プレス発表資料
平成20年6月5日
国立教育政策研究所
PISA調査のアンケート項目による中3調査
集計結果(速報)について 本文PDF(124KB)
国立教育政策研究所では、2006年のPISA調査で高校1年生に用いられた生徒質問紙を用いて、科学に対する意識や取り組みの状況について、中学校終了段階の中学3年生を対象にした全国調査を実施しました。 その結果、中学3年生は高校1年生よりも、多くの質問項目で良好な意識を示し、必ずしもPISA調査結果のすべてが中学校までの理科教育に起因するものでないことが明らかとなりました。 しかし、質問によっては、中学3年生においても、OECD平均(OECD加盟国の15歳段階生徒の平均値)と比べて、良好とは言えない意識を示す内容が数多く見られました。その特徴から、中学校段階の理科教育に次のような課題が示唆されました。 ・ 科学に関する自信,自己効力感を高める必要があること ・ 理科や科学を学ぶ価値や意義を実感させる必要があること ・ 科学に関連する職業意識を養う取り組みが必要なこと ・ 対話しながらの思考や、応用に関する学習を重視する必要があること このたび、本アンケート調査の集計結果(速報)をとりまとめましたので、お知らせします。 |
4.各問題の調査結果及びPISA調査の結果との比較について PDF(5.14MB)
* 全体 PDF(5.39MB) (全体を印刷される方はご利用ください)
訂正 18頁目の問12のグラフに誤りが見つかったため差し換えました。(6月26日)
【調査の目的等】
○ PISA調査は、日本では高校1年生を対象に6月〜7月に実施し、義務教育段階
修了時での生徒の学力を測定。
○ 本調査は、特にPISA2006で中心教科であった科学的リテラシーの生徒質問
紙調査について、中学校3年生を対象に1〜2月に実施することにより、中学校段階の
理科教育の課題をより的確に把握しようとするもの。
○ 今回は調査結果の速報であり、より詳細な分析結果については、今後作成する調査
報告書に掲載(平成20年7月を予定)
【実施方法等】
・実施主体: 国立教育政策研究所
・調査対象: 全国の国公私立中学校のうち無作為に選んだ194校から89校の協力を得
て2,994人分を「全国代表値」として集計。89校の内訳は、国立2校、公立83校、私立4
校。
・調査時期: 平成20年1月末〜2月
【調査結果(速報)】
○ 科学に関する意識に関連する調査項目(111項目)の結果について、PISA20
06における高校1年生の回答状況より、今回の中学3年生の方が多くの項目で良好な
回答状況。
← 高校1年段階で受けている理科教育が中学3年までと異なることが影響してい
ると考えられる。その他、入学試験後の開放感、7月の調査実施も影響している可能性。
※〔中3調査の方が肯定もしくは望ましい回答の状況〕
10%以上高い 23項目
2.5〜5%低い 7項目
5〜10%高い 28項目 63項目 5〜10%低い 0項目 8項目
2.5〜5%高い 12項目 10%以上低い 1項目
2.5%以内 40項目
ただし、PISAのOECD平均と比べると低い項目も高い項目もある状況。その
内容から、中学校段階の理科教育に次のような課題。
「科学的な課題に対応できる自信がある」「理科を学習することについての自信が
ある」など・・・科学に関する自信、自己効力感を高める必要
「科学の身近さ・有用さを感じている」「理科の勉強は大切、理科の勉強を自分の
将来に役立てたい」など・・・理科や科学を学ぶ価値や意義を実感させる必要
「学校で科学に関連する職業に関する知識や技能を学べる」「科学に関連する職業
に関する情報が与えられている」など・・・職業観が育む取り組みが必要
「対話を重視した理科授業を受けている」「モデルの使用や応用を重視した理科授
業を受けている」など・・・対話しながらの思考や、応用に関する学習を重視する必要
○ 今回調査の中学3年生の回答状況が、PISA2006における高校1年生より、10
%以上高かった項目
・科学の話題について学んでいる時は、たいてい楽しい
・科学についての問題を解いている時は楽しい
・科学についての知識を得ることは楽しい
・科学について学ぶことに興味がある
・化学に関する話題(に興味がある)
・科学者が実験を計画する方法(に興味がある)
・高校を卒業したら科学を勉強したい
・理科の自習または宿題(を週2時間以上している)
・生徒には自分の考えを発表する機会が与えられている
・授業は、課題に対する生徒の意見を取り入れて行われる
・生徒は課題についての話し合いをする
・生徒が実験室で実験を行う
