第3章 商業科各科目の目標・内容・留意点

 

1.商 業 一 般

目  標

(1) 商業事象についての一般的な知識を習得させる。

(2) 商業科の諸科目を学習するために必要な,基礎的・入門的な知識を習得させる。

(3) 経済生活を合理的に営むために一般教養として必要な,商業諸機関の利用についての知識を習得させる。

(4) 国民経済における商業の地位を理解し,経済生活の向上に寄与する態度を養う。

内  容 (1) 経済生活と商業 a分業と交換 (分業の生成,市場,配給経路,商品の分類) b商業の機能と担当者 (商業の機能,売買業,機関商業,商業助成機関) c企業の形態 (個人企業,合名会社,合資会社,株式会社,有限会社,協同組合,公企業) (2) 売買 a仕入と販売 (仕入,販売) b売買契約 (売買条件――品質・数量・価格・受渡方法と時期・支払方法)

(売買手続――見積・注文・発送・検収・支払)

(支払用具――通貨・小切手・手形)

c取引の種類・方法 (直接売買,間接売買,競争売買)
(3) 金融 a金融の機能 (金融の機能,金融の種類――長期金融・短期金融など) b金融機関の種類 (種類と特徴――普通銀行・特殊銀行・信託銀行など) c銀行の業務 (預金,貸出,為替(かわせ),付随業務) d証券と証券取引所 (有価証券の種類――株式・社債・公債,証券取引所) (4) 運送・通信 a運送・通信の機能と種類 (運送・通信の機能,運送・通信の種類と特徴) b陸上運送 (鉄道運送――貨物・旅客,小運送,自動車運送,貨物引換証) c海上運送 (海上運送――貨物・旅客,港湾運送,船荷証券) d航空運送 (航空運送――貸物・旅客) e通信 (郵便,電信,電話,放送) (5) 保管 a保管の機能 (保管の機能) b倉庫の種類 (生産地倉庫,集散地倉庫,消費地倉庫など) c倉庫の業務 (入庫,保管,出庫,倉庫証券,付随業務) (6) 保険 a保険の機能と種類 (保険の機能,保険の種類) b損害保険 (火災保険,海上保険,運送保険など) c生命保険 (各種の生命保険) (7) 貿易 a貿易の機能

b貿易の制度

c貿易の業務

(輸出入手続,取引条件)
(8) 商業の社会的使命と商業に従事する者の自覚 a商業の社会的使命と商業に従事する者の自覚
指導上の留意点 (1) この科目は,商業経済関係科目群の中において基礎的な地位を占めるものであるとともに,他の群の商業科目の学習のための基礎としても役だつものである。

(2) この科目は商業経済関係科目群の中で基礎的な地位を占めるものであるから,その程度において,その内容は一応この科目群の全般にわたるものである。

(3) 商業に関する課程においては,第1学年において必修されることが適当である。

(4) 商業に関する課程以外の課程においても,一般教養としてなんらかの商業科目を学習する場合に選択される科目として適当なものである。

(5) 少ない単位数においてこの科目を学習する場合にも,一応この科目の内容の全般にわたることが必要であり,いずれかの内容をまったく省略することは避けなければならない。単位数の多い場合には,視聴覚教材・教具をじゅうぶんに用いたり,調査・報告・討議などの指導法を取り入れて効果の高い指導が可能であるが,単位数の少ない場合でも単なる講義に終始しないように,指導上のくふうを必要とする。

(6) この科目は商業経済関係科目群の中において初歩的な科目であるから,同一の項目を取り扱っても,他の商業経済関係科目と実質的に重複しないように注意しなければならない。しかしまた一方においては,この科目群の中で脱漏のないように注意する必要がある。その例をあげれば次のとおりである。

ア.内容の(1)のbにおいては,小売商・卸売商の形態にふれたり,仲介業にもふれるけれども,あまり深入りしないようにする。

イ.(1)のcにおいては,匿名組合や民法上の組合にはふれないし,設立手続にもふれないようにする。企業集中は経営科で取り扱う。

ウ.(2)のaにおいては,業務内容は商事科で取り扱うようにする。

エ.(2)のbにおいては,貿易にはふれないようにする。

オ.(2)のcにおいては,商品取引所にふれるし,また補助商人についても取り扱う。

カ.(3)のaとbにおいては,金利政策や通貨政策は商事科や経済科で取り扱うようにする。

キ.(3)のcにおいては,為替に関連して手形交換にふれる。

ク.(4)においては,手続をも取り扱う。

ケ.(5)のbにおいては,特殊倉庫にふれる。

コ.(6)のaにおいては,社会保険にふれる。

サ.(6)のbにおいては,共同保険や再保険にふれる。

シ.(7)のbにおいては,貿易の形態や関税制度にふれる。

 

