トップページに戻る
Tuning Japan National Centre 国立教育政策研究所は、国際チューニング・アカデミーの依頼を受けて、日本のチューニング情報拠点としての役割を担っています。 NIER
チューニングとは何か チューニング情報拠点の設置について 国立教育政策研究所におけるチューニングの取組 大学等におけるチューニングの取組 資料・過去のイベント  

国立教育政策研究所におけるチューニングの取組

          
 

チューニングによる大学教育のグローバル質保証−テスト問題バンクの取組(Tuningテスト問題バンク)

リーフレット

 Tuningテスト問題バンクは、大学教員がテスト問題を共同で作成するとともに、作成したテスト問題を広く共有することを通して、 コンピテンスと学習成果についての対話を喚起し、共通理解を形成することを目指す取組です。さらに、教育改善に資する学習成果アセスメント の在り方と情報の取扱いについて検討を深め、具体的な方法を開発する取組です。

 Tuningテスト問題バンクは、 国立教育政策研究所が平成20〜24年度に取り組んだ 経済協力開発機構による高等教育における学習成果調査(OECD-AHELO)フィージビリティ・スタディ の成果と課題に基づいて着想しました。平成25〜26年度の立ち上げ期間を経て、平成27年度からは 国際研究・協力事業「チューニング情報拠点(Tuning National Centre)」の取組の一環として展開いたします。


OECD-AHELOフィージビリティ・スタディの成果と課題

 OECD-AHELOフィージビリティ・スタディ(2008〜2012年)は、大学教育のアウトカムを世界共通のテストを用いて測定することが可能であるかどうかを検証 するための調査研究です。経済協力開発機構によって呼びかけられ、17か国、248大学、学生約23,000人の参加の下に、「一般的技能」「経済学」「工学」分野で実施されました。 日本は工学分野(12大学、学生504人)で参加しましたので、ここでは工学分野の取組の成果と課題について整理します。

§§§

 OECD-AHELOフィージビリティ・スタディの取組より、工学教育の文脈においては、大学教育を通してどのような知識・能力の習得が期待されるかについて 国際的な共通認識が醸成されてきているため、更なる検討と経験を重ねれば、妥当性と信頼性のある国際的な学習成果アセスメントを実施することは可能であるという 結論が導かれました。
 また、学問分野の専門家が国内外より集い、コンピテンス枠組みの構築、テスト問題と採点ルーブリックの作成、テスト実施と採点といった一連の活動に取り組み、 経験を共有できたこと自体が、大学教育のアウトカムについての共通理解を構築する上で、極めて重要なプロセスであったことが確認されました。 工学教育を通してどのようなコンピテンスの獲得が期待されており、それを具体的にどのような学習成果に落とし込むことで測定することが可能になり、 採点ルーブリックをどのように規定することで学生の解答を同等の観点と水準から採点することができるのか。国際的な専門家チームがこれらの点について一つ一つ熟慮し、 コンピテンス枠組みに関する実質的な共通理解に至ることができたことは、前例のない貴重な体験であったと言えるでしょう。
 採点の作業を通して明らかになったのは、学問分野の専門家がある課題の採点のロジックについて一度合意することができれば、その共通理解は他の課題にも適用され、 文脈を超えて転移することでした。したがって、国際的な学習成果アセスメントに参画した専門家が自国に戻り、それぞれの大学の文脈の中で、国際的な学習成果アセスメント への参画を通して共有するようになったコンピテンス枠組みを学位プログラムの設計・実施・評価・改善(PDCA)に取り組む際の指針として活用していくことで、 大学教育の国際的通用性が徐々に高まっていくことが期待されます。国際的な学習成果アセスメントは、教育改善のエージェントである大学教員の学問観・教育観に直接働きかけ、 「大学教育のアウトカム」の範囲と水準に係るエキスパート・ジャッジメントを鍛えるための極めて有効なアプローチであると言えるでしょう。

§§§

 このように、国際的な学習成果アセスメントは、大学教育の質保証に不可欠な要件であるコンピテンス枠組みについての共通理解を確立していくための有望なアプローチの一つと言えます。 しかしながら、OECD-AHELOフィージビリティ・スタディの経験より、国際的な学習成果アセスメントには多大な労力と経費がかかること、それに勝るベネフィットを大学に提供できるようになるには、 更なる検討と経験の蓄積が必要であることも明らかになりました。
 大学は、国際的な学習成果アセスメントに何を期待するのか。それは、自校の大学教育のアウトカムの水準とコンピテンス領域別の強み・弱みを客観的に捉えた、 教育改善に資する教育情報を獲得することであることが明らかになりました。例えば、図1に示すように、自校(学位プログラム)の学生全体としてのアウトカムの水準をレーダーグラフの輪の大きさとして、コンピテンス領域別の強み・弱みをレーダーグラフの形(凹凸)として、国内的・国際的ベンチマーク・グループとの対比において把握することができれば、学位プログラムのカリキュラムや教育方法の在り方等、教育改善の方策に関する方向性を導くことが可能です。また、国内的・国際的ベンチマーク・グループの中で、教育のグッドプラクティス等に関する情報を交換することができれば、教育改善に向けた更に具体的なヒントを得ることもできるでしょう。

