第四章  作業単元の展開

 

第一節 展開の方法

 

 これまでにのべてきた方法で、基底に基づいて構成された単元を、有効に実施するためには、さらにこれを具体的に動的に展開しなければなりません。単元展開の方法はいろいろありましょうが、次に参考として示す方法も、便利なものと思います。

 

まえがき(本単元をえらんだ理由)

一、単元の効用

(一)民主的な社会生活に対する効用。

ここでは次のようなことがらが示されなければなりません。

1.社会生活に関する理解がどのように発展するか。

それには、たとえば次のようなことがらが着眼点になります。 イ.人と人との相互依存関係。

ロ.人間と自然環境との関係。

ハ.すべての個人は価値をもつこと。

ニ.人間は自治の能力をもつこと。

(これには学習指導要領の各学年の目標が参考になります。)

2.計画された学習活動によって、自主性、批判的な考えかた、寛容、他人の権利の尊重、協同、責任観念などの民主的態度がどのように発展するか。

3.社会生活に必要な技能、たとえば指導者を選ぶこと、自治の規則を作ること、みんなで協同して計画をたてることなどがどのように学ばれ、身につけられるか。

4.人々がどのようにしてその人間としての基本的欲求をみたしているかについての、すなわち社会生活の諸機能についての理解がどのように発展するか。

(二)児童に対する効用 その単元が児童にとってどのように価値があり、どのように適しているかということを明らかにしなければなりません。

1.その単元はどのように学習動機としての次の六つの欲求を満足するか。

イ.好奇心

ロ.おとなの生活を劇化したいという欲求。

ハ.物をいじったり作ったりしたいという欲求。

ニ.話を聞いたり、話したり、作文その他を書くことによって、思想をたがいに通じあいたいという欲求。

ホ.身体的活動をしたいという欲求。

へ.美的表現をしたいという欲求。

2.この単元がどの程度児童の年齢の程度に適し、その過去の経験および現在の生活の中にある問題に関連しているか、またどのように将来の発展に導くか。

3.すべての児童が自分の能力を精いっぱいに使って仕事をすることができるように個人差に対する配慮がなされているか。

4.児童の人格の発達にどのように役立つか。

イ.情緒的に ロ.身体的に ハ.社会的に ニ.知的に
二、単元の導入

 (単元への導入にはいろいろの方法があります。以前に学習した単元や映画や遠足から引き続いて導入することもできるでしょう。しかし単元がどのように始められるにせよ、学習は整備された環境の利用によって進められます。)

(一)環境の設定

 (環境の中に備えられるべきものは学習の六つの動機を刺激するものでなければなりません。しかし、これらの動機は、それが満足される方向に向かって刺激されなければなりません。材料も道具も与えられていないのに物を作りたいという欲求を剌激してもなんにもなりません。)

1.好奇心に対しては、 書物(著者と書名)

絵(題目)―教師によって集められたり作られたりしたもの。

2.劇化のためには、 (低学年児童には床の上にごっこ遊びの装置をしてやる。高学年の場合には、衣しょうや道具を備えてやる。)

これらの資料を教室内にどのように配置するかを図面で示す。

3.物をいじったり作ったりするためには、 (資料や道具を示す。) 4.思想をおたがいに通じあうためには、 (全環境が会話の話題を提供するであろう。) 5.美的表現のためには、 (歌の本、楽器、絵具、紙、絵筆など) 6.身体的活動のためには、 (劇的遊戯や、物の製作)
 (右の諸資料は児童の生活の中にみいだされる問題を解決の方向に導くように準備され配列されなくてはならない)。

(二)環境への働きかけ

 児童はそこに展示してある事物をながめたり、ためしたりする。教師はこれをよく見守り、児童たちの話しあうところをよく聞く。

(三)環境への反応

 教師と児童はそこに展示してあるものについて話しあう。教師は児童の疑問や問題を黒板の上に書きならべる。

三、学習活動の発展

 児童の疑問は答を必要とし、児童はその問題を解決することを欲求する、しかも問題はさらに問題を生む。これらの必要や欲求をかきならべ、それを解決するための学習活動を記述する。(次のような形式に)

必要や欲求………………………………………含まれる経験 録として、単元の指導の全期間を通じての知識のよりどころ、製作の順序を示す図、地図、図表、図面などを示す。 知識のよりどころとしては、次のようなものが含まれる。

1.遠足や見学の場所

2.説明のための資料

3.教師の参考書目

4.工作過程の順序を示す図面

5.模型の図面

6.映画(できるなら)

7.幻燈

8.図書目録(著者・書名・発行所・発行年月)

教師のための図書目録

児童に読んで聞かせる図書

児童用図書

 

第二節 作業単元展開例

 

 以下に第二、第四、第六学年の作業単元の展開例を一個ずつ示します。ただしこれは、作業単元の性質上、特定の地域の、特定の時期の児童のために作られたものですから、これをそのまままねるべきでないことはいうまでもありません。しかし、個々の教師が、それぞれの立場から単元を構成し展開していくのに参考になるでしょう。

 

近所の生活 (第二学年)

 

 ここに示す作業単元の展開例は、いなかの町の児童を対象としたものである。町の住民の約半数は農家、三分の一は商家、その他はつとめ人である。

 実施の時期は第一学期が予定されている。

 児童はこれまでの日々の生活で、近所の人たちの助けあいや交際、また近くにある店や共同施設について、すじみちを立てて考えたことはないまでも、ある程度の理解や知識をもっているであろうし、学校における社会科のこれまでに学習した単元や他教科によっても、これらの諸点に幾分か触れてきたから、児童は興味と同時にしたしさをもって気やすく学習に入り得るであろう。

一、この単元の効用

(一)民主的な社会生活にとって、

1.この単元は児童が社会生活に関する次のようなことがらを理解するのに役立つ。 イ.近所の人々の職業,また近所の人々が職業の部面でばかりでなく、生活のいろいろな面で協力していることを理解するであろう。

ロ.田を段々にしたり、水を引いたりすることや、道路、輸送の方法などに注意することによって人間と自然環境との関係を学ぶであろう。

ハ.周囲の社会で仕事をしているすべての人々を尊敬し、その価値を認めることにより、また児童たちが相互に力になりあっていることを認めることによって、すべての個人は価値をもっているということを学ぶであろう。

ニ.自分たちの規則を作り、自分たちの行動を評価することによって、人は自ら治めることができることを学ぶであろう。

2.他の児童と協力したり、道具や材料を分かちあったり、順番を守ったり、責任を遂行したりすることによって、民主的な態度を発展させることができるであろう。

3.規則を作ったり、指導者を選んだり、集団で討議したり、計画を立てたり、結果を評価することにより、民主的な技能を学ぶことができるであろう。

4.人々の基本的欲求をみたすためには、多くの人々が協力していることを学ぶであろう。

(二)児童にとって、 1.これは学習の六つの動機をみたすであろう。 イ.見学したり、観察したり、話をきいたり、読書したりすることによって好奇心がみたされる。

ロ.近所の生活を劇化することができる。

ハ.ごっこ遊びに必要な道具を作ることができる。

ニ.話しあいをしたり、質問したり、報告をしたり、会話をしたり、文を書いたりすることにより、思想・感情をたがいに通じあいたいという欲求を満足させることができる。

ホ.工作したり、ごっこ遊びをしたり、見学にいったりすることによつて、からだを動かすこともできる。

へ.リズミカルな動作をしたり、絵をかいたり、歌ったり、楽器を作ったりすることができる。

2.この単元は第二学年の経験領域に基づいて作られている。しかし、よりひろい範囲の職業の種類や内容、生活必要物資の生産・運輸・配給・公共施設・通信方法その他について、いっそう深く知りたいという欲求、あるいは遠くにある店に買物にいきたいという欲求などの発展が期待される。

3.豊富な内容を含んでいるので、すべての児童のさまざまな能力の程度に応じ得るように多種多様な仕事を含んでいる。

4.この単元は児童の人格を発達させるであろう。

イ.情緒的に

(一)の2にあげたような生活態度の発達と関連して、児童たちは近所のおとなの中にはいっても、当惑したりちぢこまったりすることがなくなるであろう。また、自分のわがままをおさえて他人と円満に交わっていけるようになるであろう。またごっこ遊びをしたり、絵をかいたりすることによって、自分の感情を積極的に創造的に表現できるようになるであろう。

ロ.身体的に

見学にいったり、ごっこ遊びをしたりすることにより、全身の調和的運動が発達する。

絵をかいたり、工作したりすることにより、小筋肉の発達が期待される。

ハ.社会的に

近隣の人と応待する礼儀作法になれる。進んで近所の人の手つだいをする態度ができる。

共同施設や公共施設をたいせつにするようになる。

他人の意見を寛容な態度できき、またそれを批判する態度が養われる。配給物をとりにいくとき、自分の番を待つことによって、他人の権利を尊重する態度ができる。

ニ.知的に

前述の基本的理解に関連していろいろな種類の職業の理解が得られ、また読んだり、考えたり、判断したりすることの練習ができる。

二、単元の導入

(一)環境の設定

1.近所の人々の活動を示す絵 イ.野菜を積んだ手車

ロ.材木を積んだ荷馬車

ハ.通りを歩く人々

ニ.食料品店

ホ.小さい屋台店

2.とくになんらかの活動を示す絵 イ.食物の運搬

ロ.市場、百貨店、消防小屋、停車場、家、働いている人々

3.書物 文部省   まさおのたび

酒井朝彦  子供の田園

フレーベル館  キンダーブック(第一集第九編、第二集第編)

