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NIER NOW (国研の様子)

令和2年度 文教施設研究講演会の開催結果について(概要)

プログラム


13:30〜13:35 主催者挨拶
 国立教育政策研究所長 浅田 和伸

13:35〜13:50 イントロダクション
「小中一貫教育校の制度概要」
 早田 清宏 国立教育政策研究所文教施設研究センター総括研究官

13:50〜14:10 基調講演
「学校像を革新する小中一貫教育校とその計画」
 長澤 悟  国立教育政策研究所客員研究員
教育環境研究所所長,東洋大学名誉教授

14:10〜14:40 講演1(海外事例)
「共創による革新的な学習環境づくり」
 Kit Ku 氏 Hayball Associate

質疑応答・休憩

15:10〜16:10 講演2(国内事例)
「山と湖の小さな町の大きな挑戦 〜住民対話と協働による学校づくり〜」
 伏木 久始氏 信州大学 学術研究院・教育学系 教授
 峯村 均氏  信濃町立信濃小中学校 初代校長
 関口 浪男氏 株式会社エーシーエ設計 取締役副会長
 小林 義尚氏 長野県信濃町教育委員会 総務教育係長

質疑応答

16:25〜16:30 閉会挨拶
 国立教育政策研究所文教施設研究センター長  丹沢 広行

概要
 「小中一貫教育校の学校建築(教育者と建築家の対話の促進)−海外と日本の事例から−」をテーマに、令和3年2月10日(水)にオンライン配信により開催。国内外から318名の方が参加されました。
 所長挨拶、イントロダクションに続き、各講師による公演が行われました。


基調講演 長澤 悟 氏(国立教育政策研究所客員研究員,教育環境研究所所長,東洋大学名誉教授)


長澤 悟 氏 図表

 まず,小中一貫教育校の学校建築について,児童生徒が成長に応じて変化を感じられる施設・環境づくりの重要性,学年段階の区切りに対応した空間構成や異学年交流スペース,学校運営の一貫性を確保する管理諸室の在り方等,小中一貫教育校ならではの施設計画上の留意点について説明がありました。次に,新学習指導要領への対応やICTの活用など,新たな学びに対応した学校空間を小中一貫教育校の中でどのように実現させるかについて,学校施設を考え直すキーワード,六つの「コモンズ」という切り口で,写真や図面を用いながら説明がありました。最後に,川崎市立はるひ野小学校など,先進事例を挙げながら,計画例の説明がありました。


講演1 (Kit-Ku 氏(Hayball Associate))


Kit-Ku 氏 図表

 学校建設に当たり,設計者,教育者,学校を利用する子供たちといった関係者が「共創」(原文:co-creation 学校の使用者の関与を得ながら,使用者のニーズに沿って,設計内容を調整・確認しあうこと)することの意義,利点,方法について説明がありました。設計側ではなく,教育側が主導して,「共創」を進めることで,使用者に学校づくりの当事者意識が芽生え,運用時に,使用者が各室の効果的な使用方法が理解できていること,子供たちの成績や出席率などにもプラスの影響がある等の効果があることについて説明がありました。そして,「共創」の四つのプロセス「課題発見」,「ビジョン」,「共通言語」,「変化の支援」それぞれについて,Kit-Ku氏のこれまでの取組を基に,その重要性や具体的な取組方法についての説明がありました。


講演2 伏木 久始 氏 信州大学 学術研究院・教育学系 教授
峯村 均 氏  信濃町立信濃小中学校 初代校長
関口 浪男 氏 株式会社エーシーエ設計 取締役副会長
小林 義尚 氏 長野県信濃町教育委員会 総務教育係長


伏木 久始 氏   峯村 均   氏   関口 浪男 氏   小林 義尚 氏
伏木 久始 氏 峯村 均 氏 関口 浪男 氏 小林 義尚 氏

 五つの小学校と一つの中学校が統合して誕生した,町の唯一の学校である信濃町立信濃小中学校について,まずは行政の立場として小林氏から,小中一貫校をつくることとなった経緯や開校までのプロセスについて説明がありました。次に設計者の立場として関口氏より,町の人々の想いをどのように受け止め,空間を設計したかについて説明がありました。さらに,学校長の立場として峯村氏より,施設一体型の信濃町小中学校の校舎が生み出す様々な教育上や運用上の効果の可能性について,利用者の視点での説明がありました。最後に,教育学の専門家の立場として伏木氏より,複数の学校が統合する際,教職員の職務の複雑性を解消するための校務支援システムや九年間の小中一貫のカリキュラム作りなどの関わり方に関して説明がありました。


小林 義尚 氏 関口 浪男 氏
小林 義尚 氏(開校までのプロセス) 関口 浪男 氏(想いを受け止めて形に)
   
峯村 均 氏 伏木 久始 氏
峯村 均 氏(施設一体型校舎の可能性) 伏木 久始 氏(学校づくりへの関わり)

 その後,講演者四人により,設計者と地域住民が対話する中で印象に残ったエピソード,異学年を交流させる部分と必要に応じて小中の活動を分離させる部分についてどのようにゾーニングの工夫を行ったか,学校運営の中で小中学生にとってどのような教育上の効果があったか,開校九年目の現在において小中一貫教育校の成果をどのように評価しており,今後どのような姿を目指すのかについて対談が行われました。

参加者からの御意見・御感想
 参加者へのアンケートにおいて,次のような御意見,御感想をいただきました。

  • ・子供と教師の学習環境としての学校建築とカリキュラムとの連動性,探究的な学習を可能にする教室空間のあり方,「教室」概念の再構築などに関心をもち建築家との協働を模索しております。その意味では本日のシンポジウムは大変学びの多いものでした。
  • ・Kitさんのワークショップの取組や考えがとても参考になりました。こういった海外の事例や考えを聞くことで,日本にとってこれまでできていなかった事などが,検討・改善できるようになっていくとよいと感じました。
  • ・行政における基本設計,実施設計の期間を考えると,紹介のあったことをやろうと思うと,今まで以上に時間と費用がかかるので,庁内の理解がまず必要だと感じました。でも,非常に重要なことだと感じています。教員の異動のスパンが短いため,建築と教育を一致させることがうまくいかないケースがありますが,設計までに時間をかけることが重要だとわかりました。

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