第四章 国語学習指導の具体的展開例
第一節 国語科の指導法をどう考えたらよいか

一 指導にはどんな方法が考えられるか

 聞くこと、話すこと、読むこと、書くことという分け方は、言語活動の上で、便宜的に分けたものであるから、国語学習指導の具体的な方法を考える場合に、その一つ一つを孤立させて指導する方法は、望ましくない。しかし、この四つの言語活動を、いつも、その時間内にまんべんなく取り入れた、総合的な方法だけでやらなければならないという性質のものでもない。四つの言語活動を有機的に関係づけつつ、題材の性質に応じて、重点のおき方を考え、一年間を通じて、国語能力表の要求するところに適応するような方法が望ましい。

 学習指導の具体的な方法は、いろいろあるが、大きく分けると、既成の教科書を採用し、それに準拠しながら学習を進めていく方法と、教科書から離れて、話題なり、問題なり、言語経験なりを別に設定して、それを中心にして、ひとまとまりの学習を次々に進めていく方法とがある。教科書の編修にも、さまざまな教材を話題・問題・言語経験などによって、まとめていく傾向が強くなってきた。学習の展開の中心となる話題・問題・言語経験を総称して、その学習の題材と呼ぶならば、既成の教科書に選ばれている題材を、そのまま、採用するのが、前の方法であり、教師の独自の判断で新しく題材を設定して、学習を展開するのがあとの方法である。そのいずれの方法を採用するかは、教師の力や学級の実情、その他によって決定すべき問題である。

 前の方法は、学習指導が楽であるが、児童の興味や必要にぴったりあてはまるかどうかということに難点がある。あとの方法は、児童の興味や必要に応じた題材を設定するのであるから、その点では困難はないが、教師の力を要求する面がきわめて多いという難点がある。それゆえ、教師は、自分の受け持つ児童をよく見つめて、自分にいちばん適応した、最も効果のあげられると信ずる方法を採用することが望ましい。

 なお、単元学習法と呼ばれるものは、あとの方法をさすことが多いが、単元的に編修してある教科書に準拠して学習を進めるならば、やはり単元学習法と呼ばれるものである。いずれの方法を行うにしても、特に系統的な練習を必要とする技能的な方面の学習は、一応別の指導計画をたてることが無難であるが、そのときには題材との関連に注意を払い、児童の興味と必要とを絶えず強めていく処置を忘れてはならない。

 それゆえ、題材をどのように設定し、学習をどのように展開するかについては、その学習の目標をはっきりたて、児童の興味と必要や知能の実態を考え、それぞれの地域や、学校や、学級の特殊性を考慮して計画されなければならない。

 国語の学習指導において、どのような具体的な方法を取るにせよ、児童の学習活動を展開させるにあたっては、その学習の目標をはっきり児童にのみこませ、できれば児童の学習活動も児童の自発的な参加によって計画をたて、その学習に対する児童の興味と必要をじゅうぶんに起しておくことが望ましい。また、その学習活動が効果的に展開しているかどうかについて、教師としてもテストや調査によって効果の判定を行い、児童自身にも進歩の状況を判断させ、展開が希望する方向へ所期の進度で進められているかどうかをはっきり知る必要がある。

二 指導の方法上、どんな点に注意したらよいか

 国語科学習指導の方法上、特に注意すべき諸点は少なくないが、大きく分けると、学習の効果を高める問題と、学習の負担を軽くする問題と、学習の困難の診断および治療の問題との三つになる。

 まず、学習の効果を高めるための一般的な原則となるものを考えてみよう。

 新しい学習を始めるにあたり、児童の知能・身体・情意・社会性などが、その学習が行える程度まで発達していなければ、学習は効果があがらない。たとえば、入学当初の読むことの学習指導では、はじめて文字が習得できるための準備、あるいは用意が児童に整っていないと、学習の困難を起す児童もでてくる。こうした学習の困難をできるだけ防ぐためには、入学したての児童について、国語の学習を進める前に、それぞれの児童の知能・身体・情意・社会性などの発達状態を調べ、文字指導にはいる前に、実情に則した準備的な学習指導計画をたてることが望ましい。

 しかし、学習への準備あるいは用意が一応整っただけではまだふじゅうぶんである。新しい学習を進めていくにあたっては、その学習に対する興味と必要とが児童自身の間に高まっていなければならない。興味と必要があるものに対する学習は、児童によって生き生きと進められ、学習の効果もきわめて大きい。このような興味と必要があまり高くない場合はもとより、ある程度高まっている場合でも、教師の巧みな指導によってさらに高める処置が必要である。これがいわゆる動機づけである。

 動機づけは、各学年にわたり、どの新しい学習に対しても必要である。動機づけにあたっては、学習の目標をはっきり児童に知らせ、その目標に到達するための学習活動の展開についても、ある程度まで知らせておくことがたいせつである。動機づけは、帰するところ、児童が新しい学習に対して自発的な活動を起すようにすることである。

 なお、学習効果を高めるための原則の一つとして、学習効果の判定がある。児童の学習活動の展開の途上で、その学習が効果的に進められているかどうかをときどき判定し、児童にも効果の実情が自覚されて反省されるようにすることが望ましい。

 児童の学習効果を高めるためにも、また学習の負担を軽くするためにも、特に注意しなければならない問題の一つは、個人差に応じた指導を行うことである。しかし、現状のように一つの学級が五十人も六十人もの児童からできている場合には、個別指導も効果があげにくいが、教師は、個人差に応じた個別指導の趣旨をできるだけ取り入れて、指導することが望ましい。個別指導の一つの方法として、能力別グループ学習が取り入れられるようになった。

 以上に述べたようないろいろな方法を巧みに取り入れても、児童のうちには、国語の学習に困難を感じ、進度が遅れたり、とまったりするものもできてくる。国語学習の遅進児、あるいは遅滞児は、他教科の遅進児、あるいは遅滞児にもなりやすいものである。もしそうした児童ができた場合には、そのひとりひとりについて事例研究(ケース・スタデイ)を行い、その原因について、正しい調べ、すなわち診断することが必要である。正しい診断ができれば、それに基いて、教師自身が行える的確な治療的学習指導の計画がたてられるし、場合によっては、それぞれの専門家に頼むこともできる。

 遅進児を扱う上の一般的な注意としては、そうした児童がもちやすい劣等感をなくしてやり、それらの児童でもできるような、やさしい学習作業や練習を与えて、それに成功させてやることである。成功感は満足感を伴い、満足感はさらに進んだ学習への興味と必要とを高めるものである。

 国語学習指導の方法についての、技術的な問題には、なお多くのことが考えられるが、教師は、地域や、学校や、学級の特殊性に基いて、最も効果のあがる指導方法を絶えず研究し、その結果を実際に生かしていくようにしなければならない。

 

第二節 うんどうかい(第一学年の例)

 題 材 うんどうかい

一 この題材をとったわけ

二 目 標

 この学習では、次のような目標が考えられる。

三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十時間) 六 評 価  
第三節 ことばあつめを しましょう(第二学年の例)

 題 材 ことばあつめを しましょう

一 この題材をとったわけ

二 目 標

 この学習では、次のような目標が考えられる。

三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十時間) 六 評 価  
第四節 童話を読みましょう(第三学年の例)

 題 材 童話を読みましょう

一 この題材をとったわけ

二 目 標 三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十五時間) 六 評 価 七 資料としての「おしゃれとんぼ」原文  おしゃれとんぼ

 一ぴきのとんぼがいました。

 すきとおるはねをうごかしながら、なかまといっしょにむらがってとんでいました。

 あるとき、こがねむしにであいました。

 そうして、そのはねが金色に光っているのにびっくりしました。

 それにひきかえて、じぶんのはねがなんの色もなく、ただすきとおっているのがものたりなくみすぼらしくみえてきました。

 せめて、このはねにつやでもだしてやろうと、とんぼはかんがえました。

 それから朝となくひるとなく、ブラシではねをみがきだしました。つやだし油をつけてみがきました。

 なかまがきて、遊びにさそっても、はねがよごれるからいやだといいました。

 すこしでもほこりがつくと、大さわぎをしてみがきたてました。

 みがけば、みがくほど光ってきました。なかまが、そばによってくると、

 「よごれるからさわっては、いやよ。」

といいました。

 そういわれると、なかまは、わざとそばによっていきました。

 はねがつやつやしてくると、こんどは、じぶんの目だまをきれいにみがかなくてはとおもいました。

 そこで、ひまがあると、こんどは、大きな目だまを手のひらでふきました。目だまも、まるでレンズのようにぴかぴかしてきました。

 目だまがきれいになると、からだをきれいにしたくなりました。

 それでつやだし油を、むねにぬりました。おなかにも、せなかにもぬりました。

 六本の足にもぬりました。つめにもぬりました。

 からだ全体がつやつやしてきました。

 このとんぼは、たいへんいい気もちになって、とんでいきました。

 それをみて、なかまのとんぼは、「おしゃれとんほがきた。」といいました。そうして、そばによっていきませんでした。「もう、あんなおしゃれとんぼといっしょに遊ぶのはいやだ。」といいました。

 それとはしらずに、おしゃれとんぼは、とくいになって空をとびました。こんな、きれいなとんぼのまえにでてくるのは、はずかしくて、なかまのものがそばにこないのだとおもいました。

 そこへ、あげはのちょうが、ひらりひらりととんできました。

 おしゃれとんぼは、それをみて、かんがえました。

 「なんときれいなはねだろう。わたしも、あんなきれいなはねをもちたいものだ。」

 そこで、おしゃれとんぼは、町にでかけました。

 そうして、そめものやをさがしました。うんよく、そめものやのかんばんがみつかりました。

 「ごめんください。」

と、おしゃれとんぼが、戸口で声をかけました。

 「いらっしゃい。とんぼさん、なにかごようですか。」

と、そめものやさんがたずねました。

 「わたしのこのはねをきれいにそめてもらいたいのですが。」

 「それは、いいおもいつきです。どんなにでもそめられます。」

 「なにか、いい見本でもありますか。

 「ございます。さあ、どうぞ、こちらへ。」

 おくのへやにいくと、そこには、いろいろな、きれいなもようの見本が、がくにしてかけてありました。

 あまりたくさんあるので、さすがのおしゃれとんぼも、目うつりがしてしまいました。

 「どれもいいもようだわ。どれが、わたしににあうかしら。」

 「そうですね、これはいかがでしよう。」

といって、とりはずした見本は、むらさきの地色に、きいろの水たまがついているもようでした。けれども、これは、じみだといいました。

 「これは、いかがでしょう。」

といってだしたのは、こい緑の地に、まっかなばらがさいているもようでした。

 「ちょっといいわね。」

と、おしゃれとんぼがいいました。

 そめものやさんは、つぎに、まっきいろとオレンジのいちまつもようをみせました。

 「あ、これが気にいったわ。」

 これで、どうやらきまりました。

 「じゃあ、これにいたしましょうか。」

ときかれて、おしゃれとんぼは、

 「そう、このいちまつもようを右のはねに、こちらの赤ばらを左のはねにそめてもらいましょう。」

といいました。

 そめものやさんは、ちょっと、へんなかおをしましたが、すぐとんぼをみて、

 「へえ、へえ。かしこまりました。」

といって、見本をしまいました。

 「いま、すぐ、そめられますの。」

 「そめられます。しばらくおまちください。そめこをときますから。」

 おしゃれとんぼは、いすにこしかけました。かべには、大きなかがみがかかっていました。とんぼは、かがみをみながらはねを動かしました。水のようにすきとおったはねは、なんとさっぷうけいだろうとおもいました。まるで氷のようにつめたいとおもいました。

 それが、今に、あんなきれいな色にそめあがるのかとおもうと、うれしくて、じっとこしかけていられません。うきうきしてそこらをあるきました。

 「はい、よういができました。どうぞ、おかけください。」

 しごとばには、そめこのにおいがして、うすぐらいかんじがしました。

 「どうぞ、右のはねを――。」

と、そめものやさんは、五六本ふでをもって、つぎつぎとそめこをつけてぬりました。

 そめものやさんは、なれた手つきで、さっさとぬりつづけました。

 いたくも、かゆくもありませんが、じぶんのからだが、生まれかわるような気がしました。

 とんぼは、なんともいえない、いい心もちになって、ついねむたくなりました。そうしてほんとうにねむってしまいました。そうして、こんなゆめをみました。

 「なんてきれいな、とんぼさんでしょう。」

みつばちは、こういいながら、じぶんのまえをとんだり、うしろをとんだりしてながめました。

 じぶんは、おうようにはねをひらいたまま、すこしななめにとびました。

 しばらくいくと、あぶがやってきました。

 「どこのおひめさまなのだろう。いままでにこんなりっぱなかたにであったこともない。」

そういって、おどろきました。

 じぶんは、うす目をしながら、よこっとびにとんでみました。

 しばらくいくと、せみがきました。

 「どこからきたまほうつかいだろう。」

 びっくりして、ジジジーとなきました。じぶんは、せみの目のまえを、スキップしながらすばやくとんでみせました。せみは、

 「あ、いいにおいがする」といって、またジジジーと鳴きました。

 「おまちどうさまでした。」

 そめものやさんにいわれて、とんぼは、目をさましました。

 「はい、そめあがりました。よく、そまりました。」

 とんぼは、あくびを手のひらでおさえて、かがみのそばにいきました。

 そうして、右と左のはねをおもいきりひろげてみました。はねは、ちゅうもんどおり、いや見本よりも、もっとよくそまっていました。

 とんぼは、はねをひろげたまま、からだを少しずつまわしてみました。

 あまりきれいなので、じぶんでもみとれるほどでした。すわっているうちにおどりたくなりました。うたいたくなりました。

 「おきにいりましたか。」

 「きにいったわ。この色ははげるようなことはないでしょうね。」

 「じょうだんじゃありません。どんな雨にあたってもはげません。どんなに日にさらされてもあせません。」

 「それで安心したわ。」

 「日がたてばたつほど、そめこの色がよくでてくるくらいです。」

 「ありがとう。おつりはいらないわ。」

 とんぼは、お金をはらって、そめものやさんをでました。でるとき、もう一どかがみをみて、それから目だまをなでてそとにでました。

 そめものやさんがみおくっていると、とんぼは、たちまち青い空へ向かってとんでいきました。それは、まるで花びらがとんでいくようにうつくしくかがやいてみえました。じぶんのそめたもようがこんなにりっぱにみえるものかと、おどろくほどでした。