小学館   小学一年生 六月号

二葉書店  ふたば

大川書店  おともだち

4.床の上に配置されたごっこ遊びの装置 イ.床の上にかいた街路

ロ.街路上の市場

ハ.一軒の家

ニ.床の上の数個のあき箱

ホ.手車

ヘ.荷車

ト.人をあらわす小さい人形

5.ごっこ遊びの補助材料 イ.十二個以上の小さい人形

ロ.六個のあさい箱

ハ.六個の小さい袋(米・食料品などを入れる)

ニ.店で売る食料品の小さい模型

ホ.小さい道具(店や家の)

へ.積木

6.作業の道具と材料 イ.のこぎり台 ロ.道具箱 ハ.のこぎり ニ.かなづち・くぎ ホ.やすり ヘ.やっとこ ト.ねじまわし チ.きり リ.定規 ヌ.鉛筆 ル.三角定規 ヲ.サンドペーパー ワ.工作用木材 カ.黒板上に必要事項をかく欄 7.絵具・絵筆

8.粘土のはいったつぼをのせたテーブル、粘土板

(二)環境への働きかけ  児童はごっこ遊びの装置や絵などに興味をもつ。取り扱い上の必要な注意を与えたのち、教師は環境の中にある資料を児童に気ままに見たり使用したりさせる。児童は部屋じゅうにちらばって資料を見たり使用したり、それについて話しあったりする、教師は児童がこれらの資料に十分したしんだころをみはからって、あるいは、何か混乱でも起ったとき、児童を各自の席にもどらせる。 (三)環境への反応 次のような会話が行われるであろう。

教「何かおもしろいものがありましたか。」

児「絵具と紙があります。」

児「お店の絵があります。」

児「小さい車や通りがあります」

児「手車や荷車で、いろんなものをはこんでいます。」

児「とてもきれいな絵本があります。」

教「あそこにあるものをみなさんは自由に使っていいんですよ。これからあちらへいって、好きなものをお使いなさい。」

児「ぼくは車に何かつんではこぼう。」

児「わたしお店ごっこをしたいわ。」

児「ぼくはトラックの絵をかきたいなあ。」

教「あそこにある道具を使って、何でもしたいことをおやりなさい。」

児童はごっこ遊びを始める。しかしそうたくさんの遊具がないので、なかには絵をかいたり、粘土細工をしたり、本を開いて見るものもある。しばらくして教師はふたたび静かに席にもどらせる。

次のような会話がおこなわれるであろう。

教「あなたがたは何をしましたか。」

児「ぼく、粘土をいじっていました。」

児「わたしたち、お店ごっこをしたの。」

児「わたしお人形さんと遊んだわ。」

児「ぼく、トラックの絵をかいたよ。」

児「ぼくは絵本を見ました。」

児「ぼくは車を引っぱって遊びたかったけど、次郎君たらひとりきりで使っているんだもの。」

教「それではどうすればいいの」

児「もっと車作りたいなあ。」

教「何かほかにほしいものありませんか。」

児「ぼくもっとおうちを作りたいです。」

児「もっと車がほしいと思います。」

児童は次のような要求をだし、教師はこれを黒板上にかく。

ほしいもの

手車

荷馬車

トラック

教「ここに木がありますからね。これでほしいものをお作りなさい。まず作りたいと思うものをきめましょうね。」 (黒板上にかく)

家―次郎、花子、俊男、文子

手車―道雄、実、正子、雪子

荷馬車―秋男、春子、好子、武男

トラック―茂、明、光子

教「これ、こんなに木や道具がありますよ。」

教師はいろいろな道具を示したり、粘土や絵具のような仕事の材料を示す。

教「荷馬車や手車やお家を作る人は、静かに道具や材料をもっていって仕事を始めてよろしい。何も作らない人たちは、絵具や粘土を使ったり、本を見ていなさい。先生が合図(ベルあるいは鈴)をしたら席におかえりなさい。」

児童たちは仕事にかかる。教師は、道具の使用、材料の選択、あらたに起ってくる要求、示さなければならない手がかり、説明を必要とすることがらなどを注意深く見まわる。また、個々の児童の思考をうながすような質問を発する。

時間がくると、児童は席にもどる。教師は児童たちのした仕事の反省批評をさせる。次のような問を発する。

(1) あとかたづけをしたらどうですか。

(2) 仕事をした人たちはお掃除をしたらどうですか。

(3) 本を読んでいた人たちはおもしろかったですか。

(4) この次にごっこ遊びをしたり物を作ったりするとき、どんなことに気をつけなければなりませんか。

児童が意見を述べるのにしたがって教師は次のように黒板にかく。 (1) あとかたづけをすること

(2) 自分の仕事のあとでお掃除をすること

(3) 仕事をするときにはさわがないこと

三、学習活動の発展

 このようにして、ごっこ遊びは日を追って新しい必要をよび起し、これが黒板上の「必要欄」にかき加えられていく。掃除についても同様に、新しいめやすが生じてくる。物を作るごとに解明されねばならないことがらがつけ加わり、解決されなければならぬ数多くの問題、たとえば道具の安全な使用法について学ぶ必要が起る。児童も自分で安全のための規則を作りだすかもしれない。

ここでは、まず第一に必要となってきたことが二輪車を作ることであると想定する。二輪車を作るためには二輪車に必要な部分(車輪・車体・柄・囲いの板等)について話しあうことが必要になってくる。二輪車の観察をする。二輪車にもいろいろな種類があることに気づくし、おおいのないもの、おおいのあるもの、重いもの、軽いものなど、絵を見たり、学校の往復などで車を観察したりする。すべての二輪車は車体・しんぼう・輪・柄をもっており、人が歩きながら引いたり、自転車に乗って引いたりするものもあるし、動物が引くものもあるということを学ぶ。その他、車を引いたり、荷のつみ上げつみおろしをしたりすることによって、リズミカルな表現を学び、車の製作をして、のこぎりで引いたり、くぎをうったり、寸法を測ったり、数を数えたりすることなどを学ぶ。

必要や欲求 車(二輪車)を作りたい 含まれる経験 二輪車の部分について話しあう。―車輪・車体・柄・しんぼう等。

いろいろな種類の二輪車の違いを観察する。―おおいのあるもの、ないもの、重いもの、軽いもの。

二輪車の種類とその用途について話しあう。交通の多い街角にいって、二輪車の用途を観察する。

用途について話しあう。

荷をつみ上げたり、車を引っぱったり、荷をつみおろしたりして、リズミカルな運動をする。

車の各部分の正しい名称を学ぶ。

野菜、材木、くだもの等、荷の種類に応じて、車の形や荷のつみかたなどが違うことを知る。二輪車に乗ったことについて話しあう。

二輪車を作る。(寸法を測ったり、のこぎりでひいたり、数を数えたり、くぎでうったりすることを含む。)

作ったものを批評しあう。

教「次郎君きみ何を作っていたの。」

児「二輪車です。うまく輪がまわりません。」

教「もっと小さいくぎを使いなさい。」

教「茂君は」

児「四輪車です。」

児「片方の側が高すぎるよ。」

児「やすりでこすればひくくなるよ。」

教「四輪車も人が引くの。」

児「いいえ、牛が引くんです。」

児「この四輪車はあの二輪車より大きいね。」

教「いったいどっちが大きければいいの。」

児「四輪車のほうが大きくなくちゃあいけないです。」

教「なぜ。」

児「牛が引くんだもの。」

児「牛のほうが人より力が強いよ。」

教「トラックはだれが引っぱるだろう。」

児「だれも引っぱらない。」

教「それじゃどうして動くの。」

児「機械が引っぱるんです。」

児「ガソリンをいれるんです。ダッダッダッといいます。」

児「汽車は機関車が引っぱります。」

児「石炭をたいて走ります。煙をもくもくはいて。」

教「これから車を使って何をしますか。」

児「ぼくは野菜をはこぼう。」

児「ぼくは材木をはこぼう。」

ごっこ遊びをする。(トラックがまだ完成しないうちに児童たちはもうトラックを使って遊び始める。車につんではこぶものが必要になってくる。)

はこぶものがほしい。

必要なものを表にする。 野菜―その種類

その他二輪車ではこぶもの

粘土その他の材料で品物を作る。

次のことを学ぶ。

1.二輪車の手入れのしかた(黒板にかく。)

