単元V 人間の住居や集落は,どんな所に,どういうふうにできるか

〔要 旨〕

 居住は,衣食と同じ程度の,あるいはそれ以上の重要性をもつ,人間の本質的な欲求であ。しかし,着ること,たべることそれ自身は,人間の活動ではあっても人文地理の研究対象とはならないように,地上に人間が住むということ自体は人文地理の対象ではない。人間活動の表現として,交通路・耕地などとともに,住居や集落が地表における造営物として研究されなければならない。

 居住の様式は,文化状態の進むにつれて複雑になってゆく。しかし,いずれも住むために必要な条件をもち,またできるだけ生活するのによい条件を具えようとするのは当然である。かつ各地の自然環境が異なり,住民の文化程度や伝統が異なるので,ここに極めて多種多様な居住様式が現れる。

 その一つは家である。建築の材料や形式は自然の影響も受け,また住民の文化や伝統とも深く関係している。世界のいろいろな家,特に古くから変化の少ない民家は,郷土的な衣粧や食物の調理と同じく,地域地域に特色を与え,その研究は興味の多いものである。また人間は社会をつくるから,家も単独では存在せず,多くは集まって集落をつくる。極地や砂漠に近い所では,常に自然の強い力におされて,移動したり,あるいはわずか数戸で村をつくったりする。しかし環境のよい所で,かつ文明の進んだ所では大きな村をつくり,更に町や都市も発達する。ここでも(家の場合と同じく)集落はその大小にかかわらず,地理的環境と歴史的背景が研究されなければならない。

 すべての人文地理の対象はそうであるが,特に居住に関する問題はすべての生徒が自分のまわりにみるととができる。それで常に具体的に調査し,学習し,論議するようにして,これを通じて実態的研究の態度と方法を会得することが望ましい。

〔参考書〕

 藤田 元春    日本民家史        昭和2年   刀江書院

 今和 次郎    日本の民家(再版)    昭和19年   乾 元 社

 今和 次郎    新版草屋根        昭和21年   乾 元 社

 関野 貞     日本建築史講話      昭和12年   岩波書店

 島 之夫     日本民屋地理       昭和12年   古今書院

 関野 貞     日本の建築と芸術 上   昭和15年   岩波書店

 小田内 通敏   聚落と地理        昭和2年   古今書院

 綿貫 勇彦    聚落地理学        昭和8年   中 興 館

 柳田 国男    地名の研究        昭和11年   古今書院

 柳田 国男    日本農民史        昭和15年   東亜出版社

 小野 武夫    日本村落史概説      昭和11年   岩波書店

 牧野 信之助   土地及聚落史上の諸問題  昭和13年   河出書房

 高橋 源一郎   武蔵野歴史地理 4冊   昭和3-7年   武蔵野歴史地理学会

 小野 均     近世城下町の研究     昭和3年   至 文 堂

 中沢.秋山.山田  輪中聚落地誌       昭和11年   日本農村問題研究所

 国松 久彌    都市地理序説       昭和9年   古今書院

 

〔目 標〕

 

〔問題第2〕(教科書第4章)人々はどんな家に住むか。

 居住の研究の最初は“家”についてである。自然の岩や洞穴を家とするものから,土の家,テントの家,掘立小屋,木造や石造の家屋,最後には鉄とコンクリートの高層建築までいろいろいある。人間が“住む”ためにどういうふうにして家を作るか,それは自然の環境のみならず,文化や歴史の影響をも受ける。世界全体を見渡すとともに,自分の周囲の家を十分に研究したい。旅行でもするときには,車窓からでも注意を怠らぬような気風を養成したい。

〔教材の排列〕

〔学習活動の例〕  

〔問題第3〕(教科書第5章)村や町はどこにできるか。

 家は集まって集落をつくる。それはどこにできるか,その位置はどういう所が選ばれるかがここでは問題となる。人間が生活するのに最も都合のよい位置はどこかということである。また条件がわるくとも必要に應じてはどこにでも集落ができること,いいかえれば,人間の活動は今日,自然の不利などにうち勝って行われることを,居住の点からみるのである。

 集落には分散して孤立荘宅をつくるものと集中して村をつくるものとあることにも触れておく。町については次章で詳しく触れることにする。

〔教材の排列〕

〔学習活動の例〕  

〔問題第4〕(教科書第6章)村や町はいかにして成立し,かつ成長するか。

 集落は一つの生物と同しである。それは生まれてからよい条件に恵まれれば成長し,わるい環境に置かれれば成長を止め,あるいは死滅する。集落を取り巻く環境としての自然は,だいたい昔も今も変わらぬけれども,社会的な環境は時代により常に変わっている。それによって昔は栄えたものも,時代がちがえば同じ位置や地形でありながら衰えてゆくものもある。こういう観点から集落の成立・成長・盛衰をみてゆきたい。即ち地理的な環境を考えるとともに歴史的な背景をみてゆくことが,最も重要である。

〔教材の排列〕

〔学習活動の例〕 〔学習効果の判定〕