「国立教育研究所広報第110号」(平成9年9月発行)
「個性が育つ」授業の創造
上智大学 教授 加藤幸次
「個性化教育」について検討する研究会に出て、驚いたことがある。と言うのは、集まった先生方は従来の授業のあり方を変えねばならないという意識が全くなく、従来の授業の中で「どのように個性の発現を見とり、育てるべきか」ということに先生方の関心が集中したからである。すなわち、先生方の意識の中には、「従来から個性に着目し、育ててきた」のであって、ただ今まで「見落としてきた」にすぎない、という考え方があるのである。
誰にとっても、自分が従来行ってきたことを批判されることは気持ちの良いものではない。しかし、今日求められていることは「個性が育つ」授業を新しく創り出さねばならないと意識することである。率直に言えば、従来の授業は一斉的にして、画一的であって、「個性は育たない」と言い切っておきたい。
「個性が育つ」授業とは二つのことを意味する。一つは子ども一人ひとりが「自分が得意とする分野や領域」をつくることができる授業である。他の一つは、やはり、一人ひとりの子どもが「自分が得意とする追求の仕方や表現の仕方」を身につけることができる授業である。そのためには、授業は学習課題と学習方法について子どもの「選択」を認めるものでなくてはならない。
従来の授業は学級全員が同じ学習課題に挑み、しかも、学級全員で同じ解き方で解いて行くというものである。そこでは「個性が育っていない」と認識することがまず第一歩である。
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