・生徒は、実験したことからどんな結論が得られたかを考えるよう求められる
・先生が実験を実演してくれる
・生徒は、先生の指示通りに実験を行う
・理科の問題を実験室でどのように調べるかを、生徒が計画するように指示されている
・生徒は、自分たちが予想したことを実験で確かめるよう求められる
・生徒は、理科で習った考えを日常の問題に応用するよう求められる
・先生は理科で習った考え方が、多くの異なる現象(例:物体の運動、似た性質を持つ
物質など)に応用できることを教えてくれる
・先生は、理科を学校の外の世界を生徒が理解する手助けとなるように教える
・先生は、科学の考えが実生活に密接に関わっていることを解説してくれる
・先生は技術的な応用を例にして、いかに理科が社会生活と密接に関係しているかを解
説してくれる
・授業で教わっている理科の考え方はよく理解できている
○ 今回調査の中学3年生の回答状況が、PISA2006における高校1年生より、10
%以上低かった項目
・私の学校では、科学に関連する職業に就くための基礎的な技能や知識を学ぶための科
目を受けることが可能である
←中学3年までは、就職に直接関係する選択科目は設定されていない
○ 今回調査の中学3年生の回答状況が、PISA2006におけるOECD平均より、
10%以上高かった項目
・科学は、私にとって身近なものである
・植物に関する生物学(に興味がある)
・酸性雨(について説明できる)
・最先端の科学にたずさわって生きていきたい
・生徒が実験室で実験を行う
・生徒は、先生の指示通りに実験を行う
・生徒は、自分たちが予想したことを実験で確かめるよう求められる
○ 今回調査の中学3年生の回答状況が、PISA2006におけるOECD平均より、
10%以上低かった項目
・健康問題を扱った新聞記事を読んで、何が科学的に問題なのかを読み取ること
・地震がひんぱんに発生する地域とそうでない地域があるのはなぜかについて説明する
こと
・病気の治療で使う抗生物質にはどのような働きがあるかを説明すること
・食品ラベルに表示されている科学的な説明を理解すること
・火星に生命体が存在するかについて、これまで自分で考えていたことが、新発見によ
りどう変わってきたかを議論すること
・酸性雨の発生の仕方に関して二つの説があった時に、そのどちらが正しいか見極める
こと
・大人になったら科学を様々な場面で役立てたい
・核廃棄物(をについて説明できる)
・私の学校では、科学に関連する職業に就くための基礎的な技能や知識を学ぶための科
目を受けることが可能である
・私の学校の理科の授業では、多くの異なる職業に就くための基礎的な技能や知識を生
徒に教えている
・私が学んでいる科目では、科学に関連する職業に就くための基礎的な技能や知識が学
べる
・私の学校の先生は、科学に関連した職業に就くための基礎的な技能や知識を教えてく
れている
・就職市場で求められている科学に関連する職業(についての情報が与えられている)
・科学に関連する職業についての情報をどこで得るか(についての情報が与えられてい
る)
・科学に関連する職業を希望する場合に生徒が取るべき手順や方法(についての情報が
与えられている)
・科学に関連する職業で働く人々を雇う雇い主や会社(についての情報が与えられてい
る)
・生徒には自分の考えを発表する機会が与えられている
・授業は、課題に対する生徒の意見を取り入れて行われる
・授業ではクラス全体でディベートしたり討論したりする
・生徒は課題についての話し合いをする
・先生は理科で習った考え方が、多くの異なる現象(例:物体の運動、似た性質を持つ
物質など)に応用できることを教えてくれる
・先生は、理科を学校の外の世界を生徒が理解する手助けとなるように教える
・先生は、科学の考えが実生活に密接に関わっていることを解説してくれる
・将来自分の就きたい仕事で役に立つから、努力して理科の科目を勉強することは大切
だ
・私は自分の役に立つとわかっているので、理科を勉強している
・理科の科目を勉強することは、将来の仕事の可能性を広げてくれるので、私にとって
やりがいがある
・私は理科の科目からたくさんのことを学んで就職に役立てたい
・理科なら、より高度な問題でも自分にはやさしい
・理科のテストでは、たいていうまく解答することができる
・理科の内容ならすぐに理解できる
・私にとって理科の内容は簡単だ
・理科なら、初めて習う内容でも簡単に理解できる
(お問い合わせ) 国立教育政策研究所教育課程研究センター基礎研究部 総括研究官 小倉 康 電話:03−6733−6862(直通) −6833(代表) |