第3章 国語科国語(甲)

1 目標

 「国語(甲)」は,高等学校国語科の目標の全般にわたり,毎学年均衡のとれた学習の成果を積み重ねて,読解する力,ことばを効果的に使用する力,ならびに各種の言語知識を習得させるものであって,次のことをその目標とする。

 言語文化を広く深く理解できるように,読解力を豊かにし,特に鑑賞力や批判力を伸張させることが重要であり,その読解の範囲も,現代文と並んである程度,古文や漢文にまで拡充きせる。これとともに,現代の国語生活に対する適応や改善ができるように,いっそう的確に効果的に,ことばを使用しうる能力や態度を養うことに留意する。なお,以上のことに連関して,ことばの理解や表現をよく意識して正確なものとするために,また現在および将来にも必要な国語の教養を高めるために,各種の言語知識を身につけさせる。

2 内容

 「国語(甲)」で指導する内容は,書きことば,話しことばをよりどころとして,読むこと,書くこと,聞くこと,話すことを学習させるにある。そして,中学校の国語科の学習を基礎として,その上に立つのであるが,読むこと,書くこと,聞くこと,話すことの均衡の取れた学習を行う必要がある。しかし,このことは,それらを必ずしも均等な比で学習させなければならない,ということではない。―般には,学年を追って,しだいに読むことの学習の占める比重が大きくなる。また,初めの学年は,中学校の発展ではあっても,高等学校として基礎的なものを主として学習させる時期であり,終りの学年は「国語(甲)」の学習全体をまとめる時期である。そして,中間の学年は,その学習を大いに展開させる時期である。なお,しだいに高い内容の学習を,学年を追って行う必要がある。

 「国語(甲)」では,全学年間に,主として,次のような学習を行う。

(1)読むことの学習には,その材料として,現代文・古文・漢文がある。現代文の学習では,詩歌・随筆・小説・戯曲などの文学作品や,論説・評論・解説・報道・報告・記録などを取り扱い,古文の学習では,詩歌・随筆・物語・戯曲などの文学作品や評論・語録などを取り扱い,漢文の学習では,訓点をつけた論説・史伝・語録・詩文などを取り扱う。書くことの学習では,報告・報道・論説・記録などの学習を行う。このほかに,創作や編集の学習も,場合によっては取り扱われる。

(2)聞くことの学習では,講義・講演・討論・会議,ラジオなどに関する学習を行い,話すことの学習では,発表・報告・討論・会議・対話・会話,放送などについての学習を行う。

(3)(1)・(2)の読むこと,書くこと,聞くこと,話すことの学習に関連して,(ア)音韻・文字・語い・表記法(イ)国語の特質,国語の変遷,国語と漢文との関係,国語国字問題(ウ)口語文法,文語文法(エ)国文学の変遷などを学習させる。これらは、それぞれまとめて適当な時期に指導することも考えられる。

  注(1)現代文については,具体的な作品名は示さないが,生徒の理解力や,興味・関心や,現在および将来においての必要などを考慮して、適切にしてかつ価値あるものを,広く選ぶ。なお,現代文には,翻訳された文学作品をも合む。

 (2)古文については,たとえば,下記のような作品について,生徒の能力や必要や関心などを考慮して,適当な部分を選ぶ。なお,下記のほか,適切なものを選んでもさしつかえない。

 たとえば,記紀歌謡,万葉集の長歌・短歌,古今集・新古今集・山家集・金塊(かい)集などの短歌,芭蕉(ばしょう)・蕪村(ぶそん)・一茶(いっさ)などの俳句,竹取物語・源氏物語・大鏡・平家物語・世間胸算用・雨月物語などの物語類,土佐日記・枕(まくらの)草子・更級(さらしな)日記・徒然草(つれづれぐさ)・奥の細道・玉かつまなどの日記・随筆・紀行類,謡曲・狂言・近松の浄瑠璃(じょうるり)などの戯曲類,花伝書 三冊子(さんぞうし)・去来抄・源氏物語玉の小櫛(おぐし)などにある評論類,名家の語録類など。

 (3)漢文については,入門の学習に必要な材料,およびわが国の文学や思想に深い影響を与えた作品,たとえば,下記のようなものについて,生徒の能力や必要や関心などを考慮して,適当な部分を選ぶ。なお,下記のほか,適切なものを選んでもさしつかえない。 たとえば,短句・短文・故事・成語・格言・ことわざなどで訓読練習に適当なものや,論語・孟子(もうし)・老子・荘子・韓罪子(かんびし)などの論説類,十八史略・史記・蒙求(もうぎゅう)・日本外史・先哲叢談(そうだん)などの史伝類,近思録・言志録などの語録類,文章軌範・古文真宝・唐宋八家文・唐詩選・白氏文集・和漢朗詠集などの詩文類など。

 なお,学習指導の必要に応じては,書き下し文でもさしつかえない。

 (4)漢字の学習については,当用漢字がじゅうぶんに読めて,当用漢字の中の重要な漢字が正しく書けるようにする。

 

 学習指導の計画は,目標,内容,生徒の能力や必要や関心などを考慮して立てるのであるが,その計画の便宜のために,学習の範囲を,現代文や古文や漢文や話し方・作文など,四つの分野に分けることができる。しかし,これらは,区分しにくい学習をも,各分野の中に溶けこませてまとめているのであって,次の表は,「国語(甲)」における分野ごとのだいたいの量(時間数)の割合を,数字で示したものである。以上のことは,特に「国語(甲)」の学習を確実に実施するためである。

 

(分野)             (割合)             (具体例)

現代文      3/10ないし4/10   3/10 4/10 3/10

古文       2/10ないし3/10   3/10 2/10 2/10

漢文          2/10       2/10 2/10 2/10

話し方・作文   2/10ないし3/10   2/10 2/10 3/10

 

3 留意事項

(1)学習指導の計画は,目標,内容,生徒の経験や実態(能力や必要や関心など)を考えて、立案することは言うまでもないが,その際に,練習の計画や評価を適切に組み入れるようにする。

(2)学習指導にあたっては,目標の達成に留意して,なお聞くこと,話すこと、読むこと,書くことにわたり,均衡のとれた学習を行うようにくふうする。聞くこと,話すこと,書くことの指導の面がおろそかになりやすいから,いろいろな学習の展開において,適宜これを行うほかに,主として,表現力を養う学習の適切な計画を立てて,実施する。

(3)口語文法の学習は,中学校で行った,その学習を基礎として,さらにその理解を確かなものにし,これを深めていく。文語文法は,主として読むことに伴って学習させ,その大要を理解させる。

(4)文学作品の学習指導にあたっては,教師の好みに片寄って,狭い学習にならないように注意する。また作者ならびに作品の背景などについては,作品の読解を基本にして,それに参考となる程度のものを学習させる。

(5)漢文の学習については,国語学習に即して指導し,漢字学習の負担が過重にならないようにする。漢文学習をまとめて行うほかに,随時随所で,漢文に関連する内容,たとえば,漢字・漢語・格言,その他わが国の言語や文化に及ぼした影響などについて,学習指導を行うように留意する。

(6)教師が,分担して指導する場合には,統一のある「国語(甲)」の学習が行われるように,互に協調する必要がある。