第5章 数学科 数学V

 

1.目標および内容

1.目標

 「数学V」は,特に数学を必要とする方面に進もうとする生徒および数学に深い関心を持つ生徒に対して,「数学U」に引き続き,数学科の目標をさらに高い程度において達成しようとする科目であって,主として次のことを目標とする。

 「数学V」を5単位として履修させる場合には,上記の目標のすべてにわたって指導を行うことが必要である。「数学V」を3単位として履修させる場合には,上記の目標のうち,確率および統計に関するものは除いて指導する。

2.内容

    (1) 数学的内容と中心概念との関係は「数学U」の場合と同じである。

    (2) 「数学V」を5単位として指導する場合は,次にあげる内容のすべてにわたって指導する。「数学V」 を3単位として指導する場合には,次にあげる内容のうちd順列と組合せ,およびe確率と統計を除く。

    (3) 中心概念の欄では,新たに取り上げられるものとともに,「数学T」,「数学U」で指導したものも,かっこの中に付記しておいた。後者についても機会あるごとに指導することが必要である。

    数学的内容

      a 数列と級数

       等差数列とその和

       等比数列とその和

       その他の数列

       数列の極限

       無限等比級数

      b 微分

       微分係数・導函数およびその応用

       微分の計算

       三角函数の微分

      c 積分

       極限としての面積・体積

       定積分の意味と計算,およびその応用

      d 順列と組合せ

       順列・組合せ

       二項定理

      e 確率と統計

       確率の意味

       確率の乗法定理・加法定理

       二項分布

       推測統計

     

      中心概念

      a 概念を記号で表わすこと。

       操作の記号化

       (記号・文字による一般的表現,文字式,式の形,記号と対象との対応)

      b 概念・法則などを拡張したり,一般化したりすること。

       (拡脹の原理)

      c 演繹的な推論によって知識を体系だてること。

       数学的帰納法

       (公理・定義,定理・命題,証明,必要条件・十分条件・同値関係)

      d 函数の大域的な性質や局所的な性質をとらえること。

       (連続的変化,極限,函数値の増減,周期性,極大・極小)

      e 統計的な事象を量的にとらえること。

      f 極限によって量をとらえること。

      g 式や図形について不変性を見いだすこと。

      h 解析的方法と図形的方法との関連。

      (函数のグラフ,曲線を表わす方程式)

 

2.内容の説明

数 学 的 内 容

 「数学V」は,微積分および確率統計を主要な内容とした科目で,これらを応用している科学的な方面に進む場合の基本を作ることがねらいであるが,その取扱の程度には,高等学校の生徒に適した扱いが考慮されなければならない。微積分や統計・確率について,厳密な論理で進めていくことは,生徒にとって困難であり,適当ではない。極限に関する事項などは直観的に扱い実際的な応用とのつながりを主体として指導し,平易な内容をある程度の習熟をもって使いこなすことをねらいとするのが適当である。以下にあげる内容は,上記のような考慮から,平易な内容を主体として選んだものである。生徒の能力から考えて,可能であれば,なおこれに応用の実例や,応用面の広い内容を付加することもあってよい。

 

a 数列および級数

 自然数に対応する函数として数列をとらえ,その値の変化の様子を式やその極限の考察から明かにする。簡単な場合に,その和を求めることも扱う。

    (1) 一般項の概念を朋らかにし,等差数列・等比数列を扱う。

    (2) 等差数列・等比数列の和の公式や,その応用を扱う。

    (3) その他の数列については,Σn2,Σn3の程度の簡単な数列の和の公式を導くことを扱う。

    (4) 上記に関連して数学的帰納法を扱う。

    注1.数学的帰納法は,必ずしもこのように扱わなくともよい。たとえば,二項定理などとの関係で指導する場合もあってよい。

     2.「数学V」を3単位として課す場合には,数列に関連して二項定理を扱う。

    (5) 具体的な数列について,番号が限りなく大きくなるとき,項の値がどのように変化するかを調べ,収束・発散の意味を明らかにする。実際に扱うのは,{1/},{rn}などで極限の存在を認める程度とする。