 
図1.大学のコンピテンス・プロフィール(架空データ)

 

 学生の学習実態や大学の教育環境に関する背景情報調査の結果と、国際的な学習成果アセスメントの結果を組み合わせて分析することで、 教育改善に資する教育情報を導くこともできます。OECD-AHELOフィージビリティ・スタディでは、「一般的技能」「経済学」「工学」分野のテストに加えて、 「背景情報調査」も実施されましたが、そこでは例えば、次のような情報が導かれました。日本の大学グループの学生は、「専攻に関係のないアルバイト」 に費やす時間が一週間で10.5時間と、A国やB国に比べて長時間に及びますが(図2)、「専攻に関係のないアルバイト」に費やす時間が長い学生ほど、 「テスト得点」が悪いことが明らかになりました(図3)。これらの情報を勘案すると、大学は、学生アルバイトについての考え方を検討する必要があるのかもしれません。

 
図2.典型的な一週間(7日)に学生が諸活動に費やす時間(平均値)
 
図3.「専攻に関係ないアルバイト」に費やす時間とテスト得点の関係

 

 このように、国内的・国際的にベンチマークした大学のコンピテンス・プロフィールや、背景情報とアウトカムとの関係に関する情報を提供する学習成果アセスメントは、 教育改善に資する重要な教育情報を提供し得ることが分かります。しかしながら、こうした教育情報を大学にフィードバックできるようになるには、それに焦点化した綿密な準備が必要です。 コンピテンス領域ごとに、妥当性と信頼性が検証されたテスト問題を蓄積し、それぞれのテスト問題の難易度(平均点や得点の分布)を実践データに基づいて把握する必要があります。 こうした一連の作業を持続可能な形で継続していくための条件を整備することが、AHELO事業に求められる次の重要なステップであると言えます。 さらに、学生データをどのように取り扱い、誰に対してどのようなフィードバックを提供するのかについて、大学と事前に十分に協議して、共通理解に基づいて取組を進める必要があります。 学習成果アセスメントの活用について議論を深め、大学の教育改善に資する在り方に向けて道筋をたてることも、AHELO事業の極めて重要な課題であると言えます。 「テスト問題バンク」は、こうしたOECD-AHELOフィージビリティ・スタディの成果と課題を踏まえて、大学教員がテスト問題を共同で作成して共有することができるシステムを構築することによって、 コンピテンス枠組みについての共通理解を確立するとともに、教育改善に資する学習成果アセスメントの活用の在り方について検討を深め、具体的な方法の開発を目指します。

 


Tuningテスト問題バンク-機械工学分野(公開サイト)

リーフレット
委員名簿        平成26年度  平成27年度
委員名簿 (拠点別)          平成27年度  平成28年度
運営委員会       平成26年度  平成27年度  平成28年度
運用規則
著作権について
会員規約


 国立教育政策研究所では、OECD-AHELOフィージビリティ・スタディの成果と課題を踏まえて、「Tuningテスト問題バンク」の取組を構想し、平成26年度より「機械工学分野」 でモデル事業を展開しています。 「Tuningテスト問題バンク-機械工学分野」では、

  • 会員制サイトの中でテスト問題を共有します。
  • 本取組の趣旨に賛同された大学関係者には、会員として登録していただき、テスト問題の作成、実施と採点、採点結果の報告・テスト問題の改善に御協力いただきます。そうすることで、大学教育のアウトカムに関する共通理解を広く醸成していくことを目指します。
  • 会員から御報告いただいた採点結果に基づいて、事務局からフィードバックを行います。そうすることで、教育改善に資する学習成果アセスメントの在り方について議論を喚起し、実績を蓄積していくことを目指します。
  • こうした取組を通して、妥当性と信頼性が検証されたテスト問題を十分に蓄積できた時点で、テスト問題の一斉実施も目指します。 さらに、「Tuningテスト問題バンク-機械工学分野」は、OECD-AHELOフィージビリティ・スタディ(工学分野)に共同で取り組んだオーストラリアやカナダ・オンタリオ州の大学関係者等とも連携して進めます。そうすることで、アウトカムに関する国際的合意形成も目指します。(CLOCE:Cross-border Learning Outcomes Collaboration in Engineering)
    • CLOCE-J事務局:National Institute for Educational Policy Research, NIER
    • CLOCE-A事務局:Australian Council for Educational Research , ACER
    • CLOCE-C事務局:Higher Education Quality Council of Ontario, HEQCO
 
