第 九 学 年(中学校第三学年)

 

単 元 一

 われわれは,過去の文化遺産を,どのように,うけついで来ているであろうか。

要 旨

 われわれは,過去を背後に負い,前方に未来をひかえて,それらのときの流れの中心ともいわれる現在に立っている。このような時間の系列についてわれわれの祖先の生活を思い,また,子孫の生活がどのようになって行くかを考えてみることは,興味深いことである。今日,われわれが,別に何の不自由も不便をも感じることなく使いこなしている日常生活の用具や衣食住の生活様式を考えてみても,それが現在のような完成した形にまとめあげられるまでの間には,先人が並々ならぬ犠牲と努力を重ねた結果であり,自然との戦いの間に学びとってきた生活経験の結晶ともいわれるものである。この努力の集積は,人類の歴史の全過程を通して徐々に向上,進歩を重ねたのであって,人類の各時代は,過去の恩恵に頼って,その成果を受けているばかりでなく,さらにこれに改善と工夫を積み重ねて,次の時代に渡して来たものであった。それ故に,われわれもまた,この時代において,歴史のひとこまにできるだけの貢献をし,先人の努力を少しでも進歩させてこれを子孫に残すことが,この時代に生きるわれわれの責任であり,子孫に対する義務でもあろう。

 現在,普通に文化的遺産とよばれているものの中には,道具や機械のような物質文化もある,さらに,法律制度や習慣や思想のように精神文化とよばれて,目にみえない観念や形式によってまとめられているのもある。広く社会制度という場合には,それらのものが,社会生活の結果として一つのまとまった形をとり,それを作りあげた個人や社会の範囲を超えて,それみずからが独立なものとなって,個人や社会に逆に影響を及ぼすことになる。例えば,あいさつや敬礼の仕方にしても,一定の形をとゝのえて表現しなければ心の中に秘められている敬意も相手には通じない。このあいさつの形式は,永い間の習慣としてできあがった形をそのまゝ踏襲する必要があるわけである。

 こうした制度や習慣として現在固定した形式をもったものでも歴史的に調ベてみると,過去の,ある時代に考案され,工夫と改善をほどこして形を整えたものが,次第に広く行われるようになったものである。このようにして,制度や習慣は,その社会にもとからあったものとして固定し,伝統的な権威をさえ伴なうこととなるのである。

 文化的遺産は,もともと,このような個人の発明発見や,工夫改善の努力がまとめあげられ,組み合わされて現在のような完成したものになって来たのであるが,その発生や進歩,改良への貢献は,多くの場合,天才的な個人の力にまつ場合が多い。であるから,できあがった文化と,これを作った人間との関係は,たがいに影響しあう関係に立っているわけで,個人の努力によって社会の手に渡された文化は,やがてその社会のすベての人々に影響を与え,そのような文化は,さらにまた天才的頭脳の貢献によって発展をとげるのである。しかし,さらに根本的に考えてみると,その社会や個人をのせている自然的な環境が,両者に与える影響を忘れてはならない。即ち,自然の地形や気候風土の作用は,いっそう根本的なものであって,人類は自然に対する順応や自然的悪条件の克服への要求によって,工夫もし,努力も必要であったわけである。このような風土性は,やがて文化の地域性をその結果として生み出す。こゝに,ヨーロッパ文化・東洋文化の差異があらわれ,同じヨーロッパでも,フランス文化やイタリア文化を区別することができるわけである。

 文化発達の原因としては,天才的個人の寄与のほかに遠い未知の世界の経験がなんらかの機縁によってもたらされる場合にも,大きな影響があることを忘れてはならない。文化は,それみずからのうちに発展し,解放せられる性質を具えている。それは人類が,本能的に未知なるものへの好奇心をもっているとともに,一方では,自己以外のものと対立し,これを警戒するにもかゝわらず,また,相互に理解しようとし,相結びあう傾向を持っているからである。交通や通信技術の発明や改善は,このような人類の根本的な要求にもとづくものであった。ゲルマン民族の移動や,十字軍の遠征,マルコ・ポーロやコロンブス,マゼランの探険は,すべて人類に未知の世界を理解させるのに大きな働きをもっていた。このようにして,地域を異にする異質的文化は,たがいに交流し,文化の風土的性格を超えて,本来ならばとうてい自然発生的には成立し得ないと思われるような特殊な環境において育った文化をさえ,これを摂取することが可能になるのである。かくして,文化は地域を超えて伝播(でんぱ)し,他地域の文化に融合する可能性が生まれる。

 この傾向は,交通・通信の技術が発達するにつれてますます増大する。ことに,航空機と電波技術の進歩は,それを急速に推進させたのであった。このような時代においては,ある特定の国が,その固有の伝統的文化の保存にいかに細心の努力を傾けても,外国文化の影響を断つことは困難である。世界の客観的情勢の動向に反して,堅い殻の中にとこもっていても,いつかは解放せられる運命にある。日本のもつ文化的遺産の中には,きわめて特色のある固有の伝統をもったものがあるように思われるが,それとても歴史的に綿密に検討すれば,大陸文化の影響によるものが相当にのぼり,にその根を日本の国土におろしているものの数は,意外に少ないのではないであろうか。このようにして,文化的遺産は変化するものであり,ある地域の文化が外からの影響によって変化するのは,その文化が崩壊するのではなく,かえってより発達し,合理化して行くことにほかならないであろう。文化的遺産の変化は,それ故に,社会変化における文化の適応ともいい得るのである。この場合にも,ひとりの天才がその社会の文化の進歩に貢献したようにある特定の国民が持つ文化のよい影響が,他国民の文化の向上・発展に寄与することがあるのは当然であって,自国の文化のすぐれた成果を分かって,他国の文化の向上に資する国民こそ天才的国民であり,文化国家といわれるものであろう。わが国は,将来平和的な文化国家として再建せらるべきであるといわれているが,そのような国家となるためには,どうしなければならないか。これは,日本の文化的遺産の研究のみによって達成されるものではなく,他のすべての単元の学習とも密接な連絡をもたなければならぬ問題であろう。

目 標

(一) われわれの日常生活のあらゆる方面が,過去から引き継がれた文化的遺産の上に営まれていることの理解,それらの文化的遺産の一つ一つが,われわれの祖先の苦心と努力の結晶であることの認識。

(二) 文化的遺産は,絶えざる人類の努力が集積したものでありそれは,時代により,地域によって,特色のあるものであることの理解。これらの特色ある文化は,交通・通信の発達に伴なって,次第に広く他の地方に伝わり,異質的文化は,次第に融合して均質なものに近づいて行くことの認識。

(三) わが国の風俗・習慣・生活用具・生活様式の特質の理解と,これらの形成に貢献した先人に対する尊敬の態度を養う。外国の文化の特色を理解し,これとわが国の文化との長短を比較して,外国文化の長所を採り入れようとする態度。

(四) 正しい文化の伝統を尊敬し,これを維持するとともに,因襲にとらわれることなく,日常生活における科学的,能率的文化の採用に積極的であること。

(五) 社会のよい慣習や伝統を身につけて,日常生活に実践しようとする習慣を養う。非科学的なしきたりや迷信にまどわされず,常に合理的に考え,科学的に事を処する技能を養う。

(六) 世界の新しい発明や発見に関心を持ち,わが国の文化をいっそう向上させるために,それらを学ぼうとする態度。

(七) 過去の文化遺産をあやまりなく引き継ぎ,さらにこれに改良と工夫を重ねて,次の時代に貢献しようとする態度。

教材の排列

(一) われわれが文化的遺産とよんでいるものには,どういうものがあるか。

(二) 社会の慣習や伝統は,社会生活にどんな影響を与えるだろうか。

(三) 文化的遺産は,どうして成り立って来たのであろうか。

(四) 文化的遺産は,どのように変化して行くであろうか。 (五) わが国の文化的遺産は,どのように受け継がれ変化して来たであろうか。 (六) 文化的遺産は,社会の変化にどのように適合して行くであろうか。

学習活動の例

(一) 自分の日常使っている学用品について一覧表を作り,両親,祖父母あるいは近所の年とった人にたずねて,それらの人々が少年少女時代に用いた品物と比較すること。いつごろから現在のようなものを使うようになったか。それはどこから伝わったものか,なぜ変化したのだろうか。書物などによって調べること。

(二) 自分の家の古いアルバムを調ベて,両親や祖父母の若かったころの服装,髪の形,着物の模様や身のまわり品について,現在のものと比べてみること。それは,いつごろ,どのようにして変わって行ったであろうか。日本人が洋服を着るようになったのは,いつごろからか。洋服が次第に多く用いられるようになった理由について,学級で討議すること。モンペがなぜ流行するようになったかを,討議すること。

(三) 昔の絵や写真を集めたり,また,博物館を訪問して模型を調ベて,昔風の家と現代風の家,農村風の家と都市風の家とを,構造の点から比較すること。和洋風を兼ねた家が自分の近くにないか。あれば,その長短,便,不便について,討議すること。

(四) 日本人が精白した米をたべるようになったのは,いつごろからであろうか。「日本人もできるだけパンとバターと牛乳の食生活を採用すべきである」という主題について,その賛否を学級で討論すること。

(五) 書物を読んだり,先生に話を聞いたりして,書物の歴史について調ベること。人類が事件や物事を書き残す必要が生じたとき,どんな方法で,何を使って,その必要をみたしたか。それは,どういう不便を持っていたか。その後いかなる点が改善されたか。改善されたについて,直接間接に影響を与えたのは,どういう発明や発見であったか。このようにして現在のような書物になるまでの歴史を絵や写真や文章でまとめて学級に報告すること。

 新聞の歴史についても調べること。同じく手紙の歴史について,調ベること。

(六) ことばや文字は,どのようにして現在の形にまで発展して来たか。日本や中国の材料によるばかりでなく,ヨーロッパの場合についても研究してみること。

(七) 昔の手紙や書物を読んで,文章やことばの表現の仕方の違いについて,調ベること。それは,次第にどのような方向に変わって来たであろうか。候文と口語文との得失を論じてみること。

(八) 書物を読んで貨幣の歴史を調ベ,物々交換時代から,石の貨幣や貝殻を貨幣に代用した時代,硬貨金銀・銅・ニッケル貨など)を用いるようになった時代,紙幣時代,さらに小切手や証券を用いる時代と順序に調ベ,知識の発達との関係について,討議すること。

(九) 薬の歴史について,書物を読んだり,薬剤師や医師に話を聞いて調ベること。毒草や食用植物の区別を,昔の人はどうしてやって来たであろうか。現在のわれわれは,これをどうして調ベているか。人類の経験の重要なことと,試行錯誤について,討議すること。

(一○) わが国の法律制度を歴史の書物によって調ベ,それがどのように発達して来たかを比べて学級に報告すること。

(一一) 「解体新書」や「蘭学事始(ことはじめ)」について,先生から話を聞き,わが国における西洋医学の発達について,研究すること。実験や観察や調査ということが,学問の進歩に,いかに必要であるかについて考えること。東洋においては,一般に自然科学の発達がおくれたのはなぜだろうか,討議すること。

(一二) 家や村(町)の生活を中心として,迷信や禁忌をできるだけ集めて表にし,それが自分たちの生活にどんな影響があるかを話すこと。カレンダー(こよみ)はこの数箇年の間に非常に変化した。現在使っているこよみで,われわれの日常生活を営むのには何か不便があるであろうか。このことを両親や祖父母からも聞いて,比較すること。

(一三) 明治以来現在までの間に,われわれの日常使っている道具や,衣食住の材料や,身のまわり品,生活の様式,ことばなど,さまざまなものについて著しい変化のあったものと,余り変化のないものの例をできるけ挙げて,表にすること。また,都市と農村とでは,どちらが変化が早いか。明治から大正・昭和にかけて,ある時期に急に服装や生活の様式に変化が著しく進んだ時がなかったか。あったとすれば,その原因は何であっただろうか。以上のことを材料にして,社会の変化と生活の伝統について,話し合うこと。

(一四) 歴史や人類の文化に関する書物を読み,人類が昔から使用して来た用具によって,人類の発達を時代的に区分したやり方を研究すること。石器時代,金石併用時代というように分けて考えてみること。現代を,もしこのような区分によって位置づけようとすれば,どういう時代だといえるであろうか。

(一五) 建築や土木工事に,ガラスやセメントを材料として豊富に用いるようになったのは,いつごろからであろうか。また,生活のあらゆる方面にわたって,機械を使用するようになったのは,いつごろからであろうか。それはわれわれの生活をいかに変化させたか。

(一六) 人間の生活が,ある発明や発見によって著しい変化を起した例が,過去においてどのくらいあっただろうか。発明発見家の名まえと,その発明発見の年代を調ベて年表を作り,教室の壁にはりつけること。同じように,それまで人間の使用して来たものに改良を加えて進歩させた例についても,調ベること。

(一七) ある発明や発見や技術的改良によって,社会生活はどのように変化したか。特に工業的世界といわれる現代の世界についてくわしく調べ,学級に報告すること。

(一八) 西洋史の書物を読んで知識を得て,ある地方の文化(例えばキリシヤ文化・ローマ文化など)が盛んになった原因として,遠い外国文化の影響がいかに働いたかについて調ベること。マルコ・ポーロ,コロンブス,マゼランなどの探険家の旅行したコースを調ベ,それらの探検家のもたらした異境の文化が,ヨーロッパ文化の発展にどのような影響を与えたか考えること。

(一九) 奈良時代の文化(例えば法隆寺や正倉院の御物など)について,写真や解説書を読んで,日本の上代文化に及ぼした大陸の影響についてのベ,学級に報告すること。大陸文化の影響は,その後,日本でどのように変化して行ったであろうか。鎌倉,室町時代の文化についても調べ,日本文化の特質を代表するような芸術・工芸・彫刻・建築・生活様式などが次第にととのった形をとるようになった時代について,研究すること。

(二○) 明治維新後,わが国がとり入れた外国文化によって,どういう方面が最も大きな変化を受けたであろうか,種々のものについて具体的に例をあげて研究すること。西洋文化の輸入によって,わが国の伝統的な文化は,すっかりこわれてしまっただろうか。その影響の著しかった方面と,余り影響を受けなかったと思われる方面とを比較し,各々について理由を考え,学級で討議すること。

(二一) 衣服について,その形式や材料が歴史的にどう変化して来たか。晴れ着・平常着・労働着使用の場合の相違,及び地域的または民族別,気候風上別に衣服の違いを調ベて,学級に報告すること。

(二二) 家屋の構造に関し,農村では一般農家と地主及び昔の名主の家,都会では一般民家と商家(しにせ)との違いを比較し,その相違の意味及び家庭生活に関するその役割について,討議すること。

(二三) 日本の家屋には,昔からどんな種類と形式があったかを調べて,報告すること。

(二四)世界の各民族の家の構造を調べ,それらが,住居としてどの程度要求をみたしているかを比較研究して,討議すること。

(二五) 家の構造や方位などについて,どんなの禁忌があるかと調ベ,それらが,現在の生活にどの程度の影響力を持っているかを調ベて,報告すること。

(二六) 主食として,昔からどんなものが食べられたか,世界の各民族の主食はどうか,なぜ各地で主食が違うかについて調べ,学級に報告すること。

(二七) 食事に関する禁忌を調べ,その可否について討議し,結論をまとめて先生に報告すること。

(二八) 食器の種類及び変遷,どうしてそのように変化したかを調ベること。

(二九) 本家と分家の関係,及び親せきの機能について調ベ,それがわれわれの生活にどの程度の力を持っているか,また,そのよい点と悪い点について討議し,われわれの生活をよりよくするためにはどうしたらよいかについて,結論を出して報告すること。

(三○) 郷土附近には,どんな姓が最も多いか,これを調べて統計表を作ること。

(三一) 家庭では,どんな年中行事が行われているか,それは,今日どの程度保存されているかを調ベて,報告すること。

(三二) 婚姻はどんな方式によって行っているか,また,結婚は村内同志が多いか,村外あるいは,他地方のものが多いか,結婚に関する慣習がその地方の思想にいかに影響しているかについて調べること。

(三三) 村はどのように治められているか,また,昔はどうであったかを老人に聞き,よい点と悪い点とを討議して,報告すること。

(三四) 村内の団体(若者組・娘組など),講(頼母子(たのもし)講など)について,その種類及びそれがどんな働きを持っているかについて,各組を作って調査して,報告すること。