2.商  事

目  標

(1) 売買活動を中心として,商業事象について商業一般科よりもさらに進んだ程度の知識・理解を得させる。

(2) 商業活動を合理的・能率的に行うために必要な技能・能力を養う。

(3) 商業の社会的機能を理解させ,商業従事者としての自覚を深めさせる。

内  容 (1) 商業の機能と組織 a取引形態の発達 (市場の発展,商品の変遷,支払手段の発達) b機関商業の発達 (運送通信機関の発達,金融機関の発達,保険業の発達,保管業の発達) c配給機関の発達 (小売商形態の発達,卸売商の発達) (2) 市場調査 a需要の分析 (有効需要の分析,潜在需要の調査) b市場調査の方法

c店舗立地

(3) 商品計画と管理 a商品計画 (商品計画――製品計画・仕入計画,配給経路の設定) b商品管理 (数量の調節,商品の保管) (4) 販売価格の決定 a販売コストとその合理化 (販売価格と費用,販売コストの合理化――仕入原価・諸掛・商品回転) b販売価格政策 (卸売価格政策,小売価格政策) (5) 販売促進 a販売組織 (販売組織,セールスマン,購買心理) b店舗設計 (店舗設計,店頭装飾と陳列,照明) c広告 (広告の機能と種類,P.R.) d販売サービス (保証販売,試用販売など) (6)販売金融 a掛売と回収 (掛売の方法,回収の方法) b割賦販売 (月賦販売,チケット販売など) c運転資金調達 (借入,掛仕入,手形払など) (7) 商品取引所 a商品取引所の機能と種類 (取引所と商品流通,取引所の種類) b取引の形態 (実物取引,先物取引,掛つなぎ取引,投機取引,さや取り取引) (8) 貿易 a輸出入手続 (輸出入手続,海上保険,関税制度) b貿易条件

c外国為替

(外国為替――清算協定・バーターシステム・オープンアカウント・為替相場,貿易金融,国際金融機構)
(9) 商業に関する政策 a配給政策 (協同組合,中小企業問題,公正取引) b貿易政策 (貿易政策と商品価格,貿易政策と商品流通) c運送政策 (運賃と商品価路,運送政策と商品流通) d金融政策 (金融政策と商業経営,金融と商品流通)
指導上の留意点 (1) この科目は配給に関する機能が商業活動において大きな意味をもつことと,それが近年高度化し複雑化してきたことにより,商業一般科の上にさらに学ばれるべき科目として設けられたものである。

(2) この科目は売買活動を中心とするが,それに限るものではなく,金融・運送・保管・保険などについても,売買活動に関連して商業一般科よりさらに進んだ程度において取り扱うものである。

(3) この科目は商業に関する課程においては,商業一般科につづいて必修されることが適当である。

(4) この科目と商業一般科その他の商業科目との間には,同一の項目を取り扱っても実質的に重複しないように注意しなければならない。また一方において,その間に脱漏のないように注意しなければならない。次にその例を掲げる。

ア.貿易の項目のaにおいては,信用状・保税倉庫・保税工場などにもふれる。しかしその詳細は貿易実務科にゆずる。

イ.貿易の項目のbにおいては,FOBやCIFについて,商業一般科よりも詳細に取り扱う。

ウ.商業に関する政策の項目においては,売買業者として必要な,国の政策についての一般的知識を取り扱うのであるが,あまり深入りしないようにする。

 

3.経  営

目  標

内  容 (1) 企業経営 a企業と経営 (企業の意義,経営の意義,経営者と労務者,資本と経営の分離) b経営と国民経済 (分業の利益,多量生産の利益,大企業と中小企業) (2) 企業形態 a企業形態 (個人企業,少数集団企業,多数集団企業,公企業,公私合同企業) b株式会社 (株式会社の特徴,株式の種類,設立方法,株式会社の機関) c協同組合 (協同組合の種類,協同組合の特徴) d公企業 (公企業の目的,公企業の種類) e企業集中 (集中の目的,集中の形態――カルテル・トラスト・コンツェルンなど公益と企業集中) (3) 経営組織 a組織の原理 (責任と権限の原理,調整の原理,委任の原理) b最高管理組織 (最高管理組織の意義と組織) c部門管理組織 (直系式,機能式,直系機能式,参謀式,会議式) d作業組織 (加工手段による組織,生産方法による組織,作業技術による組織) (4) 業務と作業の管理 a業務管理 (仕入管理,販売管理) b作業管理 (日程計画,手順管理,進捗管理,運搬管理,資材管理,品質管理,色彩管理) c事務管理 (事務機構,事務分析,文書整理,事務機械) (5) 労務と人事の管理 a労務・人事管理 (管の意義,管理の業務) b賃金制度 (賃金の形態,賃金体系) c労使関係 (労働組合,経営協議会,労使協力制度) d労働法規と労働政策 (労働関係法規,社会保障) (6)財務管理 a資本構成の内容 (資本と資産,資本・資産の構成) b資本の調達 (自己資本調達,借入資本調達) c資本運用と予算統制 (予算統制組織,予算編成,資本蓄積) d経営比較 (経営比較の意義,財務比較,原価比較,標準比較) e内部統制 (内部統制の意義と組織) (7) 経済の発展と経営 a経済の発展と経営 (生産性の向上,企業の社会化,経営の民主化) 指導上の留意点 (1) この科目は近年高度化し複雑化してきた経営管理に関する分野を取り扱うものであり,将来経営を担当する者にとっては特に重要な科目である。

(2) この科目の内容は専門的なものであるから,高学年において学ぶことが適当である。

(3) この科目と商事科との関連は特に密接であるが,商事科においては,売買活動を中心としており,この科目においては,経営体内部の問題を主眼としている。

(4) この科目と商業法規科や会計科その他の商業科目との間,あるいは社会科との間の関連も密接であるが,それぞれの科目の性格・目標に応じて指導し,無用の重複を避けなければならない。しかしまた一方においては他の科目において詳細に取り扱うことであっても,この科目においても一応ふれておく必要のあるものもある。それらの例をあげれば次のようである。

ア.(2)のaにおいては,資本調達・経営主体に重点をおいて企業形態の問題を取り扱う。また,ここで匿名組合や民法上の組合についても取り扱う。その法規的な取扱は商業法規科にゆずる。

イ.(2)のbにおいては,経営者支配の原則にふれる。

ウ.(3)のdにおいては,流れ作業なども取り扱う。

エ.(4)のaにおいては,詳細は商事科で取り扱うことにする。

オ.(5)のcにおいては,労働組合について主として管理の面から取り扱い,社会科との重複を避ける。

カ.(6)のdにおいては,経営比較は経営分析に基いて取り扱う。

 

4.経  済

目  標

(1) 国民経済の構造と原理を理解させる。

(2) 経済事象を理解し,その動向を合理的にはあくしようとする態度を養う。

(3) 流通経済の国民経済における機能の理解を深め,わが国経済の発展に寄与しようとする態度を養う

内  容 (1) 経済生活の概観 a経済行為 (経済,経済行為,経済原則) b経済組織 (個別経済――家計・企業・公企業,総合経済――国民経済・国際経済) (2) 経済の循環と発展 a再生産 (単純再生産,拡大再生産,縮小再生産) b所得の循環 (産業と有業人口,総産額と純産額,所得の分類,所得の循環) c貯蓄と投資 (貯蓄と投資との関係,経済の発展) (3) 消費 a効用の法則 (消費,欲望,財――自由財・経済財,価値――使用価値・交換価値,効用,限界効用逓減の法則,限界効用均等の法則) b生活水準 (消費性向,生活水準,生計費指数) c需要の法則 (需要の法則,需要曲線) (4) 生産 a生産の要素 (生産,労働,土地,資本) b生産組織 (生産組織と企業) c生産費の法則 (生産費の分析,生産費の法則,生産と供給曲線) (5) 市場 a価格の形成 (市場,需要と供給,自由価格と独占価格) b生産用役の価格 (賃金の決定,地代の決定,利子・利潤の決定) c貨幣と物価 (貨幣の本質,賃幣制度,貨幣価値,物価と物価指数) d景気変動 (好況と不況,景気循環) e国際市場 (国際貿易,為替の需要と供絵) (6) 経済と厚生 a財政と国民所得 (財政収支と国民所得,所得の再分配) b経済と国家統制 (経済政策,経済と国家統制) cわが国経済の繁栄と厚生 (わが国経済の現伏と問題,わが国経済の繁栄への道) 指導上の留意点 (1) この科目は,現代の複雑な経済社会において,商業活動をよりよく遂行するために必要な,経済の原理や動向に関する学習を行うものである。

(2) この科目の内容は比較的に高度なものであるから,高学年において学ぶことが適当である。

(3) この科目と社会科「社会」との関連は密接であるが,この科目においては原理的な面を主眼とすることを特色とする。

(4) 原理的な面を主眼とするのであるが,指導にあたっては,なるべく実証的に材料を取り扱うようにし,そのような能力についても発展させるようにする。

(5) この科目においても他の商業経済関係科目との間に重複を生じないように注意しなければならないことはもちろんであるが,また,この科目で特に重点をおいて指導すべき項目も多い。次にそれらの例を掲げる。

ア.(2)のbにおいては,所得の分類として,生産国民所得,分配国民所得,支出国民所得にふれる。

イ.(3)のbにおいては,エンゲルの法則やシュワーの法則にふれる。また所得水準,消費水準についても取り扱う。

ウ.(3)のcにおいては,需要の弾力性にふれる。

エ.(4)のbにおいては,経営科との重複を避け,企業の近代的生産における意義を主眼として取り扱う。

オ.(5)のcにおいては,インフレーション,デフレーションについても取り扱う。

カ.(5)のeにおいては,比較生産費の理論や,購買力平価説をも取り扱う。

キ.(6)のaにおいては,貯蓄投資と財政政策との関係や,景気変動と財政政策との関係にふれる。

 

5.商 業 法 規

目  標

(1) 商業経済に関する法規の知識を習得させる。

(2) 社会生活の規範である法の本質を理解させ,商業活動を合理的に営む態度と能力とを養う。

(3) 法律的に思考する能力,特に商業事象を法律的に判断する能力を養う。

内  容 (1) 権利・義務

(2) 財産権

(3) 契約

(4) 商人・商業登記・商号・商業帳簿など

(5) 会社

(6) 商行為

(7) 各種の商業

(8) 手形・小切手

(9) 紛争の防止と訴訟

(10) 法の本質・種類・効力など

指導上の留意点 (1) この科目においては,法についての基本的な理解を得させることが重要な目標であるが,その取り扱う法の範囲は,商業経済に関するものに限られる。

(2) この科目において取り扱う内容は,他の商業諸科目との間に,項目としては重複するものが多いが,もっぱら法規の面から取り扱うことが特色であり,他の科目においては,その詳細を商業法規科にゆだねることとする。

(3) 内容の(7)の各種の商業においては,銀行・信託・海商などを取り扱う。

(4) この科目はつとめて具体的な事例によって裏付けて指導することが必要である。また必ずしも法典の順序を追って指導することは必要でない。

 

6.商  品

目  標

(1) 商品について,実務上に必要な経済的・技術的な知識を習得させる。

(2) 商品の経済的・技術的な特質を研究する能力と態度とを養う。

(3) 商品の改善・標準化などについて考察し,国民経済における商品流通の円滑化に寄与しようとする心構えを養う。

内  容 (1) 商品の種類と特質

(2) 食料品……特質・種類・生産・流通・利用

(3) 衣料品……特質・種類・生産・流通・利用

(4) 燃料……特質・種類・生産・流通・利用

(5) 木材……特質・種類・生産・流通・利用

(6) 金属類……特質・種類・生産・流通・利用

(7) 化学工業製品……特質・種類・生産・流通・利用

(8) 商品の鑑識・格付・品質表示・標準化

(9) 商品の意匠・包装

(10) 商品と国民経済

指導上の留意点 (1) この科目では,市場に流通する生産財・消費財で,重要なものを取り扱う。

(2) この科目は,他の教科科目で習得した知識・技能を基礎とし,つとめて具体的・実証的に研究させることが必要である。

(3) この科目においては自然科学的な学習が重要であることはもちろんであるが,単にそれだけにとどまらないで,経済的な面との関連をじゅうぶんに指導することが必要である。

(4) この科目は,高学年において学習されることが適当である。

(5) 内容の(2)から(7)までの各種の商品については,それぞれ多種多様であるが,その中で適当なものを選んで指導する。

 

7.商 業 簿 記

目  標

(1) 簿記の基本原理を理解させる。

(2) 商取引を正確・めいりょうに記帳する技能を習得させる。

(3) 経理を明確に処理する能力と態度とを養う。

内  容 (1) 事業の経理

(2) 財産,資本,損益

(3) 取引,仕訳,勘定

(4) 帳簿

(5) 決算,財務諸表,簿記の構造

(6) 会社企業の経理

(7) 中小企業に適する実務的な経理

指導上の留意点 (1) この科目は,簿記会計関係科目群の中において基礎的な位置を占めるものであるとともに,他の群の商業料目の学習に役だつことが多いから,商業に関する課程においては第1学年において必修されることが適当である。

(2) この科目は,商業に関する課程以外の課程においても,経理に関する一般教養として学習されるのに適当な内容を含むものである。その場合には,単位数の差に応じて内容の一部,特に(6)や(7)を省略することはさしつかえない。

(3) この科目の指導にあたっては,記帳を中心としてそれによって理解を深めるようにする。

(4) この科目の指導にあたっては,商業一般科との間で内容の進度を調整し,その学習を効果的に進めるように注意することが必要である。

(5) この科目の指導にあたっては,初めから商品売買業の経理を対象としないで,サービス業の経理,あるいは個人や家庭の経理から導入することもよい。商品売買業の経理においても,初めは簡易な取引をもって簿記のひととおりをはあくさせ,だんだんと複雑なものを取り扱ってその理解を高めてゆくようにする。

 

8.銀 行 簿 記

目  標

(1) 銀行の取引の記帳の特色を理解させる。

(2) 銀行の取引を正確・めいりょうに記帳する技能を習得させる。

(3) 経理を明確に処理する能力と態度とを養う。

内  容 (1) 銀行の取引の種類と特色およびその分課組織

(2) 仕訳,伝票,勘定科目,帳簿

(3) 決算,財務諸表

(4) 手形交換取引

(5) 為替取引

(6) 本支店間取引

指導上の留意点 (1) この科目は,商業簿記科を学習した後で選択して学習することが適当である。

(2) この科目においては,銀行取引の記帳を通して,銀行の経理方法や銀行経営の本質を理解させるように指導する。また,精密な帳簿組織や伝票制度などの銀行簿記の特色をはあくさせて,商業簿記の発展としての意味をもたせる。

(3) 銀行の実務は進化してきているから,それに応じて指導することが必要である。

 

9.工 業 簿 記

目  標

(1) 工企業の経理の特色を理解させ,原価計算の知識を習得させる。

(2) 工企業の取引,特に内部取引を正確・めいりょうに記帳する技能を習得させる。

(3) 経理を朋確に処理する能力と態度とを養う。

内  容 (1) 工業簿記の特色と原価計算の意義

(2) 材料費,労務費,経費

(3) 直接費,間接費

(4) 個別原価計算,総合原価計算

(5) 勘定科目,帳簿

(6) 決算,財務諸表

(7) 工業簿記の特殊な問題

指導上の留意点 (1) この科目は,商業簿記科を学習した後で選択して学習することが適当である。

(2) この科目においては,工企業の各種取引の記帳を通して,工企業の本質を理解させるように指導する。また.精密な原価計算を行うことによって商業簿記の発展としての意味をもたせる。

(3) 工場会計の独立や,原価計算要綱についても取り扱う。

 

10.会  計

目  標

(1) 簿記の進んだ段階における諸問題を処理する能力を養う。

(2) 企業会計の基本的な理論を理解させる。

(3) 経理を明確に処理する能力と態度とを養う。

内  容 (1) 財産の評価

(2) 財務諸表と勘定科目

(3) 損益の決定と処分

(4) 財務諸表の分析と比較

(5) 会計監査と公認会計士制度

(6) 会計に関する法規

指導上の留意点 (1) この科目は,商業簿記科を学習した後で選択して学習するものである。

(2) この科目は,必ずしも会計学として学ぶのではなく,むしろ,商業簿記科において学ぶには高度にすぎる諸問題を中心として学ぶものである。

(3) 企業会計原則や財務諸表準則についても取り扱う。また,内容の(5)と(6)については,理論的な面は簡単に取り扱い,主として監査の手続や制度的な知識について指導する。