図4. Tuningテスト問題バンクの取組


member

 

活動計画と成果

《平成26年度の計画》

  • 研究チームの結成
  • 「機械工学分野のコンピテンス枠組み」について合意形成
  • 「テスト問題作成の手順」について合意形成
  • 典型的なテスト問題・採点基準の作成
  • 小規模実査に基づくテスト問題の妥当性検証
  • テスト問題の修正・確定・英訳

《成果物》

 

《平成27年度の計画》

  • 地域拠点の形成:平成26年度メンバーが中核メンバーとなって、新たな会員をサポートする(テスト問題作成ワークショップ・採点ワークショップ)
  • 国際連携を強化する
  • 大学へのフィードバックへの在り方について検討する

 

《平成28年度以降の計画》

  • 妥当性と信頼性が検証されたテスト問題が十分に蓄積できていると判断することができれば、テスト問題を一斉に実施して、フィードバックを行う。
  • テスト問題バンクの取組を通して形成されたコンピテンス枠組みに関する共通理解に基づいて、期待されるアウトカムを修得させるための学位プログラムや科目・モジュールの在り方について検討する。

工学分野におけるコンピテンス枠組み

 工学分野では、技術者の国境を越えた移動が活発化する中で、技術者に求められる力量、そしてその基盤となる技術者教育の質の国際的同調性を確保することを目指す動きが、 1980年代末ごろから顕在化してきました。例えば、技術者教育の質的同等性を国境を越えて相互に承認し合う協定、いわゆるワシントン・アコードがアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、 ニュージーランド、アイルランドの6か国を代表する技術者教育認定団体による調印によって1989年に発足し、日本技術者教育認定協会(JABEE)(1999年発足)も2005年から加盟しています。 このことによって、JABEE認定プログラムを卒業した学生は、他の協定国の認定プログラムの卒業生と同等の資格を認められ、協定国において技術者として活動しやすくなりました。
 同様に欧州では、欧州技術者教育適確認定ネットワーク(ENAEE)が認証する7つの団体(ドイツ、フランス、イギリス、アイルランド、ポルトガル、ロシア、トルコ、ルーマニア、イタリアを 代表するアクレディテーション団体)が適格認定を行うEUR-ACE制度が2004年に発足し、欧州高等教育圏内の技術者教育プログラムの質保証を行っています。

 工学分野におけるこれらの実績を踏まえて、経済協力開発機構による高等教育における学習成果調査(OECD-AHELO)フィージビリティ・スタディでは、二つの枠組みの基準の共通点 を抽出する形で、チューニングの手法を援用しながら、 「Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組み」が定義されました(表1参照)。

表1.Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組み(既存枠組みとの関係)

 なお、OECD-AHELOフィージビリティ・スタディでは、Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組みの5つのコンピテンス領域を、図5の通り概念化しています。 すなわち、「工学的分析」「工学デザイン」「工学実践」の下位コンピテンスから構成される「工学プロセス」のコンピテンスは、「工学基礎・工学専門」及び 「工学ジェネリックスキル」のコンピテンスに下支えされる「高次」のコンピテンスと想定しています。そして、「工学基礎・工学専門」の学習成果は主に多肢選択式問題、 「工学プロセス」「工学ジェネリックスキル」の学習成果は主に記述式問題で測定することを目指しています。 OECD-AHELOフィージビリティ・スタディのテスト問題の一部は、AHELOフィージビリティ・スタディ報告書(OECD, 2012)に公表されています。

 

機械工学分野のコンピテンス枠組み

 Tuningテスト問題バンクでは、OECD-AHELOフィージビリティ・スタディで作成された「Tuning-AHELO工学分野におけるコンピテンス枠組み」のうち、 特に「機械工学分野」の枠組みを採用し、日本の機械工学分野の教育内容の区分を踏まえつつ、テスト問題を作成しています。

テスト問題作成の手順(概要)

 テスト問題バンク研究会では、テスト問題作成ワーキンググループが中心となって、問題作成に取り組んでいます。
 テスト問題は、多肢選択式問題と記述式問題の両方から構成されます。
 多肢選択式問題では、「工学基礎・工学専門」コンピテンスを中心に、基礎的な知識・能力の習得を問います。日本の機械工学分野の教育内容の区分に基づいて、 偏りが生じないように配慮しながら問題を作成しています。

・典型的なテスト問題・採点基準


お問合せ先: