「生徒指導」という言葉に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか。具体的なイメージがわかない方が多いのかもしれません。あるいは、真っ先に服装検査や持ち物検査のイメージが浮かぶ方もいることでしょう。しかし、それは生徒指導の役割や方法の一部にすぎません。
生徒指導とは、「学校の教育目標を達成するための重要な機能の一つであり、一人ひとりの生徒の人格の価値を尊重し、個性の伸長を図りながら、社会的資質や行動力を高めるように指導、援助するものである」(『中学校指導書 教育課程一般編』文部省、平成元年)とされていることからもわかるように、もっと幅広い教育活動です。学校教育の中の、国語や数学といった教科の学習以外の指導を生徒指導と呼び、教科等の授業の基盤となる環境づくりなどにも関わる活動と言ってよいでしょう。
ちなみに、国立教育研究所の英文紹介では、生徒指導にGuidance and Counsellingの訳語をあてています。これを日本語に直訳しなおすと「指導」と「相談」となりますが、私たちは、生徒指導の考え方を示すものとして、「相談」と「支援」の日本語をあてています。
私たちがここで考えている「相談」には、専門家によるカウンセリングから、ちょっとしたアドバイスを受けること、ただ話を聞いてもらうだけ、までの幅広い意味合いが含まれます。また、「支援」という意訳をあえて用いているのは、選択・決定していく主体はあくまでも子どもである、との思いからです。
このように考えていくと、生徒指導についてより広がりのあるイメージも浮かび上がってくるのではないでしょうか。
時代が変わり社会が変わるにつれ、学校にできることやできないこと、学校がすべきことやすべきでないこと、が問い直されるようになっています。いじめや不登校といった、いわゆる「問題行動」の増加は、そうした混乱の反映であると見ることもできるでしょう。これからの生徒指導がそうした「問題行動」に正面から向き合うためには、「対症療法」中心の取り組みから、「相談」と「支援」という視点からなされる「予防教育」中心の取り組みへと変わっていく必要があると思います。
○学校で取り組む生徒指導体制づくり:ピース・メソッド
ピース・メソッドは、オーストラリアの「いじめ防止プログラム」であるピース・パックを参考に開発されました。日本の学校の生徒指導上の諸問題の解決には、何よりも教職員の連携協力が不可欠であるという認識から、それを実現する手法として提案されています。
P.E.A.C.E.という5段階のステップのなかで、子どもの課題について教職員の共通認識をつくりだし、共通の目標設定をし、計画的・継続的に子ど
もに働きかけていく、子どもや保護者の協力も得ていく、という形で、1年以上にわたる取り組みを行っていく点がポイントです。
開発にあたっては茨城県竜ヶ崎市の中根台中学校に協力を得ましたが、現在では大分県別府市の鶴見台中学校、新潟県小千谷市の小千谷中学校などでも取り組まれています。また、新潟県教育委員会では、平成11年度にこのピース・メソッドに基づく「いじめ防止学習プログラム」を作成し、平成12年度には全県下の小中学校で取り組めるよう普及を図っています。
※右の写真は、新潟県が作成した「いじめ防止学習プログラム」の冊子です。
○子どもの社会性が育つ学校づくり:ピア・サポート・プログラム
「日本のピア・サポート・プログラム」は、体験的なトレーニングと「お世話をする」活動の二つを組み合わせたプログラムによって、子ども同士が互いに支え合い育ち合う場を学校につくりだす取り組みです。
カナダ、オーストラリア、イギリスなどの海外のピア・サポート活動を参考にしつつ、日本の学校や子どもの状況に合わせ、さらに実はピア・サポート的な発想で取り組まれてきた日本の伝統的な教育活動を活かす形で、提案されている点がポイントです。ピア・カウンセリングという形で日本に紹介されてきた活動とは、基本的な考え方が異なっていますので混同しないでください。あくまでも子どもが育つ場をつくりだす学校全体の取り組みであり、一部の教職員のみで実施するものではありません。
開発にあたっては、横浜ピア・サポート研究会を始め、横浜の本郷中学校や中川西小学校など、各地の小中学校の協力を得ています。また、平成12年度の福岡県教育委員会の「ピア・サポート」活動推進事業にも全面的に協力しています。
※福岡県教育委員会が開いた「指導者養成講座」の様子(2000年8月22日・23日)