2.二輪車を使えばたくさんのものを、楽にはこべる。

3.車の手入れをすれば長くもつ。

人が車を引いているところを絵にかく。

トラックについて協同してお話をかく。

車とそれを引く人についての話をきく。

新しい材料や考えかたを使って、もう一度ごっこ遊びをしているうちに、車から荷をおろすことでごたごたが起る。

何でもかんでも一つ所に投げおろされる。話しあいをしているうちに、野菜は注意深く取り扱わなくてはならないことが話題にのぼる。

野菜をどう扱えばよいかを知るため、やお屋さんのことを知らなければならない、という新しい大事な要求が起ってくる。

やお屋を見学にいきたい。

やお屋の見学の計画を立てる。

見学事項をあげてみる。

見学の依頼状をかく。

お母さんに見学の許しをうける手紙をかく。

見学の規則を作る。

「私達の見学の規則」

1.いつもいっしょにいること

2.途中の歩きかたに気をつけること

3.やたらにものにさわらないこと

4.おぎょうぎをよくすること

5.いろいろなものを見て悪口などいわず、よいことだけいうこと

6.気をつけて話をきくこと

やお屋を見学し、次のことを知る。 野菜がじょうずにならべてあること

野菜が新鮮にしてあること

野菜や果物に定価表がついていること

店の人たちはお客にていねいであること

お客が店の人たちに礼儀正しいこと

お客は順番を待つこと等

ごっこ遊びにやお屋をつけ加える

これを批評しあううちに新しい要求が起る。

野菜、くだもの、水、お金、金入箱、等。 やお屋の絵を協同で作る。

やお屋の絵や、作文や、さし絵などを小冊子に作って家にもちかえる。

やお屋のある位置を地図上にあらわす計画を立てる。

町の簡単な地図の製作にかゝる。

学校、やお屋、その他児童のよく知っている建物の位置をその上にきめる。

次のような動作をリズミカルに表現する。

車に荷をつむところ、車を引くところ、荷をおろすところ

店のたなに品物をならべるところ

くだものや野菜の手入れをするところ

次のような簡単な問題を解く。

なぜものによって値が違うか。

なぜくだものや野菜は目方で売るか。

なぜ店は広告をするか。

やお屋の仕事について話しあう。

やお屋について知ったことを全部使うごっこ遊びを計画する。

地図に合せてごっこ遊びの装置を作ろう。 児童はおたがいに役割をきめる。(教師はこれを黒板上にかく。) やお屋―太郎

車を引く人―次郎、花子、俊雄、文子

お客―秋雄、春子、武男

ごっこ遊びのあとの批評で、次のようなことに関して争論が起るであろう。

一定の品物の値段

やお屋さんは売る品物をいつ、どうしてしいれるか。

一定の品物については、ひとりにつきどのくらいの量を買うことができるか。

(これらの疑問を黒板にかく。)

この疑問に答えるために、教師が書物を読んだり話したりするのをきく。

(ひとりでどのくらいまで買うことができるかという問題は、教師の話だけではわからないので、ここに新しい大事な要求が起ってくる。)

配給はなぜおこなわれるか、どのようにして行われるか知りたい。

配給のときの様子について話しあう。

ラジオや掲示板で配給の知らせがおこなわれたり、また一軒の家へ電話で知らせがきたりする。配給所の人がきめられた家へ自転車で知らせにくる。配給所の人が自転車でメガホンをもって町の角々をふれ歩くなど。

隣から隣への伝達方法について知る。

配給の通知を受けてから、家の人たちが配給を受けにいくまでのことについて報告したり、話しあったりする。

隣同志かわるがわる配給を取りにいったり、いそがしい家や手不足の家のものは、ついでに取ってきてやったりすることに気がつく。

配給所にいってみた経験について話しあう。

このような活動をしているうちに、児童たちは配給ごっこをしてみたくなる。

配給を今までのごっこ遊びに加えたい。

配給品にはどんなものがあるか話しあう。いろいろの配給所のうち、米の配給所を選んで計画を立てる。どんな道具がいるか。学校にあるもので利用できるもの、家からもってくるもの、自分たちで作れるもの、教師に作ってもらうものなどについて相談する。

配給ごっこをやってみる。

いろいろな不備な点を発見する。

配給所を見学する必要がある。 配給所見学の計画を立てる。

配給所に依頼の手紙をかく。

(教師は配給所と連絡をとっておいて、荷がトラックやリヤカーなどではこばれてくるときに見学にいく。)

配給所見学の注意について話しあう。

前のやお屋見学のときの注意事項の表を使う。必要なものがあったらつけ加える。

見学にいく。

配給所の備品やかざりつけを見る。

荷がはこばれてきておろされるところを見る。

人々が列を作っているところを見る。

お礼をいってかえる。

お礼の手紙をかく。

見学の結果を絵入りの作文にかいたり、絵にしたりする。

配給ごっこをもう一度もっとうまくやってみたい。 見学したことについて話しあい、配給ごっこをもう一度やってみる。

(客に接することばや金銭の計算を含む。)

以上は配給所中心の配給ごっこであるが、配給を受ける家庭の側についての活動には、ほとんど重点がおかれていない。教師は児童の心を、やがて配給所から家庭のほうへと移していく。配給通知の伝達方法、配給を受けにいくときの隣近所の協力などについて話しあいをさせる。そして今度は、各家庭に重点をおいた配給ごっこが計画される。

配給所は教師あるいは二、三の児童が経営する。

教師は児童のいうことをきいたり、指導したり、手助けしたり、困難な問題をノートにつけたりする。

家庭のほうへ中心をおいて配給ごっこをしよう。

各家庭を構成する。あるものはひとりだけ、あるものは母と子どもひとり、あるものはもっと大きな家族。

配給所から町角をまわって伝達がくる。あるいは電話のある家に電話で通知される。隣近所にいい伝える。各家庭から配給所にいく。配給所で先着順に列をつくって順番に配給を受けることも学ぶ。

おそらくひとりだけの家の者でも、家をからにして配給をとりにでかけるものがててくるであろう。

ひとりだけの家では、配給をとりにいくのにどうすればよいか知りたい。

批評しあううちに、ひとりきりの家の人が配給所にでかければどんなことが起るか、という問題がでてくる。

自分のうちや近所に留守のあいだに泥棒のはいったことがあれば話しあう。

近所に留守を頼むことや、近所の人に配給をとってきてくれるように頼むことをおぼえる。

病人だけの場合、病人がいて手をはなせぬ場合について話しあう。

以上のようにして児童たちの心を近所の助けあいにむけていく。

近所ではどんなときに助けあうか知りたい。

近所の助けあいについて話しあう。およそ次のようなことが話題にのぼるであろう。 病気のとき近所のおばさんが見舞にきてくれたり、赤ちゃんが生れたときや、姉さんがお嫁にいったときなどに、近所の人々がお祝いやお手つだいにきてくれたこと。

器物を貸借したり、家庭菜園でとれたものや、珍しいものを分けあったりすること。祝いごとなどにごちそうをくばりあって喜びをともにすること。

家庭菜園の作りかたや代用食の作りかた、衣料の更生のしかたなどで、よい方法があれば教えあうこと。

共同耕作をしたり、共同井戸を使ったり、おふろを貸しあったり、大掃除も日をきめていっしょにやったり、いっしょに用水さらいをしたりすることなど。

近所のおばさんがうちにお茶を飲みにきたり、うちのお父さんがお隣りのおじさんのところへ碁を打ちにいったりして、慰安娯楽をともにしていること。

以上のようなことについて協同で絵物語をかく。

近所の人々のすることをつけ加えて、もう一度ごっこ遊びを計画する。

近所にお使いにいくときの口上や、近所の人がきたときのあいさつのしかたについて話しあい、実際にやってみる。

お使いにいくときの注意について話しあう。道草をくわないこと。車馬の往来のはげしいところ、交差点、ふみ切りなど注意して歩くこと。

共同井戸や用水などをよごさないようにすること、おふろを借りるとき、よごさないことなどについて話しあう。

児童が近所のおばさんから、お使いや赤ちゃんのおもりをたのまれて、してやったことを話しあう。

家や近所で、自分たちにできるお手つだいやお使いなどをあげて表にしたり、その経験を作文や絵にかいたりする。

話しあいが多くて単調になるおそれがあるから、右のようないくつかの場面をかいた絵を示して話しあいをさせたり、紙芝居を見せたりするがよい。またそのようなおつきあいや、隣りのおばさんから赤ちゃんのおもりを頼まれたときの応対のしかたを、なるべくことばや動作で表現させる。

ごっこ遊びに近所の人々の助けあうところを加えたい。

近所の幾世帯かの家を作る。なかには二三の店や配給所もある。ある家には風呂もある。共同の井戸も作る。 このごっこ遊びがすんだのち、教師は「ごっこ遊び」の装置や書物、絵その他に関する新しい資料を展示して米や野菜に関する興味をひきおこすようにする。次のようなものが用意されるであろう。

(一)絵

1.農夫の家(おもや、牛小屋、豚小屋、鶏小屋、納屋等)

2.いろいろな時期に農夫が田で働いているところ

イ.牛を使って水田を耕しているところ

ロ.種をまいているところ

ハ.田植え

ニ.草とり

ホ.稲刈り

ヘ.稲こき

ト.もみすり

チ.米を俵にいれるところ

リ.俵をトラックに積むところ

3.畑で農夫が働いているところ イ.畑を耕しているところ

ロ.だいこん、じゃがいもなどを収穫しているところ

ハ.牛車に野菜をつんではこぶところ

ニ.手車で野菜をはこんでいるところ

4.農家に飼われている家畜家きん イ.牛(さくの中に幾頭かいるところ、および牛乳をしぼっているところ)

ロ.豚

ハ.鶏(親どりとひよこ)

(二)書物 1.文部省   まさおのたび

2.酒井朝彦  子供の田園

3.豊文社   農村四季

4.宮嶋書店  ふるさとの絵本

5.小学館   小学一年生 昭和二十三年六月号

(三)床の上にごっこ遊びの装置 イ.農夫をあらわす人形数個

ロ.牛のおもちゃ(二、三個)