(三五) 村民が共同で行っている行事について,その種類,それが今日の生活に対して,どんな意味を持っているかを調ベて,報告すること。

(三六) 「郷に入っては郷に従え」ということわざについて,そのいろいろな場合について討議し,そのよい場合と悪い場合とについて報告すること。

(三七) 道路やみぞの修理,あるいは共有地の労力は,どのようにして提供されているか,それはだれが指揮し,またいかなる方法で行っているかを,村役場や古老について聞き,よい道路とその輸送能力について調ベること。

(三八) 村の歴史の基本的なものについて調ベること。

(三九) 農耕に関係した儀礼にはどんなものがあるか,それはどんな意味を持っているか,また,それはどんな方法で行われているか,できれば写真にとったり,絵に書いたりして報告すること。

(四○) 農具の種類及びその変遷を,時代別,地方別に調ベ,その特徴や,改良すべき点などについて,討議して報告すること。

(四一) 村民は,商家への支払いにおいて,「かけ売り」あるいはその他の制度によっているか,それは,盆及び正月の二回か,現代の商業の発展と消費者の立場から,それはよいか悪いか,学級で討議すること。

(四二) 問屋の機能を調査し,現在それがどの程度の力を持っているか,それはどう変化しつゝあるか,近代商工業の発展という点からこれを批判討議して,報告すること。

(四三) 行商人,例えば,富山の薬商人などについて,その組織・歴史・機能などを調ベて,報告すること。

(四四) 民間療法としてどんなものがあるか,療法はどうか,薬の種類にはどんなものがあるかを調ベて,報告すること。

(四五) 商家における主人と番頭とでっちとの関係を調べ,それは,現在どう変化しているか,また,そのよい点と悪い点とを指摘して,報告すること。

(四六) 郷土附近の地名は,明らかにある地形にその起源を持つと考えられるものがあるか,これらについて調べ,また,この地名がどこの地点から起ったかをも調査して,報告すること。

(四七) 郷土附近の地名には,その昔の開墾や耕作方法から発生したと考えられるものがあるか,これについて調べて討議すること。

(四八) 郷土附近の地名には,昔の交通に関係して発生したと思われる地名がないか,これについて調べて,報告あるいは討議すること。

(四九) 郷土附近の地名で,それが明らかに昔のあることから発したと思われるものについて調ベ,討議すること。

(五○) 郷士附近の地名には,最近新たにつけられたものがあるか,その種類・地点・意味について調べ,報告すること。

(五一) 自分の近隣に,辰(たつ)市・とり市・二日市・三日市・四日市・五日市・八日市・二十日市・馬市などの地点があれば,それについて,また地形・産業の点から,それがどうして発生して来たものか,またそれが衰えたことによって,日本人の生活にはどんな影響があったかを,討議すること。

(五二) 商業・工業における仲間について,その種類・機能,そのよい点と悪い点とを調ベて,討議すること。

(五三) 親方と徒弟の関係について,昔はどうか,現在はどうか,徒弟の修業年限及び義務などについて,親方と称するものから聞き,近代商工業の発展といら点から,そのよい点と悪い点とについて調べ,討議すること。

(五四) 交通の用具としてどんなものがあるか,また,交通用具の発達について調ベ,報告すること。

(五五) 市(いち)について,その種類・場所・日数・市のたつ回数,神様との関係,また市の開かれる日をなんというか,農業休みその他の休日とどんな関係があるかを調ベて,報告すること。

(五六) 市では,地方によってどんな品物が売買されるかを調ベること。

(五七) 自分の村に,どんな口碑や伝説があるか,また彰徳碑などがあれば,それについて,それが村の発達とどんな関係があったかを,古老や旧家などに行って聞き,学級に報告すること。

(五八) 盆踊りについて,その変遷を古老に聞き,それは農村にとって必要なものかどうか,必要であるとしても改善すベき点はないか,などについて討議し,報告すること。

(五九) 古老から昔の説話についてできるだけ聞き集め,その現在の生活に対する影響について,先生を交えて討議すること。

(六○) 中国の年中行事について調べ,日本のそれとどんな関係があるかを考えること。

(六一) 中国の伝説を集めて報告すること。

(六二) 中国の廟会について,その時日・意義などについて調ベ,報告すること。

(六三) 娘々祭(にゃんにゃんまつり)について調ベ,報告すること。

(六四) インドネシヤ人の農耕儀礼についてそのだいたいを調べ,報告すること。

(六五) 日本の家と,中国の家と,西洋の家の構造を比較し,その得失を討議すること。

(六六) 日本服と,中国服と,洋服とを比較し,その得失を討議すること。

(六七) 日本食と,中国食と,洋食とを比較し,その得失を討議すること。

学習効果の判定

(一) 生徒の口頭または文書による報告によって,現在の日常生活の用具や生活様式の中に織りこまれている過去の人々の努力を,認識したか調ベ,学用品や身のまわり品の使用について,ていねいであるかどうかを観察する。

(二) 現在の日本文化が,いかなる過去の影響と,外国文化の影響によってできたものであるかの理解を,生徒との話しあいによって調ベること。

(三) 書物や写真や,模型,実物などを読ませたり観察させることによって,文化的遺産について,生徒がいかに具体的に比較考察する能力が養われたかをテストする。

(四) 迷信や因襲を批判的に認識する能力が養えたかどうか。話し合いによって調べ,健全で必要な習慣や礼儀やことばや道徳を尊敬して,日常の行動の上に実践しているかどうかを観察する。

(五) 家を中心とする古くからのしきたりや慣行について,生徒の言動が家庭の両親や老人に,いかなる影響を与えたか。家庭の人々との話し合いによって知る。

(六) 作文を書かせて,日本の文化的遺産の維持と,それの改善並びに発展に対する欲求を知ること。

 

単 元 二
要 旨

 人間のいろいろな欲求の中に,芸術的な要求と呼ばれるものがある。芸術文化は社会的な意味をもち社会生活の必要に応じて生まれ発展して来た。正常な社会生活は,この欲求に正当な位置を与えている。即ち,社会が,このような欲求の正しい表現に対して手段を提供し,また,各個人が,その能力に応じて自分の創造力を発揮し,その所産を,楽しむことによって,生活を,豊かに,高く発展させることができる。この欲求は,もちろん,原始時代の人間生活においても存在していたが,社会の進歩とともに,その欲求も次第に洗練され,その表現の形式もまた次第に複雑になって来ている。さらに,歴史や風土の相違によって,文化の姿もまた違っている。しかし,このような人間的欲求を正しく満足させ,創作と鑑賞の機会が十分に与えられ,多くの文化の恵みに浴することができるようになることは,社会の進歩の標識であろう。文学・美術・音楽・演劇はいうまでもなく,地方の民衆のひなびた芸術的表現と享受も,社会生活にとって大きな価値を持っているのである。

 日本は,文化国家として再出発を目ざしているが,それが単に掛け声だけに終らないためには,芸術的表現と享受とが大衆化され,そして,国民一般が大衆の創造力を十分みとめるようにならなくてはならない。今日,文化日本ということはに応じて,いろいろな傾向や流行が見受けられるが,その傾向が健全なものとなるためには,なによりも青少年が,文化の社会生活に対する意味を,十分に認識することが必要であろう。古来,美の国といわれた日本が,さらに,世界の文化に貢献し得るかどうかは,まず日常生活の中に,文化の自由な,そして程度の高い表現が消化されるかどかによって定まるといっても,いいすぎではなかろう。

 この単元は,芸術的欲求を満足させるために,社会がどんな機会を与えているかという問題の解決を通して,生活と芸術との関係を理解し,余暇を精神的に豊かな高い楽しみによって利用する態度と養うことを目ざすものである。

目 標

(一) 芸術的欲求の表現が,社会生活にとって,欠くことのできないものであることを理解すること。

(二) 文化様式が,時代により,所によって異なることを理解すること。

(三) 特殊な文化を創造するのは,すぐれた個人や伝統によるものであるが,芸術的表現を正しく鑑賞することも,創造に協力することであるということを理解すること。

(四) 芸術鑑賞の機会を公共的にすることがたいせつであることを,認識すること。

(五) 自分から進んで,個人として何が一つの芸術的表現の能力を持とうとする態度,また,その技能。

(六) 余暇を,美的な精神的のものの鑑賞によって充実しようとする態度。

(七) 商業的に生産される文化財に対して,建設的な批判力を持ち,いっそうよいものを選ぶ習慣。

(八) 文化財を,社会の公共財として尊重する態度。

(九) 社会公共のために,芸術鑑賞の機会を作ろうとする欲求。

(一○) 一般の社会生活の向上のために,美術・工芸の展覧会の価値を理解すること。

教材の排列

(一) 人間は,どんな形で,芸術的欲求を表現するであろうか。

(二) われわれは,現在,どういう芸術的な表現の種類を持っているか。社会生活は,それに対して,どんな機会を与えているか。 (三) われわれは,どうして芸術文化を楽しみ,生活を豊かにすることができるか。 学習活動の例

(一) 子供たちは,歌をうたったり,絵を書いたりしているであろうか。そういう欲望を,どういう形で表わしているであろうか。自分の弟や妹を観察して,その種類・機会などについて,表を作ってみること。

(二) 原始人たちは,どんな形で芸術的欲望を表現したか。浜田陵著「博物館というような本を説んで,報告文を書くこと。

(三) 未開人の楽しみは,どんな形でなされているか,映画や,書かれた書物などによって,そのありさまを知り,学級に報告すること。それは,われわれの現在の楽しみと似たところがあるであろうか。それで,どんな美的な欲望がみたされているのであろうか。

(四) 未開人の装飾について,それと実用との関係を調ベてみること。家の装飾は,たゞ美化するだけのためのものか,それとも,必要から生まれて来たものか,写真を集めて研究すること。

(五) 日本の古代人は,どんな遺跡を残しているか。歴史の書物を続んだり,陳列してあるものを見学したり,地方の家の所蔵の美術品を見たりして研究すること。それは,現在の生活と,どんな関係を持っているであろうか。

(六) 日本の古代には,芸術文化の上で,大陸からどんな影響を受けたか,歴史の書物によって研究すること。また,正倉院の御物について,先生の講義を聞くこと。石田幹之助著「長安の春」というような本を,先生に読んでもらい,それにもとづき,東西文化の交流について討議すること。今日のわれわれの生活で,こういう文化の表現は,どんな意味を持っているであろうか。

(七) 東洋古代の芸術文化は,現在の日本の文化にどんな影響を及ぼしているか表を作って研究してみること。

(八) 西洋の古代の芸術文化に関する写真を集めること。エジプト・ギリシヤ・ローマなどの芸術文化が,現在のわれわれにとって,どんな関係があるか,調ベてみること。

(九) ギリシヤ神話に取材した文芸作品を集めてみること。

(一○) ギリシヤの彫刻と近代彫刻とを比較して,その特色について調ベてみること。また,現代の生活の中に残るその影響を探してみること。

(一一) 仏教美術・キリスト教美術の写真を集めてみること。キリスト教の教会・仏教の寺院・回教の寺院・神社の写真などを集めることもよい。

(一二) 国語でならう日本の古典を調ベ,「古典と時代精神」という題で作文を書くこと。「日本の美の伝統と特色」という点について,研究すること(能・生花・茶の湯・和歌・俳句・庭園など)。

(一三) 明治以前の日本人の一般の楽しみは,どんなものであったろうか。音楽・舞踊・演劇などについて調ベてみること。それは現在までどんな影響を与えているであろうか。

(一四) 機械の発明が行われてから,芸術文化にどんな変化が起ったであろうか。印刷術を例にとって討議すること。また,美の世界は,どんなに拡大されたであろうか。

(一五) 日本は,明治以来,どんな国々の文化の影響を受けたであろうか。交通・通信の発達が,芸術文化に及ぼす影響という点で,代表的な例を考えてみること。

(一六) 科学はどんな新しい楽しみを人間生活に与えているであろうか,その例を考えてみること。それは,どんな点で過去の芸術に影響を与えているであろうか,それについて討議すること。

(一七) 学級で,趣味の調査をしてみること。その項目は,小説・詩・和歌・俳句・絵画・彫刻・音楽・映画・写真・ラジオなどとすること。

(一八) 自分の郷土には,どんな種類の文化団体があるであろうか。文化団体の名まえ・目的・会員数などを調ベること。

(一九) 自分の郷土からは,どんな芸術家が出ているか,調べてみること,郷土に住んでいる芸術家をたずねて,地方文化の向上という点について話を聞くこと。

(二○) できれば,学校が主催して,地方の絵画展覧会を開くこと。在住の画家などと相談して,その計画を立てること。

(二一) 自分の郷土には,どんな工芸品が生産されているか,その歴史について調ベてみること。学校にそれを報告し,一つ一つの工芸品について,将来性があるかどうか,討議すること。最近それらはどんなに変わって来たか。自分の家庭にはどんな道具,調度,工芸品があるか。それらはどこで出来たか,その製作過程を調べてみること。

(二二) 自分の郷土では,盆踊りはどんな程度に行われているか,どんな歌詞がうたわれているか,どんな歴史を持っているか,などについて調ベてみること。盆踊りは,地方の生活にとってどんな意義を持っているか,その利害について討議すること。できれば,盆踊りの歌詞を作ってみること。

(二三) 日本音楽と西洋音楽との違う点,似ている点について討議すること。ラジオの音楽番組で,日本音楽と西洋音楽の比率を,一週間を通じて調べてみること。それは中央局と地方局とで,どう違っているか。

(二四) 郷土出身,あるいは郷土在住の音楽家を中心に,音楽会を計画すること。

(二五) 世界の大音楽家の伝記を書いて,学級で朗読すること。

(二六) 学級のレコード・コンサートを計画し,すぐれた音楽を,他の学級の者も,聞かせること,その際,学級の数名が選ばれて,解説の役目を引き受けること。

(二七) 世界及び日本の名画の模写を集め,その下におのおのの解説をつけて,学級展覧会を開くこと,学級として,すぐれた絵画展を見学し,図画の先生から説明を聞くこと。

(二八) 学級や学校で,読書傾向を調査し,項目に分けて図表を作ること。それによって,読書指導について,討議すること。

(二九) 自分の好む文学作品について,そのあらすじをまとめ,学級に報告し,それに含まれている思想や理想について説明し,学級討議を行うこと。

(三○) 地方の図書館に行き,人々の読書の趣味や傾向,そのおのおのの人数,書物の種類などを調べること。また,書店に行って,書籍・雑誌などについて,その売れ行きを調ベ,統計をとってみること。

(三一) 地方の図書館は,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。全国にはどれくらい図書館があるか,それぞれ,どういうふうに経営され管理されているか,財政はどうなっているか,調ベてみること。政府や社会は,図書館に対して,どんな関心を示しているか,数字を挙げて学級に報告すること。また,望ましい状態は,どうかという点について,討議すること。

(三二) 自分の地方には,映画館はどのくらいあるであろうか,過去一箇月間にどんな映画が上映されたか,表にあらわしてみること。自分の町の映画館の上映写真について,学級で投票を行い,その人気の高下,及びその理由を明らかにすること(製作会社名も明らかにすること)。

(三三) 「映画と青年」という題で作文を書くこと。映画は,地方文化に対し,どんな利害を与えているか,それは文化生活に対して大きな価値を持っているか。

(三四) 地方の商業劇場では,どんな出し物が行われているか,学級の生徒の家庭では,どのくらいの割合で見に行くか,統計をとってみること。できれば,劇の種類(かぶき・新劇など)と,見に行く人の年齢・職業などを調ベてみること。また,学級の者は,どういうものを要求するか,討議すること。

(三五) 地方のしろうと演劇を調べてみること。どんな人たちが主になってしているか,その利害などについて報告書を書くこと。

(三六) 学級で,脚本朗読をしてみること。できるだけ望ましい脚本を選び,できれば自分たちで簡単な脚本を書いてみること。

(三七) 自分の家庭でラジオ劇を聞き,まず家庭で批評会を行い,それをもとにして,学級で討議してみること。

(三八) 自分たちの地方には,有名な建築物はないであろうか。県の有名な建築物の写真を集めて表を作ること。地方や中央の政府は,それに対して,どういう保護を加えているか,研究すること。自分の町の美しい建物(古くても,新しくても)を調ベ,なぜ美しいかについて,討議すること。

(三九) 産業の発達にともなって,装飾品にどんな変化が起って来たかを調ベてみること。自分たちの周囲を調ベて,どんな新しい材料が使われているかを研究すること。例えば,筆入れなどの材料や形が,どんなに変わって来たか図示すること。自分でも,新しい装飾品の設計図を書いてみること。

(四○) 政府は,国民の文化生活を改善するために,どんな仕事をしているか,あらゆる領域にわたって調べ,それを図表にあらわしてみること。もっと政府に期待すベき点について討議すること。

(四一) 自分の町の当局者に会い,都市の美化についての計画を聞くこと。できれば,学級で,都市の美化という立場で,自分の町の都市計画を考え,鳥かん図を作ってみること。

(四二) 学級あるいは学校で,読書会・音楽会・音楽同好会・美術同好会・短歌会・俳句会・書道会などの同好会を作り,地方の人たちと協力して,どの程度まで成功するか,研究してみること。

(四三) 学校あるいは学級の図書は,どういうふうに利用されているか,それと地方の人たちに公開することの是非について,討議すること。公開するとすれば,学級の生徒は,どんな責任のある仕事をすることができるか。

(四四) 「図書館のよき利用者」,「劇場のよき観衆」,「音楽会のよき聴衆」というような題で,公共の施設を利用する。よき態度について表を作ること。

(四五) 学級で,文学作品を発表し,回覧雑誌を作ること。

(四六) 学級あるいは学校で,自分たちの作品で,美術展覧会を開くこと。

(四七) 教室を美しくするための委員会を作り,交替で,責任をもって,その計画に当たること。

(四八) 学校に花壇を作り,責任者をきめて,その管理を行うこと。

(四九) 衣服のがらや型の流行の美について討議すること。また,生活のいろいろな角度から討議すること。

学習効果の判定

(一) 生徒は,芸術文化の社会生活に対する重要さ,及びその社会生活に対する関係を理解するようになったか,口頭や文書による報告を調ベ討議をきいて評定する。

(二) 生徒は,町や,公共の達物や,公園を,美化する態度を示すようになったか観察する。

(三) 生徒は,他人の文化生活を尊重するようになったか,学校における集団生活を観察して記録する。

(四) 生徒は,他人と協同して,芸術の表現と鑑賞の機会を作るようになったか観察する。

(五) 生徒は,自分で創造的な活動を示すようになったか,その同好会活動を観察し,あるいは作品と調べ,評定する。

(六) 生徒は,余暇を趣味や教養の向上のために,利用するようになったか,両親の意見を参考として記録する。

(七) 生徒は,商業的な文化鑑賞の機会に対して,すぐれた選択力を示すようになったか,討議などをきいて記録する。

 

要 旨

 世界の民族で,なんらかの形の宗教を持たないものはない。中でも仏教・キリスト教及び,回教は世界宗教といわれ,世界の三大宗教として世界の各地に行われ,多数の信徒を持っている。日本においても民族宗教である神道のほかに仏教・キリスト教が伝来したが,ことに仏教は深く国民の生活や文化に浸透して,多くの新しい宗派を発展させた。キリスト教は天文年間に伝わり,いろいろな困難を経て,明治時代に至り,制度上発展の自由が認められるとともに国民の間に信じられるようになった。回教は,近年になって,移入されたばかりで信者はきわめて少ない。中国の儒教及び道教の思想的影響は非常に大きく,それらは,宗教としての体系をなさないがわれわれの生活に深いつながりを持っている。さらに固有の神道からいっそう宗教的な形態をとって発展したいわゆる教派神道は,中世ごろからそのきざしを見せ,近年ますます盛んになっている。

 なお社会生活が複雑になるにつれ,いろいろ異なった形態の宗が多く生ずるのが常であるが,この傾向は,最近特に著しい社会現象となっている。このようにして,宗教は人類の歴史を通じて,その生活や文化に深い関連を保ち,人類の文化を形づくる重要な要素となっている。

 ところで,宗教がこのように,人類の社会現象として,重要な一面をなしているについては,一方多くの偉大な宗教者たちが,人類に永遠の福祉をもたらすこととを目ざして,自分の信仰を確立し,これを述ベ伝えるとともに,その信教の自由を確立するために,きびしい努力と闘争とを続けて来た事実と忘れることができない,すでに述べたように,宗教が社会生活や,その文化のあらゆる部面に深いつながりを持っているものである上に,宗教上の団体においてその成員が強固に結して,社会生活上の有力な勢力となりやすいので,多くの国々にあっては,宗教は,統治者とあるいは,強く結びつき,あるいはその絶えざる監視や,干渉や,激しい弾圧のもとにおかれるのが常であった。

 宗教史において,「信教の自由」ないし「国家との関係」の問題がきわめて重要な主題となっており,迫害や殉教の史実が顕著であることは,正にこのことを物語っているものである。それと同時に,宗教史に著しいもう一つの事実は,新しい宗教が唱えられるときに,常に,在来の宗教との間に激しい争いが生じたということである。初期のキリスト教に対する障害,宗教を主体としての東西ローマの分裂,カソリックに対する宗教改革による新教の分裂,新教各派の分裂,信仰の自由を求めてのピューリタンの新大陸移住,並びに信教の自由に対する現在の運動は,西洋の歴史にあらわれた宗教者たちの努力と闘争のおもなものである。同様なことは,仏教・回教においても見られ,アラビア・インド・中国その他東洋諸国の歴史にその幾多の実例がある。

 キリスト教が,その成長と伝ぱに伴なう多くの障害をのり越えた後,欧米の宗教的,社会的思想に多大の影響を与えたように,回教は,近東,中亜,及び南海にひろまった。そうして仏教は,アジア東部の大部分にひろがって行った。日本においては,まず仏教はその渡来の当初,固有神道との間に,あつれきを生じたが,日本歴史のいろいろの時代に,教と神道との間に対立や融合が行われ,その間,中国から新教理を輸入したり,同化したりして,ことに鎌倉時代ごろから,多くの新しい宗派が起った。

 明治維新は,日本国民に名目上では法律上の信教の自由を与えた。しかし,国家が神神道に財政的な援助を与え,これを奨励し,いろいろの機関を通じてひろめたから,ほんとうの信教の自由は達成されなかった。ほんとうの信教の自由は,昭和二十一年に発布された新憲法によって保障され,確保されるに至ったのである。

 このように,長い歴史と広い地域にわたる複雑な宗教の発展を見わたすと,宗教がいかに人間の社会生活に深い関係を持ってり,したがって,また人間精神の内奥に深いむすびつきを持っているかがわかる。たいていの宗教は,人間に永遠の幸福への道を教えるとともに,現在の生活における行動に高い理想を示すものである。この二つのことがらのいずれに重点をおくかによって,いろいろの宗教のあり方が異なって来るが,この単元の目的は,ある種の宗教や,宗派や宗教的教設を唱道することではない。その任務は個人及び,社会生活の中で宗教が果たした役割に対して,理解を与えようとするにある。

目 標

(一) 宗教が各国民に共通に経験されるということを理解すること。

(二) 日本における宗教の種類について理解すること。

(三) 世界の宗教について,その種類と教理の一般とその重点とを理解すること。

(四) 社会生活の一部面と考えられる宗教の歴史的発展について理解すること。

(五) 神社・寺院・教会その他の宗教団が行う社会的な仕事に対する理解を深めること。

(六) 家庭及び社会における宗教教育が一般の社会生活にどんな影響を与えるかを認識すること。

(七) 宗教が集団の連帯性を発展させるのに,いかに大きな影響力を持っているかということを認識すること。

(八) 宗教文化が社会生活を豊かにして来たことを認識すること。

(九) 科学精神の発展や社会の進歩に伴なって宗教がいかに洗練され変化しつゝあるかを理解すること。

(一○) 宗教が個人の価値を確立するのに貢献していることを認識すること。

(一一) 信教の自由の必要とそのために過去の人々がいかに戦かって来たかを認識すること。

(一二) 他の人々の宗教を尊重すると共に自分の信仰によって,社会生活に障壁を築くことのないような寛容な態度を養うこと。

教材の排列

(一) 宗教にはどのような種類があるだろうか。

(二) 宗教はどのように発展して来たか。 (三) 宗教は個人及び社会に対してどのような影響を与えているか。 (四) 宗教と民主主義とはどのような関系をもっているか。 学習活動の例

(一) 自分の地方の宗教の種類や土俗信仰を調べて報告すること。

(二) 自分の地方で行われている収穫の祭やその他の宗教行事について調ベること。それらは地方の人々の生活にとってどんな価値があるか。よく調べた後で討議すること。

(三) 仏教の成立とその発展について調べて報告すること。教はどのようにして日本に伝来し,どんなに日本人の社会生活を変えたか。現在どのような影響を与えているか,学級で討議すること。

(四) 鎌倉時代には,いろいろの仏教の宗派が発生した。これはどういう理由によるのだろうか。またそれらは従来の仏教とどのような点で異なっているか。その点について学級に報告すること。

(五) 歴史の書物などによって,キリスト教はどうして成立したかについて調ベ学級に報告すること。それはいつ日本に伝えられたか。それはわれわれの社会生活にどんな影響を与えているか。

(六) キリスト教と仏教の教義は実際にどう違うか。儀礼などもどう異なっているか。またその教義や信仰で共通な点はどこにあるか。これらについてよく調べた上で討議すること。

(七) 同教の成立とその発展について調ベ,簡単に報告すること。

(八) 神道にはどんなものがあるか。その種類を調ベて報告すること。それらは自分の地方の社会生活にどんな影響を与えているであろうか。

(九) 儒教や道教の影響はどうであろうか。それは家庭や社会的にどんな形で現われているか。それについて研究し討議すること。

(一○) 世界のおもな宗教の時代分けと分布を地図の上で示してみること。

(一一) 自分の近所の神社や教会や寺院が社会生活に対してどんな意味をもっているかについて報告すること。

(一二) 教会や寺院の果たして来た社会的責任の重要なものは何かということについて討議すること。

(一三) 宗教団による救済機関としてはどんなものがあるか。またそれによってどれぐらいの人々がどのように救済されているかについて調ベて報告すること。

(一四) 自分の近所に宗教団によって,経営されている幼椎園・学校及びその他の教育施設があれば,方針・内容,及び社会貢献する教育活動について調べて報告すること。

(一五) 日本の宗教の中で,社会事業の点でどの宗教の宗派が活動的であるか。それらはどのような方面に活動しているかについて調ベて報告すること。

(一六) 自分の近隣に宗教団体によって経営されている学校があれば,その教育はどこに重点をおいているかについて報告すること。

(一七) 信仰に一生をさゝげ社会に影響を与えた人々を主題にして,物語を書き学級で朗読すること。

(一八) 信教の自由を求めて戦かった人々のうちからひとりを選んでその人について短い伝記を書き,それを学級で朗読すること。

(一九) なぜ信教の自由は必要なのであろうか。日本では,信教の自由はどんな発展をして来たか。明治憲法にも信教の自由について明記してあるが,新憲法であらためて,これを強調しなくてはならなかった理由について討議すること。

学習効果の判定

(一) 生徒たちは,宗教の意味に対する理解深めているか,生徒の書いたものを調ベたり,討議や自席報告をきいて記録しておくこと。

(二) 生徒は,宗教の歴史や宗教的な出来事に対して興味を示しているかどうかを観察すること。

(三) 生徒は,社会生活における宗教団体の種々の行事について理解して討議しているであろうか。

(四) この単元の学習によって,生徒は,生活に対して科学的な態度を強めたであろうか。その点について観察し記録しておくこと。

(五) 生徒は,新憲法による信教の自由を正しく認識しているであろうか。学校生活における態度や活動を観察して評定すること。

(六) 生徒は,自分自身の生活においても,また他人に対しても善良,親切,寛容な態度をとるようになったであろうか。集団生活や討議における活動を観察して評定すること。

 

単 元 三

 われわれの政治は,どのように行われているであろうか。

要 旨

 わが国は新憲法を制定した。その中には,主権が国民にあるということがはっきりと明示されている。この憲法の条項は,非常に重大であり,これが明されていることは,わが国の政治的発展にとって,欠くことのできない第一歩である。しかし,憲法の原則が,単に一片の紙きれに終らないためには,国民の日常生活の中に,これが生かされることがたいせつである。

 そこで,国民は,主権の意味を理解し,主権が国民にあるあり方について,理解を深めなくてはならない。

 民主的な社会においては,政治は国民の政府によって,国民のために行われる。このことを理解するために,典型的な民主的社会について説朋をしてみよう。人間は,だれでも,衣食住や,休養や,文化的精神的な向上などに対する要求というような,基本的な要求を持っている。これらの要求は,一個人や一家庭の力ではとうてい十分にみたされない。それは,集団や社会の成員が,力を合わせて努力することによって,はじめて十分にみたされる。一例をとってみよう。

 無法な個人から自分を保護し,安全に暮らそうとする基本的な要求がある。もし各個人や,各家庭が,それを自分の手でやろうとすれば,そのために多くの時間をさかなくてはならないし,自分や,家族の生命財産を守る注意だけでも,大変であるが,それにもかゝわらず,実際の安寧を保障する点では,その効果も疑わしい。個人的に安寧を保とうとする代わりに,人々は,相互の保護のために,共同生活を営み,一致して,全体の集団の福祉のために必要な行為の規則をつくり,各個人に,そのような規則に従うことを求めるのである。ところで,多くの人々は,日常生活に必要な仕事に,多少とも忙しく,個人や家庭が,各自でこの規則が守られるように保障することは,実際には不経済であるから,集団は,ある個人を選び,その人を雇い,時間与えて,このような規則が,各個人によって守られるように見張り,集団の人々を助け,どこまでも集団の安全を高める仕事をさせる。社会や集団の生命財産を保護するように選ばれた個人は,公衆のために,その時間の大部分,またはそのすべてを捧げるのだから,当人は,衣食住などのことにしたがうわけにいかない。そこで,集団の成員は,自分もその人を雇うことに同意したのだから,その人のために,衣食住,その他の世話をしてやったり,給料を出したりして,この公僕養うわけである。この公僕が,いわゆる官公吏にほかならない。

 小さな集団ならば,人々は顔を合わせて,共同生活のために,雇う人をきめたり,そのような人の義務をきめたり,また,これを養い,その人が仕事を十分果たすことができるような設備をし,便宜をはかるための税の割り当てをきめたりすることができる。しかし,社会が大きくなれば,集団の仕事を処理するために,人々が顔を合わせることは実際には不可能になる。そこで,人々を代表して行為の規則をきめたり,官公吏を選んだり,また税額を定めたりするために,共同社会の中にある小さい手ごろの集団が選ばれる。これが議員の集まりである。この人々は周期的に選挙によって選出される。もし,官公吏の仕事ぶりに対して,この人々が満足しないならば,この人たちには,その時その時にそのような人間をやめさせ,他のものを選ぶ機会が与えられている。

 社会集団に秩序がなければ,集団に属している個人は,必要ないろいろの活動に従事することができないし,その集団の文化も進歩しない。そこで,集団は,秩序を保ち,成員の福祉を保護する統治の組織をとる。その統治の形式は,多数の意見にしたがってきめられるのであるが,少数の意見も,もとより考慮される。一度規則(法律)が採用されれば,個人は,それに従うことを求められるが,少数者にも,その規則に対して,不満足の意を表する機会と,必要な時また好都合な時に,この規則を変える機会が与えられる。社会は静止したものであってはならないのであるから,社会の行動や,行動の規則は,経済生活の変化や,改善や,技術の改良に伴なって,変わっていかなくてはならない。

 人間は,社会集団の一員として生活して,はめて真の人間であるといえる。しかし,社会集団の問題や,事件を考える場合には,社会集団は個人から成り立っているものだということを忘れてはならない。われわれの従来の考え方の中には,社会は,個人以上に重要なものであるという観念がある。しかし,この考えを誤って解釈すれば,独裁的な政治が行われ,個人の自由が抑圧されるようになる。社会というものが個人の必要に隠するためにたいせつな組織だということを忘れてはならないのである。個人の欲望は,その属する集団の必要や欲望と抵触することは許されないが,しかし,個人的要求を自由に伸張することは,集団の欲求を妨げないどころか,集団の福祉に貢献することになる。自分のいろいろな能力を,自由に伸張できる個人は,その才能を社会生活の改善のために喜んで用いるであろう。そのためには,協同的努力と,心の広い理解をもつことが必要になる。各個人の独自な価値は,忘れられたり,無されたり,没却されたりしてはならない。個人の発展の権利は,共同社会(市町村・都道府県・国)の規則の中に共同社会のすべての成員の同意のもとに,明瞭に,正確に記載されていなくてはならない。そうして,それに対しては,官憲も干渉することはできない。言論の自由,出版の自由,集会の自由,政府枇判の自由,請願の自由,それから,信教の自由などの個人の権利は,相互の同意のもとに,いかなる個人によっても,尊重され,いかなる官憲もそれを制限することのできない権利として,存在しなくてはならない。

 このように,国民が,政府を自分たちの政府であると考え,国民が,自らいろいろな形で政治に寄与して,自らを治めて行くところに,民主主義の発展がある。しかるに,わが国では,従来政府というものは,国民から離れて存在しているもので,国民は,たゞそれに忠誠を捧げなくてはならないという考え方が強かった。江戸時代には,徳川幕府の独裁的な形式で政治が行われ,その政府は,それ以前からあった封建制をいく分中央集権化して安定させ,権力的・政治的な支配体制をつくり出していた。政府の武力的・政治的権力は,将軍によって握られていたが,その間,天皇は,祭礼や,朝廷儀礼や,位階の授与というような点で,最高の地位を保たれた。徳川幕府が倒れた慶応三年(一八六七)以後,政府機を改造する必要が起ったが,結局でき上って昭和二十年(一九四五)まで続いた形式は,古い制度と,種々のヨーロッパの形式との結合したようなものであり,後者は,むしろ古い機構に適応したのである。この体制のもとでは,日本国民は,ほとんど自分の政治的運命と,自分で支配することができなかった。ある政治論によれば,大権は,家族国家日本の家長たる天皇に帰せられ,天皇は即ち国家であった。立憲君主制は,外国から輸入されはしたが,明治憲法にもとづいた政治は,政治的主権が,国民にあるという思想の発展に貢献するような方向に進展することができなかったのである。

 新憲法を制定したわが国民は,はじめて,自分の政治的運命を自分の手に委ねる可能性を得たのである。戦争を放棄し,基本的人権を強調した新憲法は,わが国の現状から見れば,われわれ国民のまじめな目的を表わし,国民の決意を反映している。われわれはこの憲法の原則を,できるだけ早く実際に日常生活の中に生かすように,最善をつくさなくてはならない。それが,われわれの目的と,それを実現する政治的な方法とを確立していることを考えれば,この憲法は,また,国民教育に対する基本的原則を確立したものといえよう。われわれの目的のすベてを,一時に実現することができないのはいうまでもない。長い過去の因習は,まだ払拭されていないし,古い制度の名残りは,到るところに見られる現状である。われわれは,一歩一歩われわれの目的を,残ている古い制度のよくないところと戦いながら,実現していかなくてはならない。政治的教養は,各個人から始まって,順次にいろいろな共同社会の中に個人が参与していくことによって,拡大していかなくてはならない。このようにして,政治は個人から始まり,家庭・学校・地方自治体に及び国にひろまる。民主主義は,個人の生活に始まり,次第に国民の全生活を包むようになる。

 この単元の学習の任務は,生徒を,上述のような政治の理解に到達させようとするにある。生徒は,市町村・都道府県及び国の政治の構造・形式・機能を,このような理解にもとづいて調ベ,また現在の政治の形式や運営が,このような考え方からする要求にかなっているかどうかを,批判的に判断しなくてはならない。教師は,家庭・学校・地方社会において,生徒に民主的な生活をさせるように直ちに着手することが,新しい教育の任務であることを理解すべきであろう。

目 標

(一) 政府というものは,国民が相互の問題を解決し,その要求を,協力して調整して行くために選んだ活動機関であることを理解するように,生徒をそだてること。

(二) われわれの健全な社会生活に対する政治の意味を,認識させること。

(三) 新憲法の原則と諸条項とを理解させ,それを日常の生活に実践する意志を養わせること。

(四) わが国近代の政治の歴史的背景に対する理解を発展させること。

(五) 民主主義における政党の正しい地位についての理解を,発展させること。

(六) 社会の各員の個人的価値と尊厳に対する理解を,作りあげること。

(七) いろいろな政治的な機関の機構や,形式や機能などについて,いろいろなところから正確な知識を得て調ベ,また,新憲法の原則に従って,政治の現状を,批判的に自主的に判断する能力を,発展させること。

(八) 自治的な学校生活を組織する能力を,発展させること。

(九) 宣伝にとらわれずに,自分自身の政治的意見を持つ能力を,発展させること。

(一○) 民主的な生活に必要な技能をそだてること。

教材の排列

(一) なぜ政府は存在するのか。

(二) わが国の政治活動は,どのように行われているか。 (三) 国民の政治生活は,どんな歴史的背景を持っているか。 (四) われわれは,どうして民主的な目的を,日常生活に具現したらよいか。 学習活動の例

(一) 家のしきたりを挙げて表にし,そのうちで興味のあるものを選んで,討議すること。家のしきたりはどうしてできたのであろうか,なぜそういうしきたりは必要なのか。

(二) 隣近所の人々が,互に協力して働いたり,手伝い合ったりする時があれば表にすること。例えば,

 このやうなしきたりは,いまでも盛んに行われているであろうか。どんなふうに行われているだろうか。その組の仲間の人は,これらのことを喜んでいるだろうか。それともきらっているだろうか。これらの協力は,将来どうなると思うか。学級で討議すること。

(三) H・G・ウルズの「世界化史大系」や,ンルーンの「人類解放物」その他のものを読んで,原始社会や未開社会について知識を得ること。社会が成り立つためには,そこで,どんな条件が必要か(生活の規則や義務とかそれらによる統制とか)を明らかにすること。どんな単純な社会でも,秩序があることを明らかにすること。そういう社会と,自分たちの社会とを,個人と証会との関係がどんなふうに発展して来たかという点で比較して明らかにすること。

(四) 自分の学級や学校のいろいろの規則を集めて,調ベること。

(五) 自分の学校に適用される国・県・その他の法令を集めて研究すること。それらを討議して,一つ一つの規定が,学校に及ぼす影響を正確に調ベてみること。それらの法令の範囲内で,できる改良について考え,それから明らかに現在の規則を変えた方がよいと思われる例について,考えてみること。

(六) 自分の学校の衛生委員会と設備改善委員会を作ること。この委員会は視察を行って事情の報告をなすこと。問題が見出だされたら,それを学級で討議して,解決をはかること。もし自分たちで取り扱えない問題があれば,学校教育当局や専門家(校医・学務委員・学校父兄会・後援会会長)の注意を促す方法を考えること。

(七) 学校内の生活に例をとって,よい指導者や,よい協力者の特色を挙げて学級で討議すること。在学期間中に,学級のすべての生徒が指導者として活動できる機会を作ること。

(八) 人々が,共通の目的のために,いかに協力して来たかを明らにするために,自分たちの市・区・町・村内にある重要な組織について,研究すること。市・区・町・村民の組合や,協会全部の表を作り,それぞれその指導者に会ってみること。できれば,いつでも個人または委員会の一員として,会合に出席するようにはかること。

 労働組合・婦人の会・青年の会・休養娯楽の会・厚生組織・宗教の会などの現在の仕事について討議すること。一年間のうちに,本を一冊編集して,各組合組織の発生・目的・存在理由・活動・形態・組織・内容などを書きこむこと。もし,ある組織が,価値のある目的のために働いていると思い,自分たちもその力になれると思ったならば,進んでそれに参加すること。

(九) 学校の生徒は,かならず学校の規則を守るだろうか。市・区・町・村の人人が,その市・区・町・村の規則を堅く守ることによってもたらされるいろいろな利益を挙げて,学級で表にすること。もし現在のわれわれを統制しているいろいろの規則が,全部なくなったとしたら,そこに起ると思われる混乱を挙げてみること。規則や法律はなぜ時代の変化とともに,改良され,進歩していかなくてはならないであろうか。

(一○) 自分の家庭,及び自分の地方の他の家庭の生活が,政府のやり方によってどういう影響を受けるか,政府から受ける利益について,表を作ること。

(一一) 市役所・区役所・町・村役場,都道府県庁,及び政府と,自分との関係を示す図表を作ること。

(一二) 委員会を組織して,市・区・町・村長及びその他の地方役場の公務員をすべて訪問し会見してみること。その人たちの職責・資格・給料・任命方法を知ること。自分の知ったことがらを,すべて学級の生徒に報告し,討議すること。新憲法は,地方公共団体公務員の公選を規定しているが,自分自身でも,その公選の計画を立ててみること。それを立てる前に,外国の市・区・町村役場を研究すること。

(一三) 市・区・町村役場の組織を示す大きな図表をかいて,級友に説明すること。

(一四) もしできるならば,自分たちの市・町・村会の会議を傍聴すること。会議の進行状態を注意して観察すること。市・区・町・村会議員の選出法・資格・給料・職責を研究すること。選出法で変えた方がよいと思うことについて,討議すること。自分の生活に影響のある市・区・町・村会の活動を表に作ること。

(一五) 市・区・町・村役場の活動に関係した題材を,新聞から拾い出し,それを切り抜いて整理保存すること。また市・区・町・村役場の公務員を学校に招き,その活動について,説明を受けること。

(一六) 模擬市・区・町・村議会を,自分の学級か学校に組織し,市・区・町・村問題を,討議すること。

(一七) 自分たちの地方の人々には,どんなふうに税が課せられているかを調ベること。税金がどのように費やされるかを調べること。徴税と支出とを示す図表を作ること。地方の人が,それらの支出によって,どんな恩恵を受けているか,個々の場合に当たって調べること。

(一八) 外国の市・区・町・村行政組織に関係する資料をすべて集めて,研究すること。それらを,日本のものと比ベてみること。

(一九) 自分たちの地方にある法廷をたずねること。法廷の手続,進行法などを研究して,(他の国々の裁判手続きを勉強して)他国における手続きと比較すること。裁判官や,他の法廷官吏の選抜法を明らかにすること。法廷勤務の公務員に会って,その職責と,法廷の手続きとを,説明してもらうこと。

(二○) 学校に模疑法法廷作り,正確な法廷手続きを完全に履行すること。自分から進んでその役とやろうとするある生徒を被告にして,犯罪の疑いをかけてみること。

(二一) 警察署をたずね,その仕事を研究すること。警官の探用法を調在し,現在の警察制度で改全したほうがよいと思う点について,級友と討議すること。警察官吏を教室に招き,その職責についてたずねること。

(二二) 逮捕・拘引は,どうして行われるかを調ベること。(憲法三十二・三十四・三十五条参照)。罪の確証を得るために,拷問の方法が現在用いられているか,過去はどうであったかを調べること。被告と証人から証言を得る仕方ば他国で用いられているのと同しであろうか。(憲法三十六・三十八条参照)。

(二三) 自分の地方で,防火の責任に当たる人の任命法・資格・職責について,明らかにすること。消防署に行って,消防士の仕事,そのやり方を調ベること。

(二四) 自分の地方の政治に関するある程度の欠陥を示し,それを改善する方法を取り扱った劇を作り,上演すること。

(二五) 自分の市・区・町・村役場の公務員や,地方事務所や,県の公務員で,だれが公衆の健康について仕事をしているかを明らかにすること。その人たちをたずね,その仕事について話し合うこと。

(二六) 自分たちの地方の食糧配給機構を,調ベること。闇市場のある範囲を明らかにすること。市場を,正しい統制のもとにおく方法手段について,討議すること。

(二七) 自分たちの地方で,衛生状態の悪い場所を見つけ出すこと。その問題について討議し,改善策と提議すること。公衆便所は整備されているか,下水は完備しているか,ちりあくたは完全に処理されているか。地方の当局や,私設団体が,公衆衛生のためにどんな活動をしているかを,調ベること。

(二八) 成人教育の団休の会合を傍聴すること,地方の教育とレクリエーションについて論じている新聞記事に,注意すること。地方の学校の改良に関する意見を集めて,討議すること。

(二九) 都道府県庁に関する記事や,書物を,自分の府県の役所を特に参照しながら,読むこと。府県会をたずね,できるならば会議を傍聴すること。地方行政改正案を参照して,この立法機関の構成・職責・成員の資格・組織及び手続きを明らかにし,学級に報告すること。

(三○) 自分の府県の知事及び府県庁の他の公務員を十分研究すること。知事は現在どうして任命されるか,他の公務員はどうか。知事及び府県庁の公務員の職責及び活動について表を作り,学級に報告すること。知事の職は,現在どうなっているか,新憲法のもとではどうなるかという問題を,学級で討議すること。もしできれば,府県民に対する恩恵という点から,この数年になしとげられた仕事の記録を,研究すること。新憲法は,府県の公務員の身分に,どんな変化を与えるか。

(三一) 日本の歴史や,日本の政治の発展について,書物を読んで,政治上の事件について,関係した重要人物・年代・事件の内容などを,簡単な年表に作ること。

(三二) 日本の政治の組織について,歴史の書物などによって,次のことを明らかにすること。

(三三) 郷土の古老で,明治維新のことをくわしく知っている人があれば,これを訪問して話を聞くこと。また,明治維新について,日本歴史の書物を読んで,これを学級に報告すること。特に,それが「革新」であったとともに「復古」であったことを具体的な事実について研究し,学級で討議すること。次のような点では,維新前と維新後では,どんなに変わったであろうか。 (三四) 明治憲法が,外国の影響を受けている点について調ベてみること。(例えば,プロシア・イギリス・合衆国・フランスなど)。

(三五) 明治憲法について,特に,次の点を明らかにし,学級で討議すること。

(三六) 明治憲法が発布されてから,最近に至るまでに行われたその精神に反する事実を,歴史的に挙げること。その理由を討議すること。満事変から太平洋戦争までの間を,特に,注意して調ベること。なぜ日本はこの憲法のもとで,民主的な生活や政治に達することができなかったのか。なぜ日本は,昭和二十一年に新憲法を制定したのであろうか。どうして明治憲法は,不十分だったのであろうか。

(三七) 新聞・週刊及び月刊雑誌,パンフレット・書物,その他の刊行物で,新憲法の問題を取り扱ったものを学級でできるだけ集め,「新憲法発布記念学級文庫」を作ること。特に,新聞に発表された憲法に関する記事の切り抜きを作ること。また,文献目録を作ること。

(三八) 学級内に「新憲法研究委員会」を組織して,定期に会合して憲法の研究とその実践について,相談すること。委員は,学校にその結果を報告し,報告ののち,学級で自由討議をさせること。

(三九) 新憲法の全文を読んで,重要だと思われる条項にしるしをつけ,学級に報告すること。新憲法と明治憲法とを読み合わせてみること。どちらがわかり易くできているかを比較すること。わかり易い憲法の長所を挙げて,グループで討議すること。

(四○) 地方で,憲法にくわしい学者か法律家か代議士を招いて,新憲法の精神について話を聞き,その後で,質疑応答をする計画を立ててみること。

(四一) 委員を選んで,第九十回憲法審議議会の議事録を官報によって調ベること。重要な点や,憲法正文によっては明らかでない箇所を,それによって確めること。その結果を学級に報告して,討議すること。

(四二) 現代の他の国家の憲法の研究をするために,委員を選ぶこと。個々の場合に当たって,日本の新憲法を,他の憲法と比較してみること。

(四三) 学級に憲法前文を研究する委員会を組織し,明治憲法と比較しながらその重要な点を明らかにし,学級に報告して自由討議を行うこと。特に,次の点を中心として,

(四四) 第一章天皇の項を研究する委員会を設け,新憲法の規定のもとにおける天皇と政府,天皇と国民の関係を定義してみること。特に『象徴』としての天皇の地位について,十分研究すること。これを学級に報告して,討議すること。

(四五) 第二章国民の権利及び義務の項を研究する委員会を設け,従来の憲法に比ベて,権利条項の発展したあとをたどること。新憲法の中から,権利条項といわれる箇所を取り出すこと。それが,個人としての自分に保障している特殊な権利を表に作ること。おのおのの権利が,義務と責任とを同時に含んでいる状態を図によって示すこと。自分が十分に責任を果たすことのできる方法について,討議すること。そのような権利は,なぜ自分にとって重要なのか。

(四六) 憲法の各章(特に,一・二・四・五・十など)を参照し,新憲法において規定された日本の政治の姿と,イギリス及び合衆国のそれと比較すること。

(四七) 第三章戦争の放棄の項を朗読して,憲法前文と対照しながら自由討議を行うこと。

(四八) 国の憲法を模範として,試みに校務に関する根本規則を書いてみること。この場合,国の憲法に保障された権利を,侵害しないように,注意しなければならない。

(四九) 政治の数種の型についての報告を準備するいくつかの委員会を設け,その各々が研究したところを,口頭で学級に報告すること。おそらく,合衆国・イギリス・スイス・フラソス・ソ連・ニュージーランド・スーデンなどのものが参考になるであろう。