○子どもの問題行動の予測や対応:ストレス・チェック・リスト
生徒指導上の諸問題、いじめや不登校、暴力行為や学級崩壊の背景には、子どものストレスがあるという調査結果を踏まえ、予防的な学校の取り組みや教育委員会の取り組みに役立つよう、開発中のものです。
これまで、3年間にわたる継続的な調査を実施し、チェック・リストの信頼性や有効性、学校現場への応用の可能性について研究を進めています。北海道、茨城県、福岡県、大分県の学校の協力を得ています。
生徒指導国際フォーラムは、国立教育研究所が、生徒指導上の諸問題の解決に向けて、海外の研究者の協力・参加を得ながら、学校との共同研究で実践してきた成果を、広く公開・普及していくために催してきたものです。1999年から2001年までに3回開かれました。
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○『生徒指導国際フォーラム1999』平成11年1月、アルカディア市ヶ谷 ※右の写真の報告書は、残部がなくなりました。 |
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○『生徒指導国際フォーラム2000』平成12年1月、アルカディア市ヶ谷 ※右の写真の報告書は、残部がなくなりました。 |
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○『生徒指導国際フォーラム2001』平成13年2月、アルカディア市ヶ谷 オーストラリアの研究者を交え、ストレス・チェック・リストを用いた国際比較研究の結果や、教育センターにおけるストレス・チェック・リストの活用例を報告してもらいました。 ※右の写真の報告書は、残部がなくなりました。 |
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○『「教職員」・「子ども」・「地域」ではじめる学校づくり―予防教育的な生徒指導の推進のために―』 上記の3回のフォーラムの報告書を1冊にまとめたものができあがりました。 必要な方は、国立教育政策研究所生徒指導研究センター(TEL 03-6733-6885 FAX 03-6733-6967)までお問い合わせください。 ※本書に掲載されている「生徒指導国際フォーラムで意図したこと」の部分、あるいは全文(173頁)がダウンロードできます。 |
○雑誌論文等
学級崩壊関連
「教師相互の連帯・協力で「学級崩壊」を救う」『学校経営』1998年4月号
「教師の側からの「納得のいく説明」と「子ども自ら判断を下す余地」が必要」『総合教育技術』1998年5月号
「教師の発想転換と学校の体質改善を」『心を育てる学級経営』1998年7月号
「『規則違反処罰の是非』“教育の論理”から考える」『学校運営研究』1998年7月号
「学級崩壊への挑戦:1〜12」『悠』1999年4月号〜2000年3月号
「学級崩壊に陥らないための研修のあり方」『教職研修』1999年7月号
「「学級崩壊」とその対応」『教育と医学』1999年10月号
「学級崩壊」『生徒指導の現代的課題』学校教育研究所2001年12月
「子どもの荒れ・学級崩壊と教師教育」日本教師教育学会編『日本教師教育学会年報』第13号、2004年9月
「「新たな荒れ」の克服をはかるマネジメント」『教職研修総合特集 No.173』2006年12月
暴力行為関連
「データに見る今どきの子どもたち」『授業づくりネットワーク』1998年8月号
「中高校生の暴力状況を検証する」『教職課程』1998年11月号
「子どものストレス」『青少年問題』1999年10月号
「暴力を容認する心理」『「暴力・非行」指導の手引き』教育開発研究所2002年1月
ストレス
「「もつれ」の深層と「ほぐし」の糸口」『教育と文化』1999年4月号
「相談と支援による生徒指導」『文部時報』1999年8月号
「子どものストレスと問題行動に関する調査から」『総合教育技術』2001年6月号
いじめ関連
「各国の対応策をどう活かすか」『「いじめ」対策ハンドブック』1999年6月号
「対談:いじめの予防・解決策を探る―世界の実践から学ぶこと〈前編〉〈後編〉」『児童心理』1999年2月・3月号
「海外におけるいじめへの取り組み」岩佐・西野編『国際化・情報化社会における心の教育』日本図書センター1999年9月
「『いじめ』防止プログラムの開発と展開:オーストラリアとの対話の中で」『比較教育学研究』第26号、2000年7月