ハ.家を作るための大小数個のあき箱

ニ.前に作った手車、荷車、トラック

ホ.田や畑をあらわすため、ボール箱の浅いふたに砂を盛ったもの。

(四)その他お百姓さんごっこに必要な材料や道具

粘土、きびがら、絵具、絵筆、画用紙、ボール紙、色紙、白紙、のり、はさみ、鉛筆、小さい紙袋、砂、かなづち、くぎ、きり、のこぎり等 児童たちはこれらの展示物を、好奇心と興味をもってながめ、さまざまな会話をおこなうであろう。農家についてあまり知らない子どもは、牛を使って水田を耕しているところや、脱殼やもみすりの絵を見て「これは何をしているところだろう」と疑問をおこすに違いない。これに対して農家の子供や、農家に親せきをもち、しばしばこれを訪問した経験のあるものは、得意になって説明するであろう。「ごっこ遊び」の装置を使って遊び始めようとする子供、粘土で何かの形を作り始めるものなどもあるであろう。

約十分間時間を与えて、自由な活動をさせたのち、教師は児童を各自の席にかえらせる。

教「あなたがたは、そこにある絵やそのほかいろんなものを見たり、いじったりしましたね。どんなことがおもしろかったですか。」

児「稲こきや、もみをするところがおもしろいです。」

児「ひよこがとてもかわいいです。」

児「牛はいろいろの仕事をします。」

教「ここにあるいろいろなものを使って、これからどんなことをしたいですか。」

児「牛を使って田を耕したいです。」

児「牛に荷車をつけて引かせたいです。」

児「お百姓さんごっこをしたいです。」

児「牛や豚や鶏を粘土で作りたいです。」

児「牛小屋も作りたいです。」

このようなさまざまの活動は、結局お百姓さんごっこの中に含まれるので、お百姓さんごっこをすることにきまる。

必要や欲求

お百姓さんごっこをしたい。

含まれる経験

お百姓さんごっこをするにはどんなものが必要か話しあう。

1.農家がもっとほしい

2.牛、豚、鶏がもっとほしい

3.牛小屋、豚小屋、鶏小屋

4.人形(これはすでに用意されているが、足りなければうちからもってくる。)

5.トラックや手車や荷車(前に作ったものを利用する。)

6.それらの車につむ米俵や野菜

7.牛につけるすき

児童の希望によって仕事を分担する。

農家―次郎、道雄、はな子、ふみ子

鶏小屋・鶏―明、実、はる子

牛小屋・牛―茂、まさ子

豚小屋・豚―博、ゆき子

米俵や野菜―秋雄、よしこ

すき―武男、みつ子

これからそれぞれのグループに分れて製作にかかる。仕事を少し進めていくうちに、いろいろわからないことができてきたり、論争などが起ってきて、結局農家にいって実際のところを見てくる必要を感じるであろう。

農家にいってみる必要がある。

農家のある方へ遠足する計画を立てる。見学すべきことがらをあげる。 1.農家のつくり(牛小屋、豚小屋、鶏小屋、納屋を含む)

2.牛、豚、鶏がどのようにして飼われているか。それが人間にどのように役立っているか。

3.農夫はどんな仕事をするか(主婦の仕事)

4.車はどのように使われているか。どんなものをはこぶか。

5.田や畑にはどんな作物が作られているか。

6.農夫はどんな道具を使うか。

見学の規則について話しあう。 1.農夫の仕事のじゃまをしないこと。

2.農作物をいためたり、田のあぜをこわしたりしないこと。

3.家畜や家きんにいたずらをしないこと。

4.礼儀正しくすること。

5.途中の交通に気をつけること。

教師はあらかじめ農家に依頼状をだしておく。

児童は父母に許しを受ける手紙をかく。

見学にいく。

農家からその仕事について話しをしてもらう。

お礼を言ってかえる。

かえってからお礼の手紙をかく。

見学の規則が守れたかどうかについて話しあう。

見学したことについて作文をかく。

見学の道すじを絵地図にかく。

次の諸点について話しあう。

1.農家の構造 それが町の商店や住宅とどんなに違うか。それはなぜであるか。 2.家畜や鶏が人間にどのように役立っているか。 農家の家畜や鶏が町の人々にどのように役立っているか。 3.田畑にどんなものが作られているか。

4.トラックや牛車や手車ではこぶもの。

5.農家の道具

農村の歌をうたう。

畑をくわでおこすところ、牛の乳をしぼるところ、荷車に荷をつむところ、牛車を引くところなどを、リズミカルに表現してみる。

製作にかかろう。 分団にわかれて製作活動を始める。

教師はそれにさきだって、床の上に舞台装置の図面を作らせ、各グループの製作物の大きさのつりあいに注意させる。

教師は計画の相談にあずかったり、必要な材料を指示したり、技術の指導をする。

できあがったものを批評させる。

製作活動中に利己的であったり、協同活動を阻害したり、混乱をひき起したりしたものがあったならば批評する。

製作したものやすでに用意されているものを、床の上に配置して、お百姓さんごっこをする。次のような舞台装置および活動が予想される。

一、農家三、四軒(牛、豚、鶏が小屋に飼ってある。)

二、たんぼ―砂箱で作る。牛を使って耕作している。

三、野菜畑―農夫が働いている。

四、トラック―米俵をつんで走る。

五、牛車、手車―野菜をつんで運ぶ。

お百姓さんごっこについて批評しあう。

その際、「トラックや牛車や手車は米や野野菜をどこにはこぶか」という問題がおこるであろう。もし児童の問題にならないときは、教師はこの問をだす。

児童の話しあいや教師の話によって、結局これらのものは米の配給所や八百屋にはこばれることに気がつくであろう。

そこで米の配給所や八百屋の店を作り、そこに野菜や米を買いにくる人(人形)も配置して、さらに大規模な「ごっこ遊び」に発展するであろう。

このころになればごっこ遊びもだいぶ組織だってくるので、児童たちは父母を招いて「ごっこ遊び」を見てもらいたくなるであろう。絵や地図も完成して父母に見せることができるだろうし、作文も手紙も読めるだろうし、歌やリトミックも実演できるであろう。

 

郷土の輸送 (第四学年)

 

まえがき―この単元の選ばれた理由  この単元は次のような町の子供を対象として作られたものである。

その学校は山間の小さい盆地の中央にあって、その土地の物産の集散地になつている人口二万ほどの町の一角にある。周囲の町や村の物産は牛車やトラックなどでこの町にはこびこまれ、運送会社の手をへて、裏日本から東京に通ずる単線鉄道によって、おもに東京、横浜方面へはこばれる。

 附近の村々からは、りんご、玉ねぎ、はくさい、だいこんなどが多く産出され、米の供出も多少ある。また山間の村からは、たきぎや木炭が多く出る。この町には鋳物工場の大きなものが一つあり、また小規模ながら製紙工場もある。なお付近の町村には製紙工場も散在していて、米国むけの生糸が生産されている。

 町の駅には相当大きな貨物ホームがあり、これらの物産の積み込みや、附近の工場へ送られてくる原料の荷おろしなどが見られるし、裏日本から東京方面にむかう貨物列車が通過するのも見られるので、さらに広い地域にわたっての物資の交流の関係も理解できる。

一、この単元の効用

(一)民主的な社会生活にとって、

1.どのような社会生活の理解を深めるか イ.一つの土地と他の土地とはたがいに生産物を交換しあっていること

ロ.交通運輸の方法が発達すれば遠い土地とも物資の交流が可能であること

ハ.気候,地勢の地理的条件が違えば生産物も違うこと

ニ.この単元はいろいろの学習活動の種類を含んでいて、児童たちはそれぞれ自分の長所を発揮して全体のために寄与することができるから、各個人はそれぞれ価値をもっているということを理解することができる。

ホ.自分たちでいろいろな計画を立てたり、規則を作ったりして実行してみることにより、人間は自治の能力をもっていることに気がついてくる。

2.民主的な生活能度がどのように発達するか、

共同で計画を立て、責任を分担し遂行し、相互に協力する態度、また道具や場所をわかちあうこと、それらの使用に関して他人の権利を尊重すること、正しい批判の態度などが発達する。

3.社会生活に必要な技能がどのように発達するか、

自分たちで規則を作ったり、みんなで計画を立てたり、有効な討議をしたりする技能が発達する。

4.郷土の産業や、他の土地との物資の交流を学ぶことによって、人々がどのようにしてその基本的欲求をみたすかを理解することができる。

(二)児童にとって、 1.六つの学習動機がどのように満足されるか イ.いろいろの貨車や機関車の構造、貨車についている記号、シグナル、クレーンなどは児童の好奇心を満足させる。

ロ.この単元はごっこ遊びで終始している。

ハ.物を作ったり、いじったりする機会は十分ある。

ニ.話しあったり、話をきいたり、文章をかいたりする機会も多い。

ホ.ごっこ遊び、工作、見学等、身体を動かすことが多い。

へ.絵をかいたり、詩を作ったり、歌をうたったり、リズミカルな運動をすることによって美的表現の機会が多い。

2.汽車やトラックなどはこの年齢の児童にとってもっとも興味深いものであるから、この単元はこの期の児童に適している。またそれらは、児童が日常経験しているものであり、簡単なものはこれまでに学校でも家庭でも作ってきたから、児童のこれらの既有の経験が本単元の学習に役立つ。

なお機関車や貨車やシグナルなどを、将来もっと科学的に研究してみたいという興味もおこるだろうし、もっと広い地域にわたっての交通、運輸の状況、生産の状況なども研究したいという興味がおこるであろう。

