「問題行動等への地域における支援システムについて」
調査研究報告書(概 要)
○ 課題 「問題行動等への地域における支援システムについての調査研究」
研究の種別:文部科学省からの依頼
実施期間:平成13年度
○ 調査研究の目的
暴力行為、いじめ等の児童生徒の問題行動等は依然として憂慮すべき状況であり、学校、家庭、地域社会、関係機関等が互いに連携し、一体となってこれらの問題行動等の予防や解決に向け取り組むことが求められている。
本研究は、このような状況を踏まえ、児童生徒の問題行動等に対する学校・家庭・地域の一体となった連携の在り方、特に、深刻な問題行動等の状況にある児童生徒に対する関係諸機関等によるサポートチームの具体化など、実証的な調査研究を行い、問題行動等への地域における支援システムの構築に資することを目的としたものである。
○ 調査研究の概要
1 問題行動等の状況と地域支援システムの構築
(1)問題行動等の現状
暴力行為、いじめ、不登校、少年非行など、児童生徒の問題行動等は依然として憂慮すべき状況にあり、学校や家庭、地域が直面している問題行動等の状況も多様なものとなっている。こうした中、問題行動等の予防や解決と児童生徒の健全育成は、学校・家庭・地域における共通の課題である。
(2)地域における支援システムの必要性
学校は、これまでの生徒指導体制だけでは対応しきれない困難な問題も抱えるようになってきており、地域の関係機関等との幅広い連携が必要になっている。問題行動等の予防や解決において、今日求められていることは、深刻な問題行動等(その前兆も含む)を起こしている個別の児童生徒に対し、その解決に向けて、関係機関等がサポートチームを編成し、機動的・実効的に対応していくことである。
本研究では、サポートチームの編成・組織化の仕組を内にもった構造的なネットワークをいかに構築するかという観点に立って、支援システムの在り方に関する検討を行った。
2 地域支援システムにおける具体的な行動連携としてのサポートチーム
(1)サポートチームの編成と組織化
サポートチームの編成や組織化に当たっては、どんな問題行動等について、どのような関係機関や関係団体等がサポートチームに参加し、また、どこがコーディネート役(サポートチームの中核的な機関として関係機関・関係団体等の連絡調整やサポートチーム会議の運営等に当たる)を担うかを明確にしておくことが必要である。
また、コーディネート役を担当する関係機関等は、個別の問題に対処して、各機関等との連絡・調整やサポート会議などを運営していくことになるが、そこでは各関係機関等がそれぞれの役割分担や具体的な行動計画などを明確にし、その責任を果たし、チームとして多面的・総合的な機能を発揮することが必要である。
<※「問題行動等の種類とサポートチームの構成」に関する整理表を試案として掲載>
(2)学校や教育委員会等におけるサポートチームの取組と留意点
@ 学校や教育委員会等の取組
学校は、問題行動等の種類・程度・状況などを的確に把握し、関係機関等との行動連携の必要性の度合を判断することとなる。教育委員会は、問題が学校の生徒指導体制によって対応できるものか、教育委員会による支援策を必要とするものか、さらには、サポートチームづくり等を関係機関に要請すべきものかなどの見極めを行うこととなる。
サポートチームが必要と判断した場合、特に、授業妨害、いじめ、校内暴力など学校をめぐる問題行動が顕著であるとき、教育委員会は自らコーディネート役を担い、関係機関等の実務担当者などをチーム員として参加させるよう働きかけを行うこととなる。
<※具体的なサポートチームづくりの参考資料として8つの「事例」を掲載>
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A サポートチームの効果的運用のための留意点
(関係機関相互の理解、役割・責任の分担)
サポートチームの取組に当たっては、個々の問題行動等の解決に当たってふさわしい関係機関・関係団体等がサポートチームを構成すること、そして、そのチームのコーディネート役を行う機関を明確にし、参加する各関係機関等がそれぞれの役割を分担し責任を果たすことが基本である。学校や教育委員会等においては、地域の実情等も踏まえながら、問題行動等の種類や状況等に応じて、具体的にどの関係機関・関係団体等とサポートチームを構成し、個々の問題行動等の解決に向けてどのように役割分担し、効果的な取組を進めていくかを、日ごろから十分検討しておくことが大切である。
(個別の状況に即した柔軟な対応、地域の人材の活用)
