平成30年度 国立教育政策研究所 教育改革国際シンポジウム(概要)

   【プログラム】


13:30〜13:35 ◆主催者挨拶 国立教育政策研究所長 常盤 豊
13:35〜13:55 ◆講演1 「21世紀の教育: 教師の資質向上と創造的な学習・働き方に向けたエコロジー」
シンガポール国立教育学院 教授 Tan Oon Seng 氏
13:55〜14:15 ◆講演2 「学習空間とデザイン」
シンガポール国立教育学院 教授 Tan Oon Seng 氏
質疑応答
14:30〜14:50 ◆講演3 「日本の学校における教育活動の現状と課題」
シンガポール国立教育学院 教授 Tan Oon Seng 氏
14:50〜15:10 ◆講演4 「個から集団へ 教員スペースでの取り組みと事例について」
シンガポール国立教育学院 教授 Tan Oon Seng 氏
質疑応答・休憩
15:40〜16:55 ◆パネル
 ディスカッション
「教師が創造性を持ち,イノベーティブに働くためには,学校の施設・設備はどうあるべきか」
 パネリスト:上記各講演者
  Kenn Fisher 氏(メルボルン大学 准教授)
  Alastair Blyth 氏(ウエストミンスター大学上級講師)
 モデレーター:森 政之 文教施設研究センター長
16:55〜17:00 ◆閉会挨拶 国立教育政策研究所次長 口 努

Tan Oon Seng 氏
シンガポール国立教育学院
教授

Ravi Chandran 氏
シンガポール国立大学
教育工学センター長

大杉 昭英 氏
独立行政法人教職員支援機構
次世代教育推進センター長

小泉 治 氏
株式会社日本設計 第3建築設計群
副群長 チーフ・アーキテクト


【概要】

◯ 平成31年1月31日(水)、「学びのイノベーションに向けた創造的で働きやすい学校空間−シンガポールと日本の事例から−」と題して、平成30年度国立教育政策研究所教育改革国際シンポジウムを開催した。会場は文部科学省3階講堂、当日の参加者は約 220 名であった。


◯ 所長挨拶に引き続き、各講師による講演が行われた。
・講演1・・・シンガポール国立教育学院教授 Tan Oon Seng 氏
 21世紀の学習者は、主体的な問題解決、関係構築、国際協力、生涯学習を中心とした学習を行う。それに伴い教員の役割も、ファシリテーター、環境設計者、新たなパラダイムの推進者へと変化する必要がある。また、それを支える学校施設としては、学習を促進すること、アクセスが容易であること、調節可能であること等が求められる。新しい時代の学習は、多元的な視点で、真正性を有し、対話を行うことが重要であり、そのためには、子供、教師に時間を与えることが重要である。


・講演2・・・シンガポール国立大学教育工学センター長 Ravi Chandran 氏
 ICTを活用したアクティブ・ラーニングにより、学習者は事前にウェブ上で多様なコンテンツが学習可能となり、教室ではディスカッションや実践的な課題を扱うことが中心となる。これに対応するため、従来の教室の空間設計を再考する必要がある。ただし、コストのかかる高度なICTを導入するのではなく、ホワイトボード・回転椅子・電源など、小さな変化でも大きな学習効果を生むことは十分に可能である。オープンな非公式な空間、カラフルな家具等を整備することが大きな役割を果たす。


・講演3・・・独立行政法人 大杉 昭英 氏
 教員の年齢構成を見ると、ベテランと若手が多く、若手を指導する中堅が少ない。研修等により若手の指導体制を整えることが重要となっている。愛媛大学教職大学院の例のように、大学・教育センター・学校を隣接させ、協働連携体制を構築することにより、円滑な指導・相談を行うことが可能となる。


・講演4・・・株式会社日本設計 小泉 治 氏
 ICT活用、PBL導入等、授業の在り方を見直すことで必要な空間も変わる。教師の働き方をサポートするためには、例えば教師コーナーや交流スペース等、教師のニーズに応じた空間設計が必要である。今後、教師の働き方を見直していく上では、個人の働きやすさ、教員間のコミュニケーション、学校と地域の連携に配慮した空間づくりが求められている。


◯ 講演後、森文教施設研究センター長をモデレーターとしたパネルディスカッションを実施した。
登壇者は各講演者に加え、以下の2名が登壇し、冒頭にショートプレゼンテーションを行った。

・ショートプレゼン1・・・メルボルン大学准教授 Kenn Fisher 氏
 2010 年代以降に生まれたα世代には、より創造的で体験的な学習が求められている。日本、アメリカ、オーストラリア、様々な創造的学習環境の事例があり、それらはオープンプランを主体とし、バイオフィリックデザイン(自然を採り入れたデザイン)である。
・ショートプレゼン2・・・ウエストミンスター大学上級講師 Alastair Blyth 氏
 21世紀の学習環境は提供主体から学習主体へと変化しており、その教育システムは学習者の創造性、協調性、好奇心等の成長を助けることが期待されている。分野横断的なプロジェクト型学習等、新しいアプローチに対応した空間作りが必要である。それらのニーズを捉えるためには、学校利用者の声を聞く必要があり、OECDでは学校利用者調査を作成した。このようなツールを活用して、学校施設の変革が進められることが期待される。


Kenn Fisher 氏
メルボルン大学 准教授
Alastair Blyth 氏
ウエストミンスター大学 上級講師

・パネルディスカッション・・・各登壇者の講演内容を踏まえ、以下の3つの課題を提示。
それぞれの課題について、それぞれの立場から意見をいただき、また会場からの質問も交えながら、議論を深めた。
 1)教師の役割の変化
 2)教師がより良い学習環境を作り出すにはどうすればよいか
 3)学校のリーダーや政策立案者は教師にどのような支援を提供できるか
 教師の役割は、各教科の知識の伝達も必要であるが、同時に主体的な学習を促すファシリテーターとしての役割が重要となってくる。そのような役割を果たすためには、児童生徒とともに教師にも必要な時間・場所を提供し、地域・保護者との協力も含め、効果的に連携・協働できる場を作ることが必要である。