3.いろいろな種類の学習活動が含まれているので、児童はそれぞれその能力や性格の個人差に応じて力いっぱいの仕事をし、成功の喜びを味わうことができるであろう>。

4.児童たちは他人と共同の仕事や討議をしたり、自分たちで規則を作ったり、それが守られているかどうか反省したりすることにより、自己反省、自己統御などができるようになって、人格の発達にするところが大きい。

二、この単元への導入

導入方法としてはいろいろ考えられるであろうが、次のような方法がもっとも有効であろう。

(一)環境の設定

さきにあげた六つの学習活動を刺激するように、とくに貨車やトラックの製作およびそれを用いた貨車ごっこに、児童の興味と活動とを導くように、次のような事物を教室内にならべる。

1.おもな展示物

イ.町村、鉄道、通路および概略の地形を示す郷土の地図

ロ.日本全図

ハ.駅の全ぼうを示す鳥かん図または写真

ニ.貨物発着所のいろいろな活動を示す絵または写真

ホ.各種の貨車の外形の写真および簡単な構造図

へ.いろいろのシグナルや信号所の絵または写真

ト.りんご畑、鋳物工場、製糸工場、製紙工場の写真または絵

2.書物 イ.童画書房   きしゃ

ロ.二葉書店   蒸気機関車

ハ.運輸省    貨車

ニ.札幌鉄道局  貨車利用の栞

ホ.東京書房   日本の機関車

へ.平凡社    百科辞典

ト.交通日本社  貨物運送実務知識(教師用)

チ.       日本交通図

3.ごっこ遊びの道具(床の上におく。子供たちが最初は無軌道で車を動かすように、ことさら一定の舞台を作らない。したがって図面を示さない。) イ.牛車、トラック各一

ロ.箱貨車、無がい車、平らな無がい車(それぞれ一つ)、機関車二、客車三

ハ.りんごの箱づめ、米俵等をあらわす小箱や袋、木材を示す小さい木の枝、石炭を示す石の細片

ニ.貨物発着所になるようなあき箱二個

4.工作用具 イ.のこぎり

ロ.かなづち

ハ.きり

ニ.ドライバー

ホ.やっとこ

へ.ペンチ

ト.物さし

チ.定規

リ.小刀

ヌ.サンドペーパー

5.工作台

6.おもな材料

イ.みかん箱およびりんご箱

ロ.板(約一○センチ、七センチ、五センチの幅に切ったもの)

ハ.かんづめのあきかん(直径八センチぐらい)

ニ.細木(一センチ角くらいのもの)

ホ.車輪および車軸(木製または金属製)

ヘ.くぎおよび木ねじ

ト.粘土

チ.カゼイン

リ.ボール紙および和紙

ヌ.絵具またはペンキ

ル.画用紙

(二)環境への働きかけ  児童たちは、教室にはいると、右にあげたようないろいろの品物がならべてあるので、これらを好奇心と興味とをもってながめ、話しあいをはじめる。教師は児童たちに、部屋じゅうをまわって自由に絵や写真をみたり、道具をいじったり、ごっこ遊びをしたり、書物を読んだりしてよろしいという。児童たちはよろこんですきな活動をはじめる。興味はおそらく貨車やトラックなどを動かして遊ぶことに集まるであろう。はじめは貨車やトラックをからのままで動かしているが、そのうちに、それにいろいろな荷物を積んで動かしたり、あき箱を貨物ホームにして、それに貨物を横づけにして荷物を積みこんだり、むこうのあき箱まではこんでそこにその荷をおろしたりするであろう。なかには機関車の絵をながめて「これは流線型だよ」などと誇らしげに叫ぶもの、クレーンを発見して「ぼく、こんなクレーンをこのあいだ作ったよ」などというものもあろう。粘土や絵具に興味をもつもの、工作道具をもてあそんで何か作りたいような顔をしているものもあろう。

 教師はその間によく児童の興味の方向や疑問などに注意して、今後の学習活動の発展に役立つ点をノートしておく。児童の発する質問は他の児童によって解決されるものもあろうし、教師がその場で説明してしまうもの、のちの討議のために残しておくものもある。

 十五分くらいこのように自由に活動させ、だいたいそこにある事物にしたしんだころを見はからって、静かに席にかえらせる。

(三)環境への反応 教師と児童のあいだに、次のような会話がかわされるであろう。

教師「正雄君、きみは何がおもしろかったですか。」

正雄「ぼく、トラックにりんご箱を積んで走らせたんです。」

児童「トラックはおもしろいなあ。」

教師「そのりんご箱をどうしたんですか。」

正雄「一郎君がたいらな貨車に積みました。」

花子「一郎さんはたいらな貨車にりんごを積んでおいて、あんなにはやく走るものだから、いくつもおとしてしまったわ。」

教師「それはたいへんだね、りんごはいったい、どんな貨車に積めばいいでしょうね。」

次郎「箱貨車に積めば落ちないからいいです。」

花子「だって箱貨車にぎっしり積めば、むれてくさってしまうわ。」

教師「それではどれに積めばいいでしょうね。」

答がない。 そこで教師は通風車や冷蔵車の写真や絵を示して、野菜やくだものには通風車や冷蔵車が使われていることを話す。

光男「先生、このあいだぼく、ふみきりで通風車の通るのを見ました。」

雪子「わたし、このあいだ冷蔵車が通るのを見たわ、白く塗ってあるわ。」

正雄「ここ(床の上を指して)には冷蔵車も通風庫もないんだもの、ぼく、りんごが送れないよ。」

博 「じゃあ通風車や冷蔵車を作ればいいよ。」

春子「とてもむずかしいでしょう。」

光男「冷蔵車はむずかしいから通風車を作ろう。」

児童数名それに賛成する。

正雄「ぼく、冷蔵車を作ろう。」

教師は黒板に「通風車」「冷蔵車」とかき、その下にそれを作る児童の名前をかく。

茂 「ぼく、石炭をはこびたいんだけどなあ。」

道子「わたし、このあいだ、駅で石炭をおろしているところを見たわ。横のかこいだけで屋根のない車だったわ。」

教師「この車でしょう。(床の上を指す)これ、何という車でしょうね。」

雪子「あの写真に無がい車ってかいてあります。」

教師「そうです。無がい車です。屋根のない車はみんな無がい車です。あのたいらな車も無がい車です。」

茂 「ぼく、じゃあ無がい車を作ろう。」

児童数名「もっと箱貨車や機関車もほしいです。」

教師は黒板にさらに「無がい車」「箱貨車」「きかん車」とかき、それぞれの下にそれを作る児童の名をかく。

児童たちはそれぞれ製作にかかる。そこに備えてある貨車やトラックでごっこ遊びを続けている一団もある。なかには粘土をいじったり、絵をかいたり、書物をみているものもある。(これらはのちにしだいにクラスの活動の中にはいってくるであろう。)

そして少し製作が進んだころ、

正雄「先生、ぼくの板はすぐわれて、うまくいきません。」

一郎「きみは太いくぎを使いすぎるからだよ。」

教師「次郎君はじょうずに作っていますね。どんなふうにくぎをうっていますか。」

次郎「はじめくぎをうっところに鉛筆でしるしをつけて、きりで穴をあけてから、細いくぎをうちます。」

教師「くぎとくぎとのあいだは、どのくらいにしましたか。」

次郎「だいたい二センチぐらいにしました。そして端の方は少し近めに打ちました。」

教師「それでは次郎君、その穴のあけかたや、くぎのうちかた、かなづちの使いかたなどやってみせてください。」

みなの前で次郎やってみせる。まちがった点やまずい点は教師がなおしてやる。その他の工具や材料についても、使いかたの指導をする。道具の安全な使用法の指導もする。時間の終る少し前にやめさせて、あとかたづけや掃除をする。この場合何かごたごたが起るかもしれない。たとえば、めいめい道具をもって置場の方へいこうとするため、入口でぶつかったりするかもしれない。教師はかたづけがすんだのちに児童を集めて、あとかたづけや掃除のしかたについて話しあいをさせて、注意事項を考えさせる。そしてその注意事項を黒板にかく。このようなことを何回も重ねていくうちに、注意事項はだんだんりっぱなものに向上していくであろう。学習活動の発展はこのようにしておこなわれる。

三、学習活動の発展 必要や欲求 通風車、冷蔵車、無がい車、箱貨車、機関車を作りたい。 含まれる経験 児童はこれらの貨車の絵や写真をみて計画を立てる。それらの車輪のあいだの距離を一定するように話しあう。

道具、材料、工作法について話しあう。

作りはじめる。

作っているうちにわからないところや、意見のあわないところがいろいろ出てくる。

たとえば

1.通風車の中にたながあるかどうか。

2.無がい車の横の板は、はずれるようになっているかどうか。

3.箱貨車に窓があるかどうか。

4.機関車には大きい車輪と小さい車輪とがいくつずつあるか、それらの役目はどう違うか。

5.機関車のボイラー、ピストン、クランクはどんなふうについているか等。

書物や絵や写真を見たり、先生の話をきいたりしただけではよくわからないので、駅に見学にいきたくなる。

駅に見学にいきたい。 見学にいくことにきめる。

教師に駅と電話で連絡をとってもらって日時をきめる。

駅に見学の許可を求める手紙をかく。

両親に許可を求める手紙をかく。

(教師は駅にいって見学のしかたについて打合せをし、また危険な場所などあらかじめ知っておく。)