(五○) 日本の歴史の書物によって,ある時代の政治の姿を調ベ,これを新憲法施行後の政治の姿と比ベてみること。この歴史についての史料を,報告書や口頭の報告や,学級討議,物語などのいろいろの方法で提出すること。

(五一) 最近の選挙の方法について,研究すること。他の国の選挙法を勉強すること。日本の方法の利害を表にあらわすこと。

(五二) 有効な選挙法を用いて,生徒の役員を選挙すること。

(五三) 議会において,「選挙には教育上の資格がいる。」と決議されたとして,これについて討議すること。

(五四) 現議会の機構を示す図を作ること。自分の地方から出た現議員の経歴を調査すること。法律は,議会でどうして作られるかを調ベること。模擬国会を組織して,公益に関する問題を論ずること。

(五五) 議会に行き,傍聴席から日程の議事を視察すること。それを,くわしく学級で報告すること。

(五六) 現在の有名な議員のことを書いた絵入りの伝記を作ること。近くに住む議員に会見すること。その人たちから,議会の選挙について,できるだけ多くの話を聞くこと。

(五七) 議会の活動及び議員に関し,参考になる最近の新聞記事を切り抜いて,整理保存すること。議会の活動について,しばしば集団討議を行うこと。

(五八) 憲法の内閣に関する部分を,学級で朗読すること。あらゆる方面から,内閣についての情報を手に入れること。グラフを用いて,内閣と議会の関係を図解すること。各大臣の職責を明らかにした表を作ること。

(五九) 閣員と,各省の活動に関する最近の新聞記事の切り抜きを整理,保存すること。その知識にもとづき,適当な時に,内閣の主要閣員の活動について討議すること。

(六○) これまで議会と内閣とを研究するために用いた方法で,司法裁判所を研究すること。

(六一) 政府は,政治を行って行くのに必要な経費を,どのようにしてまかなっているであろうか。歳入・歳出の予算や,決算に関して政府の発表したことがらを集めて,研究すること。なぜ,だれでも政府の経費を分担しなくてはならないのであろうか。

(六二) 租税のいろいろな種類を調ベ,直接国の経費となるものを明らかにすること。自分の地方の人たちは,どんな税を払っているか。税を払った結果として,どんな恩恵を受けているであろうか。

(六三) 一般に,民主的だと思われている行動の仕方を表にしてみること。自分自身で民主的だと考えた事業の表と,それとを比較すること。政府の活動の数々を調べ,自分のきめた民主主義と,それらが合致するかどうかを明らかにすること,政府をもっと民主的にする方法を討議すること。

(六四) 政党の研究をまず地方から始めて,次第に,国の段階まで及ぼして行くこと。個々の場合について,いろいろの政党の綱領の写しを手に入れること。各政党の組織を研究し,それを表にまとめて図示すること。自分の市・区・町・村の人々の地方政治関係を明らかにすること。人々に面会してその人々が,どれかの政党に属している理由を調ベること。政党は,どうして役員を選ぶか,役員選出法を討議し,もっとよい方法があれば,考えてみること。地方で,政党答を支配しようとする人があれば,どんな人か。前の選挙における自分の市・区・町・村及び府県の統計を調ベ,投票状態を明らかにすること。この知識にもとづいて,報告書をかき,何らかの方法で学級に説明すること。

(六五) 各国の政党の歴史や現状を調ベて,「国民のための政党」という題で,作文を書くこと。

(六六) 自分の学級の大部分の生徒が信じている重要な公共問題についての意見に関し,質問票を用いて,学級全体で研究すること。それを政党の政綱といちいち比較してみること。自分の市・町・村の多数の意見を明らかにする研究計画を作ること。ついで,少数の意見についても,同じようにやってみて,それらを既成の政党の政綱と比較すること。

(六七) 自分の町で行われた最近の政戦に関し,できるだけ情報を集めること。この問題の報告を書き,学級に提出すること。投票獲得のため,不正手段を用いなかったか。以前公職にあった者の何割が当選したか。政府の位置になぜ変化が起ったか,その理由について考えること。

(六八) 町の大人たちと,特殊な社会の問題について話し合うこと。その人たちに,直接にかゝわりのある諸問題を明らかにすること。人々が,町の問題にどんな解決法を考えているか,それを非公式でも,比較的完全な世論調査を行って,明らかにすること。全部の人が,その解決に対して,用意を持っているかどうかについて,また,意見の相違について,討議すること。意見の相違の理由を調ベること。

(六九) 地方の問題について,意見は多数あるであろうか。それとも少数であろうか。これについて明らかにすること。意見を発表する人は,非常に少数なのであろうか。人々が公共の問題について意見を発表するように,促すにはどういう方法によればよいか。

(七○) 政党の地方指導者に会い,あるいは新聞雑誌にあらわれたその人たちの声明を抜き書きしておくこと。地方問題に関する政党の態度を調査すること。政党はどんな方法で,また,どの程度まで世論に影響を与えているか。

(七一) 公共の問題についての討論会をやる機構をみつけ,ある問題についていろいろな人たちの政策と見解とを,調べること。

(七二) 自分の地方の人々が,読む新聞のすベてについて,論説や,記事や,雑報を集めて研究し,学級で朗読すること。新聞の論説と,町の人々の意見とに関係があるかどうかを調ベること。

(七三) 自分の地方の人々に,月ぎめで読まれているのは,どの新聞がいちばん多いかを調ベてみること。その人たちは,どんな部分にいちばん興味を持っているか。自分の読んでいる新聞の社説は,何を取りあつかっているか。自分の地方で読まれている新聞を,統制する者はだれか。政党に統制されている新聞があるであろうか。自分の新聞は,事実と意見とをはっきり区別しようとしていると考えられるか。自分の新聞は,どこから記事を取って来るか。政府あるいは公務員と関係はないか。自分の新聞は,どの程度まで,町の世諭を反映しているか。いろいろな意見をのせる新聞があるか。自分の読む新聞の収入のもとについて,知識を得ること。収入の何割までが広告費によるであろうか。広告主は新聞の編集方針に影響を及ぼすであろうか。新聞にあらわれる「投書」を研究すること。新聞の編集者は,政府を批判するであろうか。民主的な国民にとって,政府の活動に対して批判する自由を持つことが,なぜ必要か。地方の役所は新聞に広告をのせるというような方法で,新聞を利用したり,その方針に影響を与えたりしてはいないか。

(七四) 一定のラジオの時間を選んで,その番組を自分で聞いたり,委員に聞かせたりすること。どの程度に自分の地方の人々が,この同じ番組を聞くであろうか。ラジオの討議と世論の変化との間に,関係があるがどうかを明らかにすること。

(七五) 宣伝と宜伝方法について,書物によって研究すること。宣伝方法に理解を持ち,他人の意見に影響を与える方法を理解させてくれる人々に,手紙を書くこと。宣伝を見分ける能力について,自分の学級の水準高めるように努力すること。宣伝を含んだ文書と書いて,他の生徒が,それを見やぶるかどうかを明らかにすること。

(七六) 戦時中の日本の宣伝について,調べてみること。戦時中に用いられた虚偽の宣伝の実例を選んで,これを分析すること。なぜそれを信じた人があったか,その理由を示すこと。

(七七) 映画(特に,ニュース映画)を見に行った生徒にその印象を学級に話してもらうこと。機会があるかぎり,学級で適当な映画を見ること。映画を見て,考え方にどれほど影響を受けたかを討議すること。

(七八) 公民としての権利と義務とについて,できるだけたくさん挙げて表を作ること。権利と義務とのの関係を,明らかにすること.

学習効果の判定

(一) 生徒は,その属する集団の必要にしたがって,その自然的な欲望を,自分の理性によって調整しているか。

(二) 生徒は新聞やラジオによって,現在の政治問題に十分通じているかどうか。生徒は意識的に計画的に,社会事象について知ろうとしているか。

(三) いろいろな問題について,あらゆる角度から情報を手に入れてから,自分の意見を立てるかどうか,観察によって注意すること。

(四) 生徒は,宣伝を見分け判定することができるであろうか。一定の宣伝方針にしたがって,新聞記事を選んだり,書いたりすること。この記事の中の宣伝を生徒はどの程度に見やぶることができるかを明らかにすること。

(五) 生徒は政治問題について,どう察力を持つようになったか。

(六) 生徒は新憲法の重要な条項を説明できるようになったか。筆記考査によって,吟味すること。

(七) 生徒は,基本的人権の重要性,及びその内容を理解しているか。これは他の生徒に対する生徒の行動を観察して,きめるがよい。

(八) 生徒は,学校及び社会関係において,よい公民としての資質をあらわすようになったか。

(九) 生徒は,政治的な共同の福祉を実現するために,社会や個人と協力する能力をそだてて来たであろうか。

(一○) 学校や学級の中の低い階の者や,特殊な者に対する生徒の態度を十分注意すること。このような者たちに自分も集団の一部だと感じさせるような,努力がなされているだろうか。それとも,差別待遇があるか,という点を明らかにすること。

(一一) 個々の生徒について,自分たちと,違った見解をあらわす者に対して寛容な態度を示しているかどかを記しておくこと。

(一二) 学校や学級の集団作業の自治体における個々の生徒の活動を記録して,おくこと。

(一三) 生徒各自は,国民と政治との関係に対する意見を作文の中にどのように表現しているであろうか。このような作文を判定して,生徒各自が,政治というものは,国民が協力してやるべきものだということを理解しているかどうか,調ベること。

 

単 元 四

 職業の選択に際し,また職業生活の能率をあげるために,どんな努力をしなくてはならないか。

要 旨

(一) 現在わが国は経済再建の問題に直面し,国民が平和的な努力によって,相当な生活水準を維持することのできる経済組織を作り出すとともに,生産的な職業に従事するようにつとめることが重要な問題となっている。社会のすべての成員が持つ技術と能力とを,物資の生産や,社会福祉の増進に必要な勤労生活に最大に活用し,また,集団の各個人の経済的社会的な生活の向上に役だつように,これを利用するところに,この問題の重要性がある。この点から考えても,国土計画にもとづく国民の職業配分計画の樹立ということがきわめてたいせつである。与えられた一定の天然資源のもとにおいては,国民の生活水準は,物資の生産量と労働の量及びそれらの能率のいかんにかかっている。特にわが国の現在では,人的資源こそ,国内において利用し得る最も重要なものであることを考え合わせる時に,もし労働者が,明らかに技能や訓練を欠いているが故に,不適当だと思われる職業を選んだりするならば,労働能率が低下することによって,単に国民の生活水準を下げるばかりでなく,労働者個人にとっても,不満足な不幸な結果をもたらすであろう。

(二) 重要な点は,労働者を種々の異なった職業にふり向けることである。もし一つの職業に労働者がかたよって供給されると,その結果生産過剰が生じ,それによって失業や労働問題が発生し,また,他の必要な物資の生産が減退することになる。反対に,一つの職業に労働者の供給不足があれば,適当な生活水準を維特するに必要な物資の生産や職務の遂行もできないことになるであろう。生徒たち――特に中学生――には,勤め人を熱望する傾きがある。これは,社会が正当な職業に対する尊敬の念を払わなかったというところに大きな原因がある。どんな仕事でもまじめな仕事である限り,価値があり,尊厳なものであるという観念が,社会の多くの人々に理解されず,さらにわが国では,学歴をその人の才能や経験より以上に高く評価するという誤った考え方が支配していたからである。学校教育のたいせつな目的の一つは,生徒に対して,正当な職業が社会において占める重要な地位を認識させるとともに,それが,工場であろうと鉱山や官庁内での仕事であろうと,およそまじめな職業である限り,すべて価値と尊厳とをもっていることを理解させることにある。この目的が過去においては達せられてなかったのは,中学校の卒業生の大部分は上級学校へ進みもしないのに教科課程が,上級学校への進学指導の準備のためにのみ予定されていたという事実によって,明らかである。青年たちが,かれらに適する職業を選び,集団の福祉にできるだけ寄与するばかりでなく,さらにかれら自身の生活の安定と幸福とを同時に見出だすことができるようにその職業の選択に助力することは,その個人のみならず,社会にとっても極めてたいせつなことである。

(三) 中学校の三年間を通じて,生徒は種々の職業に親しく接する機会を多く持つことが必要である。学校は,ある職業に関する教科課程の中に,試行課程(適性発見のための職業実習)を具えなければならない。現在まで,学校ではそのために必要な機械器具を設備しているものは少なかったが,今後はそうした施設も用意しなければならないだろう。これらの形式的教育に加えて,七・八・九学年の種々の場合を通じて,職業上の実際的知識をも得させなければならない。社会科の多くの単元は,職業選択について役に立つ経験を与えるものと思われる。例えば「日本列島はわれわれにいかなる生活舞台を与えてきたか。」(七年単元一)という単元の学習によって,日本の工業と,国民がどのような生活を営んできたかということについて,多くの学習の機会を与えることになるだろう。七・八・九各学年のおのおのの単元は,職業指導に,ある便宜を与えているから,これらをその目的に役だつように利用しなければならない。

(四) 学校のいま一つの重要な機能は,生徒に対して進学指導と職業指導の便宜を与えることである。学校は,生徒に選択の自由が許されている種々の職業について関心を持たせるようにし,また,個人と集団の福祉を増進するという観点に立って,種々の職業について,その利害得失を見分けることができるように,経験をつませなければならない。これは,生徒にかれら自身の技能と興味を調ベさせ,職業の選択を指導することになるであろう。だが,その最後の決定は,教師と両親の勧告に従って,生徒みずからによって行われなければならないであろう。だが,一般的には,生徒が職業を選ぶ場合には,その個人の意志も,家庭や社会の条件によって制約されるものであることを,注意しなければならない。それ故に,学校は,生徒に自分の仕事や他人の職業に対して正しい社会的態度をとるようにさせるとともに,生徒が自分の性質や興味を基礎にしてその職業を選ぶように,援助を与えなければならない。

(五) 現在,わが国では,職業の選択が,国の経済状態によって,著しく制限されていることは明らかである。だが,過去においては,教育の機会の不平等によって,選択の機会ははるかに制約されていた。われわれが,教育の機会均等の目標にとさらに近づき,経済の復興がさらに進むならば,職業選択の機会がいっそうひろめられるであろう。いずれにせよ,生徒各自が限られた選択条件の範囲内で,可能な限り広い選択を行うように援助してやらなければならない。

(六) 従来強力な職業指導の実行を阻害してきた一つの条件は,教育における一般的陶やと職業的陶やとの観念の対立があったことである。ある教育者は一般的陶やを強調して,職業教育は学問の研究を続けることのできない者にだけ行えばよいといい,また,職業的陶やに力点をおく人は,一般的陶やは実際的価値に乏しく,したがって,中学校におけるすべての教育は,働く者の要求に適合するものでなければならないと主張した。だが,これらの考え方は,いずれも正しくない。元来,職業的陶やと一般的陶やとの間には,本質的な差はあり得ない。学校で職業料を選択して修める生徒は,一般的教育をも続けて行うのであり,生徒は,単に満足な能率的な労働者となるばかりでなく,かれはまた,同時によき公民でもあるように期待されているのであって,それは,職業科のみをやって他の学科をすべてやめてしまっては不可能だからである。

(七) 職業指導に関係している教師は,種々の職業に関して多くの事を知っていなければならない。即ち,職業が社会において占める地位と,それが個人に対して持つ価値を知る必要がある。教師は,客観的な,また主観的な方法によって,生徒の性向と興味とを発見することができなければならない。そして,教育心理学と,生徒の性向や興味を決定するために作られた種々の器械にも,十分通じていなければならない。また,広い包括的な教育に通じ,国の日々の経済的な社会的な出来事にも通じていて,日本の社会経済の変化しつゝある実情にも注意を向けていなければならない。職業は決して静的なものではなく,常に変化しつゝある。生産における変化があれば,それまで非常に重要であった職業が衰微し,常に新しい職業が起ってくる。こうした変化は,すべて職業の選択に影響を及ぼすから,教師は常にこれらの変化に注目していなければならない。

(八) 教師も生徒も,この単元の学習過程において,生徒が中学校にかよっている間に,何か一つの職業を選ばなければならないというような仮定のもとに学習を行うべきではない。生徒が自分に適する職業を選ぶのを助けるために,いろいろな経験を行ってみることのできるようにすることが,この単元の目標である。今やわが国は,六・三制を含む教育制度の改革を行うことになり,これによって,国民の知識水準と全労働者の教養水準は,一段と向上するとともに,これは,日本の産業の発展にも献するところが大であろう。