「「いじめ」の現状をどう考えて、子どもたちにどう対していけばよいのか?」『総合教育技術』2000年8月号
「いじめの方法・場所」森田洋司監修『いじめの国際比較研究』金子書房、2001年12月
「国際比較調査研究の意義と今後の課題」森田洋司監修『いじめの国際比較研究』金子書房、2001年12月
「'Ijime
bullying':その特徴と発生要因」『国立教育政策研究所紀要』第133集、2004年3月
「いじめ研究の動向と問題点」平木典子他編『児童心理学の進歩2004年版』金子書房、2004年7月号
「いじめ・校内暴力は本当に減少したのか」市川昭午編『教育改革の論争点』教育開発研究所、2004年8月増刊号
「あらためて「いじめ」を考える」(6回連載)日本教育新聞、2005年1月21日〜2月25日
「いじめ問題国際シンポジウムの意義とそれが示唆するもの」『アイユ』、Vol.182、2006年7月
「いじめの実態と学校の対応」『教職研修』2007年1月号
「「いじめダメ」本気で訴えよ」日本経済新聞2006年12月25日
「Evidence に基づくいじめ対策」『国立教育政策研究所紀要』第136集、2007年3月
「いじめに向き合うための「正しい知識」 -教育社会学・生徒指導学からの視点-」『日本健康相談活動学会誌』Vol.3、No.1、2008年2月
New! 「「自己有用感」獲得によるいじめの未然防止 -「日本のピア・サポート・プログラム」に基づく人間関係づくり-」『生徒指導学研究』第7号、2008年
New! 「日本の「いじめ」を国際的に見る」『内外教育』2008年12月26日
New! 「ネット上のいじめにどう対応するか」『CS研レポート』2008年12月(Vol.62)
New!「いじめの本質を理解せよ -追跡調査・国際調査から見た日本の実態-」『公明』2009年5月号
生徒指導関連
「新しい生徒指導体制の確立に向けて」『CS研レポート』1998年39号
「学校としての教育相談体制づくり」『悠』1998年7月号
「「団体行動」型から「集団活動」型に転換する」『総合教育技術』1999年4月号
「生徒指導は学校経営の改善から 上」『週刊教育資料No.623』1999年5月号
「支え合いが築く子どものきずな 下」『週刊教育資料No.624』1999年6月号
「生徒指導が子どもを変える『教育ジャーナル』1999年9月号
「学級崩壊時代の心の教育」学校教育研究所編『心の教育の基礎・基本』学校図書株式会社,1999年11月
「「生徒指導」これからの学校の役割と責任」『総合教育技術』2000年1月号
「これからの生徒指導の考え方」『新潟県教育月報』2000年11月号
「公立中学校の果たす役割」『中学校』No.583、2002年4月
「生徒指導の理念と方法を考える −生徒指導モデルと事後治療的・予防治療的・予防教育的アプローチ−」『生徒指導学研究』創刊号、2002年8月
「これからの生徒指導(教育相談)の展開」有村久春編『「生徒指導・教育相談」研修』教育開発研究所、2004年7月号
「理論的分析枠組としての「生徒指導モデル」の有効性の検討 −不登校・社会性育成に関する実践の検討・評価を事例として−」『国立教育政策研究所紀要』第135集、2006年3月
「予防教育的生徒指導のすすめ」『教育展望』2007年1・2月合併号
「教科授業の改善を通した生徒指導の推進 〜3つの中学校の実践事例を中心に〜」『生徒指導学研究』第6号、2007年
ピア・サポート&社会性育成関連
「ピア(仲間)・サポートで始める学校づくり」『小二教育技術』2000年8月号
「「日本のピア・サポート・プログラム」とスクールカウンセラー」『臨床心理学』2002年1月号
「「日本のピア・サポート・プログラム」と予防教育的生徒指導」『月刊生徒指導』2003年1月号
「日本のピア・サポート・プログラム ー予防教育的生徒指導の具体的実践ー」『山形教育』2003年9月号
(No.327)
「ピア・サポートとは」『健康教室』2004年1月号
「社会性を育てるということ ―いかに『自己有用感』を獲得させるか」『総合教育技術』2004年5月号
「ピア・サポート・プログラム」有村久春編『「生徒指導・教育相談」研修』教育開発研究所、2004年7月号
「子どもの社会性:「異学年交流」「地域交流」こそ育成の要諦」『CS研レポート』2006年12月(Vol.58)
「知っておきたい実践手法 ピア・サポート」『悠+』2007年11〜12月
