「学習意欲に関する調査研究」概要
 
 国立教育政策研究所内「学習意欲研究会」では、教師や保護者が児童・生徒の「なぜ勉強しなければならないか」という疑問に答えられるように、児童・生徒が意欲をもって学習に取り組むようになった児童・生徒への一言や具体的な学習体験等の事例を収集することにより、学習動機を明らかにするための資料を得ることを目的とした「学習意欲に関する調査研究」を行った。以下はその概要である。


■「とてもやる気になる」「やる気になる」合計 ベスト5■


小学校
 1 授業がよく分かるとき  95.2%
 2 先生にほめられたとき 94.6%
 2 授業がおもしろいとき 94.6%
 4 クラブ活動などに一生懸命取り組んでいるとき 94.2%
 5 仲のよい友だちができたとき 93.5%

中学校
 1 授業がよく分かるとき 94.0%
 2 授業がおもしろいとき 91.8%
 3 将来つきたい職業に関心を持ったとき 90.5%
 4 成績が上がったとき 87.1%
 5 将来行きたい学校がはっきり決まったとき 86.8%

高等学校
 1 授業がおもしろいとき 93.3%
 2 授業がよく分かるとき 93.0%
 3 将来つきたい職業に関心を持ったとき 89.7%
 4 将来行きたい学校がはっきり決まったとき 88.9%
 5 成績が上がったとき 86.8%
 5 級や段、資格などを取ろうと思ったとき 86.8%



■「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」合計 ワースト5■


小学校
 1 授業がつまらないとき  83.3%
 2 家族の仲が悪かったりしていやなとき 80.0%
 3 先生にしかられたとき 69.5%
 4 友だちにけなされたとき 68.3%
 5 授業がよく分からないとき 64.5%

中学校
 1 授業がつまらないとき 95.0%
 2 授業がよく分からないとき 77.2%
 3 家族の仲が悪かったりしていやなとき 75.4%
 4 母親に「勉強しなさい」といわれたとき 73.5%
 5 家の人に友だちと比べられたとき 69.4%

高等学校
 1 授業がつまらないとき 94.8%
 2 授業がよく分からないとき 81.1%
 3 母親に「勉強しなさい」といわれたとき 78.3%
 4 父親に「勉強しなさい」といわれたとき 72.0%
 5 家族の仲が悪かったりしていやなとき 70.2%
 


1.家族との関係では
@ 両親などがほめたり励ましたりするのは、効果が大
 家族との関係では、両親などが児童・生徒をほめたりはげましたりすることが、学習に対する意欲を高めるために大変効果的であることがわかった。
 
【父親に勉強のことでほめられたとき】
 小学校
 中学校
高等学校

 
 ほめたりはげましたりすることに関連して、特に小学生・中学生は「ごほうび」があるとやる気になるという事例も数多く見られた。
 ごほうびがあると、やる気が出るようである。しかし、よい成績であれば高価な ものを買い与えるとか、おこづかいをあげるというものでない。「がんばっている なあ」と思うときに、本人の好物のカレーや磯辺揚げなどを献立にしたり、キャッ チボールをしたり、バッティングセンターに連れて行ったりしている。
          (小学校5年生の保護者からのインタビューから)

 
A しかったり「勉強しなさい」と言うことは逆効果
 それとは反対に、両親に「勉強のことでしかられたとき」「「勉強しなさい」といわれたとき」にやる気がなくなることが明らかとなった(「勉強しなさい」といわれた場合は半数以上が勉強を「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」と回答)。
 
【父親に勉強のことでしかられたとき】
 小学校
 中学校
高等学校

B 家族は仲良く楽しく過ごし、他人と比較しないこと
 また、家族の仲が悪かったりしていやなときはやる気がなくなる(「とてもやる気がなくなる」「やる気がなくなる」は、7割以上)が、逆に家族が仲良く楽しく過ごしているときは小学生で9割近く、高校生でも5割以上が「とてもやる気になる」「やる気になる」と回答しており、家族が仲良くすることがやる気につながることが明らかとなった。
 
【家族が仲良く過ごしているとき】
 小学校
 中学校
高等学校

 一方、小学生で約5割、中学生・高校生で約7割が「家の人に友だちと比べられたとき」に「やる気がなくなる」「とてもやる気がなくなる」と回答しており、児童・生徒を他人と比較しないことが大切であること等も分かった。


【家の人に友だちと比べられたとき】
 小学校
 中学校
高等学校
 
2.学校では
@ 教員がほめたり学習ノートに返事を書いたりするのは効果が大
 学校・教員関係でも、教員がほめたりはげましたりするのは効果が大きいことがあきらかとなった。


【先生にほめられたとき】
 小学校
 中学校
高等学校

(具体例)
 学級の中で仲間をまとめる力がありながらリードせず、こそこそ動き回っている 生徒を体育の授業後に呼び、「君のサッカーの力はすごい。他の学校の先生もほめ ていたぞ。みんなは君の力を認めているのだから、このクラスは、君がリーダーに なってまとめていったら、すばらしいクラスになる。担任の先生も期待している よ。」と話したところ、体育の時間にどんどん呼びかけをするようになった。  その後、それがきっかけとなり、自信をもったのか、他の授業中も挙手発表が多くなり、成績も伸びていった。担任の話によると、体育の時間の励ましが本人に自信をつけ、やればできるという気持ちになったようだ。
          (中学校 30代・保健体育教員のインタビューから)

 
 また、学習ノートに先生が返事を書いてくれたときも、小学生で9割以上、中学生、高校生でも7割以上がやる気になったと回答している。

 
A 分かる授業・おもしろい授業で学習に対する意欲が高まる
 分かる授業で学習に対する意欲が高まる一方、「授業がよくわからない」ときには小学生で6割以上、中学生・高校生では約8割がやる気がなくなったと回答している。
 
 【授業がよくわかるとき】
 小学校
 中学校
高等学校

 また、授業がおもしろいと小・中・高校生を通じて9割以上が学習に対する意欲が高まると回答している。
 
 そのほか、よい友人関係は学習意欲を高めること(小学生で9割以上、中学生で8割以上、高校生で約7割が回答)、小学生は体験学習によっても学習に対する意欲が高まること(約9割)、中学生・高校生は将来の方向性が決まると学習に対する意欲が高まること(「行きたい学校が決まったとき」にいずれも9割近くが回答)等も明らかになった。
 
 なお、報告書には、「なぜ勉強しなければならないか」という疑問に答える際に参考となる児童・生徒が意欲をもって学習に取り組むようになった児童・生徒への一言、児童・生徒の具体的な学習体験等の事例を収集した。
 
(参考)
1 研究概要  
研究の種別  文部科学省委嘱研究
実施期間  平成12〜13年度
研究代表者  富岡 賢治(前国立教育政策研究所長、現日本国際教育協会理事長)
 
2 研究目的
 現在、児童・生徒は自分の将来に夢や希望を持つことが難しくなっており、また社会には、働くことや努力すること、ものづくりの技術や専門性等が軽んじられる傾向も見られる。こうした状況の中で、児童・生徒に学習の目的を見つけられない傾向が見られ、学習意欲の低下が問題となっている。教師や保護者も、児童・生徒の「なぜ勉強しなければならないか」という疑問に答えることが難しくなっている。
 そこで本調査研究では、教師や保護者が児童・生徒の「なぜ勉強しなければならないか」という疑問に答えられるように、児童・生徒が意欲をもって学習に取り組むようになった児童・生徒への一言や具体的な学習体験等の事例を収集することにより、新しい時代における学習動機を明らかにするための資料を得ることを目的とした。
 
3 研究期間 平成12年度〜13年度(2年間)
 
4 研究方法・経過等
 調査は、文部省(現文部科学省)からの委嘱に基づき、国立教育政策研究所内に設けられた学習意欲研究会(代表:富岡賢治日本国際教育協会理事長・前国立教育政策研究所長)により以下の方法によるアンケート調査・聞き取り調査を実施し、結果を整理・分析したものである。
@ 東京都品川区、同日野市、岐阜県美濃市及び同笠松町所在の小学生・中学生・高校生(計約1,400名)とその保護者(計1,161名)に対するアンケート調査
A 上記アンケート調査を基にした小学生・中学生・高校生(計88名)と保護者(70名)に対する聞き取り調査
B 同地域の小学校・中学校・高等学校の教師(計66名)に対する聞き取り調査
C 参考として、東京都、埼玉県及び神奈川県所在の学習塾の教師、学習塾で学ぶ小学生・中学生(合計約400名)とその保護者に対しても、アンケート調査を実施した。