V 何を評価するか

 

 小学校の音楽学習指導において,何を評価するかということは小学校の音楽学習目標の直接つながるべき問題である。つまり評価は教育目標に即してなされ,そしてそれがまた次の目標の重要な資料・基礎となるというふうにして教育は常に評価によって裏づけされ,ささえられて進められていくものであるといえよう。次に,態度・鑑賞・表現技能・知識と理解の4項目に分けて述べてみよう。

1 態  度

 児童が音楽活動に好ましい態度をもっているかどうかというようなことは,従来はあまり関心をもたれなかった。しかし児童の自発性にその基調をおく新しい教育では,これは指導上根本的な問題である。児童の音楽学習に対する態度を客観的に確実に測定・評価することは,かなり困難なことであるが,児童の音楽学習の姿をいろいろの観点から,あらゆる角度から,継続的に見きわめることがたいせつである。

1) 音楽活動を楽んでいるか。

 歌ったり,楽器を演奏したり,聞いたり,創造的な表現活動をしたりする活動を,児童が心から楽しんでいるかどうか,また,その程度はどうかということは音楽学習の最も根本的な問題であって,表現技能を追うのあまり,ついには児童が音楽そのものをきらいになってしまう例はよくあることである。特に導入の過程,低学年の指導においては,このことを重視しなければならない。

2) 余暇を楽しく過ごすために音楽に関心をもっているか。

 明日の活動へのリクリエーションとして,また教養を高め,情操を養い,円満な人格を形成するためには,児童の日常生活の大部分を構成している余暇が,いかに過ごされるかということが,きわめてたいせつである。

3) 学校での音楽経験を,家庭や社会での生活にどの程度生かしているか。

 従来の音楽教育はともすると学校の中だけで,あるいは音楽教室だけの活動に終始しがちであったということができる。しかし,真に音楽が児童の人格形成にあずかるためには,それは学校の生活はもちろん,家庭や社会の生活に生かされるべきであろう。もし学習指導が児童の生活経験にその基礎をおき,児童の興味や欲求に基くものであるならば,それは児童の身についてかれらの生活をいっそう明るく豊かなものにするであろう。教師は常にどのように,また,どの程度に音楽が児童の家庭や社会での生活に生かされているかを知って,より効果的な学習指導を計画すべきである。

2 鑑  賞

 児童は音楽を聞くことを喜ぶ。しかし,教師はそれがどんな性質のものであるか,どんな点に興味を感じて聞いているかを見定めて評価しなければならない。じっと行儀よく聞いていることだけが望ましい鑑賞の姿であるとはいえない。児童がほんとうにその音楽の美に触れ,リズムを味わうとき,それが自然の動作となって現れる場合もあろうし,美しい旋律やリズムを口ずさむときもあろう。たいせつなことは,どんな様子で聞いているかという形ではなくして,どのような点に,どのような深さで音楽美に触れて聞いているかということである。教師は常にこのような児童の音楽を聞く態度を,観察したり,問答したり,あるいは記述させたりして測定し,評価しなければならない。

3 表現能力

 音楽の学習指導においては,表現の技術を無視することはできない。従来の音楽教育においては,ともするとその指導目標や評価の手段が,技術の末に走り過ぎる傾向にあったことは否定できない。しかしながら音楽という芸術が音による表現の芸術である以上,学習活動の表現の面において技能がたいせつであることはもちろん,鑑賞の面においても,より高い自己の技能を通してのみ,より深いそれらの活動が行われうるものであろう。

 教師は次にあげるような技能を通して,児童がどの程度自己を音楽に表現できるかを評価する必要がある。

1) 簡単な単音唱歌・輪唱・合唱を歌う技能。

2) リズム楽器,簡単な旋律楽器や合奏の技能。

3) 短いことばに節づけしたり,簡単な旋律を作ったりする創造的な表現技能。

4) 楽譜を読んだり,書いたりする技能。

5) 劇や遊戯などの身体的な動作によって,音楽のリズムや感じを表現する技能。

4 知識と理解

 音楽についての知識とその理解の評価は,今まであげたほかの諸項目に比べて,割合に実施されやすく,かつ割合に行われてきた。それはいわゆる,紙と鉛筆のテストによって相当の程度まで測定することが可能であるからである。しかしながら,ただそれが点数あるいは標語として表わされるばかりでなく,その内容はどの点がすぐれ,どの点が劣るか,またほかの表現能力や態度との関連はどうであるかなど,テストによって出た結果の内容の考察が行われなければならない。また,テストの問題や内容が,広い観点よりなされていて,偏するようなことはないかどうかを評価して,指導の適正を期するようにしなければならない。次にその項目をあげよう。

1) 楽譜についての基礎知識はどの程度得たか。

2) 音楽の要素とその組合せについて,どの程度の知識と理解ができたか。

3) 演奏の機関や演奏の形態に関して,どの程度の知識と理解を得たか。

4) いろいろな音楽とその内容について,どの程度の知識と理解を得たか。

5) 日本および外国の民謡に関して,どの程度の知識と理解を得たか。

6) 日本および外国の名高い作曲家の一生ならびにその作品について,どの程度の知識と理解を得たか。