第2章 数学科の組織

1.数学科の科目

 数学科として考えられる教養は,各分野についてのつりあいのとれたまとまりあるものが必要であり,生徒の発達から考えれば,数学に対する必要は,学年が進むにつれてしだいに分化してくるものと考えられる。このような状況に合致するように数学科の科目を組織するには,初めに共通な科目を履修し,次いで個性や進路の分化に応じてしだいに深く進んだものに発展していけるよう,科目を段階的に設けることが適当である。そして,各科目の内容および単位数を定めるにあたっては,その科目まで学習すれば数学として一応のまとまりが得られるようにすることと,全体の教育計画の上から数学科に割り当てることのできる指導時間数との両者を勘案して定めなければならない。

 次にあげる科目の組織は,以上のような考えから作られたものである。

数学T 6単位または9単位

 代数および幾何の初等的基本的な分野の学習を通じて,数学的な考え方の基本を会得させ,あわせて,他教科ならびに数学科の他の科目の学習に必要な基盤を作ることをねらう。

数学U 3単位

 「数学T」をさらに発展させ,「数学T」と合わせて,やや高い程度において数学科の目標を達成することをねらう。

数学V 3単位または5単位

 特に数学を必要とする方面に進もうとする生徒,および数学に深い関心をもつ生徒に対して,「数学U」に引き続き,微積分および確率・統計の初等的基本的な分野の学習を通じて数学科の目標をさらに高い程度において達成することをねらう。

応用数学 3単位または5単位

 「数学T」あるいは「数学U」に続いて履修させる科目であって,数学をよく用いる専門的な分野の学習を容易にするため,特にそこに必要な数学の部門を取り出して学習する。

備考

1 二とおりの単位数のある科目について,いずれの単位数をとるかは,学校が定める。場合によっては,学校に両様の単位数の科目を設け,生徒の個性や進路に応じていずれかを履修させる方法をとることもできるし,場合によっては,一とおりの単位数のみにしてその科目を履修させてもよい。

2 「数学T」はすべての生徒に履修させる。その他の科目は,生徒の個性や進路に応じて履修させる。

3 「数学T」の1個学年における単位数は,6または3とし,第1学年から履修させる。一般にはその週当り指導時間数の学年配当は,次の四とおりのいずれかを原則とする。

 

1年

2年

3年

(4年)

6単位の場合

9単位の場合

 ただし,定時制の職業に関する課程で特に必要のある場合は,毎学年2として,3個学年に履修させることができる。

4 「数学U」を履修する学年は,「数学T」の履修のしかたに応じ,次のようになる。

「数学T」が

aの場合

「数学T」を履修した後において

bの場合

「数学T」を履修した後において

cの場合

第2学年以降において

dの場合

第3学年以降において

5 「数学V」は,「数学U」の履修が終ってから次に履修する。

6 「応用数学」は,「数学U」と同じような形で履修する。その場合5単位の「応用数学」は,2個学年にまたがって履修してもよい。また,必要があれば「数学U」の次に履修してもよい。

2.数学科運営上の留意事項

1.学校の教育課程を編成する場合の数学科についての留意事項

(1) 「数学T」の単位数は,学校全体の教育課程編成の立場から定めるもので,その場合学校は,これを一とおりに定めることもできるし,また二とおりに定めることもできる。しかし,全日制の普通課程等で,第1学年で履修する教科・科目をそろえる場合は,数学Tを9単位とするのが適当であろう。また,その地域の生徒の必要などから二とおりの単位数を学校で設ける場合には,前節備考3の四とおりの場合のうち,aとcとを組み合わせるか,bとdとを組み合わせるかのいずれかが適当である。そして,aとcの組合せの場合は第1学年の,bとdの組合せの場合は第1,2学年の,「数学T」の指導計画は,6単位の場合も9単位の場合もできるだけ同じになるよう調整することが望ましい。

(2) 学校がすべての生徒に共通に履修させる教科・科目を計画する場合,その中に,場合によっては「数学U」を含めることがあってもよい。しかし,「数学V」は,生徒の個性や進路をよく考えて履修させるようにすることが必要である。また,その学校の生徒の個性や進路の傾向から考えて,学校の計画として「数学V」を省くことがあってもよい。