(4) この科目と経営科との関連は,特に財務諸表の分析と比較において著しいから,両科目の間で無用の重複を避けるように指導計画を立てる必要がある。

 

11.計 算 実 務

目  標

(1) 商取引や経営に関する諸計算を,珠算その他によって正確・迅速に処理する技能・能力を養う。

(2) 計算事務を処理するに必要な算法の知識や,これに関する商業上の法規・慣習・制度などの知識を習得させる。

(3) 企業経営の事務を計数的に処理し,合理的に遂行する態度と習慣とを養う。

内  容 (1) 珠算による計算の方法

(2) 歩合に関する計算

(3) 利息・割引料の計算

(4) 度量衡・外国貨幣の計算

(5) 売買や損益の計算

(6) 複利・年金の計算

(7) 企業損益の計算

(8) 税金の計算

(9) 有価証券の計算

(10) 経営財務に関する計算

指導上の留意点 (1) この科目は他の商業諸科目とその内容において関連するところが多いが,それらの計算に習熟することを主眼とするところに,この科目の特色がある。

(2) この科目のすべての内容にわたり,計算は主として珠算によって行うものとするが,計算器についても適宜指導するようにする。

(3) 数理の学習については,数学科との関連を考慮し,数理の応用能力を養うようにする。

(4) この科目においては,もっぱら実務的な処理を主眼とし,簡便・迅速に必要な結果を導き出すように指導する。

(5)この科目は商業に関する課程においては必修されることが適当である。また,その内容は,商業に関する課程以外の課程においても,学習されるのに適当なものを含んでいる。単位数が少ない場合には算法の習得を主眼とするのもよく,内容の一部を省略したり,あるいは簡略に取り扱うこともよい。単位数の多い場合には,計算練習をじゅうぶんに行うように指導し,2か年または3か年にわたって学ばせるようにするのが適当である。

 

12.文 書 実 務

目  標

(1) 商業文書を簡潔・正確・めいりょうに,しかも迅速に作成する能力を養う。

(2) 印刷・謄写・複写・筆記・筆写の知識と技能とを習得させる。

(3) 文書の取扱や整理を合理的に行う知識と技能とを習得させる。

(4) 文書に関する実習を通して,事務能率を増進する態度と習慣とを養う。

内  容 (1) 商業通信文の組み立て方

(2) 商業通信文の能率的な書き表わし方

(3) 取引に必要な通信文や書式の作成

(4) 電報文の作成

(5) 広告文の作成

(6) 社内文書の作成

(7) 文書の受付・発送および内部連絡の手続

(8) 文書の整理のしかた

(9) 謄写印刷のしかた

(10) 印刷を依頼するのに必要な知識

(11) 文書事務用器具の取り扱い方

指導上の留意点 (1) 文書の種類は多種多様であるが,この科目においては狭い意味の商業用文書を学習の対象とし,国語によるもののみとする。英文によるものは商業英語科において取り扱う。

(2) この科目においては,単に商業通信文の作成にとどまらず,商業用文書に関する事務一般について指導する。

(3) この科目の学習は,実務を中心として指導する。

(4) この科目の学習は,商業実践科の学習の前に行われることが適当である。

 

13.和文タイプライティング

目  標

(1) 和文タイプライターを正確・迅速に操作し,めいりょうに印書する技能を養う。

(2) 和文タイプライターによる文書や取引書類の作成を通して,事務能率を増進する態度を養う。

内  容 (1) 和文タイプライターの構造と名称

(2) 和文タイプライターの操作

(3) 和文タイプライターの文字の配列

(4) 縦打ち印字

(5) 横打ち印字

(6) 文書作成

(7) 作表

(8) 和文タイプライターの手入れ

指導上の留意点 (1) この科目は特に女子に適する科目である。

(2) この科目においては,熟練度を高めるための練習が中心であり,そのためには,単位数を多くすることが必要となる。少ない単位数で行う場合には,内容の(7)作表は省略してもよい。

(3) この科目においては,当用漢字・新かなづかいなど,国語科と密接な連絡をとって指導する。

(4) この科目においては,機械をたいせつに取り扱う習慣とその要領を身につけさせるように指導する。

 