(九) この単元には,非常に多くの学習活動の例が挙げられているが,これは,他の単元の場合もそうだが,教師と生徒はともに自分自身の活動を選ばなければならない。挙げてある活動をすべてやろうなどと考える必要はない。これらは,いっそう広い選択の手がかりにすればよいのである。生徒各自は,特に自分の興味をおぼえる職業について,幾つかの活動とやればそれでよい。生徒各自の得た情報は,口頭や文書報告や,その他の形で学級に分けられるわけである。

(一○) 職業指導協会編の「職業指導」という書物は,この単元の学習を発展させる資料となるだろう。この書物は,社会科の教科書となり,職業科の教師により参考書としても用いられるし,また,「職業指導」という独立課程の教科書とすることもできるであろう。学校は,この書物を上に挙げた三つの方法のいずれかによるか,あるいは全然別の使い方をするか,または三つのどれをもやってみるか,研究すべきである。

目 標

(一) 一般目標

 この単元の目標は,義務教育を終えようとする青年男女に対して,将来の生活にとって最も必要な職業に関する一般的理解を養い,生徒各自が自分に適る職業を選ぶのに必要な能力を発展させ,社会生活の発達に役だつすぐれた職業人として献しようとする態度を形成する。と同時に,有望な幸福な生活を楽しむようにする。

(二) 特殊目標

教材の排列

(一) 職業を通じて,われわれの生活を,いかに社会全体のために役だたせることができるであろうか。

(二) 日本人は,これまでどのように職業生活を営み,またそれは将来どのように展開して行くであろうか。 (三) 自分に適した職業を選ぶために,社会はどのような配慮を行っているであろうか。 (四) 職業生活をりっぱに行うために,どのようなことを心得なければならないか。 (五) 就職後の諸問題に対して,どうすればよいか。 学習活動の例

(一) 人間の協力関係

(二) 昔の職業生活 (三) 職業としての農業 (四) 職業としての林業 (五) 職業としての漁業 (六) 鉱 業 (七) 動力工業 (八) 職業としての工業と商業 (九) 通信,運輪,交通業 (一○) 公務自由業。 (一一) 学校教育と職業との関係 (一二) 職業の選択と就職 学習効果の判定

(一) 生徒は学校の課業をいかに行っているか。かれらの仕事に対する責任感は,その現在及び将来における働く習慣の指標になるだろう。このような責任について,かれらが現在果たしつゝあるものを観察する。

(二) 生徒が,新聞その他のものを読んで,この問題に関する情報を得ることにより,現在の職業における変化にどの程度歩調を合わせつゝあるかを記録する。

(三) 種々の場合について観察することによって,生徒が,あらゆるまじめな職業の価値と尊厳について敬意を持ち,それを発展させつゝあるかどうかを記録する。もし,例えば,生徒が炭坑夫のような職業に従事している労働者をあざけるような証拠がある場合には,各個人の労働の価値について理解の発展の程度を調ベ,このような理解の発展を記録する。

(四) 読書や,手に入れた情報を口頭で報告させたり,学級で討議させたりして,生徒が就職の機会について調査したことによって示される関心の程度を記録する。

(五) 生徒が,自分たちの職業について示す関心と傾向を分析しようとするまじめな態度を観察して記録する。

(六) 生徒が,ある職業に適合するためにたてた合理的な練習の機会に参加している証拠を,集めること。

(七) 討論の際や,口頭または文書の報告などによって,価値のある職業によって社会に貢献しようとする生徒の認識発展の程度を記録する。

 

単 元 五

 消費者の物資の選択に際して社会のカはどういう影響を与えているであろうか。

要 旨

 もともと生産は,消費を目標として行われるものである。したがって,ある意味では,経済財の消費があらゆる経済活動の終点であると言ってよい。自足経済時代には,生産と消費とは,同一の経済単位の中で行われ,各個人は,自分の経済単位の中で生産したものだけを消費しているが,交換経済の発達に伴なって,生産と消費との間は,次第に離れて行き,この二つのものの間に,物資の流通という過程がはいって来た。普通,生産は,ま市場を相手とする商品の生産として営まれ,次に,消費は,すべて市場から買った物資を使用することによるようになった。また,今日では,経済単位はある程度まで分裂して,生産経済が独立した経済単位をなし,多くは,資本家の利潤を直接の目的とし経営されるようになったので,消費経済は,一般に,貨幣によって市場から物資を得,直接に生活の欲望を満たすことを目的として営まれる独立の経済単位となった。このようにして,生産者とは,自分の生産すべき商品を,市場に向かって生産する者をさして言い,消費者とは,市場から他人の生産した商品を買って,直接消費に使う者をさして言うのである。そこで,市場を中心にはさんで,消費者と生産者とは対立しているわけである。そこに,いろいろの問題がある。

 現在,日本においては,戦時及び戦後の生産力の失調・低下によって,個人の消費生活は,混乱に陥っている。一般の国民は物資の不足から,その消費生活は極度に切りつめられている一方,市場には,高価な物資が並ベられている。われわれにとっての問題は,切りつめられた消費生活の中で,必要な物資を求め,欲望を満たすために,買物をいかに選択するかということである。今後,日本の経済を再建するためには,国民一般の生活水準を切り下げることが要求されるといわれるが,そうなれば,いっそう消費の合理化が必要になるであろう。

 生産者の中には,無責任に,たゞ利潤追求の目的で,商品を生産する者が少なくない。それは,生産者の社会的自覚によって改善されなくてはならないことであるが,一方,消費者が,商品に対して科学的な判定を下だし,これを選択する能力を高めるとともに,この物資欠乏の中にあっても,できるだけ購買欲を制御して,消費の対象の選択をし,消費生活を合理化することがたいせつである。しかし,個人の力には限りがある。そこで,いわゆる消費組合・購買組合などを設けるというような,生活の社会化の方向が,さらに消費を合理化し,生産者に対して大きな影響を与えるであろう。

 この単元は,消費生活を中心に,一般的な経済問題を取り扱い,消費生活の合理化,買物の選択というような問題を含むものである。

目 標

(一) 個人または家庭の一員として,自分の経済生活を理解すること。

(二) 富の分配がどのように個人や家庭の支出に影響を与えるかを理解すること。

(三) 個人や家庭は,なぜ時折自分の資力以上の生活をして,個人的・社会的生活に影響を及ぼすか,ということについて理解すること。

(四) 日本の社会のいろいろな生活水準を明らかにすることを学ぶこと。

(五) 必要な適度の欲望を満すために注意深く買物を選択し,よく考えて計画を立てることがたいせつであることを知ること。

(六) 生産者と消費者の利害は,いつでも一致するとは限らないが,両者の間に,均衡が保たれることがたいせつであることを,認識すること。

(七) ある種の消費の問題は,社会化の方法,集団的な行動によって,いっそう効果的に解決されることを,認識すること。

(八) いろいろな消費の問題を理解する能力。

教材の排列

(一) 消費者はどんな位置を占めているのか。

(二) 商品の値段は,どうしてきまるか。 (三) 生活の水準とは,どういうことか。 (四) 消費の合理化はどうすればよいか。支出を有効にするにはどうすればよいか。 (五) 広告に対しては,どういう態度をとったらよいか。 (六) 社会や政府は,消費者のために,何をなすべきであろうか。 学習活動の例

(一) 物の価値と,われわれの欲望との間には,どんな関係があるであろうか。電球と水とを取って,研究してみること。経済学で,「効用」というのは,どういうことであろうか。自由財と経済財とを区別して列挙してみること。

(二) 万年筆その他のものを調ベて,その値段の中には,どんな原価が含まれているか,だいたいの計算をし,図に表わしてみること。

(三) 自分の家庭で,普通に用いられている品物を選び出してみること。その値段を,いろいろな店で比ベてみること。その結果を学級に報告すること。

(四) やお屋(青物市場)で買っている品物の表を,グループで作ってみること。その際,品質の標準をはっきりさせておくこと。その中の一種を選んで,同じ日にいろいろな店でその値段を調べ,その報告を集めて討議すること。

(五) いろいろな店に,違った時に行って店主に会い,日用品のうち重要なもの五種を選んで,その値段が上っているか,下がっているかを聞いて,学級に報告し,図表を作ること。

(六) 自分の家庭にあるいろいろの品物について表を作り,それらが,どこで作られたかを示すこと。自分の県で作られたのはどれだけか。自分の郡・県及び国全体の地図を作り,自分の町で用いている品物の作られた場所を示すこと。

 普通,外国から輸入される品物について,どういう方法でもよいから図を作ること。近くの工場をたずね,何を作っているか,その製造の正確な過程,製造量,必要ないろいろの仕事,生産品の配分などについて明らかにし,それを学級に報告すること。

(七) 自分の家庭で,普通に用いられている品物について,それが,どんな径路を経て自分の手もとまで運ばれて来たかを,調べてみること。即ち,製造・卸・小の径路など。

 自分の近所の小店について,できるだけ調査するか,一定の範囲を限って調査を行うこと。そこで買られている商品の出所を明らかにすること。生産品の原料の値段を調べること。その生産に必要な産業における現在の労銀,及び生産に必要な労働時間をもとにして,できるだけ正確に労賃を計算してみること。さらに,生産価格と消費者の手に渡る時の販売価格の間の開きを,明らかにすること。自分の地域の卸商について,研究してみること。

(八) 自分の家庭で日常用いている品物で,大正時代までは無かったものを十種挙げてみること。

(九) おもな生活物資の値段を,ある期間にわたって調査し,その変動を表にすること,さらに他の地方における値段を調ベて,相違のあるときは,その理由を考えてみること。

(一○) 衣・食に関する商品の一つを取り,各自が,その生産関係について図解し,できるだけ実際に近く,原料価格・労賃・運賃などを計算してみること。その際,商品の生産価格・販価格などを,生産者に直接聞いてみること。

(一一) 運賃が,家庭で購入する商品の値段に及ぼす影響を明らかにすること。現在の商品の値段を,戦前のある時期の値段,及びその時期の運賃と比較すること。輸送のしくみを改善することができるか,討議すること。

(一二) 町の人たちが小市場で購買する品目を,できるだけ多く思いだして,表に作ること,表を作った時のそれらの値段を,さらに表にすること。人に会って聞いたり,新聞その他の刊行物の古いものを読んだり,そのほかあらゆる方面から,手をつくして,同じ品物の一箇月前,六箇月前,一年 前,五年前の正確な値段を知ること。品目ごとに値段の変化を説明し,それを供給の変動と関係させてみること。物価指数とは,何であろうか。

(一三) 自分の町の営利機構を調ベること。農夫が,生産価格以上の値段で,自分の生産品を売ろうとする状況,くつ屋が同じく高く売ろうとする状況など。正確な数字が得られる場合には,いろいろな日用品について,利益の歩合を算定してみること。

(一四) 自由価格は,何を標準にしてきめられるか。需要と供給の関係から,調査・討議すること。米の自由価格の変遷を調べ,その理由を考えること。附近の市場について,その種類・組織・機能を明らかにするための委員を作ること,そのくわしい報告にもとづいて,市場の価値及び改良案を討議 すること。

(一五) 自分の市町村の小売販売で,商品の掛け売りされている程度を明らかにすること。適当な品物の値段について,現金販売と掛け売りの場合との相違を調ベること。

(一六) 物価変動の表,主要物資生産高の変化の表,及び通貨発行高・銀行預金高・貸出高の表を作り,その相互関係を調べること。

(一七) 専売について調べ,いろいろの知識をもとにして,学級討議を行うこと。その歴史を調ベ,また他国のそれと比較すること。

(一八) 価格統制について,政府の施策を調べること。食料品の取り扱いについて,法律あるいは規定があるかどうか,あれば,それらの性質を調べること。

(一九) 食糧問題,その他日本の生活水準に関するいろいろの問題につき,新聞の記事を集め,つゞりこみを作ること。それらの問題について,学級討議を行うこと。

(二○) 日本の歴史上のある時代の人々の生活水準と,自分たちの生活水準とを比較すること。

(二一) 諸外国の生活水準について統計や説明などから得た知識をもとにして,それと,日本の生活水準とを比較してみること。

(二二) 農村・小都会・大都会などの生活水準の平均について,算定することができるであろうか。食糧・衣服・住居・生活の科学化,便利というような点を中心にして調べてみること。

(二三) 自分の町の人たちの収入が,どのように消費されるかを明らかにするために,調査すること。わが国の家庭の平均所得を比較すること。この所得にもとづいて,支出を科学的にする方法について,学級討議を行うこと。

(二四) 一家庭の生活にとって,どれくらいの水準が満足すべきものであるかについて,討議すること。満足すべき最低生活水準に必要な一定品目と,その量を示すこと。その品目の価格を定め,平均所得を基礎として,それらの品物がどれくらい手に入れられるかを明らかにすること。

(二五) 満足すべき最低水準の生活必需品の表を作り,その生産に用いられるわが国の天然資源について,いろいろの書物から知識を得ること。どの程度まで必需品が実際に得られるか,その大略を明らかにすること。日本は,表中のどの項目について,全人口に対して,十分に供給し得られると考えるか。国家は,輸入品に対して,どんな余剰物資で支払うことができるか。

(二六) 日本における,国民所得についての情報を,どんな所からでもよいから集めること。例えば,所得源,家庭の平均所得など。それらに関して,自分の町を,国のその他の部分と比較すること。また国民総所得及びひとり平均額・所得高別・人口比などを,政府機関その他に問い合わせて,表を作ること。

(二七) 「日本における所得の分配」という問題について,役に立つ情報を集めた後,学級討議を行うこと。所得の公正な分配ということが,現在行われているかどうか,明らかにすること。

(二八) 地方一般の家庭の収入源を調ベること。それは,賃銀や給与によるものか,営業による利益によるものか,所有物の売却によるものか,それとも配当によるものか。その結果を組み合わせ,整理して,いちばん数の多い収入源を明らかにすること。これらの収入源は,社会全体として,代表的なものであるかどうか,明らかにすること。

(二九) 自分が,もの心ついてから町に生じた衣服の変遷について,論ずること。調査と討議によって,この変化の説
につとめること。

(三○) 学級で流行している持ち物について表を作ること。学校ではやりだした理由について,説明を考えてみること。

(三一) 新聞その他の刊行物で,広告の見本を見つけること。誇張された広告の見本を選び出してみること。なぜ誇張と認めたか,その理由を明すること。広告は,正確な内容を伝えるであろうか。

(三二) 新聞を数種集めて,広告記事が,全体の紙面の何割を占めるか,研究すること,広告記事二,三種について,その広告料を研究してみること。広告料は,だれが支払うのであろうか。

(三三) 自分が前に買った品物を学級に持って来て,これはよい買物であったか悪い買物であったか,その理由を説明すること。

(三四) 広告の中に用いられている標語を,数人で集めてみること。それから,商品の名まえをいわないで,それを学級の者に読んで聞かせ,その商品の名まえを当てさせてみること。広告の中に用いられる標語がどんな効果を持つかを研究するためである。

(三五) 季節と商品との間に,どんな関係があるであろうか。炭・野・魚類などについて,表を作ってみること。

(三六) 政府の物価政策について研究すること。経済安定本部・物価庁などに関する新聞記事を研究して報告し,討議すること。

(三七) 税には,どんな種類があるであろうか。新聞記事などを研究して,調ベてみること。税と家庭,及び個人の消費生活との関係をできるたけ明らかにしてみること。大衆課税とはどんなものか。

(三八) 次の項目について,表を作ってみること。

(三九) 自分の町や地方に消費組合・購買組合があれば.その役員をたずねて,その目的・運営方法について話を聞くこと。一般市場の価格と,どれだけの差があるであろうか。差があれば,その理由について討議すること。よき組合の活動ということについて,研究すること。

(四○) 労働組合は,組合員の消費生活に対して,どんなことをしているか,組合の役員をたずねて話を聞くこと。

(四一) 自分の小づかいは一箇月間に,どんな割合で使われているか,学用品・教養・娯楽など,できるだけくわしく表に作ってみること。むだな買物はなかったか,浪費はなかったかを,研究してみること。