(3) 普通課程では,「応用数学」を学校の計画から省くことがあってもよい。むしろ省くほうが普通であろう。ただし,定時制の普通課程等で,生徒が従事している業務の関係などから高い数学についての知識,たとえば微積分の知識などを必要としながらも,「数学V」までを履修するだけの時間の余裕のない場合もあろう。このような場合には,「数学U」や「数学V」のかわりに,「応用数学」を課すことが適当である。

(4) 各科目の週当り指導時間数を,生徒の能力等の理由から,定められた単位数に応ずる指導時間数よりも多くすることは,他の教科の学習を不可能にするか,生徒の全体の負担を過重にするかのいずれかになりやすい。それゆえ,このようなことは,厳に避けなくてはならない。生徒の能力に応ずる処置は,内容の取捨によって行うのがたてまえである。

(5) 科目の性格と実際上起りうる生徒の進路の分化とを考慮すれば,それぞれに適当な数学科の科目の組合せがいくつか考えられる。

 これを例示すれば,次のようになる。

a 数学をあまり必要としない職業に関する科目に重点をおくもの。

「数学T」6単位

b 数学を必要とする職業に関する科目に重点をおくもの。

「数学T」6単位および「応用数学」(あるいは,「数学U」)3単位

c 数学を特に必要とする職業に関する専門的な科目に重点をおくもの。

「数学T」6単位,および「応用数学」5単位(あるいは,「数学U」3単位と「応用数学」3単位)

d 職業に関する科目および数学にあまり重点をおかず,一般教養を主とするもの。

「数学T」9単位

e 数学を含めて,一般教養に重点をおくもの。

「数学T」9単位および「数学U」3単位

f 数学に関係の深い教科群に重点をおくもの。

「数学T」9単位,「数学U」3単位および「数学V」3単位または5単位

g 一般教養に重点をおくが,従事している業務等の関係から,進んだ数学の知識が必要なもの(主として定時制の普通課程において)。

「数学T」9単位および「応用数学」3単位

 各学校では,在学する生徒の個性や進路をよく考えて,それに応ずる履修が可能になるよう,全体の教育課程を組織しなければならない。

2.数学科の指導計画立案上の留意事項

 この学習指導要領では,第3章以下において,各科目につき,一般の学校で大部分の生徒に共通に履修させることが適当であると思われる内容を示してある。ただし,その順序は,指導の順序を示したものではない。

 各学校では,入学した生徒の能力の実情と,各科目の目標とを勘案し,以下の点に留意して,内容の順序や取捨を検討し,その取扱いの程度や方法を考えて具体的な指導計画を作成し,これに基づいて指導することが必要である。

(1) 数学科の指導では,数学の全体についての系統的な理解を得させることが必要である。しかし,ここにいう系統的ということは,単に学問的な論理の順序に材料を提供することを意味するものではない。生徒が既知の事項の理解の上に立って,次の事項を発展的に学習していき,生徒のもつ論理性を高めながら,生徒自らが系統を作っていくようにすることをさすものである。それゆえ,多少うえんな場合や学問的にみて論理に飛躍がある場合があっても,生徒の自然的な発展に即するよう内容を配列することが必要である。

(2) 数学科の目標は,第1章に述べたように,数学的な事項の理解や技能の習得とともに,さらに広い教養を得させることにある。そのためには,広く豊かに具体的な実例や変化ある学習活動を取り入れて指導することが必要である。学校の教育課程が定まれば,各生徒に対して他の教科ではどんなことを学習するか,将来どんなことが必要になるかなどが明かになる場合が多いであろう。この学習指導要領では,これらの内容を前提とすることなく,各科目の内容を示してあるが,実際の計画にあたっては,この点を補い,各分野から適当と考えられる応用例をなるべく豊かに取り入れるように配慮することが望ましい。

(3) この学習指導要領で示した内容は,後に履修する科目を予定せずに考えたものである。しかし,たとえば,第2学年になれば生徒によっては,「数学T」とともに「数学U」を履修することがわかっている場合もある。このような生徒に対しては,周到な用意のもとに,総単位数に応ずる内容の配列をくふうすることによって,全体としての指導がより能率的,効果的になるよう配慮することが必要である。

(4) 各種の学習活動を通じて,中学校以来めざしてきた,真実を求める態度,自己の行動に責任をもつ態度等の一般的な態度・習慣の指導を行う好機をとらえるように配慮することも必要である。