 おしゃれとんぼは、すいすいと、風にのってとびました。とぶというよりは、おどっているようなかっこうでした。

 いましがたみたゆめのつづきのようでした。

 そこへ、あかとんぼがとんできました。あかとんぼは、目をこすりこすり、おしゃれとんぼをみつめました。

 「ありゃ、なんだろう。かたちは、じぶんたちににているが、はねはすっかりちがっている。なんだろう。」

 あかとんぼは、すぐ、なかまにこのことをしらせました。

 あかとんぼたちがやってくると、おしゃれとんぼは、大きくわをかいてとんでみせました。

 一ぴきの赤とんぼが、ずっと近づいてみると、それがおしゃれとんぼだということがわかりました。

 わかると、あかとんぼたちは、

 「なんだ、おしゃれとんぼか。」

と、そのままどこかへいってしまいました。

 すると、こんどはからすちょうがとんできました。

 「どうして、そんなにきれいになったの、すばらしいわね。」

と、はなしかけました。

 おしゃれとんぼは、へんじもしないで、つんとすまして、やのようにとびました。とびながら、

 「あんなまっくろなはねなんぞ、もうみたくもないわ。」

と、ひとりごとをいいました。

 「さ、わたしのはねより、きれいなものがあるかしら、あったら、みせるがいい。」

 おしゃれとんぼは、いつのまにか、心まで、こんなにたかぶっていきました。

 「こんなきれいなはねは、虫はおろか、小鳥にだってあるまい。」

いよいよ、心がおごってきました。

 そこで、だんたん空を高くのぼっていったのです。

 高い空には、つばめがわたっていました。

 とおい、とおいところからとんできたつばめたちは、みんな、おなかがすいていました。

 虫がいたら、一口にたべたいとおもっていました。

 一わのつばめは、おしゃれとんぼのはねをみつめました。そこでいきなりとんできました。それともしらず、おしゃれとんぼは、うす目をしながら、おどっていました。

 たべようとしたとき、大きなかぶとむしが、ブブンとつばめの口ばしにつきあたりました。

 これで、おしゃれとんぼのいのちがすくわれました。

 「かぶとむしさん、あぶないわ、つきあたったりして。」

 おしゃれとんぼは、気がついても、おれいをいいませんでした。

 「あぶないよ、ここからは、鳥のせかいだから。うかうかできないよ。」

 かぶとむしは、茶色のはねをぶきようにブンブンさせながらどこかへいってしまいました。

 「なに、あんなに、おんをきせなくたっていいよ。つばめは、わたしのこのはねをみにきたんだよ。」

 おしゃれとんぼは、人の親切も、わからないほどになりました。

 その時でした。もう一わのつばめが、おしゃれとんぼのまえに大きな口をひらいてあらわれました。

 あわててにげようとしましたが、まにあいませんでした。しっぽにかみつかれてしまいました。おしゃれとんぼは、しっぽをきって、いのちからがら、ようやくにげてきました。

 にげてくると、すずめがそのはねにめをつけて、とんできました。

 おしゃれとんぼは、きりの木のかげにかくれました。

 ふと、そばをみると、ねこが、目をさまして、こちらをにらみました。

 はねがうつくしければ、うつくしいほど、小鳥たちの目にとまりました。

 空をとんでいても、木かげにかくれていても、安心していることができなくなりました。

 おしゃれとんぼは、山や、野原をとぶことをおそれて、人のすんでいる村にやってきました。

 そうして、ここならばとおもって、ある家のにわの竹がきにとまりました。

 心ぱいやら、つかれやらのために、うとうとしていると、どこかの男の子がこん虫あみをもって、そっとそばによってきました。

 「おもしろいとんぼがいるよ。とってやるからね。」

と、小さな弟にいいながら、げたをぬぎました。

 パサッと、こん虫あみをかぶせました。けれども、竹にひっかかりました。おしゃれとんぼは、わずかのすきまから、こわごわやっとにげたしました。にげるひょうしに、足が二本おれてしまい、目だまにきずがついてしまいました。