(四二) 消費者の心がけが,生産者にどんな影響を与えることができるであろうか。いろいろな場合を研究して,表に作ってみること。

(四三) 消費者の立場からいって,罷業はどういう影響を与えるであろうか,新聞の論説や,記事を集め,十分研究した後,「消費者罷業」という問題で,討論会を行うこと。

(四四) 消費者と生産者は,どういう点で利害が相反するであろうか。商品経済という点から研究して討議すること。

(四五) 経済生活の変遷を,生産方法(衣・食・住の獲得方法)と,消費生活の発展について,調査研究してみること。

(四六) 繊維製品の生産額は,戦前と現在とでは,どう違っているか,比ベてみること。新聞・雑誌などを注意し,あるいは,しかるべき当局に問い合わせること。繊維製品の節約という点で,母や姉と話し合い,自分の家の一年間の衣生活の計画を立てること。それを学級に報告し,討議すること。

(四七) 家庭で,燃料は一年間にどのくらい消費されるか,電熱器を使うことなども含めて,自分の家の総額を計算してみること。その金額は,一年間の支出の何割になるか,燃料の節約という点で,工夫してみること。燃料の節約が,日木の経済の再建と,どう関係があるかについて,よく調ベた後,学級討議を行うこと。

(四八) 貯蓄の意義について作文を書くこと。本年度になってから,貯蓄は,毎月ふえているか,へっているか,それと,物価との関係を調ベること。貯蓄と消費生活という点について,研究すること。

(四九) インフレーションと消費生活という問題を,できるだけよく調ベて討議すること。インフレーションを防止するためには,消費者としては,どういう心がけが必要か。

学習効果の判定

 以下の諸点を参考例として,生徒の学校生活における活動を観察したり,その手になった文章を調ベたり,他の教師や両親の意見を聞いてこれを記録しておくことがたいせつであろう。もちろん判定は目標に即して行うベきである。

(一) 生徒は,消費生活に対して,理解と関心とを示すようになったか。

(二) 生徒は,消費物資の選択に当たって,計画を立てたり,正確な知識を持つようになったか。

(三) 生徒は,消費に関して,予算を立てるようになったか。

(四) 生徒は,広告に対して,どのような態度をとるようになったか。

(五) 生徒は,消費者に対して,進んで助力するようになったか。

(六) 生徒は,映画や他の娯楽に対して,うまく選択するようになったか。

(七) 生徒は,正確な調査の技を習得したか。

 

単 元 六

 個人は,共同生活にうまく適合して行くにはどうしたらよいであろうか。

要 旨

 人間は,社会的動物であるとわれているが,まことにそうである。個人が,人間たるの特性・資質と考えられているものを発展させるには,集団の一員として生活することによるほかはない。子供は生まれながらにして,家庭と呼ばれる一小集団の一員となる。成長するとともに生活範囲が広くなって,家庭以外の人たちとの接触が次第に多くなる。子供たちは,近所の家庭の生活の中に遊び友だちを見出だし,遊びに対するおたがいの興味に結ばれて,その仲間になる。入学後は,子どもは学校友だちを見出だし,かれらとともに遊びや作業などを含む広い範囲の活動に加わるようになる。学年が進むにつれて,興味や必要から,子どもは学校生活,または,集団生活をさらに拡げて行く。――即ち,運動や,娯楽や,休養や,社会生活や,学業の達成について,たがいに興味を分ち合うことのできる集団に入って行く。学校を卒業すると一定の職業について,新しい集団の一員となる。――即ち勤労者がおたがいの目標に進んで行くために団結する労働組合,職業的向上に対する関心を分ち合うものたちからなる,教師,弁護士,医師その他の職業人の協会の一員となる。科学・芸術・宗教・政治・文学あるいは運動競技に対する興味は人々を結合して,科学の学会や,教会や,宗団や,政党や,文化的協会や,運動の協会というような集団をつくらせる。これらに加えて,各個人は共同社会――即ち隣保や,市町村や,国の中で生活を共にする人々の集団――の成員である。一個人は,同時に数個の社会集団に属すことができるし,また普通そうなのである。

 個人は,一集団あるいは数集団の中に生活しなくてはならない。しかし,不幸にして,一集団の中においても,さまざまな集団の間においても,常に和合と協力とがあるわけではない。多くの場合,利益が対立し,競争が行われる。社会が民主的でなくてはならないとすれば,集団生活は,少なくとも次の二つの要求を満たしていなくてはならない。(一)いかなる集団においても,人々は数多くのさまざまな共通の利益にあずからなくてはならない。(二)集団同志の間には,自由な動きやいろいろな相互交渉がなくてはならない。たいていの社会は,おそらく第二の要求よりも第一の要求をみたす方が多い。いかなる集団の内部でも例えば,政党や,労働組合や,地方社会や,宗教や,教会などでは,ある程度の競争や利害の対立紛争があるけれども,普通は態度や行為において,強い忠実さ,献身,協力などが見られるものである。人がそのような集団の一員になるのは,まず第一に,利益を同くする人々と仲間になりたいと思うからであり,またその仲間と協力していっしょに努力すれば,さらに容易に自分たちの目的を達成し得ることを知っているからである。

 第一の要求から言って民主的な集団でも,第二の点では全く非民主的なものがある。さまざまの集団の間に,いつも自由な交があるとは限らない。例えば,いなかの社会と都市居住者の間,雇よう主と従業員との間,種々の政党の間,多くの教会や宗団の間,また諸国の間には,対立と争いとが見られるのである。民主的な生活に達するためには,すべてのものの共通の善のために,さまざまの集団が協同して努力する道――例えば,雇よう主と従業員とが,違った目的のために戦うよりも,目的を分ち合い,それを達成するために協力する道――を見出ださなくてはならない。労働者の要求と雇よう主の利益はしばしば矛盾して,きわめて悲しむべき事態をひきおこし,生産の損失やそのほかの悪い結果の原因となって来た。資本と労働とをへだてる障害をうち破る道が見出だされ,また雇よう主の集団と勤労者の集団が,相互によく交渉し合う方法が見出だされれば,われわれは,民主的生活の方向にさらに前進するであろう。同じ原則は,政党にも,宗団にも,他のすべての人間集団にもあてはまるのである。

 わが国においては,従来個人と集団との関係という点については,欠陥があった。個人は,その家庭や国家に対しての責任はきわめて強く感じていたが,社会を構成している個人の幸福に対する責任はあまり感じてはいなかった。他国に比ベて,わが国では,国家と区別される社会というものの発展は,きわめて遅れている。家庭を超えて,村の社会において相互の利益を分ち合うようなこともないではないが,その他のところでは,はげしい利己主義と,他人に対る配慮の不足が見られる。公共の問題,公共の財産の取り扱い,他人の幸福についての関心などに関し,りっぱに行動することには欠けている。その理由の主なるものは,個人の尊厳ならびにそのたいせつさに対する顧慮に欠けていることである。われわれは,時として,個人の存在が国家に奉仕するような,また個人が常に個性を軽視するような体制をよいものと信じて来た。集団生活の重要性を強調するとともに,個人は,集団によって埋没されてはならない物ということを注意するのは,同じくたいせつなことである。集団というものは,個人がその相互の利益と必要とを分け合って,それを実現するためのものとして,個人のために存在するのである。この原則を国にあてはめてみれば,個人は国家に奉仕するために存在するのではなく,国家とか国とかいうものは,個人が共通の目標に達するために,協同して努力する個人の大きな集団である。個人をたいせつにするのは,民主的生活の最も重要な特色の一つである。しかし,それは少数な特別な人々をたいせつにするということではなく,社会のすべての成員をたいせつにすることを意味するのである。個人をたいせつにするのは,全体としてみた集団の福祉と対立するものではない。大事な点は,すベての成員が,共同社会の福祉のために真剣に努力し,共同社会が,平和に満ち,繁栄し,そうして民主的であるならば,それでこそ,共同社会の個人は,すべて恩恵を受けることになる,ということである。

 この学習は,個人の本性と共同生活や集団生活における個人の責任に関するものである。この年齢の生徒の集団生活は,他人をたいせつにする念や責任感を,かなり容易に高めることのできる時期を過しつゝあるわけである。だから,中学校において,共同生活の問題や,個人のたいせつなことや,他人の幸福に対する個人の配慮などを扱うのは,きわめてたいせつなことである。

 この学習においては,共同生活における個人の適合という観点も重視されなくてはならない。共同社会における生活には,他人と和合して行くために個人がそれに適合することが必要である。暴行罪や財産罪は,個人がその集団生活にうまく適合せず,他人の権利を認めようとしない時に起るのである。ある個人が,共同生活によく加わっていない時には,うまくいっていない理由を見出だすことが必要である。反社会的な行為を,その原因を究めないで,たゞいたずらに悪いときめてしまうことが多すぎたきらいがある。反社会的な行動が,貧窮や,精神的欠陥や,よくない教育などの原因によって生ずる面を明らかに示すような経験を,学校は子どもたちに与えてやらなくてならない。よくない行動は,それ自体で,善いとか悪いとか解釈するよりも,よく適合し得ないものと解釈すべきである。

 個人の共同生活に対する関係についての問題に全面的に迫って行くには,生徒たちが当面している現実の問題から出て行かなくてはならない。一例としては,生徒は,ある青少年の団体に加入したらよいか,どうかという問題もあろう。どの問題を解決するには,生徒たちは,その団体の目的を明らかにしたり,その団体の活動が,自分たちの集団生活に役だつかどうか,また,それに加入した結果,自分たちの進歩を期待することができるかどうか,を明らかにする必要を感ずるであろう。個人的な関係を調べて行くのに,あまり内省をすゝめることがないように,また,他人の感情を尊重するようにしたい。この学習を通じて弱点をあばいたり,個人的な批判に立ち入ったりすることなく,むしろ有益な社会的態度を伸長するのをはげますような活動に重点をおかなくてはならない。

目 標

(一) 一般目標

 生徒が,個人は共同生活に進んで熱心に参加してその性格と人格とを発展させるものであること,また,社会の発展と進歩とは,各個人の協力にまたなくてはならないということを理解して,自身の仕事や責任を,共同社会や,集団の一員として自覚し,自分の義務を果たす態度を養うようにさせること。

(二) 特殊目標

教材の排列

(一) なぜわれわれは個人の重要なことやその価値を重んじなくてはならないのであろうか。

    (1) 個人の本性。
      (イ) 遺伝の影響
        性格の遺伝の仕方についての初歩的な研究

        個人の遺伝的性格

        行動に対する遺伝の影響

      (ロ) 青少年期における発達
        身体発育

        社会性の発達

        情緒の発達

        精神発達

      (ハ) 環境の影響
        T 自然環境(第七学年の単元一,及び第八学年の単元二を見よ)

        U 社会環境

        家庭環境――民主主義の実験室としての家庭

        学校環境

        近所及び郷土

        宗教の影響――神社・寺院・教会等

        共同社会における集団と団体

        職 場

      (ニ) 個人の性格の研究
        健康及び容儀

        才能と能力

        人格

        性格

        適合の能力

      (ホ) 個人の基本的人権
(二) 個人はどのようにして他人との共同生活を習得することができるのであろうか。
    (1) 絶えず適合してゆく必要。

    (2) 不適合の意味と性質。

    (3) 会的習慣の発達。

    (4) 社会的態度と理解の発展。

    (5) 習,伝統,慣例。

(三) 共同社会に対してその成員はどのような貢献をすることができるか。
    (1) 社会の福祉の増大に対する貢献。
      (イ) 医師や,看護婦によって

      (ロ) 社会事業家によって

      (ハ) 公共団体の指導者及び公務員によって

    (2) 発明発見及び生産の増大に対する貢献
      (イ) 科学者によって

      (ロ) 発明家,及び探険家によって

      (ハ) 勤労者によって

    (3) 公共団体の生活並びに自治に対する貢献。
      (イ) 公共団体の指導者によって

      (ロ) その成員各自によって

    (4) 人間生活を豊かにすることに対する貢献。
      (イ) 美術家,作家,音楽家

      (ロ) 教育者,及び学者

      (ハ) 宗教家

(四) 共同生活への参加に対して,個人はどんな責任を持っているか。
    (1) 共同生活の他の成員と協力して,次のような共同生活の機能を行う。
      (イ) 健康・生命,財産を保護する

      (ロ) 物資をつくり,用い,消費し,労務を交換する

      (ハ) 民主的な政治を維持して行く

      (ニ) 物資や人を運搬する

      (ホ) 通信機関を維持して行く

      (ヘ) 宗教及び美に対する要求をみたす

      (ト) 教育を与える

    (2) 規則をつくるのに助力し,規則に従う。

    (3) 共同生活の問題の解決に知性を用いる。

      (イ) 科学的な思考の習慣を養う

      (ロ) 問題を客観的に自由に観察する

    (4) 民主的な個人として行動する
      (イ) 克己心を深める

      (ロ) 寛容・同情の精神,助力を惜しまぬ精神を発展させる

      (ハ) 暴政と圧制に対して抵抗する

      (ニ) 共通の善のために努力する

      (ホ) 公民活動に参加する

      (ヘ) 個人各自のたいせつなことを認める

学習活動の例

 (教師に対する注意)

(一) 自分自身,並びに自分の問題について理解するためには,生徒は,自分の成長について,二三の初歩的な原則を理解する必要がある。この年齢の水準では,心理学の形式的な研究を企ててはいけない。この問題については,この単元にそう教科書以外には適当な資料がないが,そうかといって,教師は成人のための教科書で心理学の資料を読むように指示したり,すゝめたりすることは避けなくてはならない。そのような教科書の内容を,おそらく生徒は誤解するであろう。青少年期における個人の成長に関する資料は,教師用の「教育心理」という新教科書の中に見出たされるであろう。この学習を進めて行く間に,適当な時に,教師は次に揚げてあることがらについて,簡単な説明を与え,理解と望ましい態度ができるように,それに続いて学級討議をするのがよい。生物学や心理学を含んでいる説明は,理解できる程度に簡単にすベきである。

    (1) 教師は,必要な時には,性格が両親から子孫に伝えられる生物学的課程であることについて,簡単な説明を行うべきである。生徒は,この過程の説明については生物学の新教科書で学ぶことができようし,教師は「教育心理」から資料を得られるであろう。生徒は,自分の生活に対する遺伝の影響を十分に理解できるように,このことがらについて学習しなくてならない。

    (2) 自分についての問題を理解するために,生徒は,自分の身体的・精神的な発展について,幾分は知っておく必要がある。このことがらについては,信頼できる資料が不足しているので,この場合には,教師は青少年期の成長について,簡単な説明を与えてやる必要がある。「教育心理」の教科書は,このことがらについて多くの資料をのせており,その中には,個人の誕生から,成熟までの発達段階のおもな特色を示して,要約した形で掲げた表もある。各年齢水準について,次の四つの標題をもとに資料がまとめられている。即ち,身体発育,社会性の発達,情緒の発達,知的発達がそれである。この資料を与えたなら,続いて学級討議をすべきである。

    (3) 生徒は自分たちに,ある仕方の行動をとらせる衝動について,ある程度の知識をもっている方がのぞましい。教師は,個人の基本的な要求,――即ち,愛情を求める心,集団生活に加わろうとする要求,独立しようとする要求,自敬の念を維持しようとする要求,みんなに認められようとする要求――について,簡単な説明を与えるのもよい。個人の要求が明瞭にされれば,要求や目標が環境によって,しばしば妨げられるものであることについて,また,個人が妨げられた場合に,それに適合しょうとする方法について,さらにまた適合するのに失敗すると,行為や人格の発展にとって,どんな問題がおこるかというにとについて,説明が必要になる。

     このような説明は,決して形式的・組織的になされてはならない。学級生徒たち自身の問題や,自分自身の行動について,理解しようとする,生徒たちの意識的な要求がある場合には,教師は,できるだけ助力してやらなくてはならない。この年齢の生徒は,その家庭,学校生活,社会生活に対する適合の問題で,しばしば苦しむものであるから,教師が助力を与ええなくてはならない機会が多い。教師は,教育心理学や,社会学や,生物学について,知識と理解とを持たなくては,必要な助力を与えてやることができないであろう。

(二) 先行する諸学年のいくつかの単元大要には,個人に対する自然環境の影響について理解させる学習活動に対して,参考になるものが含まれている。ここでは,たゞ,二三の学習活動を附け加えて挙げてあるにすぎない。特に,第七学年の単元一及び第八学年の単元一が参考になる。そこに掲げてある学習活動の例は,第九学年にも用いられるであろう。教師と生徒は,気候,地形,天然資源,土じょう,動植物というような自然環境の要素が,各個人に与える影響に重点をおいて,学習活動を計画し,これを実行すべきである。

