「国立教育研究所広報第121号」(平成11年7月発行)



OECD生徒の学習到達度調査(PISA)



調査の背景
 経済協力開発機構(OECD)は、1980年代後半から、各国の教育制度や政策を様々な側面から比較する教育インディケーター事業(INES Project:Indicators of Education Systems)を進めている。その一環として学習到達度について検討する部会では新たにOECD独自にPISA(Programme for International Student Assessment)と呼ばれる国際的な学習到達度に関する調査を実施することとなった。

調査の目的
PISA調査の目的は、定期的に国際的な調査を行うことにより、生徒の学習到達度に関する政策立案に役立つ指標を開発することにある。具体的には、生徒の知識・技能・能力に関する基礎指標(Basic Indicators)、知識・技能などが社会経済的・教育的要因などとどのように関係しているかに関する状況指標(Contextual Indicators)、及び数回にわたる調査によって得られる動向指標(Trend Indicators)の3つの指標を開発する事を目指している。

調査の参加国
PISA調査には、OECD加盟国であるアメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどのほか、非加盟国のブラジル、中国、ラトビア、ロシアの33か国が参加している。

調査の概要
<調査内容>
国際的に開発された読解力、数学、理科の3分野を中心に学習到達度調査を実施する。同時に、学校の置かれている状況及び生徒の属性に関する質問紙調査も実施する。
<調査実施年>
2000年、2003年、2006年の3回にわたり調査を実施する。(2000年については読解力が中心、2003年は数学が中心、2006年は理科を中心に調査を実施。なお、それぞれ1年前の1999年、2002年、2005年には調査問題確定のための予備調査を実施。)
<調査対象>
国際的に多くの国で義務教育の修了する、15歳児を対象として調査を実施する。(日本は高等学校1年生を対象に第1回の調査は2000年7月に実施予定。)
<調査規模>
各国とも全国の学校から抽出した150校で調査を実施し約5,000名のデータを収集する。(日本は全国の全日制高等学校から150校を層化比例抽出する予定。)1999年4月〜6月に、各国約30校で予備調査を実施した。(日本は5月〜6月に予備調査を実施。)

調査の国際的実施体制
PISA調査を実施するために下記の委員会等が設けられている。
●参加国委員会(BPC:Board of Participating Countries)
:調査に参加する国の委員で構成され、調査に関わる全般的な諸問題について検討する委員会。
●執行委員会(Executive Group):BPCの議長、副議長(3名)、OECD代表から構成され、BPCに代わって緊急事項の検討等を行う。日本は副議長を務めている。
●国際調査コンソーシアム:国際的に調整を図って調査の実施を請け負う機関で、オーストラリア教育研究所(ACER)、オランダ教育測定研究所(Cito)、ベルギーのリエージュ大学、アメリカの調査会社Westatで構成される。
●技術諮問委員会(Technical Advisory Group):調査実施上の技術的な事柄について助言・指導する。
●専門家委員会(Functional Expert Group):調査の内容領域について助言・指導する。読解力、数学、理科の各領域及び学校・生徒質問紙の各委員会が設置されている。
●各国調査担当者(NPM:National Project Managers):各国の調査責任者。
●国内委員会(National Committee):各国に設けられる調査のための委員会。

日本国内の調査実施体制
国立教育研究所が、東京工業大学教育工学開発センターと連携のもとで調査を実施する。国際的な枠組み・方針をもとに、専門家の助言等を受けながら調査の準備を進めると共に、教育委員会・教育センター・学校等の関係機関の協力を得て調査を実施する。
 国立教育研究所では、所長を代表する24名からなるOECD−PISA調査プロジェクト・チームを作り、調査にあたっている。

PISA調査に関する英文情報入手先
PISA調査の概要、関係者リスト、各種委員会活動内容、会議予定、各種文書等はPISAのホームページを通して提供されている: http://www.pisa.oecd.org/

(国際研究・協力部長(OECD−PISA調査事務局長)渡辺 良)


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