ボランティア・コーディネーターの役割と期待     興 梠   寛



1.ボランティア・コーディネーターとはどのようなスタッフか
(1)ボランティア・コーディネーターの活動領域
 ボランティア・コーディネーターは「ボランティア活動を行いたい」という意志を持つ人や社会組織のニーズ(ボランティア・ニーズ)と、「ボランティア活動の支援を求めたい」人や社会組織のニーズ(社会ニーズ)の間にあって、それぞれのニーズが充足されるために必要な支援等を行う“触媒”としての役割を果たす専門的スタッフである。

【図−1】ボランティア・コーディネーターの活動



      ボランティア  ボランティア   社 会
        ニーズ   コーディネーター ニーズ


        <自己実現> <触媒> <社会実現>


 かつては、ボランティア・コーディネーターの活動のフィールドは、ボランティア・センターなどのボランティア活動推進機関(中間機関・インターミディアリー)の専門職員が行う活動領域としてのみ理解されていた。しかしながら、現在ではそれらの2つのニーズを満たすために、ボランティア活動を推進・支援する領域の拡大にともなって、その活動のステージはつぎの3つの活動領域【図ー2】に広がっていると考えられるようになっている。

【図−2】ボランティア・コーディネーションの領域




       ア.学習・情報支援活動  ウ. 受け入れ支援活動
           の領域          の領域




               イ.中間支援活動
                  の領域




                      *斜線は複合的コーディネーション領域


 上図をもとに、ボランティア活動のコーディネーション領域については、つぎのように考えることができる。

ア.学習・情報支援活動の領域
 学校教育や社会教育において学習した成果を、個人のもつ潜在的な能力や人格、生活経験または職業において得た知識や技術・経験などを、ボランティア活動をとおして社会に還元し、かつ役立てるために必要となるコーディネーション領域。

イ.中間支援活動の領域
 ボランティア活動の普及啓発や情報収集と提供、相談助言、活動に必要な訓練研修プログラムの提供,活動者間のネットワーキング活動などの支援を目的に組織された、各種ボランティア・センターなどの専門推進機関において行われるコーディネーション領域。

ウ.受け入れ支援活動の領域
 人びとや社会組織等が、自己の実現を目的としたり、地域社会の公共の利益や、地球社会における民族や地域・国家などを越える普遍的な利益を追求し、共生の社会の実現のために活動するための、ボランティア参加の場を開き効果的な活動環境を提供するために必要なコーディネーション領域。
 以上の領域をさらに整理すれば、つぎの【図ー3】のように表記することができる。

【図−1】コーディネーションのフィールド

領  域 支援内容 支援機関
(A)学習・情報支援活動の領域 ボランティア活動の動機付けとなる啓発活動、学習の場や情報提供を行う窓口や機関・施設等 社会教育機関・施設、学教育機関、研究機関、生涯学習推進機関・施設、民間社会教育団体、企業や労働団体等の社会貢献推進窓口
地域の各種学習グループ他
(B)中間支援活動の領域 ボランティア活動を行いい人・組織と、活動を受け入れたい人・組織・施設等の間にあって、両者を支援しマッチング(需給調整)することを目的とした専門推進機関 ボランティアセンターやNPO・市民活動サポートセンター、生涯学習センターや公民館等の社会教育機関・施設のボランティア相談窓口他
(C)受け入れ支援活動の領域 ボランティア活動を行いい人・組織を受け入れ、そのエネルギーを公益目的のために活かす人・組織・施設等 生涯学習・社会教育機関施設、学校教育機関や施設社会福祉機関や施設、社会教育団体、ボランティア・NPO団体 、地縁組織、個人他

(2)コーディネーション領域別に必要とされる専門性とパートナーシップ
 ボランティア・コーディネーションについては、それら各活動領域を画一的に考えることはできない。それぞれは、個別で独自の専門領域を持っている。と同時に、コーディネーションの現場においては、当然のように複合的な目的をもって活動している。
 したがって、それらの活動領域のなかには、組織・機関の目的や事業内容によって、相互に重複した“複合的コーディネーション機能”を持つ例も少なくない。
 たとえば、地域社会をベースとした「公民館」や「生涯学習センター」などは、それぞれの講座等で学習した人びとに対し、地域で活躍できる多様なボランティア情報を提供するとともに、他方では、その施設そのものの活性化のために必要な業務にたいして、ボランティアの協力を求め、かつ受け入れを行っている。それは“学習支援”のためのコーディネーションと、“受け入れ支援”のためのコーディネーションとが複合的に行われている事例でもある。
 いずれにしても、そのどの領域に重きをおいてコーディネーションが行われるかは、組織機関の設立目的、事業内容、社会的役割によって異なっている。
 さらには、地域全体のそれぞれの機関が相互の人的交流や情報交換を行い、また共同事業などを計画したり、横断的な“推進協議会”などのネットワーク機関を組織することによって、各種の行政機関や民間機関相互のパートナーシップの絆を結ぶことも期待される。