 (生徒に対して)

(一) 自分の経験や読書をもとにして,人間の身体を健康に保つためには,どういう条件が必要であるかを表にしてみること(例えば,きれいな空気,適度の睡眠等)。その反対に,健康を害するいろいろの原因を同じく表に作ってみること。それについて学級で討議し,自分の身体を健康に保つために必要な規則や習慣をきめること。不健康が,集団生活に十分に参加するのにどんなに障害になるかという点を,明らかにすること。

(二) 附近の医師を学校に招き,人間の身体の発達について,話をしてもらうこと。必要と思われる知識を得るために,質問すること。身体の発達のありさまを記録し,表にすること。(身長・体重の増加,死亡率について)

(三) よくない家庭の状況と少年犯罪の関係について,情報を得ること。家庭で得た教育が学校における自分の行動に,どんな効果を与えているかを,学校で討議すること。

(四) 「民主的な生活を学ぶ最適の場所は家庭である」という主題で,討議すること。家族集団の各成員が,家庭の仕事や,厚生の活動に対して力になれる方法を討議すること。

(五) よい家庭生活の特質について,次の観点から討議すること。

    (1) よい家庭は,和やかで,慈愛と思いやりにみちている。

    (2) よい家庭では最後の決定権は両親にあるけれども,家族がみんな加わっていろいろなことをきめる。

    (3) よい家庭は,家族の安全をはかる。

    (4) よい家庭では,各人が互に尊敬し合う。

    (5) よい家庭の家族は,自分たちの幸福ばかりでなく,社会やさらに大きい集団の福祉を思いやる。

(六) 生徒として学校における集団生活で果たし得る次のような責任について,討議すること。
    (1) 生徒の団体に招待する計画の番組を示す。

    (2) 安対策に助力する。

    (3) 遺失物係をやる。

    (4) 学校衛生に助力する。

    (5) 書籍交換会をやる。

    (6) 学校新聞を発行する。

    (7) 学校図書の管理に助力する。

    (8) 運動場の監督の助力をする。

    (9) 体育の計画に助力する。――技の日割をきめる。応援団を組織する。観衆の席を整理する。

    (10) 生徒の厚生計画を推進する。

    (11) 生徒の同好会を推進する。

(七) 討議によって,学校や,家庭や,公共の集会で守るべき規則を書いた本を,学級で作ること。この規則表と対照して,生徒各自が,自分の行動を判定するように奨励すること。

(八) 河合栄次郎著「学生生活」を読み,わからぬ点は先生や先輩にたずねて,青年期と自覚ということについて,話し合うこと。

(九) 本を読んたり討議したりした後,好ましい人格の資質(集団とともに楽にたのしく生活できる資質)を,十あげてみること。このような人格の資質を得る方法について,討議すること。

(一○) 討議によって,「善」あるいは「悪」と考えられる行動数種を,表にすること。なぜそれらは「善」または「悪」と考えられるのであろうか。「悪」と考えられたものの中集団の利益と権利を害するようなものは,どのくらいあるだろうか。

(一一) 社会の福祉に反するという理由で,悪と考えられるような種類の行動をとりあげること。反社的な行動の原因を明らかにしてみること。一例をあげると,空腹あるいは貧しさから盗みをした少年,その遊び仲間から仲間はずれにされたので,けんかをした少年などである。(学校のだれかを個人的に刺激しないような,場合を選ぶこと)。

(一二) 一日,すべての生徒が,他の生徒の権利を全然顧みないようなことが起ったなら,自分たちの学校でどんなことが起るか,想像してみること。

(一三) 学校の集団生活にうまく適合していると考えられる人について,記述してみること。

(一四) 農民と,漁師と,都会の工場勤労者の特質について調ベ,職業生活や,自然及び社会環境が,人々の性格にどのような違った影響を及ぼすかについて,討議すること。

(一五) 東北人,関西人(特に京都,大阪),土佐人(高知県人),三州人(鹿児島,宮崎県人)等の特質について比較し,その特色を表にしてみること。自分の地方の人々の特性について書いた書物を読み,その長所・短所を批判的に討議すること。

(一六) ことばについての研究を行うこと。ます自分たちの地方の方言と,なまりについて調査し,それをいわゆる標準語や標準音と対照し,その相違を表にすること。悪い方言やなまりをどうしてなくすことができるか,実際できるような方法について討議し,一応の結論を出してみること。

(一七) 勤労者や事業家に,職業人気質について話をきいて,職場が,そこに働く人々にどんな身体的・精神的な影響を与えるかを,討議すること。自分の性質や環境と照し合わせて,来どういう仕事をしたいかということについて,作文を書いてみること。

(一八) 個性や人格の発展に,他のいかなる集団の影響よりも,家庭の影響が最も大きいといわれる。自分の行動の中のどんな点に家庭の影響のあとを見出だすことができるだろか。「三つ子の魂百まで」ということわざを評論すること。このことわざに科学的な根拠があるかどうかを明らかにすること。

(一九) 個人にとって,その生涯の仕事を準備し,よりよい公民に育て,趣味や教養の豊かな人間を作り,理解力を増して,成功の機会に恵まれるようにするために,教育はどんな影響をもっているかを研究して,文書にして学級で朗読すること。

(二○) 統治者・詩人・政治家・技術者・教育者・医師・俳優等は,どんな才能と能力を必要とするだろうか。これらの人々の仕事は,他人の福祉にどのように貢献するだろうか。自分の仕事で得た経験や,自分の地方の人々の経歴についての観察,自分の教有及び自分の意志などにおいて経験したことの結果として,どんな種類の仕事や経歴に興味をもっただろうか。それに必要な資格をもつために,受けなくてはならない教育や,経験を明らかにすること。

(二一) 自分の郷土で,最も重要な職業をいくつか表にしてみること。これらの職業にたずさわる人々が,共同生活に献するありさまについて,討議すること。

(二二) 数人のものが集まって,ある仕事をしようとする場合に,各々が自分の意見を主張して他の意見を受けいれない時には,仕事を始める前に,ぜひしなくてはならないことはどういうことであろうか。次に計画がきまったとして,その仕事に成功するために,少なくとも行わなくてはならないことは何であろうか。

(二三) 町や村の治安を維持し,火災を予防し,子弟を教育し,飲料水を整えることについて,適当な計画もなく,またその実施について責任をもって世話しようとする人がいない場合には,町や村の生活はどうなって行くか,ということについて討議すること。町や村の人々の福祉を増進するために,人々が相協力することが絶対に必要であることを,明らかにすること。

(二四) 丹那トンネル・清水トンネル・また関門海底トンネルなどの工事に成功するのに,人々はどのように団結してその完成に努力したかを調ベて,学級に報告すること。また,「一枚の新聞が刷り上るまで」という題で,実際に新聞の編集,印刷の順序を調ベて,その仕事のために,どんなに多くの人々が協力しているかを明らかにして,学級に報告すること。

(二五) 「縁の下の力もち」ということはどういうことか。批判的に討議すること。共同の福祉増進のために,黙々と働いている人たち,その日常生活は目につかないが,意外に大きな影響を与える人たち,そういう人たちについて,討議すること。このような人たちに,社会はどういう待遇を与えるベきであろうか。

(二六) 古代社会に関する歴史を読んで,奴れい制度について調ベ,学級で討議すること。

    (1) 奴れいは,どういう場合に起ったか。

    (2) その生活は,どんな工合だっだか。

    (3) なぜ奴れい制度はなくなったか。

    (4) 個人の自由は,達成されたろうか。

(二七) 「人間の生命はなぜ尊いか」という題で,討議すること。

(二八) 自由と放縦との相違について,討議すること。真の自由は,どういうものであろうか。戦後の社会において,明らかに自由をはき違えていると思われる人々の行動について,具体的に例を挙げて討議すること。

(二九) 自分たちの生活でしたいと思うことと,しなくてはならないこととが,衝突する合について,考えてみること。その場合には,どうすればよいかについて,考えてみること。

(三○) 福沢諭吉・新島襄・新戸部稲造・内村鑑三等の伝記や,著述を読んで,これらの人々のすぐれている点を明らかにすること。また,たがいに異なっている点を研究すること。

(三一) 平和に栄える社会生活にとって,欠くことのできないものと思われる個人的性質をできるだけ挙げてみること。即ち,寛容・親切・思慮・無私・威厳・信頼,明朗・独創性・勇敢・忍耐・いんぎん・協力的というようなものである。それらのちから,特にたいせつだと思われるもの五つを取り出して,自分の知っている人物について,具体的な例をあげ,そのおのおのについて説明してみること。自己の性格を反省して,五つあげたものの中で,自分の持っていると思われるものに印をつけること。また,自分が将来努力して養う必要のあるものを取り出して,座右の銘として紙に大きく書き,それを適当な場所に張り出すこと。なぜこのような性質は「よい」性質と考えられるのであろうか。集団の福祉を増進するからであろうか。

(三二) 自分の尊敬する偉人の肖像を手に入れて,それにその国籍,年代を書き入れ,その下に賞詞を書いて自分の部屋に飾ること。時々,級友が交替で,自分の手に入れた肖像を学級に持って来て教室に掲げること。その伝記から,その人たちの性格的特色を研究すること。

(三三) 数種の慣習を研究し,それを自分の学級に報告すること。悪い習慣のきょう正について討議すること。慣習の起源について調ベること。生活における慣習の役割について知識を得て古い慣習が,すべて,今でも集団生活に役に立つかどうかについて級友と討議すること。

(三四) 自分の市・町・村の生活の仕方を,自分のよく知っている他の市・町・村と比較してみること。

    (1) 生活の仕方。

    (2) 厚生の方法。

    (3) 社会活動。

 行動に相違が見られたらそれについて考えて見ること。

(三五) 実際に観察した慣習を,書きとめておくこと。即ち,挨拶の仕方,食事の仕方,建築の方法,仕事の仕方など。このような慣習は,自分の行動にどんな影響を与えているかを示すこと。

(三六) 二三の団体(運動クラブ・美術団体・音楽団休)に入っている級友に,そのクラブの活動についてたずねること。クラブの他の成員といっしょに活動に加わることの利益や時間が束縛されることについて,また,級友自身の感想について話をしてもらうこと。クラブが性格の発達に及ぼす影響を具体的に明らかにすること。

(三七) 自分が属している集団で,意見の一致していない問題を,研究や討議をして選び出すこと。そういう問題の一つに,少年少女が学校で共同していっしょに勉強した方がよいかどらかということがあると,仮定してみること。この問題について,自分の地方のしきたりや慣習はどだろうか。この問題について,新聞の論説を集めること。地方のいろいろな人々の意見を求めること。他の学校で,少年少女が自由にいっしょに勉強している例を探してみること,その意見を聞くこと。最後に,この問題について,学級でその際集めた事実をすべて用いて討議すること。男女共学の利害を表にすること。

(三八) 討議に入る前に,できるだけ多くの情報を集めて自分の学校の共同生活についてが重要な問題の研究を始めること。その問題の一つは,学校に生徒自治委員会のあることの可否の問題だと仮定してみること。他の学校の生徒自治委員会の例をさがして,これらが,どの程度に成功しているかをたしかめること。もし失敗していたとすれば,その原因を明らかにすること。生徒自治委員会に関して得られる情報をすべて,見出だした後,学級で,これについて討議すること。自分の学級または学校に,学級自治委員会を求める気持があるかどうか,また,学級または学校の組織が,実際にできるか,どうか,をきめること。

(三九) 学校当局との間の話し合いによって,もし生徒自治委員会が必要だときまったらそれを組織するように実際に着手すること。ま,どういう要求を生徒自治委員会は満足さすべきかを,はっきりさせること。それが実行すべき機能の表をつくること。学級すべてがいっしょになって生徒指導者選挙の方法,自治委員会の形式を確立すること。討議を十分して後,自治委員会の形式の輪かくや,指導者の資格をきめ,選挙の方法を規定する「根本規約」を起草するグループを選挙によって選出すること。この「根本規約」を,生徒団体の投票にかけること。もしそれが通過しなかったら,生徒の多数の意見に合致するように「根本規約」を書きなおすこと。それが承認されるようだったら,「根本規約」に従って選挙をやり,生徒自治委員会の設立を進めること。

(四○) 社会の統制ということについて,書物を読んだり議論を聞いたりして,その意味と必要とを明らかにすること。社会の統制に服するために必要な個人の正しい態度として,どういうことがあげられるか,研究すること。統制が意義あるものとなる前に,それは,集団全体によって課されなくてはならないということを示すこと。時々行動の規則が変化する必要があるのは,なぜだろうか。

(四一) 自分の属しているすべての集団生活を表にしてみること。それらのうちで,自分が進んで参加したものと自分が改めて参加するまでもなく,はじめからその一員となっているものとを,区別すること。この二つの集団に対して,自分はどちらにより多くの親しみを感じ心がひかれているか,自分に最も密接な関係があると思われるものを,順に番号で示してみること。級友のものと比較して,学級全体で表示してみること。

(四二) 自分の現在属している集団との関係は,いつどういう順序で結ばれて来たかを明らかにすること。学級の全員について,調査して,一つの表にまとめ,年齢といろいろの集団における成員の地位との関係を,図示してみること。

(四三) 社会のよき成員(団員)として必要な条件をあげてみること。それらの条件のうちで特に努力して練習をつむ必要のあるものをあげること。また準備を必要とするものをあげること。自分の将来入って行くと予想される社会において,必要とされる性質や,条件や,技術能力などについて調ベ,それを身につけるための実際の計画を立てること。

(四四) ことばを,上品,明せき(意志をはっきり伝えること,表現を明瞭にすること)という点から研究し,悪いと思うことばの表とつくること。自分たちのことばの修練を行う機会方法について,考えてみること。朗読会,討論会などを計画したり,あるいは,よいことばを学ぶという点から,脚本を書いたり,実演したり,新聞を発行したり,校内放送を実施したりするのもよい。

(四五) 美術,音楽,文学,運動,旅行などにおける自分たちの趣味を調ベること。趣味の洗練ということについて,研究すること。

(四六) 自分たちの生活を,いっそう満足なものにするための実際の計画を立てること。日常の起居,動作,容儀,装,ことばづかい,表情などについて詳細に反省して,改善すべき点がないかどうかを調ベ,改善への具体的な計画を立てること。

(四七) 自分の家庭,近隣,町の生活を改善するための具体的,実際的な計画を立てること。この際,例えば,町の美観をそこなっているものを除く場合でも,自分ひとりの力だけでは困難であるから,他の人々と協力して,集団の力によって改善を進める工夫をなすことが必要である。街路を清潔にして,衛生的に改善するために案を考えて,これを近くの学校や,町の役場や,警察や,その他の公共機関とも連絡をとって,ポスターや標語などを工夫して,自分の学級が進めることのできた改善について,強力に運動を展開する方法を考えること。

(四八) 地方の共同生活の改善に力になろうとする有志によって,公民クラブをつくり,社会の改革に進んで奉仕する具体的な計画を立てること。

学習効果の判定

(一) 集団生活をうまく営むために,欠くことのできないものと,考えられる行動の性質や類型を,項目の形で書きこんである控え表をつくること。これは,協力の能力,集団の一員として働く能力,正直・寛容・自発性・善意・礼儀・正しさ・同情・他人の幸福に対する配慮などである。そのような特性を完成してゆく成長を示す例を観察したら,教師は,控え表に適当に記入しておくこと。これはこの学習を通じて,また,この点について子どもの学校生活全体を通じて,続けて行く必要がある。

(二) 学校の共同作業にどの程度生徒が参加しているかを観察すること。

(三) 教室や,いろいろのクラブや,その他の学校の組織において,生徒はどの程度に民主的なやり方を実行しているかを,観察すること。

(四) 共同社会の組織の仕事に対して,生徒のもっている関心を観察すること。

(五) 学校の美化・清掃の計画において,生徒の示す,自発性・協力・熱意を記しておくこと。

(六) 生徒の示す他人の権利の尊重の念,あるいはその不足についての証拠を記しておくこと。

(七) 生徒が,共同社会が他人に依存している程度を理解するに至っているか,どうかを,文書あるいは口頭の活動によって,明らかにするように努めること。

(八) 活動・討議・計画・報告その他のものを観察して生徒が,集団生活のための計画に,自発的な態度をとっているかどうかについて,証拠を記しておくこと。

(九) 集団といっしとに知的に,明せきに,問題を討議する能力,また,集団を前にして自然に,興味深く,話すことのできる能力の発展を示す証拠を,記録しておくこと。