14.英文タイプライティング

目  標

(1) 英文タイプライターを正確・迅速に操作し,めいりょうに印書する技能を養う。

(2) 英文タイプライターによる文書や取引書類の作成を通して,事務能率を増進する態度を養う。

内  容 (1) 英文タイプライターの構造と名称

(2) 英文タイプライターの操作

(3) 基本印字

(4) 文書作成

(5) 作表

(6) 英文タイプライターの手入れ

指導上の留意点 (1) この科目においては,熟練度を高めるための練習が中心であり,そのためには単位数を多くすることが必要となる。少ない単位数で行う場合には,内容の(5)作表は省路してもよい。

(2) この科目は,英語の能力に基礎をおくものであるから,英語の能力を相当に身につけてから選択すべき科目である。

(3) この科目においては,機械をたいせつに取り扱う習慣とその要領を身につけさせるように指導する。

(4) 商業英語科・貿易実務科とは特に連絡を密にし,それらの学習に利用できるように指導する。

 

15.速  記

目  標

(1) 速記の技能に習熟させる。

(2) 速記を用いて,迅速・正確に文書を作成し,事務能率を増進する態度を養う。

内  容 (1) 速記の基本練習

(2) 進んだ段階における速記

(3) 文書事務における速記の利用

指導上の留意点 (1) この科目においては,熟練度を高めるための練習が中心であるが特に着実にしんぼう強く基本練習を行うことが必要である。少ない単位数で行う場合には,内容の(3)は省略してもよい。

(2) 練習の教材は,なるべく生徒に興味の多いものを選んで指導する。

(3) 反訳の練習も常に行わせることがたいせつである。これは作文の能力の発達と大きな関連がある。

 

16.商 業 英 語

目  標

(1) 普通英語の基礎の上に,英文の商業文書を読解し,作成する能力を養う。

(2) 英文の経済記事などを読解する能力を養う。

内  容 (1) 英文商業通信文の構成と形式

(2) 照会に関する文書

(3) 商品の売り込みに関する文書

(4) 注文に関する文書

(5) 運送と保険に関する文書

(6) 代金の取立と支払に関する文書

(7) 銀行との取引に関する文書

(8) 英文電報

(9) 英文による広告・掲示・看板

(10) 英字新聞・雑誌の経済記事と市況報告

(11) 英文財務諸表

(12) 就職に関する文書

指導上の留意点 (1) この科目においては,英文商業文書の読み方・書き方を中心とし,普通の英語と比較して特に実務的な面を主眼として指導する。

(2) 少ない単位数において指導する場合には,内容の(8)以下は省略してもよい。

(3) この科目においては,英語をはじめ商業諸科目の学習が基礎として必要であるから,高学年において選択して学習されることが適当である。また,この科目の学習に英文タイプライティングを利用することも効果的であるし,貿易実務科の学習にこの科目の学習を活用することもたいせつである。

 

17.統 計 調 査

目  標

(1) 統計表・統計図表の作り方と見方についての知識と技能とを習得させる。

(2) 社会現象特に経済現象を統計的にはあくする態度を養う。

(3) 統計を用いて経営を合理的に計画する能力と態度とを養う。

内  容 (1) 統計の意義と調査の方法

(2) 統計表の構成

(3) 統計図表の作戊

(4) 経済統計の見方

(5) 経営統計の作り方と見方

指導上の留意点 (1) この科目においては,統計の理論よりも,むしろその作り方と見方についての実務的な面を主眼として指導する。

(2) この科目の学習には,数学科や社会科とともに商業諸科目の学習を基礎とすることが適当であるから,高学年において選択させるのがよい。

(3) 少ない単位数において指導する場合には,内容の(5)を省いてもよい。

 

18.商 業 美 術

目  標

(1) 商業美術の創造的表現についての技能・能力を養う。

(2) 商業美術についての鑑賞力を養う。

(3) 商業美術が商業活動においてもつ機能を理解させる。

内  容 (1) デザインの基礎,色彩,形態

(2) 広告デザインとレイアウト

(3) ポスター・包装紙・レッテル・ちらしなど

(4) 店舗装飾・飾窓・陳列・照明など

指導上の留意点 (1) 近代美術の動向と商業美術との関連についての理解を深めるように指導する。

(2) この科目と商事科・商品科・文書実務科・商業英語科などの諸科目とは密接な関連があるから,それらの学習によって得られる知識・理解を活用するようにする。

(3) この科目においては,商業美術の製作に重点をおき,単に理論的な学習にとどまらないようにする。

(4) 視覚教材をできるだけ多く利用して指導することが効果的である。

 

