエージェントとなること。これは国際チューニング・アカデミーの文書やチューニング・プロジェクトや研究に係る文書の翻訳を手掛けることを意味する場合がある。
  • 関連する重要な事項について対話や議論を喚起するために、会議・セミナー・ワークショップを開催すること。
  • チューニングの哲学を世界レベルで連携のとれた形で推進するために、考え方や活動の展開に貢献すること。
  • 国際チューニング・アカデミーが主催する国際的活動に参加すること。

 ※ チューニング情報拠点は、年度ごとの活動計画及び前年度の活動報告について、国際チューニング・センターに情報共有する。

大学チューニング実践拠点の役割

 大学チューニング実践拠点は、チューニングの方法論、プロジェクトの成果、チューニング資料に関する情報の継続的普及を目的として設置する。
 大学チューニング実践拠点は、国際チューニング・アカデミー、当該国のチューニング情報拠点、及び他の大学チューニング実践拠点と連携して活動する組織である。チューニング実践拠点の形態は、学内部局に位置づけられることを条件として、各大学が決定する。すなわち、チューニング・プロジェクトに参加する大学は、チューニング実践拠点を運営する職員と施設設備を提供する必要がある。
 大学チューニング実践拠点は、次の3つのレベルの中から、活動の範囲を決定する。

  1. 情報の普及(基本レベル)
  2. 情報の統合(発展レベル)
  3. 教員研修(専門レベル)
1.情報の普及:大学チューニング実践拠点の目標は、チューニングに係る既存の資料を学内に普及させることである。 学内の全ての関係者にチューニングの成果について伝達するために必要な組織的戦略を持つに至っていない段階。この段階の大学の主な役割は、次の通りである。
  • 世界のチューニング・プロジェクトの中で開発されてきた情報や教材を学内に配布すること。
  • 学内で実施する情報普及のためのセミナーや会議の開催を支援すること。
  • 学内の様々なレベル(学部、学科、教員、学生等)に対して情報を提供して、相談を受け付けること。
  • 国際チューニング・アカデミーに対する大学の窓口となること。

※ 大学チューニング実践拠点は、必ずこの情報普及活動を推進する。
※ 大学チューニング実践拠点は、活動計画及び年度末の活動報告について、国際チューニング・センターに情報共有する。 国際チューニング・アカデミーが大学チューニング実践拠点のレベルを決定する。

2.情報の統合:この段階の主な目的は、チューニングの方法論の成果を学内で統合することである。 「情報の普及」に留まらず、実践に取り組むことを目指す大学が、この段階に該当する。全ての大学チューニング実践拠点が、 この発展レベルを目指さなければならないわけではない。この段階の大学の主な役割は、次の通りである。
  • 学内の可能な限り多くの学問分野に対して、学問分野のコンピテンス枠組みを定義することを呼びかけること。
  • 学内の学問分野による、チューニングの方法論や関連する道具等の活用を支援すること。
  • チューニングの方法論に基づいて、学位プログラムのプロフィールをデザインすること。
  • 学内の教員集団に対して、カリキュラム・デザインの方法、社会のニーズや活用できる資源を勘案した学位プログラム・プロフィール、 コンピテンス・学習成果・メタプロフィールの策定等について見直すよう依頼して、 その結果に基づいてチューニングの方法論の基盤を改善・強化すること。
  • チューニングの実践における大学レベルでの主な障壁や疑問点を集約すること。

※ 統合のプロセスは、そこで提起されることが予想される疑問点、顕在化することが予想される問題点に対応する仕組みを伴っている必要がある。 そのために、大学チューニング実践拠点は、国際チューニング・アカデミーと連携して研究を企画することが望ましい。
※ 大学チューニング実践拠点は、統合に係る活動計画を国際チューニング・アカデミーに提示してフィードバックを得る。
※ 「教員研修」の段階に進むには、学内の学位プログラムの75%以上が、チューニングの方法論に基づいて設計されていなければならない。

3.教員研修:この段階の主な目的は、チューニングの統合と実践を大学から全国レベルに展開することである。 学内の各学問分野の教員は、チューニングを実践する過程で開発した資料を省察・評価して、学内外に対して研修を提供する。 この段階では、大学チューニング実戦拠点は、新領域におけるチューニングの方法論の活用を巡って新たに提起された問題について検討するためのシンク ・タンクとしての役割を担う。教員研修は、大学チューニング実戦拠点と国際チューニング・アカデミーが共同で取り組む研究に下支えされなければならない。 この段階の大学の主な役割は、次の通りである。
  • コンピテンスに基づく学位プログラムの実践やチューニングの方法論に関する研修セミナーやワークショップ(コンピテンスの教授・学習・評価方法)を学内で提供すること。
  • 国内の他の大学に対して・チューニングの方法論や製品の活用を推奨すること。
  • 国内の関係者に対して、(国際チューニング・アカデミーとともに)研修を提供すること。
  • チューニングの方法論の実践について、他大学の相談を受け付けること。
  • チューニングの方法論を国内で最も効果的に活用するための教材や手引きを作成すること。例えば、コンピテンス及び学習成果に基づく学位プログラムのベスト・プラクティスの紹介、 学位プログラムや科目・モジュールのレベルでコンピテンスを学習成果に落とし込む最善の方法等について紹介すること等が含まれる。
  • 国際チューニング・アカデミーが主催する国際的活動に参加すること。

※ この段階が開始するのは、「情報の統合」のプロセスを完了した後のみである。
※ 大学チューニング実践拠点は、研修に係る活動計画を国際チューニング・アカデミーに提示してフィードバックを得る。研修セミナーやワークショップにおいて、 国際チューニング・アカデミーと連携することもあり得る。



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