    (6) 無限等比級数について,その収束・発散を扱い,収束条件を明らかにする。

    (7) 無限小数の意味を明らかにし,循環小数と有理数との関係を扱う。

    用語と記号

     数列 項 第n項 一般項 等差数列 公差 等比数列 公比 無限数列 収束 発散無限等比級数 (無限)級数 循環小数 純循環小数 混循環小数 無限小数 an Σ 

     

b 微分

 「数学U」の変化率を一般化して微分係数や導函数の概念を明確にし,有理整函数・簡単な有理分数函数および無理函数・三角函数の範囲での,形式的な微分の計算やその応用に習熟させる。

    (1) 微分係数・導函数・第二次導函数について,その数学的な意味や,速度・加速度のような具体的な意味を明らかにする。

    (2) 函数の和・差・積・商および変数変換の微分公式を扱い,形式的な計算に習熟させる。

    (3) sin(ax+b),cos(axb)のような一次函数の三角函数の程度を越えない範囲で,三角函数の微分やその応用を扱う。

    (4) 導函数および第二次導函数を用いて,函数値の変化の状態を調べたり,極大・極小の問題を解いたりする応用を扱う。

    (5) 近似式f()=)+´()凾を明らかにし,これによって,簡単な函数についての近似計算や)の値を)としたときの誤差評価を扱う。

      注1. 指数函数,対数函数を微分することは内容に含めない。しかしこのきわめて概路の事項にふれておくことは,場合によっては有意義なこともある。

       2. 媒介変数で表示した函数の微分公式や,これを用いるものは扱わない。

       3. 逆三角函数にはふれない。

用語と記号

 微分係数 微分する 導函数 第二次導函数 速度 加速度 近似 近似式

   y´ dydx 〃 〃(x) d2y/dx2

 

c 積分

 長さ・面積・体積などの量が極限を考えることによって正確にとらえられること,ならびに極限による計量が多くの場合に積分となることを明らかにし,積分の応用や計算に習熟させる。

d 順列と組合せ

 具体的な事象において,起りうる場合の数を整理し,数えやすくする方法を明らかにし,確率計算への準備とする。また,これに関連して,指数が正整数の場合の二項定理を扱う。

 

e 確率と統計

 確率の概念を明らかにし,「数学T」で記述統計的な立場から取り扱ったものに対して,確率の考えを加味し,統計に対する見方を深める。

 

中 心 概 念

 「数学V」の中心概念は,「数学T」「数学U」の中心概念のうち,「数学V」の内容に即したものはひきつづきそのまま取り上げるとともに,そのいくつかについては,新たに発展した内容のものが付け加わる。ここでは新しく付け加わるものについて説明することにする。

a 概念を記号で表わすこと。

 「数学V」では,数列の和を求める,極限を求める,微分する,積分するなどの新しい数学的な操作が考えられてくるが,これらの操作をそれぞれ適切な記号で表わし形式的な扱いが見やすくなるように記号の使い方を定める。その結果,これを一つの演算記号と考えてその法則化を目ざすような研究分野が生れ,それによって操作そのものが機械化されていく。このような考え方が「数学V」では新たに加わる。

b 概念,法則などを拡張したり,一般化したりすること。

 この考えは,「数学T」,「数学U」にも表われてきているが,「数学V」では,既知の事項を特殊な場合として含むような一般化をくふうして,研究成果をいっそう広くしていく考え方が特に強調される。

c 演繹的な推論によって知識を体系だてること。

 数学的帰納法は,すでに数学的内容の欄の説明でふれておいたが,この考えを単に数列や二項定理の証明の技巧としてのみ扱わず,そのもつ演繹的な性格を明らかにして扱うことが必要であろう。

e 統計的な事象を量的にとらえること。

f 極限によって量をとらえること。

 この二項については,それぞれ数学的内容の説明で述べたところと重複するので省略する。