New!「お世話活動 〜「日本のピア・サポート・プログラム」から〜」『児童心理』2009年10月増刊号
ピース・メソッド関連
「これからの教師に求められる集団指導の実際」『指導と評価』1999年7月号
「児童・生徒のための新しい体制づくり」『教育展望』1999年7・8月号
「なぜピース・メソッドの導入が必要なのか」『新潟県教育月報』2001年12月号
不登校
「不登校への多様な対応 ー児童・生徒の社会的自立に向けて:どう働きかけ、かかわりを持っていくか」『教職研修』2003年6月号
「不登校・高校中退に歯止めをかけることはできるのか」市川昭午編『教育改革の論争点』教育開発研究所、2004年8月増刊号
「今後の不登校対応はどうあるべきか」信濃教育会編『信濃教育』第1424号、平成17年7月
「不登校 を減らす ー未然防止に必要な考え方と具体的な取組ー」『教育時報』岡山県教育委員会、平成17年9月号
New!「「中1不登校調査」再考 ーエヴィデンスに基づく未然防止策の提案ー」『国立教育政策研究所紀要』第138集、2009年3月
規範意識
「規範意識育成の視点から薬物乱用教育の推進を」『CS研レポート』1999年41号
「規範意識の形成と教師の指導力」教科教育研究所編『CS研レポート』Vol.55、2005年6月
「子どもの規範意識の醸成にどう取り組むか」『別冊教職研修』2006年11月
その他
「福祉国家の教育改革―スウェーデン」佐伯・黒崎・佐藤・田中・浜田・藤田編『世界の教育改革』岩波書店、1998年12月
「人々と連帯・協力できる資質を」『教育評論』1999年4月号
「問題行動」『'99最新教育基本用語 総合教育技術5月号増刊』1999年5月
「学級経営の充実をどう図るか」『教職研修』2000年4月号
「「非行の第4のピーク」の現状をどう考えて、子どもたちにどう対していけばよいのか?」『総合教育技術』2000年8月号
「座談会:どうする!?子どもたちのスポーツ環境」『みんなのスポーツ』2000年8月号
「人間関係づくりの危機」『週刊教育資料No.683』2000年9月25日号
「心の教育」『家の光』2000年12月号
「教師化した親、学校化した家庭」『児童心理』2001年6月号
「17歳の事件と教育改革をめぐって」『教員養成セミナー』2001年7月号
「教育の病理現象」岩永雅也・稲垣恭子編『新訂 教育社会学』放送大学教育振興会、2003年3月
「人が「キレる」メカニズム 第1回〜第3回」『捜査研究』2003年6〜8月号
「学校教育とその機能不全」今津孝次郎・馬越徹・早川操編『新しい教育の原理 変動する時代の人間・社会・文化』名古屋大学出版会、2005年3月
New!「友だちを大切に思う心」『児童心理』2009年7月号
New!「子どものケンカを「発達の視点」で捉える」『児童心理』2009年9月号
○著書
『「いじめ」を育てる学級特性―学校がつくる子どものストレス』明治図書、1996年8月
『学校を変える、子どもが変わる』時事通信社、1999年2月
『日本のいじめ』(共編著)金子書房、1999年7月
『ピア・サポートではじめる学校づくり 中学校編』(編著)金子書房、2000年2月
『ピア・サポートではじめる学校づくり 小学校編』(編著)金子書房、2001年3月
『いじめの国際比較研究』(共著)金子書房、2001年12月
『ピア・サポートではじめる学校づくり 実践導入編』(編著)金子書房、2002年1月
『改訂新版 ピア・サポートではじめる学校づくり 中学校編』(編著)金子書房、2004年2月
New! 『改訂新版 ピア・サポートではじめる学校づくり 小学校編』(編著)金子書房、2009年4月
○関連の深い生徒指導研究センターの報告書
「中1不登校生徒調査(中間報告)[平成14年12月実施分]−不登校の未然防止に取り組むために−』、2003年8月
『「社会性の基礎」を育む「交流活動」・「体験活動」−「人とかかわる喜び」をもつ児童生徒に−』、2004年3月
『 不登校の未然防止に取り組むために−中1不登校生徒調査から分かったこと−(パンフレット)』2005年7月
『不登校支援のためのIT活用ガイド』平成18年3月
New! 『適応感を高める高校づくり(パンフレット)』平成20年7月
『平成17年度教育改革国際シンポジウム「子どもを問題行動に向かわせないために 〜いじめに関する追跡調査と国際比較を踏まえて〜」』報告書(日本語) ・報告書(欧文)、2006年3月
『いじめ追跡調査2004-2006 いじめQ&A』2009年6月