第十章 第九学年の家庭科指導

 

 第九年は中学校の最高学年である。既に青年期に入り,思考は理づめになって来る。眼は高く遠きを追うけれども,現実の経験の不足のために,しばしばつまづく。ここに生活の改善を主題として指導を展開する理由がある。すなわち次の表に示すものがその一案である。

単元(一) 家庭生活と能率

単元(二) 食生活の改善

単元(三) 被服と活動

単元(四) 乳幼児の保育

単元(五) 家庭の和楽

単元(六) 病人の看護

単元(七) 近所の交わり

単元(八) 帯と羽織,またはドレス

単元(九) 家事の経理

 

1 目   標

 生徒自身,自分の時間の大切なこと,又他人の時間の大切なことを理解するようになる。

2 指導の方法──生徒の活動

 A 時間の上手な使い方

(1) 各自,前日朝起きてから寝るまで何をしたか委しく書いてみる。その記録から,

 を計算する。そして各自一項目ずつの時間を発表し合って討議する。

(2) 上記の討議から,上の四項目に大体どのくらい時間をかけたらよいか,討議してきめる。

(3) 更に一日中の時間表を作ってみる。

 B 時間や労力を省いて能率をあげるにはどうしたらよいか。

(1) 生徒は家へ帰って,母が夕食の支度をするのを,始めから終りまで,その仕事の種類とそれに費した時間を,そばについて見て記録する。

 生徒は各自の家の流しの高さを測って来る。

 以上によって,級で各自の記録を発表し比較する。

(2) 台所の仕事をもっと早くするには,どうしたらよいか。その場で考えたり探したりしないためには,どうしたらよいか計画を立てる。

 C 配給や行列に費す時間の問題

(1) なぜ行列しなければ物が手に入らないか,行列しなくて,正常の筋道で手に入る方法はないかを考える。

(2) 自分だけの利を追わず,調和的にみんなが満足する方法はないかを研究する。

(3) 行列の時間を節約する方法を,みんなで発見する。

(4) お互に信頼することができれば,どんな方法があるかを考案する。

3 指導結果の考査

 いろいろな学校作業を始めたり,完了したりした後に,時間計画を検討する。

 作業中時計を利用する習慣がついたかどうかを見る。例えば,調理実習に時間の観念が取り入れられているかどうか。

 

1 目   標

 食習慣の改革の一つとして,粉食の重要性を認識し,その技術を習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 粉食は粒食に比べて,どんな長所や短所があるかを討議する。

(2) 種々の粉の性質を調べてみる。

(3) 各自の家庭では,どんな粉調理が行われているかを報告する。

(4) すいとんの実習

 1 すいとんが常食として便利なのはなぜか。

 2 すいとんだけで一食とするには,どんな材料を取り合わせたらよいか。

 3 すいとんを,どんな方法で作るか。

(5) 干しうどんの蒸し煮(冷やしうどん)の実習。

(6) 即席パン 実習

 

1 目   標

(1) 食生活の能率化の一端として,共同炊事を実行する素地を作る。

(2) 大量の食品処理の技術を習得する。

(3) 隣人に対するよい態度を養う。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 共同炊事の重要性を自覚するための討議──実例があったら,その報告から出発する。

 戸別炊事と共同炊事の得失

(2) 共同炊事実行の機会を考察する。

(3) 共同炊事の施設及び経営を計画する。

(4) 共同炊事実施上の注意として,

(5) 実習

 ご飯のでき工合によっては,湯炊きの方法を指導する。

 

1 目   標

(1) 仕事着の具備すべき条件を会得し,在来の仕事着が,これに当てはまっているかどうかを研究する。

(2) 仕事着の用い方を,従来のものよりもいっそう便利なように工夫する。

(3) 各種の仕事着の調製技術を習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 和式仕事着

 上衣 二部式あわせに倣う。

 下衣 洋式を基礎として工夫するか,またはもんぺを用いる。

(2) 洋式仕事着

 上衣

 下衣

 [備考]

 洋式仕事着下衣(ズボン)の縫い方

 1 仮縫い

  仮縫いができたらはいてみる。その上で種々の動作をして修整する。

 2 本縫い

 