サポートチームの実践に当たっては、個別の状況に柔軟に対処していくことが必要であり、問題行動等の解決を目指すため、その推移や対応の進展により、チーム編成やメンバーが変化することが当然考えられる。また、サポートチームの効果的な取組に当たっては、問題行動等を起こしている児童生徒、その家庭への心のサポートができるような地域の身近な人にチームに参加してもらうことも有効であろう。
(個人情報への適切な配慮)
サポートチームの会議などでは、具体的な個々のケースについて、詳細な情報が交換されることがある。この点については、個人情報の保護や情報管理が特に重要であり、サポートチーム等の活動で知り得た個人の情報等について、その秘密の保持について留意しなければならない。
(サポートチームの取組の評価)
サポートチームの組織化や行動の在り方、各関係機関の役割分担等がどうであったのかを、サポートチーム全体できちんと評価し、地域のネットワークに還元していくことが必要である。それが、次のサポートチームの立ち上げに当たっても、より機動的・実効的なサポートチームの組織化と効果的な取組につながる。また、サポートチームの実践事例やその評価などについて情報を収集・分析したり、サポートチームの取組を当該都道府県の域内全体に普及を図るためにも必要な方策を検討・実施することが望まれる。
(コーディネート機能の充実、教育委員会の体制の強化)
関係機関等との連携などについて豊かな経験をもつ地域の人材を、サポートチームの事務局などに積極的に登用し、関係機関間との情報連携・行動連携の一層の充実を図ることが重要である。また、全国の各教育委員会において、必要に応じてサポートチームを組織化することができるよう、事務体制の強化・充実を図るとともに、都道府県教育委員会が支援を行っていくことが望まれる。
<※2の総括として「サポートチームの構成・取組の流れ図」を掲載>
(3)出席停止とサポートチームの取組
@ 出席停止制度の改善
サポートチームの取組が今日的な要請となっている背景の一つには、出席停止制度の改善が挙げられる。今回の学校教育法の改正の趣旨を踏まえて、日ごろからの生徒指導や、出席停止期間中の学習支援等の充実を図ろうとするとき、学校と関係機関との連携、とりわけサポートチームの果たす役割や機能は重要である。
A 出席停止制度におけるサポートチームの役割・機能
出席停止措置については、事前の段階、出席停止期間中の段階、事後の段階など、その状況や推移に応じた対応が必要になる。問題行動(前兆も含む)を起こす児童生徒について、情報の共有化、対応策の検討・実施などを行い、深刻な問題行動の未然防止を図ったり、出席停止の適用について適切な判断を下したりする上で、サポートチームは有効な方策と考えられる。また、出席停止の決定に至った場合、市町村教育委員会は、自らの責任の下、学習支援など教育上必要な措置を講じ、当該児童生徒の立ち直りに努めることとなるが、特に、家庭の監護に問題がある場合などでは、サポートチームによる援助が有効である(出席停止と少年法や児童福祉法上の措置との円滑な接続を図る上でも有意義)。
<※「出席停止措置と関係機関の対応について」の流れ図を参考として掲載>
3 サポートチームの基盤としてのネットワークづくり
(1)ネットワークとサポートチームの関係
サポートチームが、機動的・実効的に機能するためには、日ごろから青少年の健全育成や学校内の問題行動等について関係機関・関係団体等との緊密な情報交換や連携・交流が図られているなど、地域のネットワークの存在が重要である。また、こうしたサポートチームの取組を進めることは、地域の関係機関・関係団体等の人間関係や協力関係を深め、地域のネットワークの結び付きを一層広げ、その結び付きをさらに強いものにしていくと言える。
<※「ネットワークとサポートチームの関係図」を掲載>
(2)地域の実情等を踏まえたネットワークの形成と教育委員会の役割
ネットワークは多層的・複層的な構造をもっており、各地域の実情に応じて、ネットワークづくりの推進に創意工夫を発揮していくことが大切である。一方、ネットワークの存在は、それぞれが目指す目的などによって異なる面もあり、新たな視点から地域のネットワークづくりを考えていくことも必要になっている。その際、既存の組織を生かして、地域全体のネットワークの活性化を図ることも大切である。
教育委員会においては、関係部局や関係機関等とも協力しつつ、児童生徒の問題行動等の実態やその対応の現状を多面的・多角的に分析・検討し、問題行動等への予防や解決と児童生徒の健全育成に向けた地域支援システムの構築に実践的に取り組むことが重要である。
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