駅にいって調べることを話しあう。

さきにあげた疑問の点のほかに

6.通風車の通風口の構造はどうなっているか。

7.冷蔵車の中へ氷をいれるところはどうなっているか。

8.車の側面にかいてある文字や数字は何を意味するか。

9.連結器はどのようにできているか等。

教師はこれを黒板に表示し、児童はノートにかく。

見学の際の態度について児童どうしで話しあい、規則を作る。

1.いつもみんなといっしょにいること

2.途中の交通に気をつけること

3.貨物係の人たちの仕事のじゃまをしないこと

4.許可を受けないでものにさわらないこと

5.危険な場所に近よらないこと

(教師は危険な場所をあらかじめ話しておくこと)

6.礼儀正しくすること

7.悪口は言わないこと

8.注意して話をきくこと等

見学にいく。

お礼を言ってかえる。

お礼の手紙をかく。

さきにあげた疑問の点がどのように解決できたか話しあう。必要な点はノートにかく。

おもだった貨車の名称やその記号を整理してノートにかく。

今まで知っていた貨車のほかにいろいろな貨車のあることを知る。

(たとえば、牛、豚、鶏、生きた魚等を運ぶ車、石油を運ぶタンク車など)

見てきたいろいろの貨車の絵をかく。

荷の積みあげ、積みおろしの動作やかけ声を詩に作ったり、リズムで表現したりする。

機関車の動くところをリズムで表現する。

製作を続け、できあがったものはみんなで批評しあい、まずいところ、実物と違ったところなど話しあう。

できあがったものはごっこ遊びに加える。

貨車の数がふえたので、積む貨物がたりないことを児童はうったえてくる。

教師は黒板の必要欄に「いろいろな貨物」とかく。

もっといろいろな貨物がほしい。 この駅で発着する貨物について話しあう。

児童の知識だけでは不十分なので、もう一度駅の貨物発着所にいってみたくなる。

いくことにきめる。

見学の手続きは前とおなじ。

見学をして調べてくることがらについて話しあい、教師は黒板にかき、児童はノートする。

1.どんな貨物がこの駅で発着するか。

2.それはどこからくるか、またどこへいくか。

3.貨物の種類によって貨車がどう違うか。

4.貨物を送る手続きはどうであるか。

見学の態度については前に作った規則だけでよいかどうか検討し、必要があれば新しい規則をつけ加える。

見学にいく。

予定した調査事項について調べる。

3.と4.については丸通(運送会社)できくほうがよいことがわかり、そちらにいってきく。この地方の物産が丸通までどのようにしてはこばれてくるか、またこの駅におろされた荷物が丸通からどのようにして周囲の農村や工場などにはこばれるかを見る。なおこの駅を通過する貨物列車に多量に材木やたきぎや木炭が積んであるのを見て、それが中部日本の森林地帯から東京にはこばれることを知る。

学校にかえってきてからさきの問題がどのように解決されたか話しあう。

次のことを知る。

1.この駅から発送されるもの―どこへいくか

鋳物―主として東京

紙―東京

生糸―横浜

薪炭―東京

米―県内の他の地方

りんご―東京、横浜、大阪

だいこんその他の野菜―東京

2.この駅でおろされるもの―どこからきたか くず鉄―東京はじめ各地

石炭―北海道、福島

パルプ―北海道

機械類や農具―東京、川崎その他

これを地図の上にあらわしたい。 日本地図の上でこれらの地名をさがし、鉄道がどういうふうに連絡しているかを調べる。

日本の大きい地図を作りその上にこれらの産物や鉄道をかく。そしてこれらの産物がなぜそのように分布しているかを学ぶ。

くず鉄、パルプ、石炭等は付近の工場にはこばれて、何に使われるかを知る。(児童に欲求が起ったら、それらの工場の見学もする。)

駅で調べたことだけでは不十分なので、統計書によって郷土の物産を調べる。

郷土の地図を用いて、物産の分布図を作る仕事をはじめる。

この駅で発着する貨物の小さい模型を作る仕事をはじめる。

なお、この話しあいの際に、駅で見た旅客列車の中に郵便車や荷物車がついていることに気づいた児童によって、次のような問題がだされるかもしれない。

1.なぜ郵便車は客車についているか。

2.客車についている荷物車と貨車とどう違うか。

この問題について話しあい

1.放客列車の方が貨物列車より速いこと

2.郵便車ではこぶものは運送会社の手をへず、直接郵便局からとりにきて、ただちにもっていくこと

3.客車についている荷物車は手荷物や小荷物をはこぶこと

4.手荷物や小荷物はどのように便利であるか

5.新聞も速く送る必要上小荷物便で送ることなどを学ぶ。

郷土の物産の分布図ができあがったらば、それによって次のようなことを学ぶ。

1.地形と産物との関係(山間部と平地)

2.工場が鉄道の近くにあることとその理由

3.町は鉄道に沿って発達していること

4.鉄道が開けない前には物はどのようにしてはこばれたか

5.鉄道のできない以前の旧道にそった宿場と現在の町との比較等

貸物の小模型ができると、それをトラックや牛車や車に積んでいっそうおもしろく遊ぶ。(生産者、買い手、売り手を含む。)

ところが、まだレールや道路が作ってないので、子供たちは室内であちらこちらとやたらに車を動かしまわり、衝突をしたり、いろいろ混乱がおこるかもしれない。時間の終りにこのごっこ遊びを批評しあって、次のような会話がおこなわれるであろう。

正雄「一郎君はぼくの汽車に、うしろから貨車をぶっつけたので、うしろの輪がぬけてしまった。

花子「一郎さんはわたしの足をひいていったわ。」

教師「それはたいへんだね、一郎君、貨車はそんなにどこでもでたらめに走りますか。」

一郎「いいえ、線路の上を走ります。」

児童数名「線路を作ったらいいです。」

茂 「先生、トラックや牛車の通る道もきまっていたほうがいいです。」

道子「駅や丸通や貨物ホームも作ったらいいです。」

駅、丸通、貨物発着所、線路、道路を作りたい。 みんなで計画を立てる。

床の上にチョークで下図をかく。駅、貨物発着所、丸通の位置、そして、その大きさもきめる。貨車の車輪のあいだの距離をはかって、それにあわせて線路をかく。

駅前の広場から諸方に通ずる大きな道路もかく。

線路は足で踏んでも消えないように、チョークでかいた上にテープをはる。

あき箱などを利用して右の建物を作る。貨物発着所にクレーンを作る子供もある。

貨物発着所の前に引込線(側線)が必要であることにも気がつく。

これらができあがると、児童たちの遊びはずっと大規模になってくる。

しかし、これでもまだ旅客列車と貨物車が衝突したり、引込線からでていく貨車と本線を走る貨車が衝突したりして混乱が起る。

そこでこの混乱の原因について話しあった結果、シグナルが必要だということになってくる。

シグナルがほしい。 シグナルの種類について話しあったり絵を見たりする。

1.電灯のシグナル―赤、黄、緑の意味

2.旗―赤、緑の意味

3.ランプによる信号

4.手ぶり

5.汽笛や笛

そのほかいろいろな記号標

1.ふみ切りの記号

2.曲り角

3.こう配等

これらのシグナルや記号標を絵にかく。

電灯のシグナルや旗のシグナルを作る。

これらができれば児童たちのごっこ遊びは全く組織的になってくる。それと同時に、駅に働く人々がそれぞれのかかりを忠実に守って、しかも相互に注意深く協力しないと、列車が安全に動かないことを知り、駅で運輸のために働く人々のいろいろな任務について知りたくなる。

駅で運輸のために働く人々の任務について知りたい。 駅長、助役、機関士、火夫、車掌、貨物係、信号手、転てつ手、踏切番、荷あげ人夫、線路工夫等の仕事について話しあったり、書物を読んだりする。

十分にはわからないので、児童の父兄で駅につとめている人を招いて話をきくことにする。

依頼の手紙をかく。

質問する事項について話しあい、リストを作る。

お客さんの応接について話しあう。

質問するときの礼儀について話しあう。

話がすんだあとのお礼のいいかたについて話しあう。

お客さんを招いて話をきく。

これらの人々の仕事について物語や詩を作る。

これらの人々の動作をリズムで表現する。

これらの人々をあらわす人形を作り、それぞれのもち場に配置してごっこ遊びをする。

児童の遊びもここまでくると大規模になり組織だってくるので、児童は父母や、せわになった人たちを招いて、見てもらうことにする。

 さきに作った郷土の物産の地図、工作物、絵、物語、詩もみせることができるであろし、鉄道の歌を、うたったり、いろいろな動作をリズムで表現してみせることもできる。

 

新 聞 (第六学年)

 

この単元を選んだ理由

 学校の門をでて二、三分の所にある駅の前には、朝から夕刻まで新聞売子が新聞雑誌を並べて売っている。夕方には大勢の人々が長い列を作ってそれを買っている。にぎやかな商店街を背景にもつ学校環境である。

屋上にのぼってみれば、議事堂をはじめ諸官庁の建築物が目の前に展開し、大新聞社の塔も望み見られる。したがって、この学校から徒歩で約三十分の範囲内に、「新聞」を学習するのに好都合な資料を提供してくれる場所が散在している。