1 目   標

(1) 基本的な作業用エプロンの形を理解する。

(2) エプロンの材料の選び方を知る。

(3) エプロン調製の技術を習得する。

(4) 各種エプロンへの発展の興味を養う。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 使用の目的,形,各部の名称の研究。

(2) 形,材料をきめる。

(3) 製作計画

(4) 実習

 

1 目   標

(1) 乳幼児の発育に対する理解を深める。

(2) 乳幼児の食べ物の世話ができるようになる。

(3) 幼い子供によいしつけをする必要を覚り,且つよい指導を与える方法を会得する。

(4) 正しい育児への興味を深める。

(5) 乳幼児の被服の調製能力を養う。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) どんなのが健康な赤ちゃんであるか。

(2) 赤ちやんの食べもの──ミルクの必要を強調――「なにをたべるか」の前項復習。

(3) 授乳を電車の中でも,路ばたでもどこでもすることの批判──家庭の中だけのことであることの理解。男子の放尿とともに日本人の悪習慣であることも悟らせる。

(4) お守りの要領を話し合う。

(5) よいしつけの復習と発展

(6) 乳幼児の生活と発育に即した着物は,どんなのがよいかの討議。

(7) 子供服

 

1 目   標

(1) 家族とのよい間柄を発展させる。

(2) 栄養に対する知識を確実にし,調理技術を進歩させる。

(3) 物日に必要な家庭的常識を会得する。

(4) 弁当の作り方を習得し,自分の食事は自分で責任を持つ態度を発展させる。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 家族が特別の調理を楽しむ,物日について話し合う。

(2) それらの中で特に自分達の好きなものをあげてみる。その中から実習したいものをきめる。

 [例]一  赤飯  茶わん蒸し  かぶの甘酢

    二  雑煮  照りごまめ  数の子のしょうゆづけ  煮豆  なます

(3) 休日に家族そろって何かをする計画をたてる。家族が意見を出し合う。

(4) 家族そろって遠足に行くとして,どんな準備がいるか。

(5) 弁当の要件を討議し,献立実習。

(6) 毎日の弁当の作り方を,もっと改善することを問題とし,次の事項を決定する。

(7) 実習

3 考  査

 毎日の弁当の評定。

 

1 目   標

(1) 正しい親切な看護ができるようになる。

(2) ふだんの生活にいっそう衛生上の注意が行き届くようになる。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 病室の要件を考察する。

(2) 病人の被服について話し合う。

(3) 病人の食事の研究と実習。

(4) 看護表の家庭向きな簡易な形式を考案し,実習する。

(5) 看護における精神的要素の重要さを体験するために学級でその見舞の計画をたて,実行する。

 一般に回復期における病人の注意,看護の注意を話し合い,それを実習する。

(6) 吸入器,便器等の取り扱い方を実習する。

 

1 目   標

(1) 乳幼児の健康の異常に早く気がつくようになる。

(2) 乳幼児の病気に,やさしい手当てができる力を養う。

(3) 一般に看護の技術を進歩させる。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 乳幼児の死亡原因と死亡率を調査し,どんな病気が多いかを知る。

(2) 弟妹やよその乳幼児が病気にかかったことはないか,どんな病気であったか,その原因,そのくり返された度数。

(3) 下痢の原因,下痢を起させないように家庭で気をつけなければならないことを討議する。

(4) 呼吸器系統の病気にはどんなものがあるか。それに対して,どうして抵抗力をつけておくか。

(5) はしか,百日ぜきにはどんな予防法があるか。

(6) ジフテリアや疫痢に対してどんな予防や手当がいるか。

(7) 結核の予防についてどんな心得がいるか。

(8) 乳幼児の体温や呼吸や脈はどれくらいあるのが普通か。発熱したらどうしてやるか。

(9) 薬の飲ませ方の実習。

 

1 目   標

(1) 自分たちの社会を住み心地よいものにするための地盤として,近所の交わりをよくする態度を養う。

(2) 客のもてなし方を会得する。

(3) 贈答の心得を学ぶ。

(4) 隣人との共同の仕事に協力の必要を自覚する。

2 指導の方法──生徒の活動

(A) 招待

(B) 贈答

(C) 協同

 