19.商 業 実 践

目  標

(1) 商業活動を実践的に行うことによって,それに関する知識・技能・態度を総合的に身につけ,商業経営に必要な基礎的能力を養う。

(2) 商業社会の有機的関連を実践的に理解し,その中において占める自己の職務の意義についての自覚を深める。

(3) 自己の適性を生かして社会に役だつようにするため,さまざまな商業活動について実践的な経験を得させる。

内  容 (1) 商店・会社の設立

(2) 普通売買業務

(3) 特殊売買業務

(4) 運送業務

(5) 通信業務

(6) 倉庫業務

(7) 銀行業務

(8) 保険業務

(9) 管理業務など

指導上の留意点 (1) この科目は,分科的に個々の知識・技能を習得させるのではなく,総合的にそれらを実際に用いる能力を養うことを主眼とする。さらに生徒自身が経営の主体となり,他の生徒の業務との間に取引関係を発生させ,その進行に伴い必要な事務を自主的に処理していくようにするところに,この科目の特色がある。

(2) この科目においては,生徒にそれぞれの職務を分担させ,全体の商業組織の中で取引活動を行わせることによって,商業社会の構成を実践的に理解させるように指導することが適切である。

(3) この科目の指導にあたっては,生徒の分担職務を適時に交替させて,なるべく多くの経険を得させ,それによって職業指導に役だてることが適当である。

(4) この科目はその性格から,最高学年において学習することが適当である。

(5) この科目においては,その性格から数人の教師が指導に当ることを適当とし,施設・設備を充実することが必要である。

 

20.貿 易 実 務

目  標

(1) 貿易活動に必要な実務的な知識を習得させる。

(2) 貿易活動に必要な書類を作成することによって,実務的な技能を養う。

(3) 商業諸科目の学習によって得られた知識・技能を総合的にいっそう深く身につける。

(4) 貿易において特に必要な,信用を重んじ,公正を尊び,正確・敏速を旨とする態度を養う。

内  容 (1) 外国の取引先の選定と信用調査

(2) 輸出契約・輸入契約と取引条件

(3) 信用状

(4) 船積みと引き取り

(5) 保険契約

(6) 代金決済

指導上の留意点 (1) この科目においては外国貿易を対象とする点において商業実践科と異なるが,他の商業諸科目の学習を基礎とし,それらを総合して,実務を中心として学習する点においてこの両科目は共通の特色をもつものである。

(2) この科目においては,単に既習の商業科目の総合にとどまらず,独特の教材も含まれる。たとえば,遠距離の海上運送とそれに伴う海上保険の詳細や,通関手続や,外国為替の問題や,さらに暗語電報などについて指導する必要がある。したがってこの科目においては,商業実賎科のように,生徒にそれぞれの職務を分担させ,その間に取引活動を行わせることは必ずしも必要ではない。外国の取引先を想定して,各生徒が同様な取引活動を実務的に行うことも適当である。

(3) この科目は,商業経済関係科目・簿記会計関係科目・計算実務・文書実務・英文タイプライティングおよび商業英語などの諸科目の学習を活用して指導するものであるが,外国貿易に必要な書類の作成を中心として,それらの学習をいっそう練磨することに重点をおくものである。

(4) この科目はその性格から,高学年において選択されることが適当である。

 

21.商業に関するその他の科目

設定の趣旨

 高等学校の商業科に属する科目としては,上述の20科目をもって一般にはじゅうぶんであると考えられるが,ある地域社会のみに必要な特定の科目を設けることが認められる。たとえばその地域の産業調査・商店経営・中小企業経営のような科目や,あるいは,事務機械操作・英文簿記または農業簿記のような科目を,特に必要を認めて設定する場合である。

設定する場合の留意点

(1) 特設される科目については,それぞれの目標を明らかにして,他の商業諸科目との間に重複を生じないようにする。

(2) 特設される科目の単位数については別段の定めはないが,最低2単位とすることが当然である。

(3) 特設される科目については,それぞれ具体的な指導計画を立てなければならない。