 学区内を一巡すれば、印刷所、製本屋、本屋等が、あちこちにあり、児童は日常窓越しに、あるいは店頭で、刊行物、印刷、製本等にふれていると思われる。

 こんな環境の中にある学校の約四十名の児童を対象として展開したのがこの「新聞」の展開例である。

 五年生のとき学んだ「交通と通信」の単元で起ってきた興味を利用して導入することもできる。また新聞は社会の各部面の問題を扱うから、この単元には他のいずれの単元からでも導入することができるであろう。

一、この単元の効果

(一)民主的な社会生活に対する効用

1.現代の新聞および出版物が、科学の発達のおかげで、いかにして世界的規模をもつようになったか、そしていかに多くの人々に便利と幸福とを与えているかが理解できるであろう。

2.新聞がわれわれの生活にいかに役立っているかを調べたり、学級新聞を編集したり発行したりすることによって、児童は経験を通じて物資の生産、分配、消費について学ぶことができよう。

3.政治、経済、学芸、宗教、娯楽、運動競技、危険災害の予知、衛生など社会生活のあらゆる部面が新聞の記事になるから、その記事を研究することによって社会的な理解が発達する。

4.責任観念が発達する。新聞社を見学することによって、大規模の分業組織で能率の水準を上げていることを学び、分業組織を学級新聞や文集の作成に応用することによって、次のような態度が養われる。すなわち各個人の義務を果たす態度、常に他人と協力する態度、他人に対して寛大であり、他人の忠告を受けいれ、自分の意見を発表する態度、他人の権利を尊重する態度などが養われる。また学級新聞や文集をいくども発行することにより、また協同調査や意見の交換をしばしばおこなうことにより、右にあげたようないろいろな態度や、批判的態度の発達が期待される。

(二)児童に対する効用 1.知的、情緒的ならびに身体的発達が期待される。 イ.知的発達 次のものについて理解がおよび知識が得られるであろう。

(1) 主要な新聞の名称や特徴

(2) 印刷の歴史

(3) 新聞の作りかた

(4) 新開に関する新しいことば

(5) 紙の製法

ロ.情緒的発達 (一)の4にあげたような諸態度と関連し、(また一部分それと重複するが)次のような態度の発達が期待される。

学級新聞や文集作成のような協同作業を通じて養われる協力的態度。

協力してなしとげた仕事をともに楽しむ態度。

自分の感情を文章や詩や絵や彫刻などによって創作的に能率的に表現する態度。

事物を鑑賞する態度。

ハ.身体的発達 新聞社、印刷所、製本所などの見学により、全身的な発達が期待される。

壁新聞、学級新聞、文集の発行や、グラフを作ったり、学芸会を催したりすることにより、字や絵をかいたり、物をはったり、製本をしたり、印刷したり、歌をうたったりするのに用いる小筋肉が、たび重なる練習の機会を得て発達する。

ニ.将来への興味の発達 (1) 将来の学校内の興味 新聞、雑誌、単行本の編集の仕事に興味をもちはじめ、いろいろな新聞、雑誌、単行本を比較研究しているうちに、学級新聞や文集をもっとよくしたいと思うようになるであろう。

謄写版、木版、カットをもっとじょうずにやろうという欲求が起り、会合の通知や報告などの印刷物の内容を進歩させる。

(2) 将来の校外の興味 新聞をさらに深く読もうという興味、現在発行されている刊行物をいろいろな見地から批判しようという興味が発達するであろう。
2.児童の学習の動機がどのように満足されるか。 イ.児童は壁新聞、学級新聞や文集の編集、木版画やカットを作ること、印刷をすることなどに興味をもっているから、これらを学ぶことにより興味が十分に剌激され満足させられる。学芸会も大いに興味をみたすであろう。

ロ.好奇心はどのようにみたされるか。

調査によると児童はすべて新聞社の見学を希望しており、半数以上の児童が製本所の見学をのぞんでいる。

この事実は児童の現代科学に対する好奇心のあらわれとみることができる。また彼等の好奇心は新聞を読んで社会のできごとを知ることによってもみたされるであろう。

ハ.事物を作ったり、いじったりする欲求はどのようにみたされるか。 謄写版印刷、木版印刷、文集の編集などは物をいじる欲求を十分にみたす。また壁新聞、学級新聞、文集の編集、印刷、発行は物を作る欲求を刺激しみたす。 ニ.おたがいに話しあいたい欲求をどのようにしてみたすか。 いろいろな仕事や見学、訪問などの際に自分の意見を発表したり、他人の意見をきいたりすることによってみたされる。 ホ.思う存分身体を動かしたいという欲求はどのようにみたされるか。 これは見学や、労働を必要とするいろいろな仕事、たとえば印刷、製本、舞台装置を作ることなどによって十分みたされる。 へ.思想感情を美的に表現しようという欲求にはどのようにしてこたえるか。 文章をかいたり、絵をかいたり、木版を作ったり、詩を作ったりすることによって、思想感情を美的に表現する機会が多々ある。
二、導入方法

(一)環境の設定

教室の中に児童の学級新聞を編集し発行しようという欲求や興味を剌激する、次のような材料を展示する。

1.他の学級の新聞

2.いろいろな新聞(その日の新聞を含む)

3.児童新聞

4.児童雑誌

5.木版、ルーラー、インク

6.謄写版セット

7.紙型(ここにだしてある新聞の)

8.とっ版

9.活字

10.スタンプインク

11.数枚の紙

12.単行本および雑誌

(二)環境への働きかけ 児童たちは展示されてあるものをひとわたり見わたして、それぞれ自分たちの興味あるものの前に集まるであろう。

ある児童たちはけさの新聞に見いっているであろう。またあるグループは木版の原画をかきはじめるであろう。新聞の紙型をいじりながら「これは何だろう。」とか、「これは字がさかさだ。」など言っているものもあろう。活字ででたらめにたくさんの字をおしているもの、自分の名まえの活字をさがしだして、大喜びでぺたぺたおしているものもあろう。

教師はしばらく児童たちのなすままにまかせておいたのち、おもむろに自分の席にもどらせる。

(三)環境への反応 教「きみたちは今いろいろなものを見たり、さわったりしていたが、三井君、きみは今読んでいたけさの朝刊で、何か新しい記事を見たかね。」

児「先生、きのう日比谷であった子ども大会の写真がでていました。」

教「きのう、何時ごろあったのかね。」

児「一時からはじまりました。」

児「とてもおもしろかったです。」

児「私たちのすぐそばで新聞社の人がせん光電球で写真をとっていました。」

児「その写真がでています。」

児「ぼくたちも学級のことを写真にとって新聞を作るとおもしろいと思います。」

児「学級新聞を作るのは大賛成だけど、写真はむずかしいよ。第一、写真の印刷なんかぼくたちにできないじゃないか。」

教「それでは、写真の代りになるものを考えたらどうだね。」

児「あそこにあるような木版画を作ればよいと思います。」

児「先生、木版を入れた学級新聞を作りたいです。」

他の児童もこれに賛成して木版入りの学級新聞を作ることになる。

三、学習活動の発展 必要や欲求 学級壁新聞を編集してみたい。 含まれる経験 最初に学級壁新聞を作ることにきまる。全員で計画を話しあう。

内容と仕事の分担をきめる。

(1) 原稿は全員でかき、優秀なものを採用する。

(2) 原稿は作文、絵画等とする。

(3) 木版画はとくにじょうずで、すきな七人にたのむ。

(4) 原稿を集める係を各班から一名ずつすいせんする。

(5) 編集する係を各班から一名ずつすいせんする。

原稿を募集する。

木版画を作る。

原稿を分担してかく。先生にもかいてもらう。

原稿を集めて模造紙全紙大のものにはったり、木版画をはったり、絵をはったり、見だしをつけたりして壁新聞を作り、教室にはりだす。

児童たちはこれを批評しあって次のようなことに気づくであろう。

(1) 内容が貧弱である。

(2) 鉛筆でかいたのでは読みにくい。

(3) 見だしのかきかたが不十分で注意をひかない。

(4) もっとおもしろいニュースがほしい。

あらたにとり入れるべき内容について話しあう。どんな新聞がほしいか。

(1) ニュースを入れたい。

(2) 漫画がほしい。

(3) スポーツ欄・婦人欄・告知欄・読書欄

(4) 歌や俳句ものせたい。

(5) 詩

(6) 広告

新聞の効果を話しあう。

(1) 効果的な見だしの取りかたを話しあう。

(2) 墨でかいてもっと鮮明にしたい。

(3) 図案、カット、絵等の色彩について効果的な方法を話しあう。

見だしの取りかた、配置についてはなかなかむずかしいので先生にきくことになるであろう。

見だしの作りかたを知りたい。

見だしについて先生の話をきく。

教師はおよそ次の項目について話す。

(1) ニュースの構文形式

イ.見だし―標題、要約

ロ.本文

(2) ニュースの構文要素 いつ、だれが、どこで、どうして、なにを、どのように。 実際の新聞を見て、グループごとに編集の方法について研究討論する。
以上のような話しあいや研究がすんだ児童たちは、勇んで第二回の壁新聞の編集にかかろうとするであろう。

壁新聞第二号を作りたい。

各自責任をとるように計画を立てることにつき話しあう。

原稿をかく。

原稿を先生や級友に頼む。原稿を集める。

ニュースを集める。

木版画や、絵や漫画などをかく。

ニュースや原稿を集めて編集の会議を開く。

見だしを考えてつける。

できあがったものを教室にはりだす。

反省の批評会を開く。次のようなことに気づくであろう。

(1) 内容がまだ貧弱である。もっと内容を豊富にしたい。

(2) ニュースがもっとほしい。

(3) ほんとうの新聞のように、ひとり一枚ずつくばりたい。

右の三つの欲求から、ほんとうの新聞のように内容の豊富な学級新聞を印刷してみたくなるであろう。そして、そのためには新聞についてもっとくわしく知る必要があることに気がつくであろう。