1 目   標

(1) 帯の実用的,装飾的役目について理解する。

(2) 半幅帯の材料,仕立て方並びに帯の締め方,結び方を習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 近頃用いられている帯の種類,昔から用いられて来た帯の種類を調べる。

(2) 各種の帯の鑑賞と批判──特に衛生的見地を含めて。

(3) 半幅帯の製作の計画。

(4) 仕立て方の実習。

 

1 目   標

(1) 羽織が保温調節に簡便な衣類であることを理解する。

(2) 羽織の材料,仕立て方,着方について習得する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) 普通に用いられる羽織の形,種類について調べ,その損失について討議する。

(2) 自分の製作する形をきめる。

(3) 材料

 表と裏の取り合わせ(地質,色,柄)について工夫する。

(4) 寸法をきめる。

(5) 裁ち方,仕立て直し物の布調べ。

(6) 標附け,えり折り実習。

 1 そで

 2 身ごろは,前下がりとわきに注意する。

 3 えりの折り方は,最も簡単な方法を選び,且つ仕立て直し物は,折り筋が目立たないように工夫する。

(7) 縫い方実習

(8) 仕上げ

(9) 着用,手入れ

 着てみて,えりの釣り合い,くり越しの適否を調べる。

 

 第七年のワンピース,第八年のツーピースに同じ。

 

(1) 自分の持っている羽織,帯その他全部の記録を作る。これを基礎に,被服が足りているか,足りないものは何か,多過ぎないかなど考えてみる。

(2) 一年間にどうしても必要なものの数はどのくらいか,みんなで研究してきめる。

(3) 更に討議を発展させ,和洋二重生活をやめたら,もっと数が少なくてすむかどうかを考える。二重生活の批判をする。

 

1 目   標

(1) 堅実な家計運営の途を理解する。

(2) 合理的な予算生活の必要を覚る。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) お金は何のためにあるか,討議する。

(2) 物を買ったり,好きなことをするにも,金には限りがあるから,ほしいままに使うことはできない。

 これをどうしたらよいか。

(3) 将来に備えるためには,どうしたらよいか。

 貯蓄の方法を話しあい,研究する。

 自分で貯金をしたことがあるか,話し合う。

 貯金をしたことのある人もない人も,これから半年お小遣いの中から,貯金をすることを計画する。

 人のためにお金を使ったことがあるか。

 こうして他人の事,社会の事にも金を使うことを覚えさせる。

 

1 目   標

(1) 家庭科の学習内容の総括と将来の生活に対する展望とを確かにする。

(2) 女子は家事担当者であるとともに,社会人であって,よりよい社会建設に責任があることを自覚する。

2 指導の方法──生徒の活動

(1) あのおかあさんはいいおかあさんだと自分が思ったり,あの方はりっぱな奥さんだと言う話を聞いたりしたことから,いいおかあさん,りっぱな奥さんとはどういう人かみんなでいってみる。

 逆にあの家はいやだと思うのは,どんなのか。

(2) 理想的なよい家庭婦人になるには,どうしたらよいか。

 いつも元気で明かるいためには──今までの勉強の復習とその発展。

 自分だけがよくなるのでなく,人もよくなるにはどうしたらよいか。

 社会なべや震災義金その他自分たちより困っている人のために,いつも喜んで自分の持っている物をさしあげたり,できることをしてあげる。

(3) 女は家庭婦人になることだけが仕事であろうか。

 生徒は日本に婦人代議土ができたのはなぜか,外国では婦人はどんな仕事に就いているか,等を新聞,雑誌等から調べて来て発表しあう。

 日本の著名な婦人たちはどういう人か,どうして有名か,その人々はどんな家庭を作っているか,などを話しあい,その中でも自分たちは誰が一番りっぱだと思うか,その人々を招いて話をしてもらうことかできるか,など,幾つかの委員に分かれて研究する。

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学習指導要領家庭科編

 

Approved by Ministry of Education

    (Date May,2,1947)

昭和二十二年五月 九日  翻刻印刷

昭和二十二年五月十五日  翻刻発行

(昭和二十二年五月九日 文部省検査済)

 

著作権所有   著作兼

        発行者    文 部 省

 

      東京都文京区久堅町―の八番地

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