(3)コーディネーターはどのような活動をするのか
 ボランティア・コーディネーターは、地域社会の多様な世代の人びとのもつ、よりよい自己との出会いや社会との出会いという“ボランティア・ニーズ”【図ー4】を満たすための“触媒”としての役割を果たす。

【図−4】ボランティア・ニーズ





         学習成果の             自己の理解と
         応用と発展             よりよい人生の発見
     <学習成果の発展ニーズ> ボランティア   <自己実現ニーズ>
                  コーディネーター




                生活課題・社会問題の
                  学習理解と発見
                <課題の発見ニーズ>



 ボランティア・コーディネーターの活動は、概ねつぎの3つのコーディネーション・ニーズに対応することになる。

ア.学習成果の発展ニーズ
 学校教育や社会教育などで学習した成果を応用し活用するためにボランティア活動を行いたい、というニーズに対応する。

イ.自己実現ニーズ
 自己を見つめたり、生き甲斐の追求やよりよい自分生き方の発見のためにボランティア活動をを行いたい、というニーズに対応する。

ウ.課題の発見ニーズ
 地域社会を学習のフィールドにして、生活課題への理解を深めたり社会問題の発見のためにボランティア活動を行いたい、というニーズに対応する。
 以上の多様なニーズに応えるために、コーディネーターは、つぎの【図ー5】ような諸サービス活動を行うことになる。

【図−5】ボランティア・コーディネーターのサービス内容

サービスの分類 サービスの内容
@情報サービス(情報の収集と提供) ボランティア活動の参加プログラム情報、活動団体や受け 入れ先に関する情報、支援センターや援助財団の情報、活動の成果を高めるために必要な学習情報などを、多様なメディアを活用して提供する。
Aアドバイザリー・サービス(相談助言活動) 活動を行いたい人や団体、ボランティアを受け入れたいや団体・施設のために、効果的な活動方法や受け入れ方などについて電話や対面などで相談助言にあたる。
Bコーディネーション・サービス(需給調整活動) 活動を行いたい人や団体のニーズと、ボランティアを受入れたい人や団体・施設のニーズを的確に掌握し、よりいマッチングによってそれを社会の力に還元させる。
C学習プログラム・サービス(学習支援活動) ボランティア活動をはじめるために必要な基礎的講座、フィールド学習、活動を高めるための技術や地域、組織運営のためのマネージメント・トレーニング等を企画し提供する。
D活動プログラム・サービス(活動メニューの開発と提供活動) 人びとの参加のきっかけづくりや、活動領域の拡大のために、世代や職業、ライフスタイイルなどに合わせた実践活動プログラムを開発し提供する。
Eネットワーキング・サービス(活動者・組織間の連携促進活動) 活動領域を同じくする活動者や団体、異なる領域の活動や団体の交流と相互学習・協力を促進し、その成果を個 の活動の発展と社会改革へと還元させる。
F拠点サービス(活動拠点や資・機材の提供活動) 活動者のために利用しやすい拠点を整備し、事務局、会議室、資料や機材などを提供する。
Gマネージメント・サービス(活動者の組織運営支援活動) 活動に参加する人びとの参加意欲を満たし、活動の目的を達成し問題解決へ導くために必要な、効果的な組織運営,人材活用、会計処理、財源の開発、広報啓発などについて助言したり学習の場を提供する。
H研究情報サービス(調査研究活動) ボランティア活動の実体や社会背景等を調査し、その社会的動向を分析して活動者や関係諸機関に提供し、社会に提言する。
Iアドボカシー・サービス(社会提案への支援活動) ボランティアが、活動をとおして得た成果や問題意識を行政や関係諸機関に政策提案したり、社会に提言したりするために必要な情報、資料などを提供するなど、ボランティ
活動の成果を社会に還元するために必要な支援を行う。



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求められる資質

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