新聞についてもっとくわしく知りたい。

児童の家で購読している新聞の種類について話しあい、表にしてみる。おもな新聞がわかる。

刊行の回数によって、日刊、週刊、旬刊、月刊などの種類があり、発行所の所在地によって、中央の新聞、地方の新聞などの種類があることを知る。自分たちの家にどんな新聞が何部くらいはいっているかを調べて統計をとる。

参考書によって大新聞の発行部数を調べる。(新聞協会できく)

外国の新聞の発行部数を調べられたら調べて比較してみる。(新聞協会できく)

新聞の記事の中で児童が興味をもって読むところを発表しあい表にする。父母や兄姉たちがどんな記事を読むか調べてきて、発表しあい表にしてみる。これによって、新聞には私たちの生活の非常に広い部面に関係ある多種多様の記事があることに気づく。

(1) 社会、(2) 経済、(3) 政治、(4) 文化、(5) 娯楽、(6) 運動、(7) 広告、(8) 気象等。 どの記事が一番大きな紙面を占めているか。一つの新聞について一週間くらいにわたって調べてみる。

効果的な広告はどんな要件を備えるべきかを研究する。

新聞の記事に関連して各新聞社の行っているさまざまな社会事業について話しあい、最近の各社のものをあげてみる。

講演会、スポーツ、音楽会、奉仕事業等。 新聞が国内や世界のニュースを広範囲に、しかも速く報道することについて話しあう。

けさの新聞について、どんなニュースがいちばん新しいか、いつのできごとがどんなに速くわれわれに伝えられたかを調べてみる。

国内のニュース、海外のニュース 発信地を地図でさがしてみる。

こんなに広範囲のニュースが、これほど速く報道されるために、新聞社にはどんな組織があり、どんな活動をしているかについて話しあう。(報道網のこと、ラジオ、電信、電話の利用、大規模の機械による印刷、運輸機関の活用、販売網等について大まかに知る)

ラジオの効用と比較してみる。

(1) 長所、(2) 短所、(3) 社会的な影響力の相違。 新聞がラジオに比較して、紙に記録され保存されうるものであることを知る。
新聞に非常に広はんな記事がもられていること、とくにニュースの報道の迅速であることに気づいた児童は、新聞社にいって新聞の作られるところを実際に見たいと思うであろう。

新聞社の見学をしたい。

新聞社を見学することにきめ計画を立てる。

交渉係をきめて前もって交渉する。

(教師はこの前に新聞社と打ちあわせをすませておく)

日程、道順、携帯品をきめる。

見学の態度および見学事項について話しあう。

見学によって解決すべき疑問をあげる。(教師はこれを黒板にかき、児童はノートする)

見学にいく。

新聞社の人から新聞社の組織について話をきく。

(1) 編集局

イ.整理部、ロ.政治部、ハ.経済部、ニ.外報部、ホ.通信部、ヘ.社会部、ト.学芸部、チ.調査部、リ.写真部、ヌ.地方部、ル.運動部 (2) 印刷局 イ.鋳造部、ロ.活版部、ハ.紙型部、ニ.鉛版部、ホ.印刷部、へ.写真製版部、ト.発送部 (3) 営業局 イ.販売部、ロ.広告部、ハ.経理部、ニ.事業部 話をきいたり質問したりして次のことを知る。

(1) 記者の活動、記事を送るための通信・交通機関の利用、本社における記事の整理、編集、組版、印刷、発送、配達の一連の過程に動員される機関や所要時間。

(2) 事件の真相をとらえ、これを速報するための科学的機関

(3) 報道網のこと

(4) 記者の苦心談

(5) 校正の方法

(6) 新聞社の社会事業

(7) 新聞の歴史

帰校後お礼の手紙をかく。

見学の感想を話しあいさきにあげた疑問がどのように解決したかを討議する。

新聞社の機構機能を図表にして整理する。

ほんとの新聞のような学級新聞を作ろう。 見学の経験を生かして新しい係を作る。新聞発行の仕事の種類分けにしたがって全児童がこれに参加し実行する。

(1) 記者―新聞、ラジオ、学校内や近所のできごとから記事を作る。

(2) 編集係―記者の記事や級友の詩歌、隨筆、漫画等を編集する、編集会議をする。

(3) 印刷係―原紙を切ったり騰写印刷をする。

(4) 配布係―学級新聞を級友や先生やその他の人々に配布する。

右のような係を分担して学級新聞を作り、それぞれ才能に応じた活動をする。できたものを先生や両親や、世話になった新聞社の人に配布して批判をうける。

うけた批評についての話しあいをする。

批評を礼儀正しく受けることを学ぶ。

児童たちは自分たちの作った新聞に大いに満足するであろう。そして印刷の方法やそれに用いる機械にいろいろなものがあることに興味を感ずるであろう。そこで今のような印刷機械がいつごろからできたか、それができる前の新聞はどんなものであったか、さらにもっと昔の報道方法はどうであったかに児童の興味をむけるために、あらたに資料を展示して環境を設定し直す。すなわち明治初年の新聞、かわら版、おふれ等についての資料、新聞の発達史、印刷術の発達史などに関する参考資料をできるだけ多く展示する。

新聞の歴史について知りたい。

明治初年の新聞を今の新聞にくらべてみる。

江戸時代の「かわら版」や「おふれ」について学ぶ。その当時の印刷方法について知る。

そのほか、ニュースが伝えられた方法について知る。旅人、旅商人によるうわさの伝ぱ。

文字のなかった時代の報道について知る。

のろし・絵・うわさ等。 文字ができてからも書物は一般に普及していなかったこと。昔の人の書物を手にいれるための苦心や、書物を発刊する苦心などについて、参考書を読んだり、先生の話をきく。

活字の発明の歴史、紙の大量生産のこと、およびわが国で活版印刷がいつからおこなわれるようになったかについて、参考書を読み先生の話をきく。現在は印刷術の進歩で実に豊富な刊行物がわれわれの周囲をとりまいていることに気づく。

印刷術や製紙法の科学的発達を知ることにより、一般に印刷物に対する興味がおこり、現在刊行物にどんな種類があるかということについて関心をもつようになるであろう。そして児童たちは刊行物について新聞・難誌・単行本等の種類をあげるであろう。

新聞・雑誌と単行本を比較してみたい。

1 比較をしてみることにきまる。

2 刊行物を集める。

3 比較する。

児童や家庭の人が購読している新聞・雑誌や最近買った単行本をもちよって、次の点について比較してみる。

一、発行回数と発行部数

二、内容と読者層

三、発行の過程(編集・印刷・製本等)

雑誌や単行本の作りかたについて知りたい。 雑誌や単行本の出版について話しあったり調べたり、先生の話をきいたりして、次のような過程のあることを知る。

(1) 編集

雑誌ならば個々の執筆者に依頼し、雑誌記者も記事をかくことがある。座談会などをして記事を作ることもある。これらを編集する。単行本は主として個人の作品をのせる。 (2) 印刷 写真・さし絵・カットなどの作りかた、色刷の方法などについても学ぶ。 (3) 製本 単行本ならば装ていに特別苦心すること。 (4) 分配方法 出版協会・おろし屋・小売店等の配給機構のことも知る。 刊行物の配給に関係している人からその仕事について話してもらう。
作りかたや配給のしかたの概略を知った児童たちは実際の出版社・印刷所・製本所・配給所を見学したいと思うだろう。

雑誌や単行本の作られるところをみたい。

近くの雑誌社・出版会社・印刷所・製本所等を見学し、実地の知識を得る。 雑誌や単行本の作りかたについて学んだ児童たちは、六年生として記念の文集を作りたくなるであろう。

記念の文集を作りたい。

相談して計画を立てる。

原稿は全員のものを必ずだすようにきめる。

左のような係を設け、それぞれ分担する。

(1) 編集係―編集、表紙やカットを特別な児童に依頼する。

(2) 印刷係―記事やカットを原紙に切り印刷する。

(3) 製本係―製本する。

(4) 庶務係―紙その他の材料の入手、発行部数の算定、費用の徴集、配本等にあたる。

各グループは相互に連絡をとりながら仕事を進める。

完成する。

自分たちの力で文集を作った児童たちは、出版記念会を開き、今までいろいろやっかいになった人たちをよんで記念に文集を贈りたいと考えるであろう。

文集出版記念会として学芸会をしたい。

その計画について相談する。

(1) プログラム編成

(2) 展覧するものの内容決定

(3) 会場の構成討議

(4) 案内の範囲―先生・両親、新聞社・雑誌社・印刷所・製本所等

(5) 仕事の分担―係をきめる。

一、案内状印刷発送係

二、陳列係

三、学芸係

四、進行係

五、案内応接係

六、説明係

案内状を発送する。

壁新聞・学級新聞、新聞社その他の見学の結果をまとめた図表・統計・絵その他本単元の学習によって得た研究物・製作物・しゅう集品をすべて陳列する。

記念学芸会を催す。

説明をしたり歌をうたったりする。

記念文集を来賓に贈呈する。

展覧した資料は学校の社会科資料室に移管整理する。