「国立教育研究所広報第121号」(平成11年7月発行)
平成11年度全国教育研究所連盟総会・研究発表大会から
平成11年度の全国教育研究所連盟(全教連)(委員長 吉田 茂 国立教育研究所長)の総会・研究発表大会が6月3〜4日、岩手県花巻市で開催された。332名の参加を得て、3日は総会、共同研究の中間発表、記念講演会、教育懇談会、4日は研究発表が7分科会に分かれて開催された。
総会の主な議事は役員改選、10年度事業報告、11年度の事業計画であった。10年度の事業では、例年の事業の他に創立50周年記念事業を祝ったこと、『教育研究報告要録』がCD-ROM化されたことが事務局より報告された。10年度の収支に関しては、50周年事業の余剰金や事務費の軽減により、これまでにない額が繰越金として平成11年度予算に入れられた。11年度の事業では、各大会の開催運営費を2万円増額することが事務局より提案され、承認された。
新規加盟が5機関あったが、退会も5機関あったため、加盟機関数は昨年度と同数の279機関である。
吉田委員長(開会式・挨拶)
1 『教育研究報告要録』のCD-ROMについて
全教連加盟機関等が刊行する研究紀要等に掲載している研究論文や資料を国立教育研究所の文献情報研究室が収集し、データベースにしている。従来はこれを文献情報研究室の協力を得て、『教育研究報告要録』という本にして全教連の事務局から毎年各加盟機関へ送付してきたが、平成10年度からは情報化に合わせCD-ROMで提供することにした。これによって、情報を今までよりはやく提供できる、検索が容易になる、検索結果を編集することができる、作成経費を安くあげることができるといった利点が得られる。各機関で大いに活用していただきたい。
2 共同研究の中間発表について
平成10年度から取り組んでいる二つの共同研究の中間発表が行われた。
一つは、「『生きる力』をはぐくむ学校教育の創造」で、近畿地区が担当し兵庫県立教育研修所が事務局になって研究を推進している。この共同研究は、これまでの共同研究の成果を踏まえて、「現代的課題部会」「在り方生き方部会」「学習指導部会」の三つの部会を設定し、研究を進めている。平成10年度は第1回全国研究集会を大阪府教育センターで、第2回全国研究集会を神戸市総合教育センターで開催した。兵庫県立教育研修所の吉田和志主任指導主事から詳しい報告があった。
もう一つは、「『総合的な学習の時間』を効果的に活用した環境教育の在り方」で、関東地区が担当し国立教育研究所が事務局になって推進している共同研究である。この共同研究は、学校における環境教育の現状と課題を整理し、その課題克服のための新しい視点を提示するとともに、「総合的な学習の時間」を効果的に活用した環境教育の開発を行う。平成10年度には第1回全国研究集会を東京のアルカディア市ヶ谷で開催した。研究の内容と経過報告を国立教育研究所の下野洋科学教育研究センター長が行った。
大隅岩手県教育委員会教育長(開会式・祝辞)
3 記念講演
本大会の担当機関である岩手県立総合教育センターの企画で、宮澤賢治研究家の板谷栄城氏に「宮澤賢治の光と音の交響曲」と題して講演をしていただいた。板谷氏自ら弾くバイオリンの音色のすばらしさと、氏の伴奏で賢治の詩を朗読された岩手県立総合教育センターの松川邦夫部長のパーフォーマンスが印象的だった。
4 研究発表
研究発表は次の7つの分科会に分かれて、合計で31の発表があった。
第1分科会は「教科教育」で5つの発表、第2分科会は「学習指導」で5つの発表、第3分科会は「総合的学習」で5つの発表、第4分科会は「生徒指導等」で4つの発表、第5分科会は「情報教育」で4つの発表、第6分科会は「調査研究等」で5つの発表、第7分科会は「教員研修等」で3つの発表。
第3分科会の「総合的学習」に最も関心が集まっていた。国立教育研究所からは2名が発表した。下野 洋科学教育研究センター長が「科学的リテラシーの育成と環境学習の進め方」と題して、堀口秀嗣教育ソフト開発研究室長が「FCAIファミリーと教員研修」と題して発表した。
(企画調整部連絡協力室長 河合 久)