 いたむ足と目だまをおさえながら、あたりに気をつけて、とんでいるじぶんを、「あわれだな。」とおしゃれとんぼはおもいました。

 そうして、はねが、目だつから、こんなにあわれなことになったのだと、気がつきだしました。

 気がつくと、もう、じっとしていられません。すぐこのはねの色をあらいおとすことにしました。

 そこで、きれいな川のきしにおりていって、はねを水につけました。

 しばらく水につけてから、ジャブジャブとあらいました。いくらあらっても色はおちませんでした。あらうほど、あざやかな色になるようにみえました。

 そばにあったとくさで、はねをこすりました。こすると色はとれました。とれるといっしょに、はねにあながあきました。

 そこへ、一ぴきのががとんできました。

 がは、あつぼったい、こげ茶色のはねをしていました。そのおちついた、ひんのいい色におしゃれとんぼは、おどろきました。

 「とんぼさん。なにしているの。そんなにしちゃ、だいじなはねがいたむわ。」

 「――」

 「やけになっちゃ、はねがなくなるわよ。」

 「でも、もう、こんな色のついたの、いらないわ。」

 「そんなにしなくとも、きえるわ。」

 「どうしたらいいの。おしえて。」

 「どうするって、そめものやさんにたのむのよ。」

 なるほどと、とんぼはおもいました。このことばをきいて、いままで目もくれていなかった、いなかものくさいがが、にわかに、かしこい、えらいものにおもわれました。

 「ほんとうに、そうだったわ。さっそく、そめものやさんのところにいって、そうだんしましょう。ありがとう。」

 こうおれいをいって、おしゃれとんぼは、おそるおそる空をとびました。

 大きなやんまが、おしゃれとんぼをふりかえって、「わははは」と大声でわらうのが聞こえました。

 おしゃれとんぼは、はずかしくなりました。からすが、カアカアとないていても、びくびくしました。

 ようやく、そめものやさんのところにつきました。

 「ごめんください。たのみます。」

と、大きな声でいいました。

 「あ、とんぼさん、いらっしゃい。こんどはどのように、そめますか。」

と、そめものやさんがききました。

 「いや、いや、もう、そめるんじゃないわ。」

 「すると、どうなさるのですか。」

 「このはねをもとのようにしたいのです、このそめもようをけしてほしいのです。」

 「――」

 「けすことができるのでしょうか。わたしは、もう、いのちにはかえられません。どうか、あなたの力で、このもようをとってください。」

おしゃれとんぼは、手をあわせるようにして、たのみました。

そめものやさんは、おちついた声で、

 「では、あなたのいうように、もようをとってあげましょう。」

といいました。

 「とることができるの。」

 「できますとも。」

おしゃれとんぼは、安心してむねがきゅうにいっぱいになりました。

「どうぞ、こちらへ」

らす暗い仕事場にはいっていって、いすにこしかけました。

そめものやさんは、すこしくさい水のはいったびんをもってきました。

それをまっ白なふでにふくませてから、とんぼの右のはねにぬりました。ぬるかたはしから、もようの色が、きえてなくなりました。

 右のはねがすっかりきえてしまうと、こんどは、左のはねにくすりをぬりました。

 「はい、これできえました。」

 おしゃれとんぼは、かがみの前にいって、はねをひろげてみました。はねは、すこしの色もついていませんでした。氷のようにすきとおり、セロハンのようにきれいになっていました。

 すずしげな、きよらかな、じぶんのもとのはねをじっとみていると、おしゃれとんぼの目だまから、大つぶのなみだが、ぽとぽとながれてきました。

 なみだもぬぐわないで、かがみにうつった、じぶんのはねに見とれていました。

 
第五節 手紙を書きましょう(第四学年の例)

 題 材 手紙を書きましょう

一 この題材をとったわけ

二 目 標

 この学習では、次のような目標が考えられる。

三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十五時間)(この学習活動は、見学の礼状を書くという具体的な作業をもととして構成した) 六 評 価  などの諸点について、最も効果的な方法を考えて評価する。

 

第六節 辞書を利用しましょう(第五学年の例)

題 材  辞書を利用しましょう

一 この題材をとったわけ

二 目 標 三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十時間)

(一) 動機づけ(ここでは、動機づけのための三つの例を示す)

(二) 展 開

 学習の動機づけとして、以上のように、だいたい三とおりのいき方を説明した。そのおのおのの学習の展開は、やはり違っていかなければならないだろう。次に示すのは、最初に掲げた動機づけからの展開として、いくつかある中から一つの例を取り出して試みたものである。

六 評 価  
第七節 学校新聞を編集しましょう(第六学年の例)

 題 材 学校新聞を編集しましょう

一 この題材をとったわけ

二 目 標 三 内 容 四 資 料 五 学習活動(約十二時間) 六 評 価