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NIER NOW (国研の様子)

令和元年度国立教育政策研究所文教施設研究講演会
「教育革新に貢献する学校空間(教育者と建築家の対話の促進)
 −海外と日本の事例から−」を開催

【プログラム】
13:30〜13:35 ◆主催者挨拶 国立教育政策研究所長  中川 健朗
13:35〜14:15 ◆講演1 「革新的な学習スペースによる教育イノベーション:新しい実践を促進するための教育者と建築家のコラボレーション」
イルドフランスデジタル大学 プログラムディレクター John Augeri 氏
14:15〜14:55 ◆講演2 「建築家と教育者のコラボを通じた新たな学習空間の創造事例の紹介」
メルボルン大学 建築学部上級講師 Ben Cleveland 氏
14:55〜15:35 ◆講演3 「福井市・二つの学校づくり物語 ―至民(しみん)中・安居(あご)中の事例から―」
 設計工房顕塾 代表取締役 柳川 奈奈 氏
 福井市安居中学校 校長 牧田 秀昭 氏
 福井大学 理事・副学長 松木 健一 氏
質疑応答
15:50〜16:55 ◆パネルディスカッション 「設計過程における教育者と建築家の対話についてのディスカッション」
 パネリスト:上記各講演者
長澤 悟 氏(教育環境研究所 所長)
 モデレーター:早田 清宏 文教施設研究センター総括研究官
16:55〜17:00 ◆閉会挨拶 国立教育政策研究所文教施設研究センター長  丹沢 広行

【概要】
  • ○ 令和2年1月30日(木),「教育革新に貢献する学校空間(教育者と建築家の対話の促進)
    −海外と日本の事例から−」と題して, 令和元年度国立教育政策研究所文教施設研究講演会を開催した。会場は文部科学省第二講堂,当日の参加者は約140名であった。
  • 事例紹介A

  • ○ 所長挨拶に引き続き,各講師による講演が行われた。
    • • 講演1 イルドフランスデジタル大学 John Augeri氏
       多様な学習に対応するラーニングスペースの重要性が増しており,世界中でもホットトピックとなっているとの紹介があった。 テクノロジーの活用やゾーニングの観点から,ラーニングスペースについて体系的な事例紹介があった。設計にあたっては, 教育者のインプットが必要であり,教育者が何をするか(実践)から逆算する必要があること,また,空間の使われ方について継続的な 対話が必要であることについてお話があった。
  • 事例紹介A

    • • 講演2 メルボルン大学 Ben Cleveland 氏
       オーストラリアでは,どのような学習スペースが教育の実践を助けるかを考えた上でラーニングスペースを設けることが進みつつあると紹介があった。自主性を持って自由に学べる空間の必要性,先生と生徒又は生徒同士による対話の重要性についてお話があった。 カトリック系の38の学校について,学習環境で5つのタイプに分類し,教員や生徒による学習環境の評価を行った結果,教え方・ 学び方の選択肢が多々ある学習環境タイプが最も人気であったとお話があった。学習環境と教育学が対話をするにあたっては, 児童生徒に何を教えたいかの前に,教育理念やビジョンを先に考える必要があるとお話があった。
    事例紹介A

    • • 講演3 設計工房顕塾代表取締役 柳川 奈奈 氏,福井市安居中学校校長 牧田 秀昭 氏,
       福井大学理事・副学長 松木 健一 氏
       教員,生徒,設計者,教育委員会,教育学の専門家,地域の方々の対話による学校づくりについて,福井市至民(しみん)中学校, 安居(あご)中学校の事例(いずれとも教科センター方式を採用)を通じて紹介があった。設計者の柳川氏から,ワークショップは,設計者にとっては打合せという感覚であり, 設計者がファシリテーターとなる必要性を感じたとお話があった。また,ワークショップの運営で工夫した点は,教員や生徒等がイメージを持ち意見を 発言しやすくなるよう関連する写真を提供したこと,「どんな空間にしたいか」ではなく「各教科の特性は何か」と質問したことが挙げられるとお話があった。 教員の牧田氏からは,ワークショップへの参加を通じて,教員の当たり前(教員目線で教えていたこと)を一度疑うことにより, 「学校」は誰が何をする場所なのかを問い直すことができたとのお話があった。教育学の専門家である松木氏からは, 教員は現在抱える問題解決については話せる一方で,21世紀の学校の在り方など哲学的・本質的な問いに答えることが苦手であるが, 設計者,教員,地域,大学(教職大学院など)などの対話により,課題解決への歩みを進めている旨の紹介があった。
    事例紹介A
    柳川 奈奈氏
    事例紹介A
    牧田 秀昭氏
    事例紹介A
    松木 健一氏

  • ○ 講演後,早田文教施設研究センター総括研究官をモデレーターとしたパネルディスカッションを実施した。各講演者に加え, 教育環境研究所所長の長澤悟氏が登壇した。対話による学校づくりがうまく回り始めたきっかけ,ワークショップ参加者の本音を 引き出すための設計者側のコツ,対話による学校づくりを通じて教員や生徒にどのような変化が生じたかについて,より深い議論を行った。
     時が経てば人が入れ替わっていく学校現場において,学校づくり当初の想いを引き継ぐためには,形骸化させず, 常に今いる人達で問いかけ直すこと,対話を続ける必要があるとの議論があった。また,長寿命化が推奨される既存の学校施設においても, インテリアを見直し,教員が学校づくりに関わることで,いつからでも多様な学習に対応する環境づくりが可能であるとのお話があった。

    事例紹介A 事例紹介A 事例紹介A
    パネルディスカッションの様子

  • ○ 参加者へのアンケートにおいて,次のようなご意見,ご感想をいただいた。
    • • 建築者と教育者の立場の違いは出てくるものなので,対話でギャップをのりこえていくことが大事だと気づきました。(教育委員会関係者)
    • • これまでもミスマッチによる不幸が少なくなかったのではないかと思うので,今回のような講演会をきっかけとして, 現場でのディスカッションが増えるようなアプローチが国の機関からあると,より促進されて良いのではないか。(大学関係者)
    • • 今日の講演を聞き,明日から,自分でも学校中を歩き回ってみて事務職員の立場から自分でもできることを見つけ, 行政の力が必要な場合は,行政職員等との対話もしてみたいと思いました。
      (学校関係者)