第1章 高等学校における水産教育

 

第1節 水産教育の一般目標

 

 高等学校の職業教育の面は全く専門的であって,特に水産業においてはおのおのの分野の一つ一つが特殊な知識と技術を必要とし,また他方水産全般についての広い知識をもたねばならない。

 従って,職業教育の一般目標にそってゆくとともに,水産業のそれぞれについて理解し,漁船を運航し,漁業を行い,水産動植物を増殖し,水産製造を行い,水産業を経営する実際の技能を学習によって修得させるのは勿論,水産業を科学的に営んでゆく素養を身につけ,その地域の重要水産業について必要な技術を得させ、あるいは水産団体における事務的な処理ができる能力を身につけさせ,さらに水産の現状を正しく観察ならびに批判してゆく総合的な理解力を養わせ,わが国の水産業の重要性,社会的地位,自然的環境、天然資源としての水産物等について知識を得させる。

 要は実社会の要望に応じた技術・知識を身につけ,社会に出て直ちに実務にたずさわり,やがては業界の中堅となって,水産業を向上発展させてゆく原動力となる人材を育成することを目標とする。

 

第2節 生徒の発達と水産教育

 

 高等学校の時代は生徒が身心共に発達して行く時代であって,旺盛な頭腦の働きと,活溌な身体の活動とによって数年間の充実した職業教育を身につけるのであるから,地域社会に行われる実際の仕事を身近に感じ,関心がたかまり,それを自分のものにしたい意慾をじゅうぶんに活かして学習させるようにし,水産とはどのようなものか,まず概要をつかませるとともに,一分野の技能を一つ一つつみあげて完成にむかわせる。

 教科の配列はこのような種々の観点から,また知能的に修得しやすいように,まず初期に一般的な教科や基礎学問であって水産に必要な教科を主として、次第に専門的なものに入ってゆき,高度の基礎知識を必要とする専門教科は一般教科,他の教科の修得を考慮して完成期に学習させる。

 実験・実習は一応各教科に含められているが,特殊技能の修得では技術が主体となるべきで,実験は講義に並行させてゆくようにし,実習は必要に応じて適当な時期にまとめて行い,またその課程の教科を総合した実習をも行うことができる。

 結局,生徒の学習意慾の状態,生徒の知能の発達が色々である点,地域・環境の異る点を考慮し,これらを総合して学習内容を編成してゆくべきである。

 

第3節 水産に関する教科とその運営

 

 広般な水産の分野を教育上便宜的に14教科に分けているので,その中には独特の教科もあるが,多くは他の教科と関連したり,重複しているから,課程を編成するにあたっては,各学年に配列した上で適当に内容を盛って行くようにする。

 教科のうち,水産一般は水産業の全般をまず概括的に生徒に理解させてゆくのであるから,専攻する課程が主とする教科に含まれる項目は省略して指導する。

 水産生物は常識として必要な基礎教科で,理科の生物学と関連を保ち,広く生物一般の知識を取り入れるとともに漁業,水産製造,水産増殖,海洋気象等の教科とも関連させて指導する。

 海洋気象は漁業,水産増殖とはなすことはできない基礎的な教科で,互に密接な関連をもたせて指導する。

 漁業は課程を代表する教科で,漁船,航海運用,海洋気象,水産生物,水産経営,水産法規等の教科と関連を保ち,ク土の水産業の実際を理解し,これを批判する能力を身につけ,進んでその改善に努力する態度を養うとともに,また水産資源について十分留意して学習・指導をしてゆく。

 航海運用は特に船舶職員法に規定される資格を目的とする場合は,それぞれの程度に応じて指導せねばならない。

 漁船は漁業の内容に緊密な関連をもつから,漁業と一体となるように指導する。

 水産製造は課程を代表する教科であって,水産化学,微生物等と関連をもたせて指導する。

 水産化学は水産製造その他の基礎となるよう,また微生物等とも関連をもたせて指導する。

 微生物は,水産製造,水産生物,水族病理等と関連をもたせて指導する。

 水族病理は水産増殖,微生物,水産生物,水産製造と関連をもたせて指導する。

 水産増殖は課程を代表する教科で水産生物,水族病理とは密接な関係を保ちその他海洋気象,微生物等とも関連をもたせて指導する。

 水産経営は課程を代表する教科で,その理解は地域社会から,全国,さらに主要府県におよぼして広い視野をもつように指導する。

 水産簿記と水産法規は水産経営と三者一体の関連をもたせて学習させ,水産業運営の知識・技能を修得させるように指導する。

 その他の教科として,地域により,水産資源,水産機械,漁船機関,漁業無線